2013年11月08日

凛「ちひろさんに直談判する」

初ssです。

モバマスのssです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1367671025


モバP「朝からずいぶんと物騒だな。どうしたんだ急に?」

凛「どうもこうもないよ。プロデューサーだって本当は分かってるよね」

モバP「心当たりがないなぁ。ちひろさんにはお世話になってるし、何を直談判するんだよ? もしかして俺のことをか?」

凛「………………それは」

モバP「事務仕事は勿論だけど、俺が番組の打ち合わせなんかで外せないときはアイドルたちの送り迎えも頼んじゃうこともあるだろ。たまに年少組の遊び相手もしてくれてるじゃないか」

凛「他には?」

モバP「他か? ………………掃除は最近業者さんに頼んでるけど、前はちひろさんとかアイドルにやってもらってたよなぁ。それを考えると我がプロダクションも大きくなったもんだ」

凛「そうじゃなくて、もっと頻繁にやってることがあるでしょ」

モバP「おいおい、凛。いくら社長がほとんどいない実質二人だけの職場だからって、すぐにそういう関係に結びつけるのはどうかと思うぞ」

凛「ち、違うから」

モバP「まぁ、凛も花のJKだからな。恋愛事に興味津々なのはちかたないか」ナデナデ

凛「もうっ! 撫でないで、怒るよ」

モバP「はいはい」ポフポフ

凛「あっ」

モバP「ん〜?」

凛「い、今のはなし。ノーカン…………」

モバP「凛は可愛いなぁ」ナデナデ

凛「撫でないで!! 本当に怒るよ!!」



凛「で、話を戻すけど」

凛「ちひろさんがやってることに対して、プロデューサーは少しも怪しく思ったことはないの?」

モバP「ないぞ。ちひろさんは本当によくやってくれてるよ」

凛「ふーん。ところでプロデューサー。これ、なに?」

モバP「なにって………………………。凛も俺がよく飲んでるのを見てるだろ」

モバP「スタド……………………あっ」

凛「………………………」

モバP(OK。そういうことね。把握した)



凛「私は初期の頃からこの事務所にいるし、それまでは芸能界に縁もゆかりもなかったから気づかなかったんだけど」

モバP(いや、これマジどうするよ)

凛「プロデューサーも言ってたみたいに事務所も大きくなってきて、他の事務所から来た子とかが話してるのを聞くとやっぱりおかしいんだよね」

モバP(実体を伝えてもいいんだけどなー。あの人から口止めされてるし)

凛「他の事務所じゃ事務員さんとプロデューサーはあんな取り引きしないんだって」

モバP(口八丁で誤魔化すか。でも、凛はそこらへん鋭いから下手をうつと悪化するしなぁ)

凛「私もちひろさんにはデビュー前から色々と相談に乗ってもらったりしてたから、悪口とか言いたくないんだけどさ」

モバP(ナデナデはさっき使っちまったし。思い切って抱きしめてみるか)


凛「でも、プロデューサーに嫌われてもいいからはっきりさせておきたいんだ」

モバP(………………ダメだ。力一杯ホールドしてないとグーパンが跳んでくる。これが未央なら笑って冗談で済ませてくれるんだけどなぁ)

凛「………………プロデューサー?」

モバP(卯月だと………………うん、普通に照れて終了か。男としては一番嬉しい反応だが)

凛「プロデューサー、聞いてる?」

モバP(ニュージェネレーションもお茶の間で話題になるくらいの知名度が出てきたんだから、そろそろ新たなアクセントが必要だな。具体的には………………)

凛「………………………」

モバP(思いつかんな。我ながらニュージェネレーションの完成度は見事としか表しようがない)

凛「………………プロデューサー、大好き」ボソッ

モバP「ん、俺も大好きだぞ、凛」

凛「き、聞こえてたら返事してよ!!」



モバP「なんかのど乾いてきたな」

凛「そうだね。プロデューサーがふざけてるから、私は特に乾いたよ」

モバP「じゃあ、凛が淹れてくれ」

凛「む、別にいいけど………………。普通ならここはお詫びも兼ねてプロデューサーがお茶を淹れるところじゃない?」

モバP「いいのか? 俺の家事スキルを舐めてるとひどい目に遭うぞ」

凛「ふーん」

凛(プロデューサーの淹れてくれたお茶ならまずくても飲めるし)

モバP「本当にいいのか? あまりのひどさに雪乃が泣き出すレベルだぞ」

凛「………ごめん。やっぱり私が淹れるね」

モバP「さすがの俺も泣かれたときは凹んだなぁ」



モバP「凛がお茶を淹れてくれてる間に俺は報告書とかまとめとくか。どうせ今日の仕事はここまでだ」

凛「このあと仕事がある子いたっけ?」

モバP「凛が俺に嫌われてまで話したいことがあるんだろ。仕事の片手間で聞くつもりはないさ」

凛「あ、……………………うん」

モバP(話の内容は検討がついてるから茶飲みながらだけどな。まぁ、そのくらいの方が凛も話しやすいだろ)

モバP「そうだ。蘭子の親御さんから頂いたお菓子があるから茶請けに持ってきてくれ。俺がいつもお菓子を置いている棚に入ってるから」

凛「分かった」スタスタ

モバP「まずは………………和久井さんからの報告書だな」




☆10分後


モバP「やっぱり長者饅頭は旨いな。お茶にぴったりだ」モグモグ

凛「こら。一気に何個も頬張らないの。食べかすが落ちちゃってるよ」

モバP「なんか凛はお母さんみたいだなぁ」

凛「………………」カチン

凛「………私は、プロデューサーの、お母さんじゃ、ないよ」

モバP「わ、分かったからそんなに怒るなって」

モバP「なら、奥さんみたいだな………って、これじゃあんまり変わらんか」

凛「………………そうだね」

モバP(照れて俯くしぶりん、まっこと愛しいですね)





モバP「えーっと、なんの話をしてたんだっけ」

凛「ちひろさんのことだよ」

モバP「そうそう。ちひろさんのことか」

モバP「凛はさ、プロデューサーという仕事についてどう思う?」

凛「は? 私が聞きたいのはちひろさんのことなんだけど」

モバP「まぁ、本題にはいる前の枕みたいなものだから」

凛「うーん………プロデューサーの仕事について、か」

モバP「答えにくいならプロデューサーになるのはどういう人かでもいいぞ」

凛「それは………………テレビ番組とか芸能人が好きな人じゃないの?」

モバP「だな。凛たちみたいに表舞台に立って華々しく活躍する芸能人もいれば、俺やディレクターみたいに裏方に徹して舞台を整える人もいる」

モバP「勿論、ADやスポンサーだって裏方の一員だし、アイドルに関係あるところで言えば、作曲家さんや作詞家さんも重要な役割を担っている」





モバP「和久井さんみたいにアイドルとプロデューサーの二足の草鞋をこなしている人もいる」

凛「和久井さんはすごいよね」

モバP「プロデュース業に関しては俺が叩き込んだからな。超スパルタで」

凛「プロデューサーってレッスンのときとかびっくりするくらい豹変するもんね。あれを四六時中されたなら………………」

凛(私だったら目覚めちゃうかも)

凛「だから、最初の頃は和久井さんやつれてたんだね。雰囲気だけで身体に影響を出してなかったのはアイドルの鏡だったけど」

モバP「今では報告書に五枚に一枚の割合で婚姻届を混ぜてきてるけどな。最初の頃の叱られて涙目になってた和久井さんが懐かしいよ」

モバP「俺の見立てでは凛もプロデュース業に向いてると思うんだが、どうだ?」

凛「や、やめとく」





モバP「また話が脱線したな」

凛「うん」

モバP「えーっと、なんの話だったか。そうだそうだ。最初からプロデューサーやマネージャーを目指して業界入りする人間も珍しくはない」

モバP「だけど、大体の人は凛たちみたいに晴れやかな場所を目指して芸能界に飛び込んでくるわけだ」

凛「プロデューサー。さっきから華々しいとか晴れやかとか大げさな表現使いすぎ。私たちはまだまだ道半ばだよ」

モバP「あはは。さすがの向上心だな」

モバP「でも、凛の今立っている場所が誰かが切望した場所だということを忘れないで欲しい」

凛「………………分かってるよ」

モバP「そういう道半ばで夢敗れた人間もさ、確かにいるんだよ。………………俺とかちひろさんみたいに」

凛「えっ?」





凛「プロデューサーとちひろさんって元芸能人なの?」

モバP「実はそうなんだ。俺は訓練生としてレッスンを受けてただけだけど、ちひろさんは子役としてドラマなんかにも出てたんだぞ」

凛「知らなかった………………」

モバP「まぁ、十年以上も昔の話だから。その頃凛は小学校にも入ってないんだよなぁ。俺も年を取ったもんだ」

凛「なんか、意外………」

モバP「意図的に隠してたわけだからな。凛が驚くのも無理はない」

凛「じゃあ、プロデューサーとちひろさんは子供の頃からの知り合いだったんだ」

モバP「幼なじみってやつか。言われてみればそうなんだよなぁ」

凛(なんだろう、胸の中がモヤモヤする……)





凛「今の話でプロデューサーとちひろさんの仲がいい理由は納得できたけど………。まだドリンクのこととか、ちひろさんがその………事務員さんだって事情をさしおいても、お金に、その………あれな態度をとってる理由とかは納得できない」

モバP「あー、それはだなぁ。話してもいいんだが、ちひろさんに口止めされてるのと凛の情操教育上よろしくないというか」

モバP(本当は俺たちが元芸能人だという過去も秘密だったんだけど)

凛「情操って、なに? え、エッチな話でもするの?」カアッ

モバP「いやいや、猥談じゃないくてだな。………………でも、凛もそろそろベテランと言わないまでも一端のアイドルだ。業界のそういう部分を知っていてもいい頃だよな」

モバP「よし! 凛、今からする話は他言無用だぞ。もし誰かに話すなら、凛の判断の下で全ての責任を持ってもいいと思えたときだけにしてくれ」

凛「う、うん」





モバP「まずは、俺とちひろさんが子供時代に所属していた事務所のことから話すかな」

モバP「とは言っても、もう十年以上も前の記憶だから曖昧な箇所がある。もしかしたら実際に起きた出来事の細部を俺が都合のいいように彩色しているかもしれないから、矛盾や整合性がとれてない所があったらすぐに言ってくれ」

モバP「俺たちが所属していたのは、その当時では業界の中でも五指に上げられるような大手と表現しても構わない事務所だったよ」

モバP「………………見かけはな」

モバP「実体はそらもうひどいモンだった。社長のどら息子が幅をきかせてたり、プロデューサーやマネージャー、果ては事務員にもコネ入社で働いてる無能がいてな。なんで存続できてるのかが分からない有様だったよ」

モバP「俺も子供ながらに周りの大人がダメだってことに気付いてた。まぁ、親に無理矢理受けさせられたオーディションに合格して、レッスンを適当に流してたガキだったからな。そんな周りの事情は全力でスルーしてた。我ながらイヤな奴だったろうな」

モバP「そんなイヤな奴とダメな奴の中にも優秀で努力家な人間は少なからずいるもんなんだ」

モバP「俺たちの事務所の場合、ちひろさんとそのプロデューサーがそうだった」





モバP「さっきも言った通り、その頃のちひろさんは子役として活躍していた。見た目もさることながら演技力にも定評があってな」

凛「あぁ、だから………」

モバP「そ。こないだのドッキリ企画で凛もその身を持って味わったろ」

凛「うん。あれは本当に騙された」

モバP「俺が死んだって報告されたとき号泣してたよなぁ。あの時の凛の泣き顔は今でも俺のパソコンのデスクトップを飾ってるよ」

凛「え!? は、早く消してよ!! というか、消せ!!」

モバP「はいはーい。前向きに検討を重ねた上で善処させていただきまーす」

凛「もうっ!!」





モバP「ドウドウ。話を戻すか。あれだな、今日はよく話が脱線するな」

モバP「で、ちひろさんのプロデューサーの話なんだが」

モバP「この人がまたすごい人でな。プロデューサーとマネージャーを兼任して、その上ちひろさん以外のアイドルや子役も担当してたんだ」

モバP「その人はすごい人でな、なんであの事務所にいるのか子ども心に不思議に思ったもんだ」

モバP「俺がレッスン場でちひろさんと話していたときに声をかけらたのがその人との出会いだった」

モバP「目が合った5秒後に開口一番で『君が欲しい。僕に君をプロデュースさせてくれないか? 』だからな」

モバP「あの時は本気で怖気が走ったよ。俺の目は変態を見る目だったと思う」

モバP「まぁ、3日もすると俺は完全にその人を信用していた。周りの大人たちと全然違うし、なによりその人のおかげで毎日のレッスンにも張りが出てきた」

モバP「今となっては割とどうでもいいことだけど、俺には才能があったらしい。歌も年の割に得意だったし、主体性がなかったおかげか汎用的に演技がこなせたんだ」





モバP「その人の気を引くためにわざとレッスンをサボったりしなければ、いい子役タレントだったんだろうな」

凛「なんかそれだけ聞いてると…………………」

モバP「だな。俺も思った」

モバP・凛「「杏みたい」」

凛「プロデューサーが杏に対しては他のアイドル以上に干渉するのって、プロデューサーが杏に似てるからなのかもね」

モバP「そうかもな」





モバP「さて、俺の昔話も中盤にさしかかったわけだが」

モバP「ここからは少しショッキングな内容になってくるから心して聞いて欲しい」

モバP「俺も真面目にレッスンに取り組んで、ちひろさんはゴールデンタイムのドラマで役をもらえるようになったときにな」

モバP「死んだんだ、その人が」

モバP「過労死だったらしい。急逝だったから死に目にも会えなかった」

モバP「医者の話では元々体の丈夫な人じゃなかったんたとさ。それを差し置いても、過労死なんて久し振りに見たらしいけどな」

モバP「俺は泣いたよ。自分が我が侭を言って困らせなければ、レッスンをサボったりしなければ、その人は生きてたんじゃないかって」

モバP「ちひろさんは泣いてる俺をずっと抱きしめてくれてた。今考えれば、ちひろさんも子どものに泣きたいのを我慢して俺を励ましてくれてたんだろうな」

モバP「でも、本当の地獄はここからだった」





モバP「凛は働き蟻の理論って知ってるか? あ、いや、別に知らなくてもこの後の話には支障はない」

モバP「大雑把に説明すると、蟻はすごくよく働く蟻と、普通に働く蟻、休んで力を温存する蟻とに分かれているって話なんだが」

モバP「人間の場合はこんなにうまくいかない」

モバP「いざ『よく働く蟻』がいなくなると、もうてんやわんやだったよ。それも当然だよな、あいつらは力を温存してたんじゃなくてただサボっていただけなんだから」

モバP「本当に………………あいつらは………………っ!!」





凛「プロデューサー………」

モバP「あぁ、スマン。そんなに怖い顔してたか? 落ち着くからそんなに辛そうな顔するな。こんな話をしておいてなんだが、凛が辛そうなのが俺は一番悲しいから」

凛「………………プロデューサーが辛いならもう話さなくてもいいよ」

モバP「………………いや、凛さえ良ければ聞いて欲しい。凛がこれからも芸能界で活動していくなら、知っておくべき話だから」

モバP「なるべく主観を交えずに語ろうとしてたけどやっぱり難しいな。少し頭を冷やそう」

モバP「でも、こっからが一番内容的にひどいんだよなぁ」

モバP「ゴホンッ。気を取り直して」





モバP「その人が亡くなってもしばらくは正常に仕事が回せていたんだと思う。いや、もうあの頃、その人が死ぬずっと前からあの事務所は限界だったのかもしれないな」

モバP「ある日な、事務所のプロデューサー二人が廊下で話しているのを聞いたんだよ」

モバP「なんでも枕営業の話が来ているらしい、と」

モバP「俺は小学校にも入っていないガキだったけど、人一倍そういう悪意に対する勘があったのかな。枕営業の意味をネットで検索して、すぐにその指すところを知ったよ」

モバP「速攻でちひろさんに忠告しにいった」

モバP「案の定、ちひろさんにもどこぞのロリコンから枕営業の話が来ていたよ」

モバP「俺は勿論断るんだよねって言った。でも、ちひろさんは少し迷うような素振りを見せた後、首を横に振ったんだ」

モバP「あの時、ちひろさんがどういう思惑を持って枕営業を受けようとしたのかは未だに聞けてない」

モバP「あの人と一緒に過ごした事務所を守りたかったのかもしれない。もし自惚れてもいいなら、まだデビューもしていなかった俺のためだったのかもしれない。ちひろさんだけなら移籍先なんて山ほど見つかったろうに」

モバP「でも、俺はちひろさんが辛い目に遭うのなんて嫌だった」

モバP「だから、俺は事務所を潰すことにした」





モバP「………ふぅ。お茶のおかわり頼めるか」

凛「うん。もう話は終わり?」

モバP「………………よく分かったな」

凛「ふふっ。プロデューサーって話を終わるときいつもそんなため息のつき方するからね」

モバP「……………お察しの通り、あとは面白味のないホームアローンの不完全版みたいな展開が続くだけだ。勿論、大人にも協力してもらったがな」

凛「そして少年は憧れの人の背中を追って新たな冒険へ乗り出すの?」

モバP「………………………凛も言うようになったじゃないか。そうだ。泣き虫なガキは守りたい人のために新たな世界へと一歩を踏み出すんだ」

凛「そっか。かっこいいね」

モバP「そうでもないさ。ありふれた話だ」





モバP「………………いいこと思いついた。凛、今日は仕事終わったあと暇だよな?」

凛「え、う、うん。暇だけど………………」カミノケイジイジ

モバP「じゃあ、一回事務所に戻ってきてくれ。面白いものが見れるぞ」

凛「わ、分かった」

モバP「仕事頑張れよ。いってらっしゃい」

凛「プロデューサーもね。いってきます」







凛「………あれ? 結局スタドリとか金銭管理については何も聞けてないような………………そこら辺も分かるのかな?」





☆町に夜の帳が降りる頃

凛(撮影が長引いて事務所に帰ってくるのが夜になった。どうしよう、プロデューサーまだいるかな)

モバP「今日も残業ですねー。いつになったら定時で帰れるようになるんでしょうか」

ちひろ「口を動かさずに手を動かして下さい。この書類の量だと最悪てっぺんを越えますよ」

モバP「うごぉー。また家に帰ったらコンビニ弁当を掻き込んで風呂に入って寝るだけかー。………トゥライ」

ちひろ「…………コンビニ弁当」

凛(あ、プロデューサーだけじゃなくてちひろさんもいる)カチャ

モバP「あー、そこで止まってて欲しいなー」チラッ

凛(今の私に言ったんだよね)

ちひろ「どうかしたんですか?」

モバP「いえ、時計の針が止まらないもんかと」

ちひろ「止まったとしたらそれはただの故障です」

モバP「はぁ、夢も希望もねえ」





☆5分経過

モバP(そろそろかな)

モバP「……………」スタッ

ちひろ「プロデューサーさん、トイレですか? 早く戻ってきて下さいね」

モバP「………………」スタスタスタ

ちひろ「プロデューサーさん?」

モバP「………………ちひ姉っ!」ダキツキ

凛(!?)





ちひろ「今は仕事中でここは事務所ですよ。プロデューサーさん」

モバP「えー、別にいいじゃん。もうアイドルたちは全員帰ったんだからさぁ」

モバP(まぁ、ドアの向こうにはしぶりんがいるんですけどね!!)

モバP「だいたいここの所甘えられなくてストレスが溜まってたんだよね」

ちひろ「………………もう仕方ないなぁ。Pくんは相変わらず甘えんぼさんなんだから」ダキカエシ

凛(え、なにこれ。何が起きてるの?)





ちひろ「ねぇ、Pくん」

モバP「なに?」

ちひろ「急にどうしたの? 最近は二人っきりになってもほとんど敬語で話してたし、まして事務所でこんな風に甘えてきたことなんてなかったよね」

ちひろ「なにか辛いことでもあったの?」

モバP「ううん。特には。ただ久し振りにちひ姉に甘えたくなっただけ」

ちひろ「………………そっか。いつもはダメだけど今日は特別だからね。ちひろお姉さんに感謝しなさい」

モバP「はーい」

凛(………………息ができないくらい辛い。なんなのプロデューサーは自分とちひろさんがラブラブなのを見せつけたかった岳? 私は当て馬?)





ちひろ「あ、Pくん。さっきのことだけど」

ちひろ「またコンビニ弁当ばっかり食べてるんでしょ。健康に悪いからダメって言ったばっかりだよね」

モバP「あー、ごめん。忙しいとどうしても自炊できなくて………」

ちひろ「それに事務所なのに甘えてきて………。公私は混同しちゃダメでしょ。ちひろお姉さん、怒っちゃうよ?」

凛(やばい。泣きそうになってきた。プロデューサーとちひろさんが付き合ってるのは十分に理解したしかえっていいよね。じゃないと、私、イヤな子に………)

モバP「へー、ちひろさんがそれを言うんですか」

ちひろ「!?」

凛(!?)





ちひろ「ぴ、Pくん?」

凛(プロデューサー!?)

モバP「ちひろさん。残業を乗り切るためのスタドリ貰えますか?」

ちひろ「えっ、と。はい、100MCです」

モバP「どーも」チャリン

モバP「んく、ゴクゴク」

モバP「―――――――――――プハッ」

モバP「イヤーやっぱりスタドリは効きますね。体の奥から力が湧いてきますね。成分表示を読んでみるとすごそうな漢方とか入ってますし」

モバP「これがたったの100MCなんてお得ですよねー」ニヤニヤ

ちひろ「そ、それは特殊な流通ルートを使ってですね………」

モバP「流通ルートを見直しただけでこんなに安く手に入るんですかー。それはすごいですねー」ニヤニヤ

ちひろ「そ、それは………」





モバP「ちひろさん、嘘はよくないですよ」

ちひろ「うっ」

モバP「これ、大部分は経費で落としてますよねー」

モバP「あれれー↑ でも、モバプロのちひろさんは業界でも有名なしっかり者で、一部のファンの間では鬼や悪魔と並び立つ守銭奴なんだけどなー」

モバP「おかしいなー」

ちひろ「うぅ。だって、それはPくんだって、了承したことで」ボソボソ

モバP「声が小さすぎて聞こえませんよ」

凛(プ、プロデューサーがいつもよりもいじめっ子になってる)ドキッ

モバP「ほらほら。どうしたんですか、ちひろさん」





ちひろ「それは!!」

モバP「うわっ!」

ちひろ「Pくんが一人で頑張りすぎてあの人みたいに倒れちゃわないか心配だったから!」

ちひろ「他の人も雇おうって言ったのにPくんははぐらかすし!」

ちひろ「スタドリだってPくんだけ特別扱いしちゃいけないし!」

ちひろ「お金の計算だってちゃんとしないと、あの、事務所みたいに、グスッ、なっちゃうし」

ちひろ「エグッ、Pくんには、死んで、グスッ、欲しくないから」

ちひろ「うわあぁぁぁぁん! Pくんのばかぁぁぁぁ!」ポロポロ

凛(マ、マジ泣きだ………)





モバP「あちゃー、やりすぎたか。とりあえず………」

モバP「ちひ姉」ダキシメ

ちひろ「うぅっ」

モバP「ごめん。まだ忘れてるわけなかったよな。本当にごめん」

ちひろ「P、くん?」

モバP「でもさ、ちひ姉のことを誤解してる人がいたから訂正してやりたいじゃん」

ちひろ「ふぇ?」

モバP「なぁ、凛」

凛「そうだね。プロデューサー」





ちひろ「え? 凛………ちゃん? いつからここに………」

凛「部屋に入ったのは今だけどプロデューサーがちひろさん、じゃなくてちひ姉に甘えだしてたとこから覗いてたよ」

ちひろ「え? じゃあ、スタドリとかの話も聞いてたの?」

ちひろ「あ、あのね。さっきの話は全部プロデューサーさんの一人芝居というか」

モバP(ちひ姉、さすがにその言い訳は意味不明だわ)

凛「ちひろさん」

ちひろ「お、落ち着いて、凛ちゃん」

凛「本当に! ごめんなさい!」





ちひろ「え?」

凛「私、ちひろさんがプロデューサーを奴隷みたいに扱って最後はボロ雑巾なるまで酷使してから捨てるような人だと思ってたんだ」

モバP「その発想はひくわー。どん引きだわー」

凛「プロデューサーは黙ってて。というか、いい加減ちひろさんを離して上げたら? 苦しそうだよ」

モバP「はいはい」パッ

ちひろ「あっ」

モバP「ん〜?」

ちひろ「何でもない! 早くあっち行って!」シッシッ





………………事情説明………………


ちひろ「つまり………」

モバP「凛がちひろさんのことを誤解してるみたいでしたから、その誤解を解いてやろうとしたんです」

凛「本当にごめんなさい。ちひろさんはすごい人だったよ」

ちひろ「あうぅ………」

モバP「あはは。ちひ姉照れてる」

ちひろ「プロデューサーさん?」

ちひろ「私の誤解を解いて下さったのはうれしいですけど、そのためにアイドルをこんな時間まで出歩かせて更には覗きの真似事までさせたんですか?」

モバP「あっ………………………ハハッ」

ちひろ「笑っても誤魔化されませんよ。プロデューサーさんの顔なんて見たくもありません。帰って下さい」

モバP「えっ、でも今日は残業が………………」

ちひろ「凛ちゃんを一人で帰らせる気ですか?」

モバP「で、ですけど」

凛「プロデューサーは早く帰る準備して。親に連絡し忘れてたし、早急に帰宅しないとやばいかも」

モバP「はぁ? それはやばいどころじゃないだろ。もう11時だぞ」

凛「だから急かしてるの」

モバP「30秒で支度する!」





モバP「それじゃあお先に失礼します」

凛「さようなら、ちひろさん」

ちひろ「お気をつけて」

<ホラ、イソイデプロデューサー
<ハイハイ、ワカッタヨ

ちひろ「…………」

ちひろ「………………」

ちひろ「……………Pくんも昔の話ができるような子ができたんだぁ」

ちひろ「嬉しいことなんだよね。喜ばなきゃいけないよね」

ちひろ「でも」

ちひろ「やっぱり少し、寂しいなぁ」

ちひろ「………………」

ちひろ「………………よしっ!!」パンパン

ちひろ「残業がんばろう!!」





☆帰り道

モバP「おい、凛」

凛「なに?」

モバP「親御さんに連絡してないなんて嘘だろ。凛がそこら辺を怠るわけがない」

凛「うん。嘘だよ」

モバP「どうしてそんな嘘ついたんだ?」

凛「ちひろさんに告げ口しないなら教えてもいいよ」

モバP「分かった。約束する」

凛「………………泣いたせいでメイクが崩れてた」

モバP「誰の?」

凛「ちひろさんのに決まってるじゃん」





モバP「………………そんなことか?」

凛「そんなことって、たぶんちひろさんって残業用にメイク直してたよ」

モバP「マジか。全然気付かなかった」

モバP「凛もちひ姉もそんなこと気にするほど乙女には見えないけどなぁ」

凛「私はともかく今日のちひろさんを見て乙女だと思わないとか………………。ちひろさんに告げ口するよ」

モバP「あぁ、前言撤回。凛もちひ姉も超乙女だ」



凛「………………………ねぇ、プロデューサー」

モバP「ん?」

凛「私も前言撤回したいいかな」

モバP「ちひろさんには謝ったんだからもう必要ないだろ」

凛「ううん。それじゃなくて」

凛「『やめとく』ってやつ」





モバP「やめとく………………? そんなこと言ったか」

モバP「えーと少し待て。今考えるから」


凛(今日のちひろさんとプロデューサーを見て決心した)


凛(私は例えアイドルを道半ばで諦めることになってもプロデューサーと一緒に頑張る)


凛(だから、プロデューサー)





凛「――――――これからもずっと一緒にいてね」





fin

駄文失礼しました。

初ss&会話文が苦手という>>1でしたが楽しんでもらえたのなら幸いです。

あと、画像先輩ありがとうございました。

最後に拙文だったために表現しきれていなかった部分があると思うので、質問があればこたえたいと思います。
>>46

ドッキリは他の方が描かれているssでちひ姉の演技力がベテラン女優並みなのを参考にしてみました。

Pが事務所を潰すためにやったのは………まぁ、罪状がつくのは軽度傷害事件までです。
>>48

すいません。前半のセリフは普通に小説を書く要領でやってしまったために
冗長になってしまいました。

次のssでは短文を意識して書きます。
です。

具体的にはPが枕営業先のロリコンの息子をはさみで………
というところまで考えて書くのをやめました。

一歩間違うとPが基地外キャラになってしまうので。

23:17│渋谷凛 
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