2013年11月09日

モバP「親しい異性に嫌われる薬?」

※初投稿



モバP「何でそんなもの置いとくんですか……飲んじゃいましたよ」


ちひろ「すみません、親愛度上げる薬を開発してたら偶然できちゃって、放置してたんですよ」

モバP「親愛度上げる薬の開発もやめてくださいよ」

ちひろ「これが出来たら、きっと売れると思うんです!」

モバP「ちなみに、俺が飲んだ薬を他に誰か飲んだりしたんですか?」

ちひろ「友達に飲ませたら、彼氏に振られましたね」

モバP「最低だこの悪魔」

ちひろ「私は開発に成功したと思い込んでたんですよ〜。仕方ないじゃないですか!」

モバP「逆ギレしないでください」

ちひろ「という訳でさっさと私の目の前から消えてください。目障りです」キッ

モバP(さっそく薬が効いてるのか……人が変わったように親の仇を見るような目で俺を睨みつけている)



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まゆ「視界の端をうろつく蚊のように目障りですよねぇ。いつ事務所から消えてくれるんでしょうか」

凛「それ以上近づかないで。本当は視界に入れるのも嫌なんだけど」

卯月「新しいプロデューサー雇ってやめてください」

智絵里「…………」サササ←露骨に避ける

千秋「そろそろ事務所やめたらどうかしら? あなたは退職金がたくさん貰えて貴方も私達も幸せになれるいい事尽くしだと思うのだけれど」

加蓮「気持ち悪、早く消えてよ」

ちひろ「はぁ〜」←心の底から嫌そうな溜息

美優「近づかないでください」

雪美「…………こないで」

のあ「……」キッ←鋭くて冷たい視線

美嘉莉嘉「うわっ、キモッ☆★」

みく「フカーーーー」←嫌悪の眼差しと威嚇

翠「その……今日、私は一人で大丈夫です」サササ


モバP「誰かマジ助けてくれませんかねぇ」グス

菜々「プロデューサーさん、何か事務所の雰囲気悪いですけど、何かやったんですか……?」

モバP「俺は何もやってない! ……って菜々?!」

菜々「はい! 今日も元気にやっていきましょうプロデューサーさん!」

モバP「ななあああああああああああぁぁぁ!!」ガバッ

菜々「え?! プロデューサーさん、いきなり、ちょ、セクハラ! セクハラですよ!」カァァ

モバP「ななぁぁぁ、うわぁぁぁぁん」ギュ

菜々(何か良く分からないけど、プロデューサーさんとこんなに深く抱き合って、菜々は幸せです)フニャ



 ――三十分後――


菜々「それで、何があったんですか?」

モバP「実は――」


 


菜々「ちひろさんは錬金術師かなんかですか?」

モバP「いや、知らんが碌でもない研究だよ。まったく」

菜々「まぁでもウサミン星から来た菜々にその薬は効かなかったようですね!」

菜々(愛のパワーのおかげ! なんつって)

モバP「明日には薬切れるといいんだけどなぁ」

菜々「切れても切れなくても菜々がずっと傍にいますよ!」

モバP「ななあぁぁぁぁぁぁ」ダキ

菜々「もうプロデューサーさんってば……ふふ」ヨシヨシ



 ――翌日――


モバP「うぐぁッ!! 靴の中に画鋲がッ!?」ブッシャー

菜々「だ、大丈夫ですかプロデューサーさん?!」

凛、卯月、智絵里「……クスクス」


モバP「おわぁっ?! 俺の机の上がみずびたシティになってる!」

菜々「ぞ、雑巾どうぞ」ポイ

まゆ、美嘉莉嘉「……クスクス」


モバP「おおおおお?! 俺の車に明らかに人為的な傷が大量に!」

菜々(想像以上に酷い……もはや犯罪じゃないですか……)


菜々「プロデューサーさん、明日も、明後日も、ずっとずっと菜々がついてますから……お仕事、やめないでください」グス

モバP「やめるもんか。でも正直、菜々がいなかったらやめてるかもしれなかった」

菜々「プロデューサーさん……!」ギュ

モバP「こらこら、アイドルが抱きつくんじゃない」

菜々「むー。プロデューサーさんから抱きつくのはいいんですか?」

モバP「す、すまん。これでも精神的余裕があまり無くて」

菜々「あ、ごめんなさい……」

モバP「取りあえずさっさと薬が切れる事を願おう。このままじゃ確実に仕事に支障が出る」

菜々(でも、薬が切れなかったら……ずっと菜々が独り占めできるんですね……)



 ――二日目――


モバP「菜々が作ってくれた弁当がゴミ箱に捨てられてる……」

菜々「菜々は気にしてませんから! は、はい、菜々の分けてあげます」

モバP「た、助かるよ」

菜々「はい、あーん」

モバP「うぅぅぅぅ、ななぁぁぁぁ」モグモグ

菜々(皆いるのに事務所内で子供みたいに大泣きして……でも、何だか幸せ)ヨシヨシ


莉嘉「相変わらず気持ち悪いね」ヒソヒソ

加蓮「みっともない、気持ち悪い、ゴミクズ、早く消えるべき」

凛「本当、何であんなのが私達をプロデュースしてるんだろうね」

ちひろ「社長にプロデューサーをやめさせて新しいプロデューサーを雇うように説得してるんですけど、無理そうですね」

智絵里「あの人がいる場所で仕事を続けていく自信……ないです。本当は一緒の場所にいるのもいや……!」

千秋「署名活動でもすれば、流石に聞いてくれるんじゃないかしら」

まゆ「いいアイデアですね、さっそくやってみましょうか」



モバP「…………社長には、事情を伝えておこう」コソ

菜々「……そうですね」ヨシヨシ

モバP「それなりに信頼関係を築けていたのに、突然嫌われるのは、辛いな」

菜々「大丈夫! プロデューサーさんには菜々がついてますよ!」ギュ




 ――三日目――



モバP「さて、智絵里を現場に送るか――って、智絵里はどこ行った?」

菜々「智絵里ちゃんならさっき一人で行っちゃいましたよ」

モバP「少し遠いけど大丈夫かな……」

菜々「まぁ、結構早めに出たっぽいので大丈夫ですよ」

モバP「昔は皆送ってけ迎えに来いってうるさかったのになぁ」

菜々「昔じゃなくて、たったの四日前……でも、今はもう全員一人で勝手に仕事場に行ってますね」

モバP「送迎も楽じゃないけど、寂しいな……」

菜々「ほら、午後二時から菜々の仕事があるんですから! さっさと送ってください」

モバP「菜々……!」ダキ

菜々「ちょっとプロデューサーさん、すぐに抱きつきすぎですよ!」

モバP「す、すまん」

菜々「それじゃ、菜々の送り迎えお願いしますね!」

菜々(プロデューサーさんに依存されるの、悪くないなぁ)



モバP「って、俺の靴がない?!」

菜々「来客用スリッパで我慢するしかないですね……」



 ――四日目――



凛「いい加減やめてよプロデューサー。私達が嫌がってるのがわからないの?」

加蓮「正直男ってだけで不安だし、プロデューサーは男の中でも特に嫌」

モバP「ま、まぁ落ち着け皆」

まゆ「……」ドン

モバP「ま、まゆ? 何だ、この札束? 五百万以上ありそうなんだが」

まゆ「まゆ達が稼いだお金を集めました。退職金に加え、これをプロデューサーにあげます。だからやめてくれませんかぁ?」

美嘉「アタシ達もそれなりに売れてきてそこそこお金はあるしね。職場の環境を良くするためならこんぐらい出すよ」

莉嘉「このお金あげるからプロデューサーには出てって欲しいなー☆」

モバP「お、お前ら……」

みく「さっさとやめちまうにゃ」

ちひろ「プロデューサーさんがいるせいで、皆の仕事に影響が出たらどう責任取るんですか? お金もたくさん貰えるんですし、さっさとやめてください。人手が足りなくなってしまいますが、すぐに新しいプロデューサーを雇うのでご心配なく」

千秋「ここまでこの仕事に固執するという事は、もしかして、私達に何か性的な目的でも持っているからなのかしら?」

卯月「事務所の皆を見るプロデューサーの目はいつも汚らわしいですよ」

凛「仕事にも影響でそうぐらいだから、そろそろ本気で消えて。お願い」

モバP「お、お前ら……」ポロポロ


モバP(菜々が仕事でいない時にその時は訪れた)

モバP(六百万に届こうという大金が目の前に置かれ、仕事をやめろと全員に言われた。周囲から突き刺さる、嫌悪と冷たい眼差しは今でも忘れられない)

モバP(菜々という支えがありながらも、俺は折れた。勿論、金は受け取らなかった)

モバP(皆に「分かった」とだけ返し、無断で家に帰った)


 ――自宅

モバP「なんで、こんな事に……」ポロポロ

モバP(どう考えてもちひろさんが悪だが、俺はただただ傷ついた心を忘れようと必死になった)


 ピンポーン


モバP「宅配便か?」ガチャ

菜々「プロデューサーさん!」ハァハァ

モバP「な、な――うわっ」バッ

菜々「プロデューサーさん! 勝手に菜々の前からいなくならないでください!」グス

モバP「ごめん……でも、限界だった。ごめん」ポロポロ

菜々「社長が事情を知ってるので、休職扱いだそうです。アイドル達の間ではやめた事になってますけど」グス

モバP「もう、戻れないよ……俺……」

菜々「じゃぁ、菜々は誰にプロデュースされればいいんですか!?」

モバP「新しい、プロ――いっ」バチ

菜々「菜々は、プロデューサーさんじゃなきゃ、Pさんじゃなきゃ嫌です!!」

モバP「菜々……ごめん」ギュ

菜々「わ、私もがんばりますから……。Pさんが傷ついた分だけ癒して上げますから……」

菜々「菜々の前から、いなくならないでください」


モバP(その日、泣き疲れた俺と菜々は抱き合って眠った。当たり前だが、間違いは無いし、そんな雰囲気にもなっていない)

モバP(そして、本当の地獄は、これからだった)


 ――五日目――



モバP「ん? 電話……?」ルルルル

菜々「ふにゃ……プロデューサーさん、おはようございます」

モバP「おはよう菜々。仕事行くから、支度して来い」ルルルル

菜々「はい!!」

 ガチャ

モバP「もしもし?」

ちひろ「プロデューサーさんですか? そ、そのごめんなさい」

モバP「え? あれ、もしかして薬の効果が切れたんですか?!」

ちひろ「そうみたいですけど、それよりも大変なんです!!」



ちひろ「智絵里ちゃんが自殺をしようとして……病院に!」

モバP「なっ?!」




モバP(俺は急いで菜々を連れて、智絵里が搬送された病院へと向った)

智絵里「……」

モバP(虚ろな瞳をして虚空を見上げる智絵里はとても美しくて、そして、左手に残る、残酷で、痛々しい傷跡はアイドルにとって致命的だ……)

菜々「智絵里ちゃん……どうして……」

智絵里「ぷろ、でゅーさーさん……?」

モバP「智絵里? 大丈夫か? 何でこんな事を……」

智絵里「ぷろでゅーさーさん、わたしを、嫌いにならないで……見捨てないで」

モバP「嫌いになんかなるもんか! さっさと退院してアイドルに戻れ。手首に傷なんか残して……!」ポロポロ

智絵里「ごめん、なさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

モバP「智絵里! 俺は怒ってないから、やめてくれ!!」ギュ

智絵里「プロデューサー、さん……好き、好き、好きです」

モバP「智絵里……」


モバP(出血量に対し傷は浅く、精神に問題がなければ退院はできるそうだ)

モバP(ただ、手首の傷はそう簡単には消えない……)

寝ます。続きは明日。

モバP「まさか智絵里が、あんなに俺の事を慕ってくれていたなんてな……」

菜々「気付いてなかったんですか?」

モバP「いや、プロデューサーとアイドルの関係としてはちょっと仲良すぎかなって思ってたけど……まさかな」

菜々「早く退院できるといいですね」

モバP「そうだな。……それよりもちひろさんを一度叱っておかないと」

菜々「菜々も嫌な思いしたので、一緒に叱りましょう!」

モバP「それがいい。晶葉といいちひろさんといい、変な物ばかり開発して……」


モバP「皆治ってるといいんだが」

菜々「うぅー、プロデューサーさん独占も今日までですかぁー」ガックリ


 ――事務所前――


ちひろ『きゃあぁぁぁぁ!!』


モバP、菜々「?!」

モバP「今の、ちひろさんの声だよな?!」

菜々「た、多分……」

 ドンッガシャン ドタ

モバP「事務所内で何が――」ガチャ




ちひろ「ま、待ってまゆちゃん」

まゆ「待つわけないじゃないですかぁ……うふ、うふふふ」

のあ「……」

雪美「……」


モバP(包丁を突きつけられてるちひろさんと、包丁を突きつけているまゆ。そしてそれを傍観するのあさんと雪美。何だこの空間)


ちひろ「まゆちゃん? 一回落ち着いて、でも、そんな事実は無いのよ」

まゆ「うふふ。――Pさんとの絆、失っちゃいました。もう、まゆの中は空っぽです。まゆにはもう、何も残っていない。――まゆを満たしてくれるPさんはもういない……幸せで、心が満たされていた毎日は、もう戻ってこないんですよぉ? うふ、うふふふふふふふ」ブン

 ガシャン

ちひろ「ひッ?!」シャガミ

まゆ「阿部さんにだけ効果を無効にする薬をあげるなんて、酷いじゃないですかぁ」ユラ

ちひろ「だ、だから……あの薬の効果を無効にする薬なんて無「うるさい!!」」

まゆ「じゃぁ、なんですか? まゆがPさんを誰よりも愛してるのに、あの女にまゆとPさんの絆が負けたって事ですかぁ?」ジリ

ちひろ「そうじゃなくて! 単純に、菜々ちゃんは薬が効かない体質だっただけ――きゃぁぁぁあ」

まゆ「そんな運命あるわけ無いじゃないですか……変な妄言を吐くのはこの頭ですか?」ブン





モバP「やめろ! まゆ――」ガバッ、グサッ   

 
 ボタ。。。ボタボタ



ちひろ「ぷろでゅーさー、さん?」ガクガク






モバP(……闇雲にちひろさんを庇ったけど、刺されたのが腕でよかった)

モバP「うぐっ……吐き気を催す痛さ」ボタボタ

まゆ「あ、あぁ……P、さん?」アトズサリ

のあ「……よくも、Pにッ!!」

モバP(ちょ、のあさん、何まゆに蹴りを放とうと)

モバP「お、落ち着けッ!」ダッ

まゆ「きゃっ」ビク

モバP(まゆを抱えるように庇った俺に、のあさんの蹴りが、深々と――)

モバP「おっ、ぐっ……」ボタボタ




菜々「プロデューサーさん、大丈夫ですか?!」

のあ「……なんで、そんな事を」

まゆ「P、さん……Pさん」

雪美「……」

モバP「き、傷は浅いから、救急車は無し。警察を呼ぶのも無しです、いいですね? ちひろさん」

ちひろ「で、でも早く手当てしないと」

菜々「救急箱持ってきました!」

モバP「血は出てるし、凄く痛いけど、問題なく動くから、止血すれば多分大丈夫だな……多分」

雪美「……P」グイ

モバP「痛っ?! ゆ、雪美? す、すまんが用があるなら後でに」

雪美「……傷、見せて」

モバP「え? いや、子供に見せるものじゃ」

菜々「菜々も同意見ですけど、早く治療しないといけないので、傷見せてください」

モバP「仕方ない――雪美、見るにしても一瞬だけにしろよ? 後、気分悪くなったらトイレに行けよ」ウデマクリ

菜々、ちひろ(結構出血が酷い)

ちひろ「は、早く治療しないと!」

菜々「分かってます!」

モバP(見なくても酷さを感じていたけど、想像以上に酷いな……本当に止血だけで大丈夫だろうか)

雪美「……」チュ

モバP「うわぁ、染みる! じゃなくて、何舐めてんだ雪美?! 早く吐き出せっ!」



雪美「じゅる……ちゅ……ちゆ」チュチュ

モバP(血液を雪美に舐め取られてる。何が起きてるんだ)

のあ「……ちゅ」

モバP「うえっ?! なんでのあさんも?!」

のあ「罪滅ぼしよ……今はただ身を委ねて」チュュ

まゆ「ま、まゆも……! まゆも……」ポロポロ

モバP「」

菜々「いや、そんな事してる場合じゃありませんって!」



モバP(雪美が無言で血を舐め取り、のあさんが謝罪しながら血を舐め取り、まゆが愛を必死に紡ぎながら血を舐め取っていた)

モバP(何がどうなってるんでしょうか)




 ――十数分後――



まゆ「Pさん、ごめんなさい……許して、ください」グス

のあ「私も、ごめんなさい」ツー

雪美「…………Pの事、永遠に好き……嫌いになんか、なってない」ポロポロ

モバP「まぁ、悲しかったけどさ、怒ってはいないよ、俺が変な薬飲んだのが原因だし」

まゆ「その変な薬を作ったお馬鹿さんって、この事務所にいらないですよねぇ?」グス

ちひろ「だ、だから、さっきから謝ってるじゃないですか……」ビク

のあ、まゆ「……」ギロ

ちひろ「ご、ごめんなさい。ごめんなさい!」

菜々「ふふふっ、ウサミン星人である菜々に、地球の薬物なんて通用しないんです! ウサミンの大勝利!」

のあ「………………私も、ウサミン星に生まれたかったわ」ギリギリ

まゆ「………………」ギリギリギリギリギリ

菜々「あの、冗談、ですよ? ごめんなさい調子に乗りました」

雪美「……菜々だけ……ずるい」

モバP(何だか怖いよ)

ちひろ(わ、私が親愛度を上げる薬なんかを開発しようと思ったばかりに……)

モバP(開発するのは自由ですけど、皆に迷惑かけないでください)

ちひろ(それは……ごめんなさい)




モバP(その後も突然泣き出したり、謝り出したりする三人を宥めるのに、十数分もかかった)

モバP(俺は一体いつからこんなに慕われていたのだろう。職場に男が俺しかいないからこうなったのだろうか……)



モバP(さて、千秋はここで仕事をしてる筈だが……ちゃんと元に戻ってるよな?)




千秋「プロデューサー」

モバP「ちあ――黒川か」

千秋「どうして名前で呼ばないのかしら」

モバP「あ、いや、名前呼びは嫌だって――薬の効果じゃなくて、昔からそう思ってたのかなって思ってさ」

千秋「名前で呼びなさい」キッ

モバP「わ、分かったから睨むなって」アセアセ

千秋「ちひろさんから話は聞いたわ。そして、記憶は今も残ってる」

モバP「ちひろさんが大体悪いけど、嫌な思いをさせたのならごめん……」

千秋「謝るべきは貴方じゃなくて、私よ。どんな理由があっても、貴方を傷つけた自分が許せないわ」

モバP「いや、そんなに思いつめるなよ。事故みたいなもんだし」

千秋「今でも鮮明に思い出されるわ……貴方の絶望と悲しみにそまった表情、涙を流して私達を見渡す貴方の姿が」

千秋「そして、一人だけ何とも無かったあの女と、ずっと一緒にいた姿」

千秋「どうして、貴方の隣にいるのが私じゃなかったのかしら……私だって、貴方を支えられたわ」

千秋「どうしてあの女がPさんと二人だけの世界を作り出して、ずっと貴方の笑顔を独り占めして、一人だけ頼りにされて、愛されてたのかしら」

モバP「落ち着け千秋、何か日本語が変だぞ」



千秋「事務所で堂々と抱き合ってて、その光景を思い出すたびに胸が痛むわ。そして、貴方を傷つけた事を思い出して、もっと痛くなるの」

千秋「あの女と私の違いって何かしら? 性格と容姿、家柄とかかしら? それだけよね、でもおかしいわよね」

千秋「あの女との違いはあれど、私でも貴方を支えられたわ。あの女よりもずっと強く貴方を抱きしめて、貴方を一人だけ愛したわ」

モバP「もうやめろ、千秋!」ギュ

千秋「……Pさん、とっても温かいわ。とっても心が満たされる」ギュウ

千秋「あの女は、ずっとこの温かさを独り占めして、一人幸せになってたのね。……許せない」ギリ

モバP「千秋が、そんなに俺のことを思ってくれていたなんて嬉しいよ。――そして、俺はもうあの事で苦しんではいないから、だから、もう自分を責めるなよ」

千秋「私は、嫉妬しているだけよ。だから、あの女が許せなくて、羨ましくて、薬の効果を受けてしまった自分の運命が、とても憎くてしょうがないわ」

千秋「私をこんなにしたのは貴方なのだから責任取って欲しいわ」

モバP「バカ、今更だが、あくまで俺達はプロデューサーとアイド「分かってるわ」」

千秋「分かってるわよ……でも、それでも、私はPさんを愛しているの」

千秋「私をここまで導いてくれたPさんに、私をいつも気にかけてくれるPさんに、私を助けてくれたPさんに、私はどうしようもなく恋をしてしまったのよ」

千秋「不可抗力だもの、全て貴方が悪いわ」

モバP「理不尽な……」

千秋「これからもよろしくね、Pさん」チュ

モバP「……」



モバP(アイドルに好かれてても嫌われてても消されそう)





モバP「ん? あれは加蓮か? 川で何やってるんだ?」

モバP「おーい加蓮!」

モバP(まさかとは思うがちゃんと元に戻ってるよな?)




加蓮「あ、プロデューサー。その、ごめんね、色々と」バシャ

モバP「いや、気にするな。俺は気にしてないし、そもそもアレは完全に俺とちひろさんが悪い」

加蓮「画鋲入れたの私だし、色んな嫌がらせを考えたのも私」グス

モバP「だから、気にするなって……まったく、不可抗力なのに皆気にし過ぎだっての」

加蓮「それでも、本当に、ごめんなさい」スッ

モバP「まったく、加蓮はいい子だな。ちひろさんにはもっとお仕置きが必要か」ナデナデ

モバP「所で、こんな川で何やってたんだ? 春になって暖かくなってきたけど川は流石に冷たいだろ」

加蓮「私、綺麗な石を拾うのが趣味だったんだ。知らなかったでしょ?」

モバP「嘘つくなって。淀みなく言ってのけてるけど、俺には分かるぞ」

加蓮「嘘じゃないよ」

モバP「答えられないならこれ以上詮索しないけどさ」

加蓮「まだ仕事残ってるんでしょ? 早くいきなよ」シッシッ

モバP「加蓮が心配だからな、暫く残ってるよ」

加蓮「ちょっと、やめてよ! しつこい男は嫌われるよ」

モバP「一応本当に心配してるんだって、もう夕方だぞ? 人気も少ないし」

加蓮「大丈夫だって!」

モバP「いや、気になって仕事が手に付かないっつーの」

加蓮「分かった、分かったよもう! じゃあそこでくつろいでて」ビシ

モバP「くつろげって、川原じゃないか」ヨッコイショ

モバP(ただひたすら川を歩き回りながら手を突っ込んで探ってるようだけど、本当に何してるんだ?)



すみません。少し離れます。多分すぐ戻ります。

コレジャナイ感が漂って来た。



 ――1時間後――


モバP(もう夜だ。何度も手伝おうとしたが、その度に強く拒否される。一体何を探してるんだ、加蓮は?)

モバP「加蓮! もう夜だし……それに、お前手足真っ青だぞ、いつからこんなことしてたんだ? もう上がれ!」

加蓮「先帰ってていいってば! もうちょっとしたら帰るから!」

モバP「ああもう! こうなったら無理にでも手伝うぞ。何してるんだよまったく」ザバ

加蓮「見てわかんないの?! 探し物だよ!!」キッ

モバP「お、怒るなって、ごめん」ザブッ

モバP「でも、このままじゃ風引くって……頼む! 手伝わせてくれ!」

モバP(加蓮は頑固な所もあるから、無理に諦めさせるよりも、さっさと終わらせるべきだ。さっさと終わらせてやる!)

加蓮「うぅぅぅ……」グス

加蓮「うぁぁぁぁ、うぅ、ぐす……」ポロポロ

モバP「ちょ……そんなに嫌だったか?! ごめん! で、でも……」

加蓮「Pさんのバカバカ! うあぁぁぁぁん」ボロボロ

モバP「ご、ごめん加蓮。許してくれ、この通り」バッ

加蓮「……ぐす……Pさんが悪いわけじゃない!」グス

モバP「ど、どういうことだ?」


加蓮「私さ……Pさんと二人で、初めて買い物行った時、Pさんにプレゼントして貰ったネックレス、川に投げ捨てちゃった……あはは」ツー






加蓮「…………もう、やだ……もう、やだよぉ、うぁぁぁぁ」ボロボロ





モバP「か、加蓮……」

モバP「分かった。俺が探す、加蓮は上がって休んでてくれ!」

加蓮「そんなの無理に決まってるでしょ!」ザブ

加蓮「私の、一番大事な物、なんだから」ザバ、ザバ

モバP「ごめん」バシャ

加蓮「謝らないでよ! どう考えたってPさんは悪くないんだから」ザブ


加蓮「罰が当たったのかな……」ボソ

モバP「え?」

加蓮「アイドルが、一人の男の人を愛しちゃったから、罰が当たったのかなって」

モバP「アイドルとしては確かに問題かもしれないが、それでも、恋愛は自由だって俺は思うぞ」

加蓮「私はもう……輝きたくてアイドルをやっているのか、Pさんに見てもらうためにアイドルをやっているのか、分からない」

加蓮「ファンを取るか、Pさんを取るかって言われたら、迷わずPさんを選んじゃうよ……あはは、アイドル失格ー」ザバ

モバP「どんな理由でも、俺はステージで輝いてる加蓮が大好きだ。俺云々を抜きにしても、とても楽しそうにやってるって思うぞ?」

加蓮「アイドルやるのも大好きだよ……でも、やっぱり私はPさんが好き……」

加蓮「うっとおしいぐらい私の体調気にかけてさ、ちょっとでも調子悪いと無理言って休ませるし」

加蓮「私が体調崩したときなんか家族以上に私の事心配するし」

加蓮「大舞台の前で緊張してる時は、がんばれ、お前ならできるって無責任な応援してくるし」

加蓮「自分より年下の小娘の為に、色んな所で頭を必死に下げてるし」

加蓮「こんなの、好きになっちゃうに決まってるじゃん!」ボロボロ




モバP「加蓮……」

加蓮「アイドルにならなければ出会う事ができなくて、アイドルになって出会ったら恋愛は無理かぁー。中々厳しいね、この世の中」アハハ

加蓮「その上、何人もライバルがいるし」ジト

モバP「ははっ……何か、俺って自分で思ってた以上に慕われてたんだな……なんでなんだろうな」

加蓮「皆、難しい恋愛だって分かってるのに、誰も諦めない。ちょっと怖いよ、この事務所」

モバP「お前もその内の一人だろ」

加蓮「そう、だね」

モバP「今は、答えなんて出せそうにない。もしかしたらずっと……」

加蓮「Pさんは皆大好きだもんね」

モバP「ここまで来ると、俺この仕事、向いてなかったのかな」

加蓮「そんな事言わないでよ。私はPさんがいるからこそ、楽しくアイドル活動できてる。今まであった他のアイドル達の中には、苦しんでたり、楽しく無さそうな子もたくさんいた……私は、Pさんと出会えて、幸せだよ」

モバP「そう言ってもらえると嬉しいよ。ありがとな、加蓮」ナデナデ

加蓮「Pさんに撫でられるのも、凄い満たされる」

モバP「さぁ、そろそろ行こう。俺のプレゼントを大事にしてくれてるのは分かったから」

加蓮「……うん」ジャラ

加蓮「あれ? この感触」ザバ゙

加蓮「あった! Pさんがくれたネックレスあった!」バシャ

モバP「よかったな」

加蓮「えへへ、よかった……よかったよぉ」グス





モバP(その後、三十八度の熱を出し、加蓮はほんの少し入院する事になった)

モバP(まぁ、冷たい川で太股まで浸かりながら四時間も探していたらしいし、こうなる事は読めていた)


書き溜めなくなったべさ。
時間をください。

美嘉「莉嘉とプロデューサーのツーショットプリクラだね」

モバP「ぐしゃぐしゃだな、もしかして握り締めてたのか?」

莉嘉「たくさんあった写真も、プリクラも、全部捨てちゃった。携帯にも何も残ってない……」

莉嘉「Pくんとの思い出で残ったのが、それだけ……」ボロボロ

モバP「そ、そうか、何かごめんな……」

莉嘉「Pくん、莉嘉の事、嫌いになってないの……?」

モバP「嫌いになってないから安心しろ。……写真とかプリクラの事は残念だけど、思い出はまた作れるんだ」

モバP「だから元気出してくれ、俺は莉嘉の笑顔が見たい」

モバP「俺の事で莉嘉が笑顔になれないのなら、俺が辛いんだ」

モバP「だから、な?」

莉嘉「Pくん……ぐすっ、Pくん……うぁ」グスン

モバP「よしよし」ナデナデ

莉嘉「うわぁぁぁぁん」ギュウ



モバP(泣きじゃくる莉嘉を、俺と美嘉は静かに見守った)

モバP(十数分後には、さっきの様子が嘘のように元気な莉嘉が戻ってきていた)


莉嘉「Pくんのせいで、莉嘉の恋に恋する時期は終わっちゃったよ。つ・ま・り、アタシは本気だから! 責任とらなきゃダメだからね☆ よろしく!」

美嘉「アタシの事も忘れないでねプロデューサー」

モバP「お、おう」




モバP「何かみくってあんまり恋愛ってイメージがないよな」

みく「むっ、失礼にゃ! みくがその気になれば、みくの周りには瞬く間にオスが群がるにゃ」

モバP「それじゃ、ただのビッチじゃないか」

みく「でもみくは特殊な猫だから、本当に気に入ったオスとしか恋愛しないにゃ」

モバP「やけに貞操観念のしっかりした猫だな」

みく「当然にゃ、みくは好きな人に尽くすにゃ」

モバP「みくに好かれる奴は幸せなんだろうな。でもっ、まだスキャンダルはダメだからなー。悪いけど、恋愛はもう少し期間を置いてからだ」

みく「そんなの言われなくても分かってるにゃ! だからこそ、みくに仕事が来なくなったときとか、それなりの年齢になったら畳み掛けるにゃ」

モバP「え? もう好きな人いるの?」

みく「みくだって好きな人ぐらいいるにゃ! でも、スキャンダルの心配は無いから安心するにゃ」



みく(懐かしいにゃ……半年ぐらい前の会話だったかにゃ)

みく(全部、壊れちゃったにゃ……)

みく(いつから、こんなに依存しちゃったんだろ)

みく(みくの事褒めてくれて、よく構ってくれて、みくの事よく分かってくれて……)

みく(Pチャンに見守られながら行われた大舞台のライブ、今でも覚えてるにゃ)

みく(思わずPチャンに抱きついたみくを撫でながら「よくがんばったな、凄く輝いていたぞ! 少なくともライブに来ていた人は一生みくを忘れないぐらいに!」って言ってくれたにゃ……)

みく(仕事は楽しかった。他のアイドルグループと険悪な空気になったり、イケメンの俳優さんだかに強く言い寄られたりして嫌な思いをした事もあるけど、それでも楽しいと思えた……にゃ)

みく(みくのライブに必ず来てくれるファンもいて、嬉しかった……にゃ)

みく(それでも、Pチャンに褒めてもらうのと、撫でてもらうのと、笑顔で迎えてくれるのが一番好きにゃ)

みく(でも、楽しかった毎日は終わってしまったにゃ)


みく(あの出来事以降、今までの最高に輝いてた世界が、一転して色褪せた世界へと変わってしまったにゃ)



みく「例え仲直りしても……今まで通りには、ならないにゃ」

みく「Pチャンがどんなに優しくても、みくの事許してくれても……みくに向ける笑顔には一欠片の曇りが混ざるにゃ……」

みく「みくはそれを見て、きっと思い出すにゃ……」

みく「…………もう、アイドルなんかどうでも良くなっちゃったな……にゃはははははは」

 

 ピンポーン



みく「誰だろ……」ピッ

モバP『……』

みく(P、Pチャン?!)

みく「し、仕事サボったから怒ってるかにゃ……それとも、あのことかにゃ……」

みく「ど、どうしよう、居留守使おうかな……」

みく「で、でもみくはあえて出るにゃー、なるようになれにゃ!」ガチャ

モバP「よう、みく」

みく「Pチャン……久しぶりにゃ」



 ――前川家――


モバP「その、大丈夫か? 少しやつれてるが……」

みく「大丈夫そうに見えるにゃ? って言いたいけど、Pチャンこそ大丈夫だったにゃ?」

モバP「辛くなかったと言えば嘘になるけど、みくの事怒ってないし、気にしてない」

モバP「あの事を気にして休んでいるんだったら、もう気にせず、事務所に来てほしい」

モバP「そして、またみくと一緒に仕事がしたい」



みく「……」


みく「……Pチャンは、これからアイドル達と一緒に仕事する度に、思い出すにゃ」

みく「思い出して、僅かに心が曇るにゃ……みくは、それが嫌にゃ」


モバP「……そりゃあな、あんなに辛くて悲しかった経験はそう簡単に記憶からは消えない」

モバP「記憶に残っちまったもんはしょうがない。みくの言う通り、思い出したくなくても、アイドル達を見て思い出すかもしれない」

モバP「その事で、みく達を悲しませるかもしれない」

モバP「それでも、俺はみく達と思い出をこれからも作って行きたいって思ってる」


みく「……」



モバP「だから、な……また、みくのステージで輝いてる姿、見せてくれないか」

モバP「楽しそうに仕事してるみくや、猫と戯れてるみく、後、アイドル達と笑いあってるみくも、色んなみくが見たいな」

みく「……Pチャンは、ずるいにゃ。……そんな言い方されたら、断り辛いにゃ」

モバP「できれば断らないで欲しいな、自分勝手なのは分かってるけど」

みく「……でも」

モバP「ここでもしみくが断ったら、元凶であるちひろさんを八つ裂きにして俺の人生終了になっちゃうけど……それでも断るのか……?」

みく「ちょ、真顔で変な事言わないで欲しいにゃ」


みく「分かったにゃ! 分かったよ、もう!」

みく「ただ、みくとPチャンが戻る上で必要な事があるにゃ!」

モバP「ん、何だ?」

みく「こうするにゃ!」ガバッ

みく「んっ、ん……」チュ

モバP「……」チュ

みく「何か他のメスの匂いがした気がするけど、許すにゃ」

みく「でも、Pチャンはこれからはみくの匂いだけをつけるにゃ!」

モバP「何だかマニアックだな」


みく「……改めてよろしくにゃ、プロデューサー!」ギュ

モバP「あぁ、よろしく」ギュ

時間も時間だし、凛は明日かな。
読んでくれてありがとう。

モバP「後、休んでいるのは、凛か……」

モバP「いつもしっかりしてて冷静だし、本当に俺の事で塞ぎ込んでるのか怪しい所だな」

モバP「普通に風邪だったりしてな。どっちにしろ様子見に行くか」

モバP(ま、他のアイドルほど気苦労はしなくて済みそうだな)


凛「ねぇ、プロデューサー。本当は怒ってる?」

凛「……でも、私には謝ることしかできない。ごめんなさい」

凛「プロデューサーは気にしてないって言ってくれるけど、私はどうしても気にするよ……」


凛「プロデューサーを傷つけた事は、一生忘れない」

凛「代わりに私にできる事なら何でも言う事を聞くよ……でも我侭を言うならアイドルは続けたいな」

凛「だって……プロデューサーに私がステージで輝いている姿を見てもらいたいから」


凛「プロデューサーなら、そう言ってくれると思ってた。だから、プロデューサーにはずっと輝いてる私を見てもらいたいな。……そして、いつかは身も心もプロデューサーに捧げたい」

凛「アイドルだからダメってのは分かるよ? でも、私だって、他のアイドルだっていつまでも輝けるわけじゃない……ね?」

凛「勿論、行けるとこまでは行くし、全力でがんばるよ……だけど、いつか終わりが来たら――」

凛「――プロデューサーの、お嫁さんになりたいな」


凛「そんなに驚かないでよ、前から好きっては言ってたでしょ?」

凛「加蓮とか卯月とか、まゆとかと構ってるとき、いつも嫉妬してたよ……」

凛「今まで、嫉妬なんかした事なかったから、最初は凄く戸惑ってた。何でこんなに嫌な気持ちになるんだろう、って」


凛「前に彼氏と付き合ってた時は、恋ってよく分かってなかったから、何となくかっこいい人に告白されて、何となく付き合ってた。だから、他の女の子と話していても嫉妬なんか全然しなかったし、正直どうでもよかった」

凛「あ、キスも貞操も大丈夫だから安心して。特に何も無いまま別れたから。アイドルになって有名になった途端、また声かけてきて少しうざいけど」

凛「プロデューサー、手、繋いでいい? そういえば、プロデューサーと手繋いだ事なんて無かったよね。……繋ぐよ?」ギュ

凛「プロデューサーの手温かいな……。やっぱり、これが私の幸せなんだ」フフ



凛「プロデューサー……その、本当にごめんなさい……」

凛母「凛、ちゃん……ご飯持ってきたから、食べてね」

凛「っ!!」

凛「何でご飯一人分なの?! プロデューサーがいるんだからプロデューサーの分も持ってきてよ!!」

凛母「あ、ご、ごめんね? すぐ、持ってくるから……」オロオロ




凛「……全く、プロデューサー来てるのも忘れちゃって、しょうがないお母さん」

凛「そういえば、プロデューサーってオムライス好きだったよね? 今度、作るから、食べて欲しいな」

凛母「……凛ちゃん? ここに、ご飯、置いておくね……」

凛「プロデューサー。ご飯来たよ……食べさせてあげるね、はい、あーん」グッグッ

凛「ふふっ、おいしい?」




凛「私ね、最初は凄い料理下手だったけど、お母さんに教わって、凄く上手になったよ」

凛「お母さんに、ネクタイの結び方も教わったよ。だから、お嫁さんになったら毎朝結んであげるね」

凛「洗濯とか、掃除とか、プロデューサーに会う前は家事ってあんまやらなかったけど、今ではもう完璧だよ」

凛「手先が不器用でちょっと苦手だったけど、裁縫もがんばって覚えたよ。ボタンとか取れたら遠慮なく言ってね」



凛「話変わるけどさ……プロデューサーは子供何人欲しい? もしかしていらない、かな? 私は三人欲しいな……」

凛「そっか、プロデューサーは二人欲しいんだ? 女の子? 男の子?」

凛「ふふっ、やっぱりどっちも欲しいよね。私も男の子と女の子、どっちも欲しいな」

凛「プロデューサーと私の子供、楽しみだな……」


モバP(昔俺がプレゼントした犬のぬいぐるみに、虚ろな瞳で一心不乱に話しかける凛を、俺は一生忘れないだろう)

モバP(こんな事、実際に存在するにしても、どこか非現実的なものだと考えていた)

モバP(俺が凛に与えた影響は、非現実的だが、現実だった……)



凛母「プロデューサーさん、ごめんなさい。よく凛がプロデューサーさんの事を話してくれるから、気があるのかなと思ってはいたんですけど……ここまでとは思っていませんでした」

モバP「……私の方こそ、娘さんをこのような状態にしてしまい、申し訳ありません。責任はとります」

モバP「その……とても、厚かましい願いだとは承知しておりますが、少し、凛と二人の時間をくれませんか?」

凛母「大丈夫です。……凛の事、お願いします」

モバP「ありがとうございます」フカブカ

凛母「では、下で待ってますね……」トコトコ


モバP「…………凛」

凛「プロデューサーってよく女の子の匂いを体中に付けてるよね……それやめた方がいいと思うな」

凛「匂いするよ、多分他の娘も分かると思うよ」

モバP「……凛、ごめん」ギュウ

凛「……? ぷろ、でゅーさー?」



モバP「ごめん。……ごめんな、凛」ギュウ

凛「……ぷろでゅーさー」

モバP「ごめん……」

凛「ぷろでゅーさー……ぷろでゅーさー……」ツー

モバP「こんなになるまで……俺の事を好きになってくれて、ありがとう」ボロボロ

凛「プロデューサー……!」ギュ

モバP「ごめん、ごめん! 凛……」

凛「うぁぁぁ、うあぁぁぁぁん」ボロボロ

モバP「もう、大丈夫だから……だから、また、また一緒に……!」ボロボロ



モバP(数十分に及んだだろうか?)

モバP(長い間、俺と凛は深く抱き合いながらお互い涙を零し続けた)

モバP(どさくさに紛れて何回かキスされたような気がするが、よく覚えていない)

モバP(何はともあれ、凛はようやく元に戻った。娘が変になって心配し続けただろう、俺は親御さんには必死に謝り続けた)

モバP(凛のお母さんは涙を零して、凛が元に戻った事を喜んでいた。……本当に申し訳ない気持ちになった)

モバP(その後、親御さんには改めて娘を頼みますとお願いされた。……凛は顔を真っ赤にしてたが、アイドルとしてって意味だよな?)


凛「プロデューサーから貰った首輪捨てちゃったから……また、新しいの着けて欲しいな……」

モバP「首輪じゃなくてチョーカーだからな?!」

凛「ふふ、新しいチョーカー、着けて欲しいな。プロデューサー?」

凛「私、プロデューサーの事、愛してるからね?」ギュ

モバP「凛の気持ちは分かったよ。……まったく、内のアイドルは揃いも揃って……困ったな……」

凛「ん? ……何か、みくの匂いがする……ちょっと、プロデューサー?」

モバP「」


モバP(色々問題は残るが、少しは落ち着いたか。智絵里とまゆが少し心配だな……)

モバP「ん? あれ……そういえば、ちひろさんがいない……」

のあ「……彼女は昨日から来てないわ」

菜々「あれ、そういえば見てませんね」

翠「体調でも崩したのでしょうか……」

卯月「プロデューサーに変な薬飲ませたから罰が当たったんですよきっと!」


モバP「――って、事務仕事が全然残ってるって事じゃないか……!」

モバP「ちょ、仕事先から電話が何件も着てる、うわあああああああ」

モバP「皆、ごめん、今日の仕事は各自で向ってくれ! 本当にごめん!」

菜々「菜々もこう見えて事務処理の経験ありますよ! 今日は仕事無いので手伝います!」

凛「むっ……プロデューサー、私にも出来る仕事ない? 手伝うよ」

のあ「……私も、手伝うわ」

モバP「え、えーっと、うん、ありがとう皆、それじゃ――」




 ――22時。


モバP「ふぅ、やっと終わった……多少だけど皆が手伝ってくれたのがありがたかったな」

モバP「ちひろさんからは音沙汰無し、と……夜だけど少し様子見に行くか」


モバP「比較的家は近いんだよな」

 バタン

モバP「そういえば、ちひろさんの家に来るのは初めてだな」ピンポーン

 シーン

 ピンポーン

モバP「もう寝たのかな」


ちひろ『……プロデューサー、さん?』


モバP「あ、ちひろさん……昨日と今日と休んでるみたいですが、どうかしたんですか? 風邪ですか?」

ちひろ『そんなんじゃ、ありませんよ』

ちひろ『その、もしよければ……少しお話しませんか?』

モバP「話、ですか? 別にいいですよ」


ちひろ『家に、上がってくれませんか?』

モバP「別にいいですけど、男を一人暮らしの家に入れるって……」

ちひろ『気にしませんから、どうぞ……』ブツッ

モバP(信頼されてるのか? ……仕方ない、上がるか)

モバP「お邪魔します」ガチャ


ちひろ「……」

モバP「こんばんわ、ちひろさん」

ちひろ「……こんばんわ、プロデューサーさん」

ちひろ「こっちで話しましょう」スタスタ

モバP(……何かやつれてるなぁ)スタスタ


ちひろ「……どうぞ、腰掛けてください」

モバP「……」ポス

ちひろ「……」ポス

モバP(やっぱり隣に座るんですね)





ちひろ「…………迷惑かけて、ごめんなさい」




モバP「……飲んだ俺も悪いですけど、ちひろさんが元凶ですからね、俺だけじゃなくアイドル達にも謝ってください」

モバP「えーっとですね、今回の出来事を通じて、どれだけ俺が想われてるのか、実感しました……智絵里や、凛なんかは影響が著しくて……」

モバP「こうなってしまったのは仕方ないです。だから、許す許さない関係無しに、ただひたすら謝るべきです」

モバP「それと、全部ちひろさんが悪いみたいな言い方して、すみません。誰のものか確認せず薬を飲んだ俺も悪いです……ごめんなさい」


ちひろ「いいえ、私が全て悪いんですプロデューサーさん……ごめんなさい。後で、ちゃんと全員に謝りに行きます」

モバP「……はい。俺も手伝いますから……皆いい子ですから、きっと大丈夫ですよ……」

ちひろ「……」

モバP「……」




ちひろ「……プロデューサーさんが飲んだ、あの薬……あれは失敗作ですけど」

ちひろ「……親愛度を上げる薬……本当は自分で使おうとしてたんです」



モバP「……え?」

ちひろ「事務所を立ち上げた時は、私とプロデューサーさんと社長さんの三人しかいませんでしたね」

モバP「そんな時期もありましたね、懐かしいなぁ」

ちひろ「その頃から、もうプロデューサーさんの事が好きだったって言ったら、驚きますか?」

モバP「うぇ? ええええぇ?!」


ちひろ「まだアイドルの数が少なかった時は、私達よく喋ってましたよね。同じ歳というのもあって」

ちひろ「最初の頃は、好きな人とずっと一緒に入れる、なんていい職場なんだろって思ってた時もありました」

ちひろ「でも、アイドルが徐々に増えて、売れ始めて……プロデューサーも事務所にいる事が少なくなり始めて」

ちひろ「私だけが、プロデューサーさんの魅力を知っていて、私が一番プロデューサーさんの事を好きだったのに……皆も、プロデューサーさんに惹かれ始めて……」

ちひろ「その内不安になった私は、晶葉ちゃんの手を借りて、薬を作り始めました」

ちひろ「どう考えても外道ですし、汚くて狡猾なのも分かっていますが、それでも、薬を作って、一人でプロデューサーさんの寵愛を受けたかったんです」

ちひろ「流石に、永遠に効き続ける薬は作れませんが、それでも数日間はプロデューサーを独り占めできる。プロデューサーさんと、何をしようかなって、ずっと想像しながら、薬を作ってました……」

ちひろ「どこかで作用がマイナスに変わってしまって、嫌われる薬ができちゃいましたが」

モバP「ちひろさん……」

ちひろ「……」ヨリカカリ

モバP「すみません……全然気付きませんでした」ナデ


ちひろ「アイドル達ほど積極的ではありませんでしたから……でも、ずっと好きでした」

ちひろ「アイドル達よりも、立場も時間も圧倒的有利なのに、プロデューサーさんが盗られてしまうって、毎日が不安でした」

ちひろ「だから、薬を作りました……」

ちひろ「だけど、そのせいで大好きなプロデューサーさんに迷惑をかけて……」

ちひろ「プロデューサーさんを傷つけてっ! 皆も、傷つけて……」

ちひろ「……」

ちひろ「……ごめんなさい」ギュ




モバP「……厳しい事を言いますが、ちひろさんは俺にも、皆にも酷い事をしました」

モバP「何か自意識過剰みたいで言いたくないですけど、俺の事で心に傷を負った子もいます」

モバP「まゆは本気でちひろさんを殺そうとしてました……」

モバP「智絵里なんか……手首を切りました……」

モバP「殆どのアイドルが、悲しみにくれて、泣きました」

モバP「だから、さっきも言いましたが……ちひろさんは……許されなくても、謝ってください」


ちひろ「……はい」



ちひろ「…………はい」ボロボロ



ちひろ「許されなくても、何度でも謝ります……」グス


モバP「よしよし」ナデナデ


ちひろ「……ありがとう、ございました……プロデューサーさん」


モバP「まったく、事務員が二日間もいなくて大変でしたよ」

ちひろ「ご、ごめんなさい」

モバP「辛いかもしれませんが、俺もついてますから……これからも、よろしくお願いしますよ、ちひろさん」


ちひろ「プロデューサーさん……」ボロボロ




モバP(泣きじゃくるちひろさんを宥めていたら、やがてちひろさんは寝てしまった)

モバP(ベットに寝かせて、俺は帰路についた)


モバP(ちひろさんが謝っても、俺がフォローしても、今まで通りの日常には決して戻らないな……)

モバP(アイドル達の想いに対する答えも、未だに見つかってない)

モバP(このままじゃ、いつか修羅場になるのではないだろうか……)

モバP(……将来に不安を感じる)




少し休憩します。
人によっては望まない展開だったかも。

菜々「プロデューサーさん! 今日も菜々が弁当を作ってきましたよ!」

智絵里「っ!! ……プロデューサーさん、私も弁当作ってきたので、食べてください!」

凛「プロデューサーは私の弁当食べるんだよ。ね? プロデューサー」

モバP「ぜ、全部上手そうだから、是非全部食べたいな……ははっ……」

雪美「……私も……Pに、弁当……作ってあげたい」

加蓮「流石にあれ以上食べたら死んじゃうよ」アハハ

響子「うー。私もプロデューサーさんに弁当作ってきたのに」

まゆ「まゆはPさんの夕飯を作りますから、悔しくも何とも無いですよぉ」

美優(悔しいんだ……でも、私もプロデューサーさんに料理、食べてもらいたいな)


モバP(あの出来事から一ヶ月が経った。最初こそギクシャクしていたが、今ではもう、前と同じ賑やかな日常が戻ってきてる)

モバP(皆が隠すことなく好意を伝えてきて時に大変だが、素直に嬉しいって気持ちもある)

モバP(これからどうなっていくのかは分からないが、何があっても受け入れようと思う)


李衣菜「ねぇ、プロデューサー、買い物に付き合ってよ!」

翠「あの、私も、下着を選んで欲しいんですけど」

幸子「そんな事よりプロデューサーさん、カワイイボクが暇を持て余してるんですが!」

みく「幸子みたいなちんちくりんを構っても何もいい事無いにゃ! Pチャンはみくを構うべきにゃ!」

卯月「プロデューサーさん! 宿題で難しい所があるので教えてください」

莉嘉「Pくん、遊ぼー☆」

美嘉「莉嘉ばっかり甘やかさないでよ、プロデューサー」

凛「プロデューサー? そういえばまだ首輪買ってもらってない……」

加蓮「え? 首輪ってどういう事?!」

モバP「チョーカーだろ! 紛らわしい言い方するんじゃない」


モバP「ふぅー、やっと解放されたー」

ちひろ「プロデューサーさん……」クイクイ

モバP「? なんですかちひろさん?」

ちひろ「ふふっ、ちゅ……」チュ

モバP「んっ?! ぷはっ……いきなり、キスしないでくださいよ」

ちひろ「私も諦めてませんからね? プロデューサーさん」

モバP「は、はははっ」

ちひろ「それとも、また薬、飲みますか?」

モバP「それはちょっと……」

ちひろ「ふふふっ、冗談ですよ」

モバP「まったく、洒落になりませんって……」












菜々「――また、飲んでもいいんですよ?」





菜々「プロデューサーさんには、菜々がついてますから」





菜々「薬なんかで変わってしまう人達なんかよりも、菜々の方がずっと、ずーっといいですよね?」





菜々「ね? プロデューサーさん……?」







     END


初めてで不安でしたが無事完結しました。
読んでくれ方、レスしてくださった方、画像貼ってくれた方、ありがとうございました。
参加型にはしません。
ただ、書きたい方がいれば同じ題材で書いてもらっても構いません。

個人的に西園寺さんと藍子さんと美波さんのが見たいです。
>>590

それについては、本編で言われてる通り体質的に効かなかった訳ですが、
人によっては何故二人だけ効かなかったのかと考えさせてしまったようで、申し訳ありません。
無事完結したのに、余計な事するなと言われそうですが、
まとめに載った記念に、書きたかったけど書けなかったIFルートを書きますね。HTML化される前に。

バットエンドなので、苦手な人は見ないでください。

私用により投下は八時辺りになります。すみません。

多分大丈夫だと思いますが、帰ってくる頃にHTML化してた場合、新しくスレ立てます。
それとも、新しいスレ立ててやった方がいいかな。

モバP「親しい異性に嫌われる薬?! 何でそんなもの置いとくんですか……飲んじゃいましたよ」

ちひろ「すみません、親愛度上げる薬を開発してたら偶然できちゃって、放置してたんですよ」

モバP「親愛度上げる薬の開発もやめてくださいよ」

ちひろ「これが出来たら、きっと売れると思うんです!」

モバP「誰か飲んだんですか?」

ちひろ「友達に飲ませたら、彼氏に振られましたね」

モバP「最低だこの悪魔」

ちひろ「私は開発に成功したと思い込んでたんですよ〜。仕方ないじゃないですか!」

モバP「逆ギレしないでください」

ちひろ「という訳でさっさと私の目の前から消えてください。目障りです」キッ

モバP(さっそく薬が効いてるのか……人が変わったように親の仇を見るような目で俺を睨みつけている)


まゆ「視界の端をうろつく蚊のように目障りですよねぇ。いつ事務所から消えてくれるんでしょうか」

凛「それ以上近づかないで。本当は視界に入れるのも嫌なんだけど」

卯月「新しいプロデューサー雇ってやめてください」

智絵里「…………」サササ←露骨に避ける

千秋「そろそろ事務所やめたらどうかしら? 退職金もたくさん貰えて貴方も私達も幸せになれるいい事尽くしだと思うのだけれど」

加蓮「気持ち悪」

ちひろ「はぁ〜」←心の底から嫌そうな溜息

美優「近づかないでください」

雪美「…………こないで」

のあ「……」キッ←鋭く冷たい視線

美嘉莉嘉「うわっ、キモッ☆★」

みく「フカーーーー」←嫌悪の眼差しと威嚇

翠「その……今日、私は一人で大丈夫です」サササ

菜々「こんなに嫌われてるのに消えないなんて……もしかしてマゾなんですか?」

桃華「……本気で消したいですわ」


モバP(薬を飲んだその日から、アイドル達とちひろさんによる陰湿な嫌がらせが始まった)

モバP(靴に画鋲が入っていたり、机の上が水浸しになっていたり、車を傷つけられたり)

モバP(俺を無視するのは当たり前、買ってきた弁当もいつの間にか捨てられた。靴もなくなった)

モバP(俺は、怒れなかった。薬の効果でそうなってしまったのだ。そして、それを知らずとはいえ勝手に飲んだ俺が悪い)

モバP(……それでも、今までそれなりに仲が良かったアイドル達に、嫌がらせされたり、消えて欲しいと言われるのは辛かった)

モバP(きっといつか薬の効果は切れる。俺はそう信じて、いつかアイドル達が元に戻ると信じて、仕事を続けた)


凛「いい加減やめてよプロデューサー。私達が嫌がってるのがわからないの?」

加蓮「正直男ってだけで不安だし、プロデューサーは男の中でも特に嫌」

モバP「ま、まぁ落ち着け皆」

まゆ「……」ドン

モバP「ま、まゆ? 何だ、この札束? 五百万以上ありそうなんだが」

まゆ「まゆ達が稼いだお金を集めました。退職金に加え、これをプロデューサーにあげます。だからやめてくれませんかぁ?」

美嘉「アタシ達もそれなりに売れてきてそこそこお金はあるしね。職場の環境を良くするためならこんぐらい出すよ」

莉嘉「このお金あげるからプロデューサーには出てって欲しいなー☆」

菜々「菜々も一杯お金出しましたよ! 是非、さっさと受け取っていなくなってください!」

モバP「お、お前ら……」

みく「さっさとやめちまうにゃ」

桃華「やめなかったら実力行使するまでですわよ? わたくしの手を煩わせる前にさっさと出て行きなさい」

ちひろ「プロデューサーさんがいるせいで、皆の仕事に影響が出たらどう責任取るんですか? お金もたくさん貰えるんですし、さっさとやめてください。人手が足りなくなってしまいますが、すぐに新しいプロデューサーを雇うのでご心配なく」

千秋「ここまでこの仕事に固執するという事は、もしかして、私達に何か性的な目的でも持っているからなのかしら?」

卯月「事務所の皆を見るプロデューサーの目はいつも汚らわしいですよ」

凛「仕事にも影響でそうなぐらいだから、そろそろ本気で消えて。お願い」

モバP「お、お前ら……」ポロポロ


モバP「……お前達の気持ちは分かった」

モバP「それでもっ……!」

モバP「……それでも俺は、この仕事を続けたい」ボロボロ

モバP「俺の事はどう思ってくれてもいいから……どうか、仕事をさせてくれ」

加蓮「泣けばいいと思ってるかな? 気持ち悪い」

のあ「……見苦しい」

千秋「本当、本当に見苦しいわね。見ていて気分が悪くなるわ」

桃華「…………………不快ですわ。殺してやりたいくらいに、不快ですわね」


 ――夜


モバP「相変わらずアイドル達には無視されるし、地味に嫌がらせも続いてるが、何とか仕事は終わったか」

モバP「アイドル達ほどじゃなかったけど、営業先の女の人にも何か嫌われてたっぽいな。理不尽に舌打ちされたし……」

モバP「はぁ……いつになったら薬の効果は切れるんだろう……もしかして、ずっと続くのか……?」

モバP「!! ……そんな事、あるもんか……あって、たまるか」ボロボロ

 ザッ

モバP(? 後ろに人の気配が)

 ザッザッザッ

モバP(な、何だ? 多いぞ?)



モバP(もしかしたらカツアゲかもしれないな……逃げるか)クル


モバP(なっ?!)

 ガッ

モバP「うぐっ……」


 ドサ





黒服「ターゲット、気絶させました」


桃華「――ゴミはちゃんと捨てなければなりませんわね」



―――――――――――――


――――――――――


―――――――





モバP「ぐっ……ここは、どこだ?」

 ザラ、ザラ

モバP「?! 土、か? 何で、土……」

モバP「穴? 俺は、穴に落ちたのか?!」

モバP(――目が覚めたら、俺は穴の中にいた……穴はそこそこ深く、土はさらさらでとてもじゃないが上る事はできそうにない)

モバP「携帯……は、無いか……そういえば、俺は確か……」

モバP(……誰かに殴られて、気絶させられた……?)

モバP「一体何が……」




桃華「――貴方が悪いんですのよ。さっさと消えてくれればわたくしがこんな事する必要もなかったのに」






モバP「桃華?! どうしてこんな所にいるんだ? ……いや、今はその事はいい。……桃華? 助けを呼んでくれないか? 携帯がなくてだな……」

桃華「助ける? 何でわざわざ捨てたのにまた拾わなければいけないんですの? おかしい事を言いますわね」クスクス

モバP「桃華……? これは、お前の仕業なのか……?」

桃華「当然、貴方を消せるのはわたくしだけですもの」

桃華「流石に他の方が優秀な警察を欺くのは難しいと思いまして、わたくしがやることにしましたの」

モバP「何を……何を言ってるんだ桃華? 一体、何をするつもりなんだ……?」

桃華「あら、大体予想はついてるのではなくて?」

モバP「……………そうか」







モバP「……………そうか………ごめんな、桃華」





桃華「何をぶつぶつと、相変わらず気持ち悪いですわね」

桃華「さぁ、始めなさい!」

黒服「はっ! ……実行しろ」



 ウィィィィィィン ガコン


 ドシャ。。。




 ドシャ。。。ドシャ。。。ドシャ。。。




モバP「……ごめん……ごめん、桃華」



 ドシャ。。。ドシャ。。。ドシャ。。。




モバP「ごめん……桃華に、こんな事させて、ごめんな」ボロボロ






   


 ドシャ。。。ドシャ。。。ドシャ



モバP「皆……ごめん……ごめんな、皆……………」ボロボロ



 


 ドシャ。。。パラパラ。。。




モバP「ごめん……………皆……」



 


 ドシャ。。。ドシャ。。。ドシャ。。。ドシャ。。。





モバP「……………………」






  


桃華(ざまぁないですわね。わたくしをこんなにも最悪な気分にさせたのはあなたが初めてですわ)


 

―――――――――――――


――――――――――


―――――――



黒服「埋め終わりました」

桃華「ご苦労ですわ。では、すみやかに撤退でしてよ」

桃華「ふぅ……事務所の目障りなゴミが消えて清々しましたわ。これでようやく仕事に集中できますわね」

桃華「それと、新しいプロデューサーの手配をしないといけませんわね。お願いできるかしら?」

黒服「はっ!」







桃華「……」ツー

桃華「……?」

桃華(あら、どうして涙が……)





―――――――――――――


――――――――――


―――――――



桃華「Pちゃま?!」ガバッ

桃華「…………夢?」ハァハァ

桃華「……悪い、悪い夢……でしたわね……洒落になりませんわ」ハァハァ

桃華「まったく、朝から最悪の気分ですわ」


 ――事務所――


桃華「ごきげんよう、ですわ!」ガチャ

ちひろ「……おはよう、桃華ちゃん」

桃華「あら? 皆さんはまだ来ていないんですの?」

ちひろ「……桃華ちゃんは、まだ切れてないのね……でも、このまま切れない方が……」ボソボソ

 



 ルルルルル ルルルルル ルルルルル




ちひろ「……」

桃華「電話着てますわよ?」

ちひろ「プロデューサーさん、かしら」ガチャ

ちひろ「もしもし……はい……はい……え?! ……はい……分かりました。後ほど向います」ガチャ


ちひろ「……」


桃華「顔色が優れませんわよ。何かありましたの?」

ちひろ「何でも、ないのよ……何でも、ないの……」


 


 ――二時間後



  ガチャ


まゆ「……こんにちわ」

ちひろ「……まゆ、ちゃん……」

まゆ「Pさんは、どこですかぁ?」フラ

ちひろ「そ、その、連絡が取れなくて……今日は、お休みかしら」


 ガチャ


菜々「プロデューサーさん!!」ハァハァ

ちひろ「……菜々ちゃん……プロデューサーさんは、また来てないわ……」

菜々「そ、そんな?! ……プロデューサー、さん……」

桃華「皆さん、血相を変えて一体どうなさいましたの?」

まゆ「うふふふっ……いいですね、子供は」

桃華「むっ……わたくしはもう子供じゃありませんわ!」

 


まゆ「まゆはPさんの家に行ってきます」ガチャバタン


菜々「な、菜々もプロデューサーさんの家に行きます!」ガチャ


桃華「……い、一体どうなさいまして? み、皆、今日はなんだか変ですわよ!」

ちひろ「……桃華ちゃんは、平気? 無理してない?」

桃華「平気も無理も、事情が全然飲み込めてませんわよ……何かありましたの?」

 

ちひろ「え、えっと、だからね?」

ちひろ「――――――――――――――――――――――――」

桃華「……?」

ちひろ「――――――――――――」

桃華「な、何をおっしゃってるのか、聞こえませんわよ?」

ちひろ「―――――――――――――――――――――?」

桃華「………………………………」

 

ちひろ「―――――――――」

桃華「………………………………何も、聞こえませんわ…………わたくしの耳は、どうなってしまったの…………?」

ちひろ「――――――――――――――」

桃華「…………まだ、わたくしは夢から覚めていなかったのですわね」フラ

 ドサッ

ちひろ「桃華ちゃん?!」

 

―――――――――――――


――――――――――


―――――――



凛「ねぇ、プロデューサー? プロデューサーもそう思うよね?」


凛「……?」

 

凛「プロデューサー? プロデューサー? ……どうして、どうして返事してくれないの?」


凛「……プロデューサー……」


凛「……どこ? プロデューサー、どこにいるの?」



凛「………………」



凛「……………………」








凛「……待ってて……プロデューサー」

 

―――――――――――――


――――――――――


―――――――




まゆ「待っててくださいね、Pさん……今、行きますから……Pさんはまゆがいないとダメになっちゃいますからね」ザシュ

 


まゆ「うふっ、Pさん見てますか? まゆはどんどん冷たくなっていきますよぉ……」ビシャ


まゆ「……Pさんは、どこで冷たくなってるんですか?」ボタボタ


まゆ「…………Pさん。……逢いたい……です……」ビチャビチャ


まゆ「…………ごめんなさい」フラ


 ドサッ

 
すみません。時系列ばらばらです。混乱させてごめんなさい。

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加蓮母「どうして! どうして、内の加蓮が、こんな事に……」

医者「電話でも申し上げました通り、川で溺れた様です……発見がもっと早ければ……」

警察「すみません、お母さん……加蓮さんの事でお話が……」

加蓮母「……どうして、娘が……」ボロボロ

  

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美嘉「莉嘉? ご飯食べてよ……食べないと、倒れちゃうよ」

莉嘉『……食べても吐いちゃうもん。だから意味ない』

美嘉『でも、もう碌に食べてないじゃん……少しだけでいいから……』

莉嘉『もう放っておいて!』

美嘉「そんな事、言わないでよ……莉嘉……?」


莉嘉『いいから、放っておいてよ!!』ドンッ


 

美嘉「…………」

美嘉「…………プロデューサー、どこにいるの? やっぱり死んじゃったの?」

美嘉「このままじゃアタシ………たかが恋愛で死んじゃうよ……あはっ……」ボロボロ

 

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幸子「プロデューサーさん! カワイイボクがただいま帰りましたよ!」バン



   シーン



響子「誰も、いませんね」

李衣菜「…………プロデューサー?」


幸子「もう、カワイイボクがせっかく帰ってきたというのに、どこほっつき歩いてるんですか、プロデューサーさんは!」

  

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モバP「卯月、俺と結婚してくれ!」

卯月「はい、喜んで!」




卯月「プロデューサーさん! 私のウェディングドレス姿、どうですか?」





卯月「もうプロデューサーさんたら、ネクタイ曲がってますよ!」





卯月「プロデューサーさん、私、妊娠しちゃったみたいです」





卯月「プロデューサーさん! プロデューサーさんと一緒になれて、私は幸せです!」

 

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モバP『桃華は可愛いなぁ』


モバP『桃華は絶対トップアイドルになれる! 根拠は無いが、自信はある!』


モバP『まったく、この歳にもなって膝の上に座るのが好きだなんて、桃華は甘えん坊だな』ナデナデ

 

モバP『桃華! 今日のお前は最高に輝いてたぞ!』


モバP『仕事中だってのに、しょうがない奴だな。構ってちゃんめ』ナデナデ


モバP『桃華は将来絶対美人になりそうだよな。……ははっ、お世辞じゃないって』


モバP『誕生日おめでとう!』

 


モバP『お前ら……』ボロボロ



モバP『……それでも俺は、この仕事を続けたい』ボロボロ



モバP『ごめん……………桃華……皆……』



モバP『………………』ドシャ。。。ドシャ。。。

 



桃華『事務所のゴミが消えて清々しましたわ。これでようやく仕事に集中できますわね』


 

桃華「Pちゃま!!」ガバッ

ちひろ「桃華ちゃん?」

桃華「Pちゃま……!」ダッ


 ガチャ バタン


ちひろ「桃華ちゃん……」

 

桃華(嫌、嫌、嫌、嫌ですわ! 嫌……!)ピピピピッ

黒服『どうなされました、お嬢様?』

桃華「い、今すぐ、助けて!」

黒服『お嬢様?』

桃華「早く、早くPちゃまを、助けてくださいまし!」

桃華「このままじゃ、Pちゃまが!!」

黒服『………了解』ピッ


桃華「Pちゃま……無事で、無事でいて」ボロボロ


  

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黒服「作業、終わりました」


 ドサ


モバP「」パラパラ





桃華「P……ちゃま?」



 


桃華「Pちゃま、起きてくださいまし」ユサユサ


桃華「……Pちゃま、体、冷たすぎですわ」


桃華「お口の中にも砂が入ってましてよ……」


桃華「わたくしのせいで体中砂だらけですわね……ごめんなさい……」

 

桃華「……P、ちゃま……そろそろ起きてくれないと、風邪引いてしまいますわ」ユサユサ


桃華「…………Pちゃま? わたくしを無視するのはめっ、ですわよ」


桃華「……Pちゃま、わたくしも風邪引いてしまいますわよ?」


桃華「Pちゃま? 早くわたくしと一緒にお仕事しますわよ……」







桃華「…………Pちゃま?」


 

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ちひろ「……ごめんなさい……プロデューサーさん」


ちひろ「事務所は、もう無理です。ごめんなさい……………八人も死んで、続けられるわけないですよね………」


 


ちひろ「……罪の意識はありますよ。償いをしなくちゃいけないも分かってます。……これは、現実からの逃げなのも、分かっています」


ちひろ「でも、私はプロデューサーさんに逢いたいです」


ちひろ「アイドル達に先越されちゃいましたけど……」


ちひろ「…………そろそろ、私もプロデューサーさんの所へ向いますね」


 



ちひろ「そういえば、伝える事ができませんでしたね……」




ちひろ「プロデューサーさん? 私もプロデューサーさんの事が――」



 








ちひろ「――好きです」







 END
蛇足感半端ないけど、これで私の書きたかった事は全て書き終わりました。
ここまで読んでくれてありがとうございました。

08:08│千川ちひろ 
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