2013年11月09日

律子「日記」

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【6月19日・曇り】

今日も……っていうより、日記の事を失念してて、すっかり明日になっちゃった。
いきなり始めた新しい習慣ってなかなか身に付かないわね。


まあでも、一度ミスしたからやめるっていうのも伊織に悪いし、とにかく書こうかしら。

昨日は疲れたわ……まあ、これも『竜宮の仕事が増えたから』と考えれば嬉しい悲鳴だけど。
でも、まだまだプロデューサーには追いつけないみたい。あの人いつ休んでるのかしら……

天気は曇りだった。梅雨の宿命かしらね。
あずささんだったら道端のあじさいを楽しんだりしてるんだろうなぁ。
どうせなら季節を満喫しないと損……なんてね。私も見習ってみようかしら。

それは置いといて、日記について伊織に話したら
「律子って本当に融通が利かないわね」と言われた。
図星なので結構ショック。私よりも年下なのに、そういうところは鋭いのよね……
そこまで言われたんだし、もう恥の一つも二つも変わらないと思って日記の付け方を訊いてみた。
そしたら、「自分の好きなように書きなさい」だって。それが分からないから困るんだけど。
でも、今書いてるこれが『日記』なんだろうし、少しは自信を持っていいのかも。
じゃないとちょっと情けないと言うか、何と言うか……日記一つ満足に書けない私って一体……
昨日だって忘れたまま寝るし、本当に何やってるのかしら……
ともかく、亜美の居る前で訊かなくてよかったわ。間違いなく笑われただろうし。
まあ、もしかしたらちゃんとアドバイスしてくれたかもしれないけどね。
あの子だって、人が真剣に悩んでるのを茶化すほど……いや、日記で悩むのは茶化されても仕方ないか。
難しく考えすぎなのかしらね。気軽にやれればいいけど、肩に力が入りすぎるのは悪い癖だわ。

さてと。とりあえず活動記録も書いておきましょう。
昨日は意外と緩いスケジュールだった。それでも疲れたことに変わりはないんだけど。
何が疲れたって、ファッション誌の撮影の時に亜美が遊び出したのが一番疲れたわ……
可愛い服を着れて嬉しいのは分からないでもないけど、あの子はどうしてああも元気なのかしら?
もしかして、私も昔はあんな感じ……ではなかったわね、絶対。

それはさておき、あの時あずささんが亜美を窘めてくれなかったら撮影も進まなかったわね。
おっとりしてるけど、やっぱりあずささんが最年長なのは変わりない、か……
私の方が立場的には上だけど、こういうところでは敵わないわね。もっとしっかりしないと。

というか、亜美ってあずささんの言うことは割とすんなり聞き入れるのよね。
私の言うことをあんまり聞いてくれなくなったのは、身長が伸びてきたからかしら?
……いや、これは前からそうだったわね。すると、私の叱り方が悪いのかも……ちょっと反省しないと。
それにしたって「もう子供じゃない」なんて言うぐらいなら、イタズラも落ち着いて欲しいんだけど……
それはもうちょっと先の話かしらね。子供の成長は早いんだし、大人としては気長に待ってあげる時なのかも。

成長が早いと言えば、いつの間にか10cm近く伸びてるんだから成長期って侮れない。
一番年下なのに身長はあずささんに次いで二番目に高くなった。伊織も抜かれちゃって悔しがってたわね。
私もあっという間に抜かされて、気がつけば目の高さが同じになってるし。
昔は私が高さを合わせてたのになぁ……

もしかして、あずささんぐらいまで伸びるのかしら?今の成長具合を見ていると、そうなってもおかしくないかも。
確か、あずささんは168cmだっけ……168cmってすごいモデル体型よね。ちょっと羨ましいな。
今はプロデューサーだからあんまり気にしないけど、ふとした時に「いいなぁ……」って思ったり。

そうそう。亜美で思い出したけど、真美は思春期に入ったせいかプロデューサーも手を焼いてるみたい。
この際、いっそ亜美と真美の担当を代わった方が上手くいくんじゃないかしら?
真美も女の子としての意識が強くなってきたみたいだし……と思ったけど、いざ代えたら代えたで寂しくなるかも。
こうして愚痴っちゃってるけど、そうするぐらいには亜美を見ている……ってことかしらね。
プロデューサーも真美と離れるのは寂しかったりするのかしら?まあ、真美は確実に寂しがるだろうけど。
結局のところ、お互いによく知ってる人の方がしっくりくるのかもしれない。
別に真美が嫌いってわけじゃないけど、今の私は亜美のプロデューサーだしね。
やっぱり、離れるのはちょっとだけ抵抗があるっていうのが本音かも。ちょっとだけね。

あ、そうだ。どんな風の吹き回しか知らないけど、亜美が変なことを訊いてきたのよね。
確か「律っちゃんが今ハマってる物ってある?」だったかしら?
「特にないわね」って言っちゃったけれど、本当にどういうつもりなのかしら?
「ゲームにハマってる」とか言えば、「一緒にやろうよ」って誘うつもりだったのかも。
仕事が多くなってきたのはいいけれど、あの子もまだまだ遊びたい盛りなのよね。
……もうちょっと、構ってあげた方がいいのかしら?プロデューサーならどうするんだろう?

気がついたら結構書いてるわね。伊織のお陰かしら?
自分の好きなように書くのが一番って本当ね。
それと、明日からは忘れずに書くようにしないと。
おやすみなさい……は使えないか。
今日も一日、頑張らないと。
それじゃ、行ってきます。

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【6月20日・曇り】

今日は就寝前にちゃんと書いておかないと。明日に響かない程度に、だけど。

今日も天気は曇り。ちょっとじめじめした日が続いている。
いっそ雨が降ってくれれば『竜宮小町』としては似合うかもしれない。
雨と言えば、傘を使ったパフォーマンスなんてどうかしら?
『海』をキーワードにした竜宮小町には、悪くないアイデアだと思うんだけど……なんて
つい色々考えちゃうのは職業病なのかも。あの人もこんな感じで休めてなさそう……
とりあえず、アイデアは手帳にでも書きとめておいて、そろそろ別の事を書いた方がいいわね。

竜宮小町の活動は今日も順調だった。流石は私……なんて、今のままで満足する気はないけど。
それはさておき、今日もまたインタビューと収録。以前と似たようなスケジュールだったわね。
それをそつなくこなしていけるのが大切なのは分かるけど、そろそろライブもしてみたいな。

今度、プロデューサーと社長で案を詰めてみようかしら。もしかしたら、私よりも乗り気になるかも。
ここのところ美希もやる気になってるし、伊織にとってもいい刺激になるでしょうね。
真美も、竜宮小町に選ばれなかったのを割り切って自分を見つめ直してから、随分と魅力的になった。
自分が亜美の『お姉さん』であることを強く意識したのもあるのかな。本当に大人っぽくなっている気がする。
それに触発されて亜美も頑張ってるし、『亜美らしさ』っていうのが出てきた。
竜宮の一件で二人を別々にしてしまったけれど、結果的にはよかったのかもしれない。
とはいえ、二人に苦しい思いをさせちゃったのは事実なのよね……
自己満足だけど、ここで謝らせてね。ごめんなさい。亜美、真美。

あずささんは……年長者のせいなのか、あまり誰かにライバル意識を持ったりしないのが心配なのよね。
いや、心配とは違うのかな?でも、たまにはギラギラしたあずささんを見てみたいっていう気持ちもある。
変に焚きつけない方があずささんの持ち味を生かせるかしら?それとも……うーむ……
こういう事があるからプロデュース業は楽しい。ライブはいつか絶対にやろう。

そうそう、今日は伊織が変なことを訊いてきたのよね。昨日の亜美に似た質問だったっけ。
ただ、ちょっとだけ言い回しは違っていたけど。
確か「律子、これから予定がないなら買い物に付き合ってくれない?」って感じの。
「どうしていきなり?」って訊いたら「あんたも欲しい物の一つや二つあるでしょう?」と返ってきた。
でもやっぱり忙しかったし「また今度ね」と言ったら
伊織には珍しく「仕方ないわね……」なんて溜息を吐いていたけれど
その後に、観客に向けるような小悪魔チックな笑顔が見えたのよね。本人は気づいてないみたいだったけど。
あの時は特に気にしなかったけれど、昨日の亜美の言葉とか、日記に書く日付で分かってしまった。
つまり『私の誕生日プレゼントのリサーチをしてるのでは?』ということなんだけど……
何と言うか、それを意識すると私がプレゼントを欲しがっているように思えてしまって軽く自己嫌悪。
期待していないと言えば嘘になるけど、それでも『期待してます』とも言えないわけで……

皆のことだし、プレゼントを用意してくれるのは間違いない……と思うけど
それを私が期待するのってどうなんだろう?やっぱり図々しいんじゃ……
それとも、サプライズを仄めかしておいて私が泣くかどうか試したりとか?
そんな魂胆なら「絶対に泣いてやるもんですか!」と意気込んでもいいんだけど
それだって『私に誕生日プレゼントが用意されている』という前提条件が絶対に必要だし
これで「そもそも用意なんてされてませんでしたー」ってなったら目も当てられない。
その可能性を思えば期待しない方がいいような気もするんだけれど
でも『期待してない』っていうのも、あの子達にすごく失礼なんじゃ……

ああもう!考えるのはこれで終わり!
都合のいい考えだけど、きっと、誕生日プレゼントを用意してくれている……と思う。
それに、私に誕生日を意識させたんだから、すごく自信アリなプレゼントなのかもしれない。
そんなプレゼントを貰えたら嬉しいし、もしかしたら泣いちゃうかも。
でも、本当に『プレゼントが無い方』だったらどうしよう……それはそれで泣くかも……

もしかして、私がこんなに悩むのを見越して伊織は「日記を付けたら?」って言ったのかしら?
そうだとしたら、伊織ってかなり意地悪だわ……私も私でドツボにはまってるし。情けない……
昔はもっと素直だったような気がするんだけど……こうなったのは芸能界で揉まれたせいなのかも。
今回ばかりはその成長が恨めしいわ……

まあ、今は悩んでもどうにもならないか。
図々しいかもしれないけれど、プレゼントに期待していようかな。
そっちの方が、あの子達を信じてあげられる気がするし……
いやいや、これってかなり厚かましいんじゃ……
だからと言って、最初から全く期待しないというのも……

あー!もう寝る!
明日も早いし!おやすみなさい!

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18:36│秋月律子 
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