2013年11月10日

高垣楓「瑠璃の瞳に映る空」

アイドルマスター シンデレラガールズの
高垣楓さんSSです。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1371203747

それもそのはず、これはただの服ではない。

借り物の衣装であり、大事な商品でもある。
けっして汚したり、破ったりなどできない。
その事実が、プレッシャーが、重さとなって私に襲いかかる。

だが、それを表情には出さない。出してはならない。

もとより、マネキンに表情などいらないのだ。

商品をまとい、その情報を過不足なく表現する事。
それが、モデルに求められる唯一の仕事だ。
私は―――高垣楓は、そう理解していた。

みすったああああああ
すみません、次からスタートです
―――――――

パシャッ! パシャッ!

ジャケット、27キロ。
ブラウス、10キロ。

パシャッ!パシャパシャッ!!

ショルダーバッグ、15キロ。
クロップトパンツ、18キロ。

「いいよー高垣さん!視線もっと上げて!」

ミュールサンダル、20キロ。


私が身にまとう服は、とても重い。
それもそのはず、これはただの服ではない。

借り物の衣装であり、大事な商品でもある。
けっして汚したり、破ったりなどできない。
その事実が、プレッシャーが、重さとなって私に襲いかかる。

だが、それを表情には出さない。出してはならない。

もとより、マネキンに表情などいらないのだ。

商品をまとい、その情報を過不足なく表現する事。
それが、モデルに求められる唯一の仕事だ。
私は―――高垣楓は、そう理解していた。


………

……………

…………………


楓「それじゃあ……お疲れ様でした」

「ハイお疲れー」

撮影が終わると、私はいつもすぐに支度をして帰る。
皆の視線から隠れるように。逃げるように。

「……それで、その男どうだったの?」

「全然ダメ!フレンチ食べに行ったんだけど、ワリカンとか言われてさー」

「うっわ、サイテー」

キャハハハハハ...

他のモデルの子とも、あまり話したことがない。

「あ、高垣サーン」
楓「何、でしょう?」

「あたし達これからコンパなんだけどぉ、高垣サンも来る?」

楓「……すみません、今日は都合が…」

「ほらぁ、だから言ったじゃーん」

「そうそう。忙しいみたいだし、邪魔しちゃわるくない?」

楓(お風呂場の電球が切れてたから、買って帰らなきゃいけないだけなんだけど……)

「そっかぁ。ごめんね、高垣サン」

楓「いえ……それでは、失礼します」




「……フン、お高く止まっちゃって」ボソッ





楓(っ!)




「ちょっとキレイだからって調子くれてんじゃないわよ」

「言えてる。馬鹿にしてるんだよね、基本的に……」

「専属でもない癖にさー……」




やめて。

勝手なことを言わないで。

何も知らない癖に。

―――私のことなんて、碌に見てもいない癖に。


………

……………

…………………


ガヤガヤ...


「注文いいですかー?」

「はい喜んでー!」


楓「はぁ……」

楓(結局飲み屋入っちゃった……)

楓(電器屋さんも閉まっちゃったなあ)

楓(お風呂の電球、どうしよう)



「いらっしゃいませー!」

「一人なんですけど…あ、タバコは吸わないです」

「お席の確認いたしますので少々おまちくださーい!」



楓(……明日の朝、仕事前にシャワー浴びていけばいいか)

楓(……仕事、行きたくないなあ…)


店員「失礼します!」ズイッ

楓「!
  は、はい、何ですか?」
店員「ただ今席が大変込み合っておりまして、大変申し訳ありませんが、
   席が空くまでこちらで相席していただいてもよろしいですか?」

楓「……ええ、構いませんけど」

店員「恐れ入ります!」




モバP「すみません、失礼します」



これが、私とプロデューサーの出会いでした。



P「いやあ、いつもはこんなに混んでないんですけど、
 週末だからですかね」ハハハ

楓「はぁ……」

P「あ、すみませんねお邪魔しちゃって。
 ゆっくりしていらっしゃったでしょう?」

楓「いえ……」

楓(良く喋る人……歳は……同じくらいか、少し下?)


P「この店は良く来られるんですか?」

楓「目についたお店に、フラっと入っただけなので…」

P「そうですか。この店は刺身が美味いんですよ。
 あ、すみませーん!生一つ!」

楓「………」

P「何だか自分ばっかりしゃべってますね。
 ごめんなさい、うるさかったでしょう?」

楓「そんなことは…」

P「こんな感じで喋りまくるから就職活動もうまく行かなくて。
 今の会社の社長が拾ってくれなかったらどうなっていたことやら」ハハハ
店員「お待たせしましたー!生ビールと、こちらお通しになります」

P「どうも」

店員「お席の方もう少しでご案内出来ると思うので、少々お待ち下さい」

P「はい」

店員「恐れ入ります!では、ごゆっくりどうぞ」

P「じゃあせっかくなので、乾杯と行きましょうか」グッ

楓「え、ええ」スッ



P&楓『カンパーイ』



―――――――
P「へぇー、モデルさんなんですか」

楓「はい」

P「確かにそんな感じはしますね」

楓「そんなことは…」

P「そうですか?身長もあるし、スラッとしてるし。
 5センチくらいのヒール履いたら自分より高いんじゃないですか?」

楓「そうですか?ちなみに、おいくつ?」

P「僕ですか?今年で23になります」

楓「違いますよ、身長の話です」

P「すみません、分かっててボケました」ハハハ

楓「もう……ふふっ」



楓(年下なんだ……)

P(笑った顔かわいいな」

楓「え?」
P「あっ……ああいや!すみません、つい本音が口に……」

楓「………」

P「って違うんですよ!こう、思ったことはポロッと口に出ちゃう質で……」アタフタ

楓「………ふふふっ。面白い人ですね」クスクス

P「!」

楓「でも、少し羨ましいかな」

P「えっ?」
楓「私って、昔から自分の意見や言いたいことをハッキリ言うのが苦手で。
  いつも肝心なことが言えなかったり、誤解されてしまうことが多いんです」

P「そんな風には、とても……」

楓「見えませんか?
  今の仕事も、自分で決めた訳じゃないんです。
  学生時代に友達が勝手に雑誌に応募してしまって、たまたま合格しちゃって、それで」

P「………」

楓「華やかな世界に興奮しなかったといえばウソになります。
  だけど、それ以上に我慢しなきゃいけないことばっかりで。
  撮影中は表情を崩しちゃいけなかったり、
  苦手なコンタクトもつけなきゃいけなかったり」

P「目が悪いんですか?」

楓「ああ。私、ヘテロクロミアなんです」

P「ヘテ……なんです?」
楓「オッドアイ……って言えば分かりますか?
  右目と左目で瞳の色が違うんです」

P「えっ!?本当に?」

楓「ほら、よく見ないと分かりませんけど」ホラ

P「!」

P(ち、近いっ……あ)

P「……本当だ、左目だけ青い!」

楓「ね?」

P「すごいなあ。綺麗ですね!神秘的っていうか……」

楓「!」
P「あっ……す、すみません!また無神経なことを…」

楓「いえ……ありがとうございます。
  だけど、仕事中はカラーコンタクトで隠してるんです」

P「えっ?」

楓「モデルはあくまで洋服を……
  衣装を引き立てるのが仕事ですから。
  モデル自身に強い印象や特徴は必要ないんです」

P「そう、なんですか。
 なんだか、もったいないですね」

楓「そう言ってくれるだけで、十分です。
  でも……最近それがなんだかキツくて」

P「………」



楓「やめちゃおうかなって、思ってるんです。モデルの仕事」

P「え、えぇっ!?」
楓「本格的に続けていくには私の身長では足りませんから。
  もともと長く続けられる仕事でもありませんし」

P「やめて、どうするんです?」

楓「故郷に帰ろうかなと。両親も心配してますし」

P「………」

楓「大学まで出してもらったのに、いつまでもフラフラしてるわけにはいきませんし。
  地元の農協に仕事の伝手があるらしいので、そこに……」

P「……………」
楓「……すみません。調子に乗って話し過ぎてしまいました。
  ふふっ、少し酔っちゃったみたいです。
  今日はあまり飲んでないと思ったんですけど…」

楓「不思議ですね、現場の人ともこんなにお話したことないのに。
  あなたには、何でも話せてしまいそう」

P「…………」




楓「もう少し、早くあなたと会いたかった。そうすれば……」




P「高垣さん」

楓「えっ?」




P「すこし、俺の話を聞いてくれませんか」


………

……………

…………………


――― 204号室 高垣


楓「………驚いた」

楓「いきなり『アイドルにならないか』だなんて……」


―――――――――――――――

P『実は俺、こういう者で……芸能事務所でプロデューサーやってるんです。
 って言っても駆け出しなんですけど…』

P『それで、単刀直入に言います。
  ウチで、アイドルになりませんか?』

P『俺は貴方に確かな可能性を、輝きを見ました。
  それを埋もれさせるのは余りに惜しい!』

―――――――――――――――

楓「急にそんなこと言われても……」


―――――――――――――――


P『かわいいアイドルも、歌や踊りがうまいアイドルもたくさんいます。
  だけど、高垣さんには高垣さんにしかない、
  貴方にしか持ち得ないオーラがあります!』



P『それを捨ててしまう前に、一度俺に預けてはくれませんか?』



P『俺の全身全霊を賭けて、貴方を連れて行きますから』



P『トップアイドルの―――「シンデレラ」の座へ!!』



―――――――――――――――

楓「この歳でシンデレラなんて……ねぇ?」

楓(あんまり真剣だったから、名刺まで貰ってきちゃったけど……)


―――――――――――――――


P『何かあったら、名刺の番号に連絡をください』

P『待ってますからね!!』


―――――――――――――――


楓「…………」ピラッ

楓(………不思議な人…)

楓(この私がアイドルだなんて……)

楓(だけど……)



楓「……………よしっ」

………

……………

…………………


―――――モバマス芸能事務所

ちひろ「その人、ホントに来るんですか?」

P「来ますよ。きっと」

ちひろ「本当ですか〜?」



ピンポーン!



ちひろ「あっ、はーい!」




ガチャッ



ちひろ「ええと、どのようなご用件で?」

「………こちらに、Pさんという方がいらっしゃると思うのですが」

ちひろ「えっ!?」




P「―――待ってましたよ、高垣さん」

楓「…………モデルの仕事は暇をもらってきました。
  両親にも、しばらくは帰れないと」

P「じゃ、もうやるしかないですね」

楓「はい。
  ――よろしくお願いします、プロデューサー」



――――――――
P「じゃあ早速プロフィールと宣材写真の作成を済ませましょうか」

楓「あの、履歴書なら持ってきました」スッ

P「おお、ありがとうございます。じゃあこれを元に作っていきましょうか」

P「ええと、お名前が高垣 楓さん。
 和歌山県出身のAB型。
 6月14日生まれの……えっ、に、二十五歳!?」

楓「えと、あの……はい」

P「ウソでしょう!全然見えない……」

楓「やっぱり、この歳じゃ……」




P「………アリだな!」

楓「えっ」
P「普通芸能人は豪快にサバを読むんですが、全く必要なさそうですね」

楓「あの……」

P「誤魔化さなくても特に問題なさそうです。
 むしろあどけなさと女性らしさが合わさって最強にすら見えます」

楓「ええっと……はぁ」

P「趣味が温泉巡りと……なるほど、わかりました。
 これを叩き台にプロフィールは作って行きましょう。
 さ、次は写真ですよ」

楓「えっ、も、もうですか?」

P「もちろん。2日前からフォトスタジオ押さえてあるので」

………

……………

…………………


「いいよー!そのままそのまま!!」パシャパシャ

楓「………」ジーッ

「Pちゃん、この子スゴくイイね!」

P「元モデルさんなので」

「ははぁ、なるほど。慣れてるわけだ。じゃあ次、笑った表情撮ってみようか!」

楓「えっ………」
「ニコッて!ハイチーズ!!」パシャパシャ

楓「こ、こうですか……?」ニッ……

「うーん、いきなり硬くなったなー。さっきまでは良かったのに」パシャッ

楓(どうしよう……カメラの前で笑ったことなんて…)



P「………高垣さん、何か楽しいこと考えてみよう」

楓「楽しいこと……?」

P「そう。くっだらないギャグでも、思い出し笑いでも何でもいいから」



楓(………何でも)

楓(…………)

楓(……写真を撮ったら、フォット一息つきたい……)



楓「ふふっ」クスッ

P「!!!」

「そ、そう!!それ!!その顔!!!」パシャパシャパシャパシャッ!!!
楓「えっ?」

「そのまま!そうその表情イイね!最高だね!!!」パシャパシャパシャパシャ!!!

P「これはかなりいいのが撮れたんじゃないですか?」

「カンペキだね!正直なんでこんな子が今まで埋もれてたのか分からないよ」

P「そこはそれ、僕に見る目があったということです」

楓「ええと………今のでよかったんですか?」

「おう。必要な写真は撮れたから、お疲れ様!」

P「あとはこっちで使う写真を選定していくから、
 次は事務所でレッスンとかのスケジュールを組んでいこう。
 行ったり来たりであわただしいけどね」ハハハ

楓「………わたし、本当にアイドルになるんですね」

P「ああ。そのために、やらなきゃいけないことは山積みだけど。
 一緒にがんばって行こう」

楓「………はいっ」


………

……………

…………………


P「楓さん、ライブ衣装の完成品が出来ました!」

楓「衣装……私の?」

P「もちろん。楓さんのために作られた衣装なんですから!」

バサッ

P「こんな感じなんですけどね。これにこのステッキ風マイクと……」ガチャッ

楓「………」

P「楓さん?」
楓「衣装ができると、アイドルになったんだって実感がわいてきますね。
  こんなにかわいい衣装、私に似合うでしょうか?」

P「もちろんですよ。似合うように作りましたから。
 それに、あくまで『主役』は楓さんなんですから」

楓「私?」

P「衣装が歌って踊るワケじゃないでしょう?さあ、着てみてください。
 サイズが合ってなかったら送り返さないと」

楓「…………ふふっ。そうですね」ニコッ


………

……………

…………………
P「楓さん、CDの売上絶好調ですよ!」

楓「本当ですか?」

P「もちろん!社長もちひろさんも笑いが止まらないってさっきから社長室で笑ってます」

楓「まぁ」フフッ

P「売上もそうですが、評判もかなりいいみたいです」カタカタッ



『なんだこの名曲wwwww』

『アイドルに歌わせんなwww』

『っつーかアイドルの歌唱力じゃねえwww上手すぎwww』

『おいおい女神か』

『楓ちゃんマジ25歳』



P「………最後はちょっと違うな」
楓「これ、私の歌を聞いて下さった方の声、なんですよね」

P「そうですよ。楓さんの歌が皆に届いた証拠です」

楓「……私の……」

P「さ、それじゃあ早速次の仕事の話に行きたいんですけど」

楓「………はい。次はどんなお仕事が来てるんですか?」

P「ええ、是非楓さんにって強い要望が一件来てるんですよ。
 温泉ロケなんですけど……」

楓「!!!」パァァ

P(すげえ機嫌よくなったかわいい)


………

……………

…………………

楓「…………」

P「楓さーん!あんまり遠くに行っちゃだめですよー!」

楓「プロデューサー。もう撮影ですか?」

P「ええ。天気がいいうちに野外部分だけでも録っておきたいと」

楓「わかりました。すぐ行きます」

P「何を見てたんです?」

楓「雲が……」

P「くも?」

楓「ええ。あの雲、熱燗をいれるお銚子に見えません?」ホラッ
P「はぁ……変わらないですねえ、楓さんは」

楓「そんなことありませんよ」ムゥ

P「ああいえ。いつも通りだなって安心しただけです。
 野外のPV撮影なんて初めてなのに、全然緊張してなくて」

楓「この衣装……前のと少し似てますね」

P「ええ。前回の曲の続編という設定で撮るらしいです。
 囚われの姫君が、今空へ飛び立ったと、そんなイメージで」

楓「なるほど……」

P「しかしいい天気ですねー。こんな日に仕事なんてばからしくなっちゃいますね」

楓「そうですね……」



楓(プロデューサーは、変わってないと言うけれど)

楓(私を変えてくれたのは、プロデューサーです)




楓(こんなに心が軽いのも、お仕事が楽しくて仕方ないのも)


楓(全部、プロデューサーがずっと見てくれてたからなんです)




楓「プロデューサー」

P「何ですか?楓さん」


楓(私にはもう、重たい服も、黒いコンタクトも必要ない)

楓(私の目の前には………)






楓「空って、どうして青いのですかい?………ふふっ」

楓(貴方がくれた空が、広がっているから)







おしまい
これにておしまいです。
読んでくださってありがとうございました。
筆の遅さはいかんともしがたいです。
そして案の定日付をまたぐという。
じゃ、HTML化依頼出してきます

楓さん本当におめでとう!(25時間ぶり2回目)
マジ女神!!

ではまたー。

12:34│高垣楓 
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