2014年07月29日
大石泉「背伸びっと・パフォーマー」
泉「お疲れさま、P」
泉「相変わらず仕事詰めなんだね。忙しそう」
泉「私? Pのおかげで、私も忙しいけれど」
泉「でも、楽しいから。辛くなんてないよ」
泉「……Pも、そう? だからって、夜遅くまで仕事は感心しないよ」
泉「今日だけ、って……この前もそう言ってなかった?」
泉「もう、今日はダメ。私と帰るの」
泉「外も暗いし、日付が変わったら大変だよ」
泉「……」
泉「ふふっ……送ってくれる?」
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泉「最近、亜子がね。私の笑顔が変わったねって言うの」
泉「さくらは……いつも可愛いって言ってくれる」
泉「でも、仕事は亜子の方が適任だと思うし」
泉「アイドルらしいのは、さくらだと思う」
泉「私は、何ができるんだろうって……最初は分からなかったけど」
泉「だけど今……皆と、Pと一緒の今なら、少し分かる気がするの」
泉「Pのおかげ、だよ」
泉「……ちょっといいかな、P」
泉「その、付き合って欲しいんだけど……」
泉「あ! 付き合うって別に、変な意味じゃなくって……」
泉「……ねえ。明日、私たちの予定、空いてるよね」
泉「さっきの話。Pとリフレッシュしたい気分なの」
泉「お出かけしようってことで……そういうの」
泉「ほんとは、さくらや亜子と出かけようかなって思ったんだけど……」
泉「今日のPを見たら、そうもいかないみたい?」
泉「……あれ、予定あるの?」
泉「明日はPも休みなんじゃ?」
泉「……仕事じゃないよね?」
泉「……いや、仕事だよね?」
泉「……Pは嘘をつく時、鼻の下が伸びる!」
泉「なんて、嘘だよ。ふふ……面白いくらい慌てるんだね?」
泉「じゃあ、決まり。明日、お昼前に事務所に集合だよ?」
泉「えー、じゃない。お仕事も大事だけど、アイドルのケアも大切、でしょ?」
泉「それとも……私と出かけるの、嫌?」
泉「……ふふっ」
泉「目覚ましはきちんとかける事。朝ご飯は軽く、ね?」
泉「それじゃ、送ってくれてありがとう」
泉「……明日、楽しみにしてる」
泉「ふー……デートか」
泉「デートだよね。女の子と男の人が出かけるんだから、デート」
泉「いやでも、あくまでアイドルとプロデューサーだから。まだ恋人じゃないし」
泉「デートじゃないかも。でもデートだよね、これ」
泉「……あとで考えよう」
泉「まずは、明日の用意しなくちゃね」
泉「自分が言い出した手前、変な格好できないし」
泉「そういえば、あの服どこにやったっけ」
泉「そもそも、Pとふたりきりで出かけるのいつぶりだろ……」
泉「……」
泉「もしもし、さくら?」
泉「起きてた? ごめんね、遅くに」
泉「えっと、明日Pとデー……出かけるんだけど」
泉「どんな服着ればいいか、意見が聞きたいなって」
泉「さくらだったら、どんな服着ていく?」
泉「……なるほど、ヒラヒラのミニスカートね」
泉「でも私そういうタイプじゃ……」
泉「いや『イズミンちょーかわいいでぇす』じゃなくて……」
泉「……胸元開いたやつ?」
泉「いや『イズミンちょーせくしーですよぉ』じゃなくて……」
泉「そんなに攻めるのはちょっと……」
泉「『すぴーすぴー……むにゃむにゃ……』じゃなくて……」
泉「って寝てるでしょ、さくら?」
泉「……さくらー?」
泉「……おやすみ、さくら」
泉「もしもし、亜子?」
泉「今いいかな。ちょっと相談したいことがあるんだけど」
泉「いやお金は借りないよ。手は借りたいけど」
泉「明日さ、Pとデー……かけるんだけど、服装どんなのがいいと思う?」
泉「刺激が必要? 新たなステージ? ニューウェーブ?」
泉「何か秘策があるの? ぜひ聞かせてよ」
泉「……制服、か。なるほど」
泉「悪くないけど、でもせっかくなら、おしゃれしたいな」
泉「それに、デートに制服着るのも変だし」
泉「『スク水猫耳で悩殺や!』か……なるほど」
泉「着たら1億円……じゃあ無理」
泉「『メイド服でご主人様プレイ』……?」
泉「あー……参考になったわ」
泉「ありがとう亜子。じゃあおやすみ」
泉「……え? いや参考になったよ。すごくためになった」
泉「ほんとほんと。人生の糧になったから。亜子と友達でよかった。私感動してる」
泉「……うん。うん……はいはい。それじゃ、今度こそおやすみ。亜子」
泉「私らしく、か……」
泉「そうだよね。変に取り繕わなくても、いいよね」
泉「いつも通りで大丈夫。変に意識しちゃダメ」
泉「……寝ながらイメトレしとこう」
泉(待ち合わせ……Pの服装……行き先……食事……)
泉(いつも通り……私らしく……意識しない……)
泉(あれ……着ていく服はあれでいいんだっけ……)
泉(寝る前に確認したし……大丈夫だよね……)
泉(それにデートスポットも……あ、あの店の定休日いつだっけ……)
泉(ちょっと確認しとこう……ちょっと確認するだけ……)
泉「なるほど……手は向こうから繋がせるんだ……」
泉「歩調は意識して、付かず離れず……」
泉「さりげなく、あからさまでなく……」
泉「ふむふむ……デートって奥が深いんだ」
泉「……って、もうこんな時間!?」
泉「いけない……早く寝ないと、一睡もできないって……」
泉「寝よう。寝よう……」
泉(……)
泉(でぇすが一回、でぇすが二回、でぇすが……って何数えてるの私……)
泉(…………)
泉(諭吉が一人、諭吉が二人、諭吉が……って亜子の癖が……)
泉「うう……」
泉「……」
泉(あんまり眠れなかった……)
泉(遠足前の小学生じゃあるまいし……私って)
泉(でも天気いいし……ちょっと出てみようかな)
泉(時間まで余裕あるし……眠気覚ましにちょうどいいか)
泉「それじゃ、お姉ちゃんでかけてくるからね」
泉「いってきまーす」
泉「あ、ここ……見ないうちに花畑になってたんだ」
泉「ここがいいかも。ノート開いて、と」
泉「遠出しなくても行ける所がいいね……」
泉「近場でショッピングでもいいけど、Pに楽しんでもらいたいし」
泉「今日は多分どこも混んでるから……うーん」
泉「……」
泉(それにしてもここ、いい景色)
泉(調べ物は後回しにして、ちょっと休もうかな)
泉(……)
泉(んー……)
泉(天気良かったから何となく外に出てみたけど……)
泉(気持ちいいな……気分転換できるし、なんだかリラックスできそう)
泉(……)
泉(うと……)
泉(……)
泉(すー……)
───。
泉「ですから……遅刻したのは、うっかりスリープモードに入ってしまったといいますか……」
泉「やはり環境がよすぎるのも、それはそれでよくないと……」
泉「いえこちらの話です……」
泉「というか、Pはどうしてスーツを……」
泉「……飛び入りの仕事?」
泉「あー……そう。それなら仕方ないよ」
泉「……仕事ね」
泉「……私」
泉「一応、楽しみにしてたんだよ」
泉「ふたりで出かけるのは久々だったし、Pに恩返ししたいと思ってて……」
泉「でも、Pがそうしたいなら……」
泉「……」
泉「じゃあ。私は帰るから……」
泉「……え?」
泉「私の……仕事?」
泉「どうして……」
泉「ねえ、Pは頑張りすぎだよ。たまには英気を養わないと……」
泉「……え?」
泉「わ、私が……?」
泉「私の笑顔が、Pを……元気に?」
泉「……」
泉「上手いこと言って、Pはまだ頑張ろうとしてる」
泉「でも……そう言ってくれるのは、嬉しい」
泉「私が、少しでも役に立てているのなら。とても嬉しい」
泉「ん、わかった。やろう、P」
泉「Pに喜んでもらえるような、そんなライブにするからね」
泉「……あのね。私、背伸びしてたかもしれない」
泉「いつもPのお世話になっているから……せめてPを元気付けたかったの」
泉「昨日も。さくらと亜子に相談に乗ってもらったりして、調べ物もして……」
泉「ほとんど眠れなかった。Pをどうやって元気付けるべきか、わからなかったから、不安で……」
泉「あ、遅刻の原因はその……ごめんね」
泉「……でもそもそもの原因はPで……あ、なんでもない。ふふっ」
泉「あ、それと。今日の埋め合わせは、ちゃんとしてもらうから、そのつもりでね」
泉「当然だよ、せっかくのデートだし。それはそれ、これはこれ」
泉「これが背伸びしてない、普通の私だから……ね?」
泉「さて。それでお仕事はどんなの? 早速データ見せてもらえる?」
泉「単独ライブ? なら任せて。ファンも、Pも笑顔にしてみせるからね」
泉「……え? さくらと亜子にした相談?」
泉「まあ、今日着ていく服の相談、かな……?」
泉「あんまり良いのは出なかったけど……何が出たかって?」
泉「えっと、ヒラヒラのミニスカートとか、スク水猫耳とか……」
泉「……P? なにをメモしてるの?」
泉「待って、それ今何書いたの?」
泉「ねえ、流石に着せない……よね」
泉「P、冗談だよね? そんなもの私が着ても、Pは元気になれないよ?」
泉「だ、だからダメ、そんな仕事は引き受けないから! 着ないってば!」
泉「……プライベートでPのためだけに?」
泉「そ、そそそんなの、余計にダメだから!」
泉「ああ、もうっ……!」
泉「やっぱり、しばらく仕事禁止−−−!!」
おしまい
08:30│大石泉