2014年09月30日

大石泉「はじめてのおつかい」


モバマスSSです

良かったら暇つぶしにどうぞ



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 これは、私こと大石泉がオフで一人で出かけていた時の話

 たまたま事務所の近くまで歩いてきてた私は、何度か顔を合わせたことのある仲間が前を歩いてることに気づいて話しかけたの

 

「おはよう、ありすちゃん」

「…」

 

 しかし、前を歩いていた仲間の橘ありすに私は無視されてしまったわ

 そういえばこの子はありすと呼ばれることを嫌っていたことを私は思い出して、きっと橘さんと呼べば反応があるだろうと思って改めて呼んだのよ



「橘さんおはよう…?」

「…」



 もうね、怒りとか通り越して泣きたくなったわ。見向きもしないんだもの。

だけど一度失敗したから自信をなくして声が小さかったのかもしれない…と思ったとき、目に入ったものを見て私思わず自分の馬鹿らしさに笑っちゃった。彼女ね、イヤホンしながら歩いてて聞こえてなかっただけなのよ

 だから今度は軽く肩を叩いて挨拶したら、やっと反応がもらえたの





「橘さん、おはよう」

「! …泉さん、おはようございます」

「歩きながら音楽聴くのは危ないわね」

「大丈夫です、周りに気をつけて歩いてましたから」



 我慢したつもりだったけど、笑ったのに気づかれたと思う。私の顔を見て彼女顔を少し膨れさせてたから

 

「今度のLIVEで歌う曲を聴いていたんです。…泉さんはどうしたんですか」

「今日はオフ、たまたま橘さんを見かけたから声をかけたの」

「そうですか、私は用事があるので失礼します」

「良かったらその用事、私もついていっていい?」



 珍しい? そうね、今思うと私も珍しいと思うわ

 だけど私はどうしてか、彼女について行きたくなったのよ

 彼女には渋られたけど返事はYESをもらえたから私はついていくことにした



 

「どこへ行くの?」

「材料を買いにスーパーへ行く予定です」

「材料?」

「はい、菲菲さんがお昼にチャーハンを事務所で作ってくれるそうなので、そのおつかいを頼まれています」



 ここで私は少しおかしいと思ったからそっと周りを見回してみたのだけど、誰もいなかったわ

 もしかしてなにかとても台無しにしてるんじゃないかと思ったけど、気のせいだと思うことにしてそのまま彼女についていくことにしたの



「そうなんだ、買うものは?」

「エビと卵と切らしてる紅茶とコーヒーの追加分ですね」

「それじゃあここで全部揃えてしまいましょうか」

「そうですね、早く買って帰りましょう」







「あ、そうだ橘さん。ひとつ話を聞いてくれないかしら」

「なんでしょう」

「今橘さんが言ったように、私も予定のものを見たり買い終わったらすぐに帰るんだけど…普通の女の子って予定の物を買う道中や終わった帰り道で、気になる商品を見つけたというわけでもないのに目に入ったお店に入って服や雑貨を買うことがあるらしいわよ」

「どこの情報なんですかそれは…」

「ソースはさくら」

「あぁ…でも私にはわかりませんね、そもそもこうやってものを買いにくることが全然ないので」

「そっか、橘さんくらいの年ぐらいのとき私もお母さんがいろいろ買ってくれてたから、橘さんも?」

「ち、ちがいます、アイドルをしていて買いものに行く暇ができないだけです」



 おつかいに出る余裕はあるのに、と喉まできていた言葉を私は飲み込んだ

 いつもの私より饒舌なのは私でもわかっていたわ、彼女かわいくってまるで弟の相手を…いやこの場合妹か、妹の相手をしてるみたいで楽しかった

 そのあともスーパーの中での彼女はとても面白かったわよ







「橘さん、あそこにエビが」

「任せてください! …ひっ、えっ、これ手づかみで袋に入れるんですか? えっ」

「! …そこにトングがあるからこれで入れるみたいね…!」

「…! なんで顔を背けているんですかもう大丈夫ですから大丈夫ですよ」





「卵は無事に取りましたよ!」

「おめでとう、でもこの列はなんだろう…卵のタイムセールだって」

「…並びましょう」

「えっ?」

「並びましょう! 並んで安く卵をゲットします!」





「泉さん、あそこの紅茶取ってください」

「私ついてきて正解だったね」

「いなかったら他の大人に頼むから大丈夫です」





「はぁ…タブレットでお店の中の地図を見ながら歩けたらもっと早く買い物できたのに…」

「それができたら確かに便利なような…でもああやって天井に吊るしてあるし」

「私の身長だと見渡せないから不便です」

「ふふ、そっか」

「私はまだ子どもですから、大人になりたくても今はまだ子どもです。それくらいわかってます」

「そうだね、その認識はとてもえらいと思うし参考になるわ」







 そして、買い物を終わらせて二人で事務所に帰ったわ。途中で橘さんがこけて泣きそうになっていたけど、デザートに杏仁豆腐を買って帰ることを提案したら機嫌を直してくれたから…めでたしめでたしね



「…どう? 今度のトークバトルでこの話使えるかな?」

「…」

「…」

「さくら? 亜子?」

「ズルい! わたしもいずみちゃんとお買い物行きたかったでぇす!」

「アタシそのときいなかったからチャーハン食べてないよ!」

「ごめんごめん、それじゃこれから何か食べに行こっか。おしゃれなところ見つけたんだ」

「ほんとに? やったぁ!」

「よっしゃご飯代浮いた!」

「はいはい、それじゃ先に下に降りてて。片付けたら追いかけるから」



「…それでプロデューサー、どうしたの?」

「! やっぱり隠れて見てたの? 橘さんが一人で買い物なんておかしいと思ったけど…気づかなかったわ」

「橘さんから伝言? …そっか、次からありすちゃんて呼ぶことにするね」



「いずみー!はやくー!」

「はーい! それじゃ行ってくるね」



おしまい





21:30│大石泉 
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