2013年12月12日
モバP「流し雛」
モバマスSSです。
P「お疲れ様岡崎さん」
泰葉「あ、お疲れ様です」
P「お疲れ様岡崎さん」
泰葉「あ、お疲れ様です」
P「今、時間あるか?」
泰葉「え?平気ですけど」
P「今のうちに、今後の予定の確認でもしておこうかなと思ってさ」
泰葉「あ、はい。お願いします」
P「…やっぱり止めとくか?顔色良くないぞ?」
泰葉「えっ、そうですか?」
P「ほら、鏡」
泰葉「そうですかねぇ…。それなら今日は帰りますね」
P「あ、送るな」
泰葉「すみません。ありがとうございます…」
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車内
P「てっきり周子が泊まるのかと思ってたけどな」
泰葉「ごめんなさい、迷惑を掛けてしまって…」
P「全然構わないって」
泰葉「プロデューサーさんは私たちを送ってから、自分の家に帰るんですか?」
P「そうだよ。明日もあるし」
泰葉「…すみません」
周子「あ、気にしなくていいって。Pさんの家近いし」
泰葉「そうなんですか?」
P「他のアイドルには内緒な」
泰葉「はい。それはいいですけど…」
P「そうかありがとな」
泰葉「いえ、そんなことは…」
P「それじゃ、二人ともおやすみ」
周子「おやすみー」
泰葉「おやすみなさい」
周子「それじゃ、ようこそ、あたしの家へ」
泰葉「はい。それじゃ、お邪魔しますね」
周子「あ、ちょっと待って。はいチーズ」パシャ
泰葉「きゃっ!?」
周子「ウチに来た記念にね。よく撮れてるでしょ?」
泰葉「あ、はい。そうですね」
周子「皆に送っとくね」
泰葉「みんなって?」
周子「夕美と卯月だけど?」
泰葉「あぁ、夕美さん達ですか」
周子「なになに?誰か見せたい人でもいるの?」
泰葉「えっ!?いや、そんなことは…」チラッ
周子「まさか…Pさんにとか?」
泰葉「あ、いや、違いますって」
周子「あらら、違ったの」
泰葉「違いますって…と言うより綺麗ですねお部屋」
周子「何もないの間違いだと思うけどね」
泰葉「そんなことないですって」
周子「ありがとね。あ、とりあえず、簡単に間取りを説明しとくと…」
泰葉「はい。分かりました。ありがとうございます」
周子「それじゃ、寝よっか」
泰葉「はい。そうですね」
周子「……あっ!」
泰葉「どうしました?」
周子「いやね、冷静に考えたら布団一組しかないなぁって…。泰葉ちゃん使っていいよ」
泰葉「いえ、そんな悪いですって」
周子「流石に家に呼んどいて床に寝かせるわけにはいかないでしょうに」
泰葉「あ、それじゃ、一緒に寝ませんか?」
周子「へ?」
泰葉「え、あ、その…そうしたら二人ともお布団で寝れるかなって…」
周子「あー、うん。泰葉ちゃんがいいならそれで」
泰葉「はいっ!そうしましょう」
泰葉(お友達の家にお泊りして、一緒の布団に寝るってなんだかいいなぁ…ふふ)
周子「それじゃ、狭いけど我慢してね」
泰葉「問題ないですよ」
周子「……こういう時さ」
泰葉「はい?」
周子「修学旅行だったら誰が好き?とかで盛り上がるよね」
泰葉「そうなんですかね?」
周子「違うの?」
泰葉「私、子供の頃からお仕事が忙しくて…」
周子「あー。そうだったね。ごめんごめん」
泰葉「いえ、気にしないで下さい。自分で選んだことなんで…」
>>25
ありがとうございます。
泰葉「以前、私が倒れた時に病室で言ってくれたじゃないですか」
周子「ん?」
泰葉「私の言葉を『お利口さんの答えだね。あたしたちと友達になろうよ』って」
周子「うわっ、恥ずかしっ、そのセリフ」
泰葉「そうですか?私は嬉しかったですよ?そんなこと言ってくれる人なんて今までいませんでしたから」
周子「ははは…たまたまだと思うけどね」
泰葉「それでも…いいんです。偶然、でも、なんで、も……」
周子「…泰葉ちゃん?」
泰葉「……ん」スー
周子「寝ちゃったか。それじゃ、あたしも寝よっと。おやすみ」
泰葉「ん…?えっ、ここは…?」
周子「……」スー
泰葉(あ、そう言えば、周子さんの家にお邪魔してるんだっけ)
泰葉「喉乾いちゃったな…」
泰葉「お水貰っちゃおうっと」モゾモゾ
泰葉(起こさないように起こさないように…)
泰葉「コップ使ってもいいかな。……ぷはっ」
泰葉「いい天気だなぁ…。明日も晴れですねきっと」
泰葉「…寝よっと」
泰葉「…ん?」
泰葉(今誰かいた?)
泰葉「そんなわけないよね。周子さんもあそこに寝てるわけだし」
泰葉(そう言えば、昔、夜中にお人形さんと目が合った時とか怖かったなぁ…)
泰葉「早く寝ましょ…」
泰葉「…あ」
泰葉(えっ、そんなことって…)
泰葉「ひっ、いやっ――」
周子「…どうかしたの?」
泰葉「え?」
周子「いやさ、中々戻って来ないからなんかあったのかなって…」ポケー
泰葉「い、いや、その…」
泰葉(あれ、いない…?)
周子「なんでもないなら寝よ。おやすみ」
泰葉「あ、あの…」
周子「ん?どしたの?」
泰葉「出来ればでいいんですけど…」
周子「なに?」
泰葉「手繋いで貰えませんか?」
周子「いいけど…。なに?幽霊でも見たの?」
泰葉「ゆ、幽霊なんでしょうかね…?」
周子「ネタで言ったのにそういう反応されるとこっちも困るんだけどさ」
泰葉「でも…」
周子「何かいたの?」
泰葉「鏡に私が映ってました」
周子「鏡だからね。むしろ映ってなかったらそこの鏡取り外すよ」
泰葉「そうなんですけど、そうじゃなくて…」
周子「…ホント?」
泰葉「こんなことで嘘言ってもしょうがないですよ」
周子「うん。分かった。とりあえず寝よう。起きてから考えようね」
泰葉「でも…」
周子「でもじゃない。ほらっ」ギュ
泰葉「あっ…」
周子「こうしてれば安心なんでしょ?それじゃ、おやすみ」
泰葉「は、はい。おやすみなさい」
翌日
事務所
菜々「おっはようございまーす!」
P「おはよう。今日も元気だな」
杏「あ、安部さんだ」
菜々「Pさん、杏ちゃんおはようございます。あれ、他の人は?」
P「まだ、来てないですね」
杏「杏はこの人に引っ張られてきたんだよ」
菜々「へぇ、そうなんですか」
P「来てないと言えば、昔は学校に近い人ほど遅刻してきましたよねぇ」
菜々「あ、そうですよね。家から五分の所に住んでる人ほど遅刻してきましたよねー」
杏「そうなんだ」
P「そうなんですよね。ちなみに菜々さんはどうでした?」
菜々「勿論ちゃんと行ってましたよ」
P「ました?」
菜々「あ、行ってますよ。現在進行形です!」
P「そうですかそれはよかったです」
杏「お疲れ様。安部さん」
菜々「なに言ってるんですかっ!」
P「そう言えば、菜々さんこれ知ってます?」
菜々「はいはい…あっ、懐かしいですねぇ!これ!鏡見て変身するやつですよね!」
杏「杏は見たことないなぁ…」
P「俺も見たことないなぁ…」
菜々「あ、菜々も再放送で見たんですよ?」
P「あ、そうでしたか」
杏「だよね。杏は見たことないけど」
菜々「ですよー。…でも、憧れますよねぇ」
P「何がですか?」
菜々「鏡にお願いすると別の自分になれるんですよ?ロマンチックじゃないですか」
P「織姫と彦星よりロマンチックですね」
菜々「…それとこれとは話が別です」プイッ
杏「なんかしたの?」
P「いや、何もしてないよ。杏はどうだ?そんな感覚あるか?」
杏「どうだろうね。杏的にはそんなイメージはないけどね」
P「どんなイメージなんだ?」
杏「ん。単純に誰かに見られてる気がするよ。まぁ、誰かってのは自分なんだけどね」
P「ん?」
杏「分からない人にはずっと分からないと思うよ。そんなことより、朝の分の飴がまだなんだけど」
P「お、悪い悪い。ほら」
菜々「あ、私にも下さいPさん」
P「はい、どうぞ」
杏「ん。それじゃ、杏は寝るね」
P「待て。折角だから菜々さんとレッスンしてこいって」
菜々「頑張りましょうね!」
杏「うぇぇ」
P「さて、二人がいなくなると急に静かになるなぁ…」
ちひろ「まぁ、私たちが賑やかでも仕方がありませんからねぇ…。お茶要ります?」
P「お願いします」
P「あと、昼前に来るのは…」
ガチャ
周子「おはよーございます」
泰葉「おはようございます」ゼェゼェ
P「お、来たか。今日はやけにお洒落してるな、岡崎さん」
泰葉「えっ、あ、そうですか?」
周子「似合ってるよね?」
P「うん。似合ってる」
泰葉「あ、ありがとうございます」
P「どこか行く予定でも?」
泰葉「いえ、そういうことではないですけど…」
P「まぁ、モデルやってただけありますよね」
泰葉「そんな…」
周子「あ、これなに?」
P「ん?菜々さんと杏と話してたんだけどさ」
周子「ふーん?昔のアニメだよね?」
P「そうそう。鏡にお願いして変身する話だよ」
周子「あー再放送見たかも」
泰葉「私も見たことあるかもしれません」
P「菜々さんはなりたい自分になれるから羨ましいって言ってたぞ」
周子「菜々さんらしいね」
泰葉「ちなみに杏さんは?」
P「あいつはなぁ…捻くれてたなぁ…」
周子「そうなの?」
P「うん」
泰葉「なんて言ってたんですか?」
P「誰かに見られてる気がするってさ」
泰葉「誰か…?」ピクッ
P「そんな深く考えて言った言葉じゃないと思うけどな」
泰葉「そ、そうですか…」
P「全く、ニーチェじゃあるまいし…」
周子「誰それ?」
P「昔の人だよ」
周子「ふーん?」
頼子「随分と…おざなりな回答ですね…」
P「お、おはよう。頼子」
頼子「おはよう…ございます。もう…お昼近いですが…」
P「今日って仕事だっけか?」
頼子「いえ、そういうわけでは…」
P「それじゃ、レッスン?」
頼子「そういう…わけでもありません…」フルフル
P「それじゃ、どうして?」
頼子「用もなく…ここに来ては…いけませんか?」
P「いや、そんなことないけどさ」
周子「あっ、そろそろレッスン行ってくるね!」バタンッ
P「おう、行ってらっしゃい。気を付けてな」
頼子「今日は…お話でもしようかと思いまして…」
P「俺と?」
頼子「えぇ…」
P「別にいいけど…」
泰葉「その前に、今日は、私のお仕事がありますよ?」
P「あぁ、そうだった」
頼子「あ、それでしたら…一緒に…連れて言って貰えませんか?」
P「それは別にいいけど」
泰葉「私も構いませんよ」
頼子「ありがとうございます」ホッ
車内
泰葉「そう言えばですね」
P「ん?」
泰葉「先ほど、プロデューサーさんが言っていた、ニーチェじゃあるまいしってどういう意味ですか?」
P「えーとな…。頼子パス」
頼子「えっ、あ、はい。深淵の話ですよね?」
P「うん。その話」
頼子「深淵を覗く時、深淵もまたあなたを覗いている。という言葉がありまして」
泰葉「向こう側からもまた覗いているってことですか?」
頼子「…えぇ、そうですね。そう考えていいと思います」
泰葉「例えば、それは鏡でも…?」
頼子「鏡ですか…。鏡が深淵かという問題はさておき、鏡はあちら側とこちら側を繋ぐものとして有名ですよね」
泰葉「そうなんですか?」
頼子「…えぇ。Pさん、私…少し、話疲れました…任せます」
P「えっ、俺知らないぞ、そんな話」
頼子「…そうですか。すみません。それでは、この話は、お仕事が終わった後にでも…」
泰葉「はい。分かりました…」
頼子「何か…あったんですかね…?」
P「岡崎さんがか?」
頼子「はい。そこまで食い付いてくる…感じではないと思ったんですが…」
P「確かに、昨日何かあったかもな」
頼子「そうですか…。あ」
P「ん?なんだ?」
頼子「どこかで…お茶しませんか?お話したいですし」
P「まぁ、岡崎さんの撮影はまだ時間かかるだろうし別にいいけど」
頼子「…それは…よかったです」
喫茶店
P「えーと、コーヒー、ブラックで」
頼子「私は紅茶を下さい」
P「それで話したいことって?」
頼子「いえ、何か話題があるという訳では…そうですねぇ、先ほどの話の続きでもしますか」
P「鏡の話か?」
頼子「はい。私もそこまで…詳しいわけではありませんが…ジキルとハイドにも通ずることがあると思います…」
P「人格が分かれる話だっけか」
頼子「えぇ…、そうですね」
P「その話からすると、いつか鏡の中の自分と見ている自分が入れ替わるってことを言いたいのか?」
頼子「そう思います。まぁ、あくまでお話の世界ですから」
P「まぁ、現実にはそんなことはないだろうけどな」
頼子「えぇ…そうですね。そんなことはない…と思います」
頼子「幽霊の正体…見たり、枯れ尾花とも言いますしね」
頼子「――ただ、事実は小説よりも奇なりとも言いますけどね」
P「だな」
頼子「…ふぅ。久しぶりに話過ぎましたね。それじゃ、楽しかったです」
P「え、帰りは?」
頼子「今日の私は、アイドルではないので久しぶりに古本屋にでも寄ろうかと思います。
何か面白いことがあるかもしれませんしね…」ニコッ
P「そうか…気を付けてな」
頼子「えぇ、それでは失礼します」ペコリ
スタジオ
P「そろそろ終わるかな…」
プロ「お、Pか?」
P「ん?その声は…」
プロ「久しぶりだな、岡崎は元気か?」
P「元気だよ、そろそろ帰ってくるんじゃないか?」
泰葉「あ、プロデューサーさん、お仕事終わり…あれ?」
プロ「よう、岡崎。元気か?」
泰葉「あ、お久しぶりです」ニコッ
プロ「…元気でやってるみたいだな」
P「だから言ったろ?」
泰葉「どうしてここに?」
プロ「たまたまな」
P「お前は平気なのか?」
プロ「ん?平気だぞ」
P「いや、だってさ…」
P(岡崎さんを無理やり移籍させた分を補うって言ってたし…)
プロ「あれから色々あってさ、また少しずつプロデュースを始めてるから」
P「ならいいんだけどさ…」
泰葉「あ、あのっ!」
プロ「ん?」
泰葉「ありがとうございましたっ!それと…ごめんなさい」
プロ「俺は何もしてないよ岡崎。それじゃあな。頼んだぞ」
P「おう。それじゃあな。今度お互いに時間作って飲もうな」
プロ「分かった。いつでも平気なように時間空けとくから」
車内
泰葉「やっとお礼を言えました」
P「そう言えば、言えてなかったんだっけ?」
泰葉「そうです。車で事務所に送ってもらってからは連絡すら取れなかったので…」
P「徹底してるなあいつ…」
P(余裕がなかっただけかもしれないけど)
泰葉「えぇ、だから今日はとっても嬉しかったです」
P「それはよかったな」
泰葉「…そう言えば、古澤さんはどちらに?」
P「なんだか古本屋に行くとか言って先帰ったぞ」
泰葉「そうなんですか…残念です」
P「鏡の話を聞きたかったのか?」
泰葉「えぇ、少し気になりまして…」
P「一応その話は頼子から聞いてるから話すことは出来るけど…」
泰葉「お願いします」
P「えーっとなぁ…――」
泰葉「なるほど、そんな話が」
P「ま。ただの空想世界の出来事だけどな」
泰葉「そうだといいのですけれど…」
P「ま、そんなことなんかなくて鏡は自分を映すものだと思うけどな」
泰葉「そうなのかな…」
P「今日も周子の部屋に泊まるのか?」
泰葉「いえ、今日はちゃんと自分の家に帰りますよ」
泰葉(そう言えば、服似合ってるか聞き忘れちゃった…)
事務所
P「お疲れ様です」
泰葉「お疲れ様です」
ちひろ「あ、お帰りなさい」
P「ちひろさんお疲れ様です」
泰葉「私は、もうお仕事もないので帰りますね」
ちひろ「はい。気を付けてくださいね」
泰葉「まだ、明るいですし、平気ですよ。それでは失礼します」
P「気を付けてな」
泰葉「はい。それでは」
ちひろ「なんだか機嫌良さそうでしたね泰葉ちゃん」
P「さっき前のプロデューサーに会ったんですよ」
ちひろ「前のって、以前泰葉ちゃんがいたプロダクションの人ですか?」
P「えぇ、そうです。俺の大学の同期で」
ちひろ「へぇ、でも、それでなんで機嫌がよくなるんです?」
P「お礼を言えてなかったからって言ってましたよ」
ちひろ「お礼?」
P「いや、前のプロデューサーは、岡崎さんをこの事務所前に送った後連絡が取れなくなったらしく、自分の言い出したことをやらせてくれたお礼を言いそびれてたみたいですよ」
ちひろ「なるほど…。でも、そのプロデューサーさん…」
P「えぇ、勝手に移籍させたみたいですからね、また、一からスタートらしいですよ」
ちひろ「大変ですね…」
P「まぁ、世の中夢だけでやるには、それ相応の対価が必要ですからね」
ちひろ「もし、プロデューサーさんが同じ立場だったら…?」
P「同じことをしますけど?」
ちひろ「ですよねー」
ガチャ
杏「おはよう」
P「寝てたのか」
杏「眠くてね」
P「そうか」
杏「帰るの?」
P「いや、まだだけど」
杏「そ。それじゃ、まだ寝てるね。おやすみ」バタンッ
P「…あいつは何してるんですか?」
ちひろ「レッスンから帰ってきて疲れて寝てたみたいですね」
ちひろ「きっとプロデューサーさんが帰ってくるの待ってたんだと思いますよ?」
P「まぁ、俺と帰る時間を合わせればドアツードアで帰れますからね」
ちひろ「それだけなんですかね?」
P「あぁ、飴も貰えますしね」
ちひろ「そういうことじゃないんですけどね…」
周子「ただいまー。あ、Pさんお疲れ」
P「お疲れ」
周子「Pさんもう帰るの?」
P「いや、まだだけど…」
周子「そっか。それじゃ帰るまで待ってるね」
P「え、あ、おう」
周子「どうせ、そこの仮眠室に杏がいるだろうしね」
バタンッ
P「いいように使われてますね俺…」
ちひろ「あはは…」
P「それじゃ、二人も待たせてますし、頑張りますか!」
ちひろ「そうですね!」
P「…終わりましたかね?」
ちひろ「多分終わったと思いますよ」
P「それじゃあ、お疲れ様でした」
ちひろ「戸締りはやっておくんで、あの二人を」
P「そうですね。ありがとうございます」
P「おーい…」ガチャ
周子「……ん」スー
杏「……」スー
P「二人とも起きろー」
周子「あ、寝てたの?あたし?」
杏「ん?あぁ、もう朝?」
P「それはない。ほら飴」
杏「ん。あー、思い出してきた。仕事終わったの?」
P「終わったぞ」
周子「それじゃ帰ろっか」
P「そうだな」
P「それじゃ、ちゃんと寝ろよ」
周子「うーん。あんま眠くないんだけどなぁ…」
杏「杏はすぐに寝れるけどね」
P「じゃあな」
周子「ばいばい」
杏「じゃあなー」
P宅
P「ふぅ…。ん?誰かから電話か?」
P(この番号は…あいつか)
P「なんだろう」ピポパ
プロ『はい。あぁ、お前か』
P「電話したか?」
プロ『あぁ、したな。今平気か?』
P「平気だぞ?そこまで長くならなければ」
プロ『ありがとな。いや、今日会ったから日程だけ調整しておこうかなと』
P「あぁ、そういうことか。岡崎さんは…四日後とかどうだ?」
プロ『四日後か…問題ないぞ』
P「分かった。合わせておくな。そういや、話変わるが」
プロ『ん?なんだ?』
P「今は、どんなアイドルをプロデュースしてるんだ?」
プロ『…そもそもアイドルじゃなくてモデルなんだけどな』
P「あぁ、そうだった」
プロ『まぁ、前回の俺の独断専行で社長も危惧を覚えたのかその子がアイドルの方面をやりたいと言い出したら、やらせるらしい』
P「そうなのか」
プロ『そうなんだよ。あぁ、まぁ、個性的な奴をプロデュースしてるよ。それじゃあな』
P「あぁ、じゃあな」
P「えーと、明日岡崎さんに連絡してと…」
P「…鏡か」
P(あっちとこっちを繋ぐだっけか…)
P「ま。そんなことないよな」コンコン
P「どう見ても俺だしな」
泰葉の部屋
泰葉「こちら側とそちら側…」
泰葉(どういうことなんだろう…)
泰葉「そう言えば、この鏡って、プロデューサーさんが買ってくれたんだっけ。まぁ、元だけれど」
泰葉『……』
泰葉「流石にもう慣れましたよ」
泰葉『……』
泰葉「何か言ったらどうですか?」
泰葉「まぁ、鏡に語りかける私も変なんですけどね」
泰葉『――…』パクパク
泰葉「えっ…」
泰葉(口が動いた…?)
泰葉『―――、――』ニコリ
泰葉「なんて言ってるんですか?」
泰葉『――』スッ
泰葉「…っ!」
泰葉(手をこっちに?)
泰葉「なんですか?あなたは?」
泰葉『――、――』
泰葉「え?わ、た、し、は、あ、な、た?」
泰葉「そりゃ、鏡ですし、あなたは私です」
泰葉「あ、いなくなった…?」
泰葉「あぁ…そういうことなんですね」
泰葉の部屋
泰葉「こちら側とそちら側…」
泰葉(どういうことなんだろう…)
泰葉「そう言えば、この鏡って、プロデューサーさんが買ってくれたんだっけ。まぁ、元だけれど」
泰葉『……』
泰葉「流石にもう慣れましたよ」
泰葉『……』
泰葉「何か言ったらどうですか?」
泰葉「まぁ、鏡に語りかける私も変なんですけどね」
泰葉『――…』パクパク
泰葉「えっ…」
泰葉(口が動いた…?)
泰葉『―――、――』ニコリ
泰葉「なんて言ってるんですか?」
泰葉『――』スッ
泰葉「…っ!」
泰葉(手をこっちに?)
泰葉「なんですか?あなたは?」
泰葉『――、――』
泰葉「え?わ、た、し、は、あ、な、た?」
泰葉「そりゃ、鏡ですし、あなたは私です」
泰葉「あ、いなくなった…?」
泰葉「あぁ…」
泰葉(そういうことですか…)
誤爆しました…。
すみません。
泰葉「電話しても平気かな…?」ピポパ
周子『やっぱり電話してきたね』
泰葉「え、やっぱりって?」
周子『いや、なんとなくだから気にしないで。それで、どしたの?』
泰葉「いえ、私分かったんですよ」
周子『ん?鏡の中の泰葉ちゃんの話?』
泰葉「そうです。あれは、私です」
周子『寝ぼけてる?』
泰葉「いえ、そういうわけじゃないんですけど…」
周子『ん?どういうこと?』
泰葉「考えてみたら、昨日着てた服って、一度だけお仕事で着たことある服だったんです。
雑誌には載らなかったんですけど…」
周子『ふーん?』
泰葉「…多分、あれは、私です。人形だった頃の私…」
周子『んー、よくわからないんだけど、昔の泰葉ちゃんが鏡に映りこんでるってのが分かったってこと?』
泰葉「はい。そういうことです」
周子『なるほどね。まぁ、そういうこともあるもんなんだねぇ。というか、自分なら危害も加えられないしよかったね』
泰葉「とりあえず、ホッとしました」
周子『そか、それじゃおやすみ』
泰葉「あっ、はい。ごめんなさい。こんな時間に連絡してしまって…」
周子『いいよ、あたし元々夜型だし。じゃね』
泰葉「はい、おやすみなさい」
周子「昼寝しておいた意味があったわけだ」
周子(本当に電話来るなんて思わなかったけどね)
周子「まぁ、泰葉ちゃんが平気って言うなら平気だね」
周子「…あたしが鏡見たら狐のカッコしてたりして」ヒョイ
周子「…そんなわけないか」
周子「寝よ…」
*
頼子「ふふふ…久々にあんなに喋りました…」
頼子「しかし…鏡ですか」
頼子「何故、気にしたのか…皆目見当も付きませんが、考えてみれば、別になんの不思議もないかもしれませんね」
頼子「実像と…偶像の乖離は当たり前ですし」
頼子「…それより、今度は…この本を事務所に持っていこうかしら…」
頼子「勿論、ちゃんとアイドルはしますけれども。ふふふ…」
事務所
杏「起きると自動で事務所に着いてるって便利だよね」
P「そろそろ自分で起きろよ」
杏「布団の中で起きてるんだってば」
P「ちゃんと活動しろってことだ」
杏「だって、リモコンもコントローラも手伸ばせば届く位置にあるからしょうがないじゃん」
P「いっそ没収するか?」
杏「横暴だー。ストライキするぞー」
P「ほらほら、冗談だから、飴をお食べ」
杏「ん。しょうがないなぁ」
ちひろ「お二人とも仲がよろしいことで」
P「杏が来なくて、仕事に支障をきたすなんて無駄なことをしたくないんで」
杏「常にいい緊張感に身を置けてるね」コロコロ
P「全く…」
杏「そんなPさんにはこれをあげよう」
P「ん?なんだこれ…?」
杏「紙で作った人形だよ」
P「なんだかRPGで陰陽師なんかが使ってそうだな…」
杏「陰陽師の出るRPGなんてあるんだ。弱そうだね」
P「どうなんだろうな。ってことは置いといて。このままだと小学生の工作にしか見えないんだが」
杏「いや、流石にそれは酷いって。まぁ、見た目はそうだけど」
P「悪い悪い。それで、これがなんなんだ?」
杏「これを川に流すと、その人の代わりになって災厄を背負ってくれるんだってー」
P「なるほど。これを流すと杏が規則正しくなるのか」
杏「むぅ、そういうこと言うなら返せー」
P「いや、貰っておくよありがとう。それに、俺のこと心配してわざわざ作ってきてくれたんだろ?」
杏「いや、小学生の工作レベルだから手間はかかってないけど」
P「それでも、俺の為に作ってきてくれたんだろ?ありがとうな」
杏「ま。たまには飴のお返しでもしないといけないかなって思ってね」
P「そうか」ニヤニヤ
杏「な、なんだ。その顔は」
ちひろ「二人共仲良いですねぇ…」
泰葉「おはようございます」
杏「お、泰葉だ」
泰葉「あ、おはようございます。飴食べますか?」
杏「うん」
P「餌付けしてるみたいだな」
泰葉「そのまま懐いてくれると嬉しいんですけどね」
杏「それなりに仲良くしてるとは思うけどね」
P「あ、そう言えば、岡崎さん一ついいですか?」
泰葉「はい?なんですか?」
P「あいつ、岡崎さんの元プロデューサーと会うことになったんだけど時間とか平気?」
泰葉「…はい。平気です」
P「それは良かった。連絡しておきますね」
泰葉「はい。ありがとうございます。……その握ってるの紙はなんですか?」
P「あ、これは人形らしい」
泰葉「人形…?」ピクッ
P「なんでも災厄を代わりに請け負ってくれるらしい」
泰葉「へぇ、そんなことが…」
P「そうだ、杏。他には人形ないのか?」
杏「ないよ。考えてみなよ。杏がそんなもの一杯作るわけないじゃん」
P「確かにな…」
泰葉「あのープロデューサーさん?」
P「なんだー?」
泰葉「あ、はい。今晩、家に来てくれませんか?」
P「はぁ…はぁ!?」
泰葉「いえ、決して変な意味じゃないんですけど、それと、あの人も呼んでください」
P「あの人って…あいつか?」
泰葉「はい」コクン
P「なにかするのか?」
泰葉「ちょっと見て貰いたいものがありまして…」
プロ「もう、十時だな…」
P「そうだな」
P(一体何がしたいんだろう…)
泰葉「あ、お二人ともこんばんは。いきなり呼んですみません」
プロ「別に構わないが余り長居は出来ないぞ?」
P「俺も、そんなに長く入れる訳じゃないな」
泰葉「すぐに終わりますから…多分」
泰葉(確証はないですけど…)
>>59
ありがとうございます。
姉ヶ崎と、幸子はまたこれから出す予定ですので。
泰葉の部屋
P「部屋に入るのは初めてだな…」
P(綺麗な部屋だなぁ)
プロ「俺も引っ越しを手伝ったきりだな…」
泰葉「この鏡なんですけど…」
泰葉『…』
泰葉「ここに映っているのは私ですか?」
プロ「何を言ってるんだ?」
P「ん?」
泰葉「え、違いませんか?」
P「言われてみればそんな気もするし、そうじゃない気もする」
プロ「いや、待て。うーん…なにか違う気がする。顔付きかな?」
P「あぁ、本当だ」
プロ「それにしても、岡崎の着てるその服懐かしいな…」
P「懐かしい?」
プロ「いや、昔俺が担当を始めたばっかりの時に買ってやったものだよ」
泰葉「そうですよね」
プロ「尤も、俺にはそういうセンスはなかったんで、岡崎と話し合って買ったんだけどな」
泰葉「そうでしたね」
P「と言うか、これが岡崎さんが見せたかったものですか?」
泰葉「はい。とりあえず、一昨日なんで、周子さんの部屋に行ったかという理由を伝えようと思いまして」
プロ「俺はなんで呼ばれたんだ?」
泰葉「この鏡って確か、私の担当になった時にくれたものなんで、何か曰くつきの鏡だったのかなって気になりまして…」
プロ「なるほどなぁ。そんなことないと思うけど。だって、家具屋で買ってきた奴だしな」
泰葉「そうですか」
プロ「気になるなら持って帰るが?」
泰葉「そうですね…」
P「その鏡ってどのくらい使ってるんだ?」
プロ「そうだな…。それなりに経ってると思うけどなぁ」
泰葉「そうだと思います」
P「それで、どうしたいんだ?」
泰葉「分かりません。ただ鏡の中の私は、自分は私だと言っていました」
プロ「…一ついいか?」
泰葉「はい?」
プロ「素人考えなんだが…昔の自分を、初心を忘れるなってことじゃないのか?」
泰葉「…どういうことですか?」
プロ「これは推測だから確実なことは言えないんだが、その鏡に映る岡崎は、その…なんて言うか、モデルをやっていた時の岡崎の表情に似てると思うんだ」
P「言われてみれば…」
泰葉「…そういうことなんですね」
泰葉「以前、事務所を移る際に、私は言われるがままにポーズを取りつづける人形は嫌だと。アイドルの皆のよう過ごしていきたいと言いました」
泰葉「結果的に昔、人形のように言われるがままだった私は、現在アイドルになって、初めて自分の足で進んでいると思います」
泰葉「過去を振り払うかのように」
泰葉「私は人形じゃないと表現するように」
プロ「岡崎…」
泰葉「実際、年が近い友人も増えましたし、ちゃんと笑えるようになったと思います」
泰葉「けど…なんとなくですが、モデルをやってた頃を思い出さないようにしてたんですよ。なんだか戻っちゃう気がして」
泰葉「でも、考えてみたら、モデルを始めたのも、結局は自分の意思でした」
泰葉「輝く世界に憧れて」
泰葉「自分がキラキラと輝きたくて」
泰葉「プロデューサーさんが言ってましたよね?鏡は自分を映すものだって」
P「言ったっけか」
泰葉「はい。言ってました」
P(まぁ、自分だとも、自分じゃないとも言った気がするけど…)
泰葉「過去に頑なに見ようとせず、前しか見れていない、見ようとしなかった私も、昔とそこまで変わってなかったんですね」
プロ「そんなことはないと思うぞ。笑顔が変わったからな」
泰葉「そう言って貰えると…嬉しいです」ニコッ
泰葉「最初はこの鏡をどうにかしようと思って呼んだんです。だけど、やっぱりこのままでいいです」
泰葉「思いを忘れないためにも」
泰葉(前のプロデューサーさんは、そのために鏡を買ってくれたのかもしれないですし…)
プロ「これからも頑張れよ」
P「それじゃ、岡崎さんそれじゃ」
泰葉「はい。それではおやすみなさい」
*
プロ「少し飲むか?」
P「俺の家でいいなら」
プロ「構わないぞ」
P「それじゃ、行くか」
P宅
P「焼酎でいいか?」
プロ「すまないな」
P「別に構わないって」
プロ「しかしなぁ…成長したな」
P「岡崎さんのことか?」
プロ「あぁ。ん?なんだそれ?」
P「え?あぁ、これか?なんでもこれを川に流すと災厄を請け負ってくれるらしい」
プロ「川…?流し雛か」
P「なんだそれ?」
プロ「そういう行事があるんだよ。紙で作った人形を流して、災厄を流す行事だよ」
P「へぇ、そうなのか」
プロ「そうなんだよ」
P「今度やってみるか」
プロ「なにか悩み事でも?」
P「いや、そういうわけじゃないが」
プロ「まぁ、お互いに疲れることもあるだろうしな」
プロ「さて、そろそろ帰るわ。邪魔したな」
P「泊まってくか?もう電車もないだろ?」
プロ「…まぁ、そこらへんでタクシーでも捕まえるさ」
P「気を付けてな」
プロ「あぁ、おやすみ」
P「俺も風呂入って寝るか。明日もあることだし」
数日後
P「あ、岡崎さん」
泰葉「はい。分かりました」
P「ん、ん?」
泰葉「あれ?三人で会うって約束のことですよね?」
P「いや、ちょっと別件なんだけど今から出れるか?」
泰葉「行くって…どこにですか?」
P「まぁ、ちょっとな」
泰葉「別に構いませんけど…」
杏「これあげる」
泰葉「はい?あっ、あの時の」
杏「まぁ、杏に飴あげる係の次に杏に飴をくれるからね。それに、この間、欲しそうにしてたからさ」
泰葉「ありがとうございますね」
P「いいとこあるな杏」
杏「うるさいなぁ…。杏は寝てくるから起こさないでね」
P「俺達は出かけるから静かだと思うぞ」
杏「…事務所に帰ってくるの?」
P「そこは分からないなぁ…」
杏「帰らないなら連絡してね。タクシー呼ぶから」
P「あぁ、分かった。連絡するな」
車内
泰葉「どこに行く気なんですか?」
P「ちょっと大きな川に」
泰葉「川ですか…?」
P「そう。川だ」
泰葉「…水浴びするような年齢じゃないんですけど」
P「それは俺もだ」
泰葉「それじゃなにを…?」
P「まぁ、着いてからのお楽しみということで」
河川敷
P「こう河川敷に来ると運動したくなるなぁ」
泰葉「あ、いいですね」
P「確かにそうだな。今度皆でここに来るか」
泰葉「それもいいですね」
P「さて、その話はおいおい考えるとして、ここに来た目的はこれだ」
泰葉「あっ、杏さんがくれた人形ですね」
P「これを流すのがここに来た理由だ」
泰葉「でも、貰ったものを流すのは…」
P「杏にも聞いてみたんだが、元々これは流す為のものらしい」
泰葉「そうなんですか?」
P「それと、効果あったら杏もやるから流しといてとも言われた」
泰葉「なんか杏さんっぽいですね」
P「そうだな。それじゃ、流すか」
P「えーとこれに乗っけてと…。それ」
スー
P「おー、進んでいくな。とりあえず祈っとけばいいのかな」
泰葉「そうなんじゃないでしょうか…」
P「岡崎さんは、どうする?やるか?」
泰葉「えっ、そうですね…」
P「一応乗せる物も用意してきてあるが」
泰葉「えーと、質問いいですか?」
P「答えられる範囲なら」
泰葉「これって、この紙のお人形に災厄を背負って貰ってそれを流すってことなんですか?」
P「そうじゃないのかな。頼子辺りは詳しいかもしれないけど」
泰葉「ってことはこのお人形は私の身代わりなんですかね?」
P「そうなるな」
泰葉「…ならやっぱり辞めときます」
泰葉(一人きりで川を流れるなんて可哀想ですしね)
P「そうですか?」
泰葉「はい。また今度皆でやりたいと思います」
P「なら、近い内にやろうか。元々は皆の健康を祈るものらしいしな」
泰葉「そうですね」
P「それじゃ、帰るか」
車内
泰葉「あ、書くもの持ってませんか?」
P「ん?えーとサインペンなら」
泰葉「ありがとうございます」カキカキ
P「なにかしてるのか?」
泰葉「う、運転中に余所見しちゃダメですよ」
P「お、ごめんごめん」
泰葉「〜♪」
P(サインペンを使って何したんだろう…?)
事務所
P「お疲れ様です」
泰葉「お疲れ様です」
頼子「あ…二人共こんにちは」
P「お、頼子か、丁度良い所に」
頼子「丁度いい…?」
P「実はな――」
頼子「…流し雛は三月三日に一対の人形を撫でて流す行事です」
P「一人で流したら?」
頼子「効果は期待出来ないんじゃないでしょうか…」
P「あらまぁ…」
P(俺の人形は残念なことになってしまったな…)
P「それでさ、近い内に何人かでやりたいんだが…」
頼子「それは…お誘いの言葉ですか?」
P「勿論」
頼子「あ、その、ありがとうございます…」カァァ
頼子「ちなみにいつ頃に…?」
P「ん?明日とか?」
頼子「ず、随分急ですね…」
泰葉「近い内って本当に近いですね」
P「泰葉と頼子が空いてる日なんてそうそうないからな。さっき車の中で考えてたが、今日か明日しかない」
頼子「…今日と明日。皆さんお仕事がありそうですね」
P「そうだな」
泰葉「それじゃ、今日行きませんか?」
P「岡崎さんがそう言うなら」
頼子「ですけど…その対の人形を…どうやって作るのですか?」
P「そこら辺は頑張ってさ…」アハハ
泰葉「それなら任せて下さい」
*
泰葉「完成しました。二人分です」
P「早いな」
泰葉「手先は器用なんですよ。趣味が趣味なんで」
P「なるほどなぁ…」
河川敷
P「さて、俺は前回勝手に一人で流したから今回は流さないけど、二人共いいか?」
頼子「…そこまで気合いを入れるものでは…」
P「そうだけどさ」
泰葉「平気ですよ」
P「それじゃ。流してくれ。ここに来てない人達の分の無病息災を祈りながら」
頼子「…はい」
泰葉「はい…」
P「流れていくなぁ」
P(そう考えると、この川の中一人で放り出された俺、いや、俺の人形も中々可哀想だな。まぁ、自分でやったんだけどさ)
車内
頼子「すみません…着いたら、起こして貰えますか?」
P「あぁ、寝てても構わないぞ。岡崎さんも」
泰葉「私は平気です」
P「あぁ、そう言えば、一つ聞きたいことが…」
泰葉「なんですか?」
P「サインペンでなに書いてたんだ?」
泰葉「…笑いませんか?」
P「笑わないよ」
泰葉「これです」
P「綺麗に折りたたんでるな。信号で止まったら見るよ」
泰葉「はい」
P「お、丁度だ。なになに――」
『おかざきやすは しょうらいのゆめは、みんなにあいされるげいのう人です』
P「これは?」
泰葉「昔の夢ですよ。忘れないためにも。紆余曲折を経ましたがこの思いは変わってないことを思い出すために」
泰葉「この人形も、あの鏡も私自身ですもんね」
P「なるほどな。あ、そうだ、もう一つ聞きたいことがあったんだよ」
泰葉「なんですか?」
P「流し雛って人形を二対並べて流すだろ?」
泰葉「ちゃんと流しましたよ?」
P「一人は岡崎さんってことは分かるんだよ。でも、もう一人の男の人って誰だ?」
泰葉「へっ?」
P「いや、正確に言うなら、これは三月に行われる行事だから、お内裏様は誰だって話だな」
泰葉「そ、そんなこと秘密ですよっ!」
P「悪い悪い」
泰葉「…もう」
泰葉「でも、可哀想なんで少しだけヒントをあげます」
P「うん」
泰葉「今の私が頼れる人ですよ。頼ってもいいかなって思える人です」
P「なるほどなぁ…」
P(誰だろう…?)
泰葉「まぁ、本当の三月まで時間があるんですから存分に考えて下さいね♪」
終わり
02:30│岡崎泰葉