2014年10月16日

P「最近平らなものが全部千早に見えるんだよ」

春香「またいきなりとんでもないこと言いますね」



P「ああ、確かに疲れてるのかもな。だから明日の休みに実家に帰ろうと思ってる」



春香「で、いったい何が千早ちゃんに見えるっていうんですか」





P「いやな、確かに俺もおかしいと思ってるんだけどな、出来たら笑わないで聞いてほしいんだが」



春香「平らなものが千早ちゃんに見える点で既に常軌を逸してますよ」



P「そうだな……じゃあまずは」



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P「まず俺が家に帰るだろ」



春香「帰りますね」



P「で、とりあえず部屋の電気付けるだろ」



春香「付けますね」



P「部屋って大抵壁と床で構成されてるだろ」



春香「まあ、匠に改造されてなければそうですね」



P「千早に見えるんだよ」



春香「はい?」

P「こうな、家の壁が千早に見えるんだよ」



春香「ポスターとか、壁のシミが顔に見えるとか……」



P「俺もそう思って『千早か?』って聞いてみたんだよ。そしたら」



春香「そしたら?」



P「『いえ、違います』って返事したから、ああなんだ千早じゃないのかって」



春香「……それ千早ちゃんじゃないですか?」



P「いや壁自身が否定してたし違うだろ」



春香「壁は返事しませんよ」

P「まあ俺も確かになんかおかしいな?って思ったから、こう、なんていうのかな、壁を平行に見るっていうか」



春香「壁に耳つけて平たく見たんですね」



P「そしたら確かに壁というには不自然な凹凸があったけどさ、まさかそんな平らな人間はいないだろ」



春香「プロデューサーさんの平らの許容範囲広すぎませんか」



P「家賃安いから少々作りがアレでもこんなもんかなって」

P「まあ壁はまだいいんだよ」



春香「他にも?」



P「家帰ったけど食うもんないからとりあえず飯でも作るかと思ってさ」



春香「自炊するんですか?意外です」



P「手の込んだものは出来ないからな、ラーメンにキャベツとかもやしとか放り込んでおくかぐらいで」



春香「外食も高いですもんね」



P「で、キャベツ切ろうと思ってまな板出したんだよ」



春香「二回目ですけどパターン読めましたよ」



P「千早に見えるんだよ」



春香「ですよね」

P「こうな、まな板が千早に見えるんだよ」



春香「プロデューサーさん、確かに千早ちゃんはまな板まな板言われてますけど、流石にそこまでは」



P「いや、でもちょっと考えてほしい」



春香「何をですか」



P「千早がまな板に見えることはないだろ?」



春香「まな板に手足はついてませんしね」



P「でもまな板が千早に見えることはあるんじゃないかな」



春香「私の言ったこと聞いてました?」

P「まあ俺も確かになんかおかしいな?って思ったから、布巾で一回ぬぐってみたんだよ」



春香「行動に脈絡が見えませんけど」



P「そしたら二つぐらい小さな突起があってさ、そこだけ色もピンク色なんだよ」



春香「はっ……裸ですか!?」



P「裸もなにも……まな板が服着るのか?」



春香「プロデューサーさん、本当のまな板見たことあります?」



P「で、これじゃまな板としては使えないなって思ってキャベツは手でちぎって入れることにした」



春香「そこで平気で包丁振り下ろさなくてよかったです」

P「まあまな板はまだいいんだよ」



春香「もうダメだと思いますよ」



P「食事もしたし片づけもしたし、CD聞こうと思ってさ」



春香「プロデューサーさんはどんな音楽を聞くんですか?」



P「いやこれも仕事。お前らのCDチェックとか次の仕事のイメージ考えるために聞くの」



春香「家でまでお仕事なんて……ありがとうございます」



P「で、とりだしたディスクをプレーヤーに入れようとするだろ」



春香「まさかこの流れは」



P「千早に見えるんだよ」



春香「やっぱり」

P「こうな、CDが千早に見えるんだよ」



春香「流石に無理じゃないですかね、薄さが段違いですよ」



P「でもすっごい音質よかったし」



春香「プレーヤーに入れたんですか?どうやって?」



P「いや俺も入れようとしたんだけど、『ここで歌いますから結構です』って言うからさ」



春香「CDが?」



P「CDが。千早の曲しか入ってなかったけど」



春香「断言しますけど生音ですよそれ」

P「まあ俺も確かになんかおかしいな?って思ったから、キラメキラリをリクエストしてみたんだよ」



春香「ラジオかなんかですかそのCDは」



P「そしたらしばらく恥ずかしそうにためらった後、すっごいノリノリで踊りながら流してくれてさ」



春香「ノリノリの千早ちゃんのキラメキラリは聞いてみたいですね」



P「俺も調子に乗っちゃってコール入れてたらお隣さんから苦情来ちゃって」



春香「何やってるんですか一人で」



P「CDと一緒に平謝りだよ」



春香「ひょっとして最近のCDって私の知ってるものと違うのかな」

P「まあCDはまだいいんだよ」



春香「懐が深いんですねプロデューサーさん」



P「ある程度イメージも沸いたし、風呂でも入ろうかと思ってさ」



春香「ま……まさか、一緒に入ったんですか!?」



P「いや一緒にも何も俺一人だし」



春香「ああ、そういうことになってましたね……で?」



P「で、風呂に入ろうと思って風呂のドアを開けたら湯気がすでに充満しててさ」



春香「お風呂のフタ閉めてなかったとか?……じゃなくてまさか今度はお風呂のフタが」



P「千早に見えるんだよ」



春香「そっちかー。洗濯板じゃなかったかー」

P「こうな、風呂のフタが千早に見えるんだよ」



春香「湯気のせいで視界が悪いから仕方ありませんね」



P「でもなんか知らんがそのフタすっかすかでさ、全然フタの役割こなしてないの」



春香「そりゃどう考えても体の横から湯気が逃げていきますよ、幅が違いすぎます」



P「しかもそのフタびしょびしょなの。『どうしたんだ?』って聞いたら『足を滑らせて一回お風呂の中に落ちてしまいまして』って」



春香「なんでそんな熱湯風呂みたいな体勢で待ち構えてたんですかね」



P「しょうがないから着替えさせて脱衣所に立てかけて乾かしといたよ」



春香「えっ?今度は服着てたんですか?」



P「何言ってるんだ春香、風呂のフタが服着てるわけないじゃないか。おかしなやつだなあ」



春香「なんで私がおかしいことになってるんだろう」

P「まあ俺も確かになんかおかしいな?って思ったから、風呂のフタ取り替えようと思ったんだよ」



春香「もっと引っかかるところはいっぱいあるんじゃないですか」



P「そしたら『プロデューサー、ここに新しいフタ置いときますね』って。気が利くなあ」



春香「言っちゃった。プロデューサーって言っちゃいましたよお風呂のフタが」



P「まあ俺はいつでもどこでもお前らのプロデューサーだからな!」



春香「私が言うのもなんですけどプライベートを大事にした方がいいと思います」

P「まあ風呂のフタはまだいいんだよ」



春香「逆にどこまで行ったらアウトなのかすごく気になってきましたよ」



P「風呂も入ったしそろそろ寝ようと思ってさ」



春香「ついにベッドインですか」



P「でもその前にたまには夜の風景でも眺めようと思って窓開けたんだけど」



春香「おや、てっきりプロデューサーの平たい布団が千早ちゃんに見えたのかと」



P「おいおい、うちのベッドはこの前買い換えたばかりでフッカフカだぞ。千早と見間違えるわけないじゃないか」



春香「よかったです。……よかったのかなあ?」



P「で、外を眺めてふと道路に視線を落とすとだな」



春香「千早ちゃんが帰ろうとしてたんですか?」



P「千早に見えるんだよ」



春香「『に』ですか?『が』じゃなくて?」

P「こうな、大地が千早に見えるんだよ」



春香「いよいよ恐ろしいことになってきましたね」



P「思わず俺も『地球は丸いから平らじゃないぞー』って呼びかけたんだけど」



春香「初めてのツッコミが入りましたよ」



P「『プロデューサー、実は今まで黙っていましたが、地動説ではなく天動説が正しいんですよ』って言われちゃって」



春香「地球がテーブル状だという説ですね。近代科学に喧嘩売ってませんか」



P「千早に見えるぐらいなんだから確かに地球が平らでもおかしくないんだよなって納得しちゃったよ」



春香「私がAランクになったら宇宙旅行に連れて行ってあげますね、プロデューサーさん」

P「まあ俺も確かになんかおかしいな?って思ったから、『そのままじゃ風邪ひくから今日は泊まっていくか?』って声かけたんだよ」



春香「もうプロデューサーさんもそれ千早ちゃんだとわかってますよね」



P「そしたら『ではお言葉に甘えて……』って入ってきたんで一緒にベッドで寝た」



春香「さっきまで地球規模だったのにいきなりワンルームに収まりましたね」



P「まあそこそこ大きなベッド買ったからな。部屋に入れるのが大変だった」



春香「ところで、まさか変なことはしてませんよね?」



P「変なこと?大地と寝ただけで変なことなんて特にしてないぞ」



春香「そのフレーズがすでに奇妙奇天烈ですけど」



P「まあなんたって相手は母なる大地だから、丁寧にほぐしたり水やったり種付けしたりしたけど」



春香「はいストォーーップ!今致命的なワードが飛び出しましたよ!」



P「収穫は約10ヶ月後らしいぞ」



春香「しかも必中ですか!!」

P「ところで話は変わるけど、俺最近タブレットPC買ったんだよ」



春香「便利ですよねあれ。私はこけてへし折りそうなんで持ってませんけど」



P「スケジュール管理とか入れとくとアラームで知らせてくれて便利なんだよ」



春香「紙の手帳より機能も多いし良さそうですね」



P「ランチにおススメの店とか教えてくれるしさ」



春香「今度私も連れて行ってくださいよ」



P「あと、たまに朝ごはん作ってくれるし」



春香「待った。案の定だった」

千早「プロデューサー、そろそろ時間ですよ」



P「お、もうこんな時間か。明日実家に戻るからいろいろ用意しなくちゃいけなくてな、今日はもう帰るわ」



春香「お、お疲れ様です。……千早ちゃんは?」



千早「春香、今の私は如月千早ではなく、ただのタブレットよ」



春香「いや、たとえプロデューサーさんを誤魔化せても私の目は、っていうか誰の目も誤魔化せてないよ多分」



P「えっと、明日の電車の時刻は……」スッスッ



千早「6時半発の電車に乗り、8駅後で乗り換えをして……」クイックイッ



春香「プロデューサーさんの指に合わせて千早ちゃんが首振ってる……これCMで見たことあるよ私」

P「よし、じゃあ帰るか千早」



千早「はい」



春香「ああよかった、ちゃんとプロデューサーさんにも千早ちゃんが千早ちゃんとして見えてるん……どこへ帰るんですか?」



P「決まってるだろ、俺の家だよ」



春香「なぜ!?」



P「いや明日出るの早いから、一緒に泊まったほうがいいってことで」



春香「そんな朝早くから二人でどこ行くんですか」



P「言ったろ?実家に帰るって」



春香「は……まさか、千早ちゃん……」



千早「ええ……プロデューサーの御両親に挨拶に行くの」



P「責任は取らないとな」



春香「あれ?なんですかこれ、三馬身リードとかじゃなくてすでにゴール済み?」

P「じゃあお疲れ様でーす」



千早「お疲れ様です」



春香「はい、おつかれさ……いやいやいやいや」



千早「あ、春香」



春香「なに?」



千早「……式での友人代表の挨拶、お願いね」ポッ



春香「任せて、今日聞かされたありのままを伝えてあげるから」



千早「嬉しいわ、ありがとう春香。じゃあまたね」



ガチャバタン















帰りの電車に揺られながら、天海春香はふと思った。



ひょっとして、今日は一日かけて惚気られただけなのではないかと。





終わり



22:30│如月千早 
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