2014年12月09日

モバP「光をどうにか、休ませる」




:/シンデレラガールズ・プロダクション事務所:事務室



ガチャガチャ





南条光「お、おはよっ、P……」ドンヨリ……





モバP「おはよう……えっ、光?せっかくオフにしたのに、休んでないのか」





光「いや、アタシはまだまだ弱い。だから、ジムで修行をしなきゃ、なんだ、ファンの皆の為に……!」グッ!





モバP「ここは事務室。ジムは地下!スタドリ飲んだら……そうだな、ちひろさんに送迎頼むから。いいから帰って休め」カシュッ





光「サンキュ。んくっ、んくっ……ぷはぁっ。ン……げほっ」ビシャア





モバP「ああっ、こんなに零して。どうして休みたがらない?」





光「言ったろ?ヒーローにお休みは無いんだって!……ぁぅ。ど、ドリンクをくれぇ……」グダーン





モバP「だからと言って、この稼働率……。未成年をこんなに働かせてるって言われたら、お縄にかかってしまう」ピラッ





光「ま、まだまだイケるって!……うぁ」グダーン





モバP「イケない!」





光「でも、アタシを待ってくれてる、ファンがいるんだ。せめて、せめて今日だけでも……!」





モバP「何をそこまで……わかった。今日までだ。明日は強制で休みだからな」





光「うん、アタシとPの、新たな誓いだ!」サムズアップ!



ユラァ……





光「う……はれ……」



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モバP「どうした。……まさかっ」





光「あはは、この後に及んでアタシを行かせたくないとか、ズルいなあ。ガタキリバなんて特に」クテン





モバP「お、おいっ……ガタキリバ?以前言ってた、分身の術みたいののこと?」



光「うぐ……い、痛くても、ざっつおーらい……」バタッ





モバP「オーライな訳が……」サァー……





モバP「……ちひろさんに連絡。代打をCuPに頼むとして、あとは……」ピポパポ





数時間後



女子寮:九一三号室



モゾ……



光「ン……おは、よう。あれ、ここ……」パチッ





モバP「運んだよ。養生するべく、まだ寝てろ……」ショリショリ





モバP「すまない。『大丈夫!』を信じすぎてな。無理にでも、休ませるべきだった」ショリショリ





光「いや、Pは悪くない!アタシが悪いんだ……もっとアタシが強ければ、穴なんか空けなくって」スック





モバP「別に。代打を任せたし」ネナサイ





光「その人に悪いじゃないか!冷蔵庫にドリンクあるし、それ飲んだら大丈夫になるから、Pは復帰して……」グラッ





モバP「往生際が悪いっ。差し障ると良くないから、休め」キャッチ





光「うう。でも……アタシを待ってる人がいるって思うと、いてもたっても」





モバP「いろ。……わかったよ、じゃあ、特訓だ。頭痛はあるか」ショリショリ





光「あ、楽だよ、大丈夫。何するの?」





モバP「CDをな……声は辞めるべきだが、鑑賞だけでも足しになるだろ」ショリショリ



光「よしきた!どんなのでも……あぅ」フラッ



モバP「まだ低血糖なんだ。慌てず……出来た。喉、渇いてるだろう」つリンゴ





光「サンキュ、P。……なんで、ウサギにしてるんだ?」





モバP「俺の趣味だ。可愛いだろ」





光「そうだけどさ……甘っ」シャクッ





モバP「CuPのところから、譲ってもらったリンゴだ。蜜が詰まってて、贅沢だよな」





モバP「ところで。CDプレイヤは、何処に置いてる?」





光「机に常駐してるよ」





モバP「承りました。……おほんっ、了解した」スタスタ





モバP(部屋はかなり整理されている。壁に特撮玩具をきちんとラックしてたり、月刊誌を発行順に並べてたり。案外几帳面なんだろうか)





モバP(別に、ぬいぐるみの類を置けとは言わないが……こう、固い感じのする部屋だ。ゴミ箱には空いたスタドリの瓶と、カロリーフレンズの空箱、ウェットティッシュ少々ばかりが詰まってる)





モバP(プレイヤプレイヤ……あった。常駐ディスクを追い出して、ループを設定。スイッチ・オンっと)カチッ















ツー……







泣くことならたやすいけれど



悲しみには流されない











光「……カッコいい歌だね」





モバP「特撮の主題歌ゲットが目的だって言うのなら、参考になるはずだ」





光「アイドル界のレジェンドだよね。アタシも何回か聴いたことあるけど、ユニット単位だったし……うん、アタシもいつか、こんな風に……!」





モバP「……光。どうしてオーバーワークだと、黙っていたんだ。疲れてるならそうだと、言ってくれれば」





光「……アタシが疲れたって顔してたらさ、皆まで落ち込んじゃわないかな、って」





モバP「もっと疲れる目に、今遭っているでしょうが」





モバP「ホウ・レン・ソウとスタミナ配分を覚えてくれ。仕事熱心な南条光だからこそ、言ってるんだ」





光「うん。今後は、こんなのないようにする……もっと、強いアタシになるから」





モバP「懲りてない……そうだ、こいつ。楽しかったよ」





光「あ、もう鎧武見終わったんだ?じゃあ次は、剣かな……いや、特撮初心者には、電王とかも」スック





モバP「こら。……色んな登場人物たちを、周りの人に見立てて楽しんだよ」





光「へぇ。例えばちひろさんなら……優しくて頼もしいし、晶さんとか?」





モバP「子どもっぽいところもあるし、シドかもな。社長は……含蓄深いお方だし、阪東さん。PaPさんは、凰蓮みたいな頭してるな」





光「ダメだよ、P。……でも、どうしたんだ?Pの方から、ヒーローの話なんて」



モバP「ひとつ聞きたくてな。ライバルに、仮面ライダーバロンっていただろ」





光「うん!弱者が踏みにじられない世界を造るために鎧武と対決した、ヒールながらも自分じゃなく、この世界のために戦ったヒーローだ!」ペラペラペラペラ





モバP「わかったわかった。で……彼は『弱さという痛み』と言ってたけどさ」





光「うん。あそこで果実を食べて、オーバーロードになっちゃうなんて想像してなかった」





モバP「ショッキングだな。で……」









モバP「バロンにとって、どうして弱いことが痛みになったんだと思う?」







光「うーん……。自分が弱いせいで、誰かを守れないのって。すっごく切なくて、辛いことだし。それじゃないかな」





モバP「なるほど。優しいから、辛くなるわけだ」





モバP「もっと言うなら、他人の苦しさを抱え込んで、それをどうにか出来ない自分が嫌だから、自分を責めてしまうのか」





光「あー、何となくわかる、かも。……でも、バロンがどうしたの?話してるの、楽しいけど」





モバP「ありがと。……俺はな、もしかしたら光は、主人公の仮面ライダー鎧武よりも、バロンに似てるかもしれないって思ってるんだ」





光「アタシが……バロン?そんなにしかめっ面かな」





モバP「向こう見ずで、不器用で、負けず嫌いで、オマケに頑固者。相談をしてくれないし、言うことなすこと一々過激なんだよ」





光「うっ……でも、過激?そうかな」





モバP「TBSの時なんか、凄かったぞ。『弱い自分を倒すんだ!』とか、『正義の声が届かないのは、心に悪いやつがいるかだ』とか」





光「変かなあ。特訓して強くなることがさ、変だと思えないんだ」





モバP「違うよ、光。お前は、弱い自分とやらを……嫌い過ぎてないか。いくら何でも、ストイックが過ぎてる」





光「過ぎてないよ。だって、お仕事は楽しいだろ?なら、自ずと全力になるし」





モバP「身体を壊すまで、することじゃあない。どうか教えてくれ……どうして、光はヒーローになりたいんだ」





光「アタシがヒーロー好きだって、知ってるだろ」





モバP「だからだよ。ヒーローに助けられたいんじゃなく、どうしてヒーローになりたいのか。……いや、言葉を変えよう」





モバP「お前がヒーローになりたいって思った、最初の理由を教えてくれ」





光「アタシの昔のことを知りたいなんて……ま、まさかっ、ショッカーの改造を受けて、秘密を探ってる?」





モバP「受けてない。日がな相棒相棒と言ってくれてるんだし、背中を守り合うのもヒーローなんだろう」





光「それは……そうだけど……」





モバP「作戦会議だ。今からお前のオーバーワーク癖って強敵と戦うんだから、無策は嫌だ。敵を知り己を知らば……」





光「だいたいわかった!……じゃあさ、秘密にしといてくれる?」



モバP「ああ」



光「……昔のアタシってさ、泣き虫だったんだ」





モバP「泣き虫?」





光「うん。自分が転ぶのは何とか我慢出来たんだけど、誰かが怪我したり、泣いてたりすると……すぐに、わって来ちゃうんだ」





モバP「多感なんだ?……笑ってばかりの光が、だったんだな」





光「まあね。ただ……アタシが泣いてるだけならいいんだけど。アタシが泣いたせいで、周りの皆まで泣いちゃったことがあるんだ」





モバP「そんなの、お前の責任じゃないだろう。皆が泣きたくなる状況なんて」





光「アタシの声ってさ、大きかったんだよ」





モバP「今もな、確かに」





モバP「でも、それのお陰で、アイドルともなった訳か。で、大声で泣いて、周りを驚かせちゃう自分が」





光「正直、好きじゃなかった。悲しいのを止める方法がわかんないし、止めなきゃいけないのに泣き止めなかったから」





モバP「……ジレンマ、だな」







光「もっと怖かったのが、自分はいつまでも泣き虫で、皆をずっと怖がらせてしまうんじゃないかな、ってことだったんんだ」





光「今でも思うんだけど……もしかしたら本当のアタシは、泣くことで皆を悲しませる、怪人みたいなものなのかな、って」





モバP「のあさんあたりに話したらどうだ。案外気が合うかも?」





光「治ったら、考えとく。……とにかく、涙の雨を、俯かないで歩ける気がしなかったんだ」





モバP「変な比喩は……雨?」





光「そうやって過ごしてたらさ、父さんと母さんから、レーザーディスクを見せて貰ったんだ」





モバP「年季物を……古典なものを見たのか」





光「そんな感じ。そのヒーローは、自分がどんなに悲しくたって、まず子供たちを笑顔にさせるために戦ってたんだ」





モバP「もしかして、ジョーカーマスクと言うやつか」





☆ジョーカーマスク……小さな英雄特訓前で持っていた、お面のヒーローの名前。ストーリーは不明







光「えっ!?Pは知ってるのかっ!?」ガタック





モバP「寝てろ!……いい思い出は無いな。バンダイさんのいらっしゃるステージで、そのジョーカーマスクとやらのお面を誰かさんが持ってきたものだから、長期の謹慎を食らったんだし」ジロッ





光「あう。ごめん、あの時は……」





モバP「いいよ、もう。お陰で、始末書千本切りのPちゃんになったからな」





光「無しにするから、今後は」





モバP「そう。……遮って悪かった」





光「いやいや。……『雨だっていつか止む。待っているのは青空だ!』」



光「そうマスクは、言ってくれたんだ。アタシの一番好きなセリフでさ、貰っちゃった」





モバP「TBSの時のあれは、それだったのか」





光「うん。そんな強い姿が、かっこよくって……アタシも、皆を笑顔に出来て、ありがとうって言ってもらえる人になりたい!って思ったんだ」





光「それで、皆に笑顔を振りまいたマスクの真似っこをして暮らしたらさ。泣かしちゃった子たちが、喜んでくれたんだ」





モバP「確かに、泣くほど大きな声でヒーローの啖呵を切れば、サマになるな」





光「うん。あとはもう、家にあったヒーローを勉強する毎日だよ」





光「ただカッコイイだけだったらいつか忘れてたかもだけど。アタシがヒーローをすることで、笑顔が作れる、そんな自分を、はじめて好きになれたんだ」





光「アタシだって……誰かを、笑顔に出来る。その切っ掛けなんだ」



モバP「……ヒーローあっての、光なんだな」





光「うん。だからアタシは、かっこ悪くて弱い自分を倒して、皆と一緒にいられるアタシになりたい」





モバP「なるほど、わかった。よーくわかった。……光、動くな」



光「えっ?……あぃっ!?」





モバP「いいから、こうされていろ」ギューッ……





光「……うん」トクンッ





モバP「……と、見せかけてっ」ギュウウウウウウッ!





光「いっ!?ぎ、ギブギブっ」ジタバタ





モバP「自分が強くなればいい、それは絶対に間違ってなんかない。自分を変えられるのは、自分だけだからだ」





モバP「けれど、泣いた子だって、光と同じ長さの時間を過ごしてるだろ」





光「そ、そりゃそうだけど……く、苦ししっ」ムギュージタバタ





モバP「ン、すまん。とにかく。光以外の人だって、ちゃんと強くなってるんだ……泣き虫とか、それに類するもの程度で嫌がる奴は、もういない」





光「ぜー、はーっ……そんなこと無いよ。今日だって、アタシが意地張っちゃったせいで、Pに迷惑を」ハァハァ





モバP「かかったけど。カバー出来るし、何より、ここにいるのは俺の判断だ。俺の行動も、言及も、全部俺が責任をとる」





モバP「まったくもって、光の責任じゃない……だから、寧ろ気に負わないでくれ。光が仕事熱心なように、俺も自分の仕事に熱心でありたいんだ」





モバP「そしてそれは、俺だけじゃない。他の娘も、ちひろさんも、CuPもPaPさんも、寮長のおばちゃんもだ」





モバP「そして、誰彼皆弱い所があって。そこが表に出ても、仕事に対して熱心たることへの、致命的な問題にならないようにする。……それが仲間で、組織なんだ」





光「……ホントに?」





モバP「ホント。代打の代打までいるし、結果がオーライすれば、オールもオーライだ」





光「それ、オールが二回被ってる」





モバP「ンゥ。つまり、今後は良いことも悪いことも、包み隠さず報告して欲しいんだ」





モバP「職人的であり過ぎないでくれ。……それに、悪いところがあるのはお互い様なんだから」





光「……そっか。お互い様、か……ははっ……」







モバP「ああ。大分良くなって来たな……明日も休め」





光「いや、寝ててもやれるトレーニングがしたいかな」





光「アタシ一人だとやり過ぎちゃうし、出来たらPに監督して貰っていいか?」





モバP「わかった。トレーナーさんにも声かけとく。契約外だけど……まあ、悪いようにはならないはずだ」





光「サンキュ!……でも、ごめん」





モバP「何が?」





光「……泣き虫なアタシが好きじゃないってこと以上に。アタシは、カッコつけたアタシが好きみたいなんだ」





光「アタシは、強くなることをやめたくない。休みたくないんだ」





モバP「そっか。……いいよ、もう。慣れっこにすればいいだけだから。疲れたら頼ってこい」





光「サンキュ。……ねぇ、P」





モバP「何だ」





光「さっきさ、アタシがバロンに似てるかも、って話してただろ?」





モバP「ああ。それを今更、何と」







光「もし、アタシがそうならさ。……Pは、アタシにとってのマリカでいてくれるか?」





モバP「マリカって……仮面ライダーマリカ?バロンの隣にいた」





光「うん!元ユグドラシルの新世代ライダーだったけど、バロンの王の素質を認め、その行き着く先を見届けることを望みにした、珍しい女性ライダーだ!あ、新世代ライダーって言うのは」ペラペラペラペラ





モバP「わかったわかった。……確かマリカって、バロンを庇って爆死したよな」





光「あれって、転落死じゃない?……って、そうじゃなくって」





モバP「わかってるって。この手で優秀な王、いやアイドルを育て上げるのは、プロデューサーの本懐だものな……ふっふっふ」





光「P?ちょ、ちょっと怖い顔してるよ。……それに、Pはアタシを、本当に魔王にしちゃうの?」





モバP「どっちも王だろう。何か問題が?」





光「……Pの弱点もだいたいわかった。もしかして、仕事のこと以外あんまり考えてないんじゃないか?」





モバP「えっ。そんなことは無い」





光「休日は、どう過ごしてる?」





モバP「資料の整理に、プロデュース論の勉強!最近は赤羽根さんのに傾倒しててだね、例えば天海春香さんのようなタイプのプロデュース方針に関しては」ペラペラペラペラ





光「ストップストップ!……あ、こう言うのが、お互い様ってこと?」





モバP「かもな。それに、プロデューサーって仕事自体、そういう側面があるんだ」





光「どういうこと?」





モバP「アイドルが全部一人で完璧にやっちゃうと、プロデューサーの仕事が無くなっちゃうだろう」





モバP「出来ないことをこっちに回して、頼ってくれればちょうどいいんだ」





光「ふーん、そっか……」





光「じゃあさ。背中、貸してくれる?」







モバP「……いいけど、トイチな」





光「ケチ」





モバP「冗談だ」



光「……うん」





光「ありがとう」ボソッ





モバP(出来れば、もっと明瞭に言って欲しい。と言うのは、傲慢かもしれないな)





モバP(……ヒーローでも、等身大の素顔でもない。泣き虫だった女の子が、小さく肩を震わせているのだけを、背中で感じていた)





モバP(そのまま疲れてしまったのか、光は深い眠りに落ちた)





モバP(……もし、光が、弱い自分との付き合い方を見つけられたら。その時はきっと、誰もが光を取り囲み、おめでとうと歌ってくれるはずだ)





モバP「あとで、ヨーグルトを食べよう。こういう日のご馳走は、桃缶だと相場が決まってるんだ」ナデナデ



光「熱血ぅー……アタックぅー……♪」スー……ギュー







蒼い鳥 自由と孤独 二つの翼で



あの空へ 私は飛ぶ



この翼もがれては 生きてゆけない



私だから





ツ……カラカラカラカラ



おわり



17:30│南条光 
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