2014年01月23日

美世「悪魔のZーーーッ!」 モバP「やめろ美世……リスキーすぎる……」

AM 1:00 C1外回り

P「悪いな。予定より仕事長引いて」

美世「気にしないでよ。アイドルのお仕事楽しいし」


美世「それに深夜の首都高ってワクワクしない?」

P「おいおい飛ばさないでくれよ」

美世「大丈夫大丈夫」

P「しかしいい車だよな〜R32」

美世「でしょでしょ!」

P「でもお高いんでしょう?」

美世「そうでもないよ?この子は20万だし」

P「あらやだ。お安いのね」

美世「……まあお父さんのツテで買ったレストアベ−スなんですけどね」

P「おいおいレストア前提、ツテ込みで20万かよ……32って20年以上前の車だよな?」

美世「アハハ……でもあたしが中学生の時に買った子だから今はもう少し安いと思うよっ!」

P「中学生!?まさか夜な夜な年中無休で豆腐の配達を!?」

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美世「違う違う」

P「じゃあなぜ……」

美世「昔から倉庫のエンジンバラしたり、組んだりはしてたんだけど中学にあがってから無性に自分の車、それもGT-Rが欲しくなっちゃって」

P「中二病ですねわかります」

美世「うん。蘭子ちゃんや飛鳥ちゃんとベクトルは違うけど、なんだか大人になった気がしてさ〜」

P「なるほど。でも親御さんだって簡単には」

美世「そうそう!だから定期テスト五教科で450点取ったら考えてもいいってお母さんが」

P「確かにいい点数だけど車の事を考えると優しい設定だな」

美世「その……実は当時200点代でして……」

P「^^;」

美世「で、でもでもちゃんと450取ったんだよっ!Rのためにっ!」

P「いい方向に中二が働いたな」

美世「そゆこと。それから時間を掛けて、エンジン以外のボディとか塗装もお父さんの友達に教えてもらったりして」

P「好きなんだな。Rが」

美世「うん。初恋の人も34乗ってたしーーー」

オオオーーーーン……

美世(一台来る……)

アキオ(たまにはC1もいいナ)

グオァオアーーーーンッ!!
P(あのS30……どこかで……まさか!?)

アキオ(純正のレッドパ−ルじゃないな……あのR)

美世(何だろ……あの車……すごいドキドキするっ!)

チカ、チカ、チカ

アキオ「オッ、やる気か」

P「おい美世!なにパッシングしてんだ!」

美世「Pさんゴメン!ちょっと飛ばすよっ!」

P「美世!あのZは!」

アキオ(フィ−リング、合うといいナ)

グガォオオオンーーーーッ!!

美世「こっちだって!」

ウオオォォオオンッ!!

P(やっぱRB26っていい音やんなぁ)

P「って美世!」

美世「お願い!ちょっとだけっ!」
P(芝公園か……)チラリ

P(この先はたった2車線のS字……さらに二号線と分岐しながらブラインドの右!危険すぎる!)

グオオオォォオンッ!!

P(加速G!)

P「美世!やめろ!」

アキオ(Rが全開に入った……)フミッ

グオオオォオオオーーーーーンッ!!

美世(うそぉ……RがS30に離されてる!?社外マフラ−で300以上出てるのに!?)

アキオ(パワ−はこっちが上か)

美世(パワ−で負けるなら……コ−ナ−で取り返せばいい!)

P(一般車が辛い……Zの古い足でクリアできるのか?)

アキオ「……」

キュキュキュキュッ

美世(まるで縫うように一般車をスラロ−ムしていく……)

P「これまでだ美世。ちゃんと渋谷に入れよ」

アキオ(離れていく……結構楽しかったんだけどナ)

美世(まるでくるおしく、身をよじるよう……)

美世(なんだろう?この気持ちは……)

……
AM 1:30 事務所

P「ありがとな、送ってくれて」

美世「うん……」

P「どうした?」

美世「ごめんねPさん。社会人の自覚、持たなきゃだめだよね」

P「説教ならC1出てから散々したからいいよ」

美世「でも……あたし……」

P「さっきも言ったけど、全てを失うのは簡単なんだ。あとから知らなかったじゃすまされない。それがわかればいいよ」

美世「う……うん。それじゃあね」

ブロローーーン……

P(完全にランナ−の目つきだったな……やはりあの時無理にでも止めるべきだったか……)

P(『悪魔のZ』……まだ生きていたなんて……)

……
AM 6:00 美世宅

『やめとけって。あの女もう下の口にピストン入ってるゼ(笑)オトコになんかキョ−ミね−ヨ』

『原田さんってホント不思議ってかキモいよね〜(笑)』

『アイドルになるらしいヨ』

『うっそ絶対無理!オイル臭いアイドルなんて誰得だヨ(笑)』

美世『うるさい……うるさい!だまってよっ!!』

P『……』

美世『あ!Pさん!』タタタ

P『……』

美世『ねぇ……あたし……アイドルやっててもいいんだよね?』

P『……』

美世『あなたのそばにいて……いいんだよね!?』

P『ダメダ』

スタスタ……

美世『待ってよ……どうして!どうして!』

P『オマエガ『オンナノコ』ラシクナイカラダ』

P『オマエナンテイナクナッテシマエ』

スタスタ……

美世『嫌だ……行かないで……』
美世「行っちゃやだあ!!」ガバッ

美世「はあ……はあ……夢か……」

美世(やっぱりあたし、まだアイドル業に自信ないんだなぁ)

美世(昨日の、昨日のあのZともう一度走れたら……何か掴めるかなぁ?)

美世「……よしっ」

……
AM 10:00 事務所給湯室

P「予算は400万、平成11年型、純正アクティブレッドの34。なるべくボディがいい物を頼む」

P「わかってる。でもその色じゃなきゃいけないんだ。なんたって自分の命を乗せて走るんだからな……ああ、すまない。よろしく頼む」ピッ

P(美世を止められるのは俺しかいない……)

ちひろ「Pさん」

P「うわっ!びっくりした、ちひろさんか〜。仕事なら今戻るんで」

ちひろ「突然の前借り、おかしいと思ってました」

P「すいません……」

ちひろ「Pさんが痛い思いするの、私もう見たくありません。もう『炎の34使い』は死んだ!そうでしょう?」

P「今度はタイムの為、己の為に走るんじゃないですよ。誰かの為、美世の為に走るんです」

ちひろ「そんなのエゴです!」

P「いいんです、エゴで。……それにあのZを見てしまった以上、俺は走り出すしかないんですよ」

ちひろ「うそ……Zって……あの『悪魔のZ』?」

P「ええ……」

……
AM 1:00 C1 外回り

グオオオオァーーーンッ!

美世(マ−ジン削ってブ−スト1.1。プラス、足を締め上げたものの)

キュキュキュキュッ

美世(全然あのZのイメ−ジに追いつかない……)

美世(中途半端じゃダメなんだっ)

……
翌日 

PM 9:00 スタジオ

『おつかれさまでした−!』

美世(多分あのZは湾岸仕様。追うためにはパワ−がないと……いくらC1がトリッキ−でも絶対必要)ブツブツ

P「美世」

美世(タ−ビン交換して、とにかくパ−ツというパ−ツを強化品に……)ブツブツ

P「おい美世!」

美世(タ−ビンは何にしよう?34のN1?それともGT2540に……でもそれだと)ブツブツ

P「ダチャ−ン!!!」

美世「はいいいいいいいっ!!!」

P「大丈夫か?心ここにあらずって感じだったけど」

レイナ「具合でも悪いんですか?」

美世「いやぁ……ちょっと考え事を」

P(Zか……)
美世「と、ところでレイナちゃんのRってタ−ビンなに使ってる?」

レイナ「えっ!?ええと……ニスモのT25を二基がけですケド……突然どうしたんですか?」

美世(T25……そんなのもあるのか……)

美世「なるほどな〜」

レイナ「いじるんですか?R」

美世「うん。このまえC1ですごい速いS30Zに会っちゃって。ミッドナイトブル−の」

レイナ「!」

美世「今度会う時は対等な立場で走りたいなぁって。まあ……もう二度と会えないかもしれないんだけど」

レイナ「会えますよ」

美世「へ?」

レイナ「そのZはとっても不思議な車で……なんて言えばいいのか……その人の会いたいという気持ちがホンモノなら必ず会えるんですヨ」

……
駐車場

P「ちょっとレイナちゃん!」

レイナ「どうしたんですか?」

P「あまりウチの美世を煽らないでくれ」

レイナ「あっすいません。そうですよね……違法行為ですもんね……」

P「頼むよ」

レイナ「……Pさんも見たんですか?『悪魔のZ』」

P「っ!」

レイナ「だったらわかるでしょう?美世さんはいくところまでいくしかない」

P「……」

レイナ「あたし達にできるのは事故らないよう祈ることだけですヨ」

美世「Pさ−ん!どったの−っ!」

レイナ「それじゃ、あたしはこれで」

P(わかってるさ……そんなこと……)

……
PM 10:00 帰りの車で

ブロロ−ン……

P「いじったのか……足まわり」

美世「うん。これから煮詰めるつもり。それでさっきレイナちゃんとなに話してたの?」

P「あまり美世を煽らないでくれって言ってきた」

美世「……ごめんね」

P「どうしてもか」

美世「うん」

P「何か悩みでもあるのか?」

P『オマエガ『オンナノコ』ラシクナイカラダ』

P『オマエナンテイナクナッテシマエ』

美世「……」

P「その答えをあのZに求めているのか?」

美世「きっと、誰かに話した方が楽だって事はわかってる。それでも、あのZと走るのがベストだと思っちゃう」

P「美世……」

美世「もう一度あのZと走れば全て吹っ切れる気がして……」

美世「はは……ダメな子だね、あたし。現実から首都高に逃げてさ……」

美世(でも、もう降りられないよ……)

……
また休日が来て……
AM 10:00 美世ガレ−ジ

バチバチッ 

バチバチッ

マキノ「美世さん」

美世「あっマキノちゃんこんにちはっ!」

マキノ「すごいですね。溶接まで自分でやるんですか」

美世「これはスポット増しっていう車を堅くするための作業なんだよ〜」

マキノ「紙の箱をより多くのホッチキスでとめれば頑丈になる……理にかなってますね」

美世「そうそう!もうちょっとで終わるんだ〜♪それでC1のコ−スレコ−ドは……」

マキノ「バッチリです。しかもとびきりのオマケ付きで」

美世「オマケ?」

……
マキノが手にした情報はこうだ。

まずC1外回りのコ−スレコ−ド。これは90年代、『マッドドック』と呼ばれた佐藤公彦がマ−クした6分台前半だということ。

美世「つまりあたしは6分台前半を目指せばいいんだ。そうすればあの悪魔についていける」

マキノ「はい……そうなんですが……」

美世「?」

マキノ「ここで『オマケ』です」

……
マキノのいう『オマケ』

それはC1ランナ−の間で囁かれる『幻の6分切り』……

美世「『幻の6分切り』?」

マキノ「ええ……」

数年前、走り屋雑誌『C girls』の企画で5分台が出たという噂だ。

美世「CGプロ社長とちひろさんがやってた雑誌のこと?たしかもう廃刊になってたよね」

マキノ「詳しいんですね」

美世「うん。お父さんとCGプロ社長が知り合い知り合いだったから。『炎の34使い』って編集部員がかっこよくてさ〜小学生の頃よく遊んでもらったりしてたんだ」

マキノ「仲良かったんですね」
美世「ほとんど家族みたいな感じだった、うん。あたしは『炎の34使い』のこと『お兄ちゃん』なんて呼んでたなぁ」

マキノ「ひょっとして初恋?」

美世「アハハ……そうだね。だけどある日突然『美世とはもう会えない』って手紙が来てさ。あたしが何かしたと思ってお父さんに『謝りたいから会わせて』ってお願いしても『ダメだ』の一点張り」

マキノ「新しい『C girls』も出ないので『炎の34使い』の情報は完全に得られなくなってしまった」

美世「そして自然消滅。……まあ初恋なんてそんなもんだよ」

マキノ「……もしその初恋に続きがあったとしたら?」

美世「へ?」

マキノ「廃刊になった理由、聞きたいですか」

……

突然の『C girls』廃刊……

その裏に大きなアクシデントがあったことは想像に難くない。
それはC1外回りのタイムアタック企画『12時過ぎのシンデレラ』でのこと。
当時中心メンバ−だった千川ちひろのアイディアで始まったこの企画。第一回で『炎の34使い』が6分前半を出し、6分切りが期待された第二回のタイムアタックで、事故は起きた。

江戸橋からスタ−ト、京橋、汐留、そして浜崎橋。
この浜崎橋で横羽から上がってきた『悪魔のZ』と合流。ここから運命の歯車が狂っていく。
ハイペ−スで進む『悪魔のZ』。すぐ後ろを追う34。
決着がつかないまま両者は狂気の走行ラインで神田橋へ。
八重洲線と別れた直後、上りの右で34が撃墜態勢。Zの左サイドへ鼻先をねじ込んだ。
次は右、左のS字。最初の右で二台が完全に並んだ。こうなってはZに勝ち目は無い。左コ−ナ−で34が内側へ。
Zが抜かれる。
悪魔が墜ちる。
『悪魔の撃墜』『C1外回り6分切り』誰もがそれを信じた。
6号と分岐した直後のきつい右。
ブレ−キがいかれたのか、はたまたドライバ−の油断か……オ−バ−スピ−ドで突っ込んだ34はクラッシュ。悪魔はあざ笑うかのようにこれを回避した。
Zのミラ−には、炎を吐きながら踊る34が写ったという……

……
美世「そんな……じゃあお兄ちゃんは……」

マキノ「なんとか生き残ったそうですが……顔のパ−ツが全部溶け落ちたので今は手術で造った顔で暮らしているそうです」

美世「……」

マキノ「それでここからが私も驚いたんですが……」

美世「言わないで……怖いよ……」

マキノ「ちゃんと聞いてください。ちひろさんにも念を押されました」

美世「ちひろさんに?」

ちひろ「当時の私たちには伝える勇気が無かったんです」

マキノ「ちひろさん!?」

美世「どういうことですか?」

マキノ(怒ってる……?こんな美世さん初めて見た……)
ちひろ「美世ちゃん、『炎の34使い』とPさんの本名は知ってる?」

美世「え……34使いはずっと『お兄ちゃん』だったから知らないしPさんもPさんって……まさか!」

ちひろ「そう。『P』という人間は事故で顔を失った『炎の34使い』が整形手術で手にしたもう一つの顔なんですよ」

美世「うそだ……そんなことってないよ……」

美世(じゃあPさんはあたしの事を知ってて……嫌いな女だと知ってて『P』さんをやってたって事……?)

ちひろ「ごめんね……」

美世(知ってたら……好きになんてならなかった……)

P『オマエガ『オンナノコ』ラシクナイカラダ』

34使い『オマエナンテイナクナッテシマエ』

美世「う……あ……」

マキノ「美世さん!」

美世「大丈夫……ごめんねマキノちゃん。ちょっと一人になるよ、あたし」

ちひろ「本当に……」

美世「だまってよっ!!」

マキノ「ちひろさん、行きましょう」

ちひろ「……」

……
AM 1:00 美世ガレ−ジ

美世(あれからぶっ続けの作業でなんとかRを走れる状態にした)

美世(もうなにも考えない……ただ走るだけ……)

美世「ねぇGT-R……あなたはあたしを裏切らないよね……」

GT-R「」

美世(大好きだったお兄ちゃんのRと同じアクティブレッド……)

美世(みんな卑怯だ……Pさんが、お兄ちゃんがGT-Rの相場を知らない訳ないよ……)

美世(お兄ちゃんはあたしがキライ……Pさんもあたしがキライ……)

美世「……黙っててもつらいだけだねっ!行こうっ!あたしの大好きなGT-Rっ!」

……
同時刻 P宅

『なにあの人……不気味……』

ジロジロ……ジロジロ……

『おか−さ−ん。ミイラおとこ−』

P(やめろ……俺を見るな……)

美世『……』

P『美世……』

美世『こないでっ!ミイラ男っ!こんなのお兄ちゃんじゃないっ!』

タタタッ

P『まってくれ!俺を置いていかないでくれ!』

ボッ

P(体が熱い……これは……炎!)

ボッボッボッ

P(溶ける……俺の体が!顔が!溶ける!)

P「うわああああああああ!!!」ガバッ

P(また夢を……はは、美世にはあの時会ってないのにな……)

P(午前1時……いい時間だ)

P(北見チュ−ン、俺に乗りこなせるだろうか)

……
P『俺には時間がありません。あなたなら短期間であのZ並の車を作る事ができるはずだ』

北見『たしか中古でも400万するよなこれ……』

P『ええ』

北見『とりあえず1000万だ』

P『借金してでも必ずお支払いします』

北見『……お前は400万で買った車にさらに1000万以上つぎ込む。そして引き替えに『炎の34使い』の走りを取り戻してお釣りがくる速さを手に入れる』

北見『が、命をオトすかもしれない……』

P『……』

北見『地獄のチュ−ナ−北見淳の作る車はそういうマシンなんだと、ちゃんと了解しておいてくれ……』

……

P(美世追いかけるためならどんな代償だって払ってやる!)

P「頼むぞ……俺の34……」

……
AM 1:30 C1外回り 宝町付近

島「言われたとおりC1に入りましたが……理解しかねますね」

北見「見せたい物があってナ。ところでお前、赤いR34と言われて何を思い浮かべる?」

島「そうですね……やはりMCRでしょう。今走ってるこのC1の話題には必ず挙がりますから」

北見「クククッ……相当無茶してるもんなアイツラ(笑)」

島「確か現存している34はデモカ−としてMCRが直接持っている物とオ−ナ−カ−が一台、計2台でしたよね。そのMCRがどうしたんです?」

北見「もう一台いるだろ?赤い34で有名なのが」

島「!」

北見「『あれほどのドライバ−でも死ぬ』という事実は現役のお前にはツラいわナ」

島「純正アクティブレッドの34……『炎の34使い』……」

北見「その34が今この瞬間、それも『北見チュ−ン』で走っているとしたら?」

グオオァアアアアアーーーーーンッ!!

島(後ろから一台……RBサウンド……)

P(ブラックバ−ドッ!?なぜC1に?)

北見「クククッ……」

……
AM 13:01 浜崎橋JCT

レイナ(ひさしぶりにZのナビシ−トだ−っ♪)

レイナ「あれ?C1行くの?」

アキオ「最近よく走ってるんだ。Zの違う一面が見れて楽しいヨ」

クォオオオオーーーンッ……

レイナ「後ろから来る……ブラックバ−ド!?それにあの34……」

アキオ「……」フミッ

グァオオオオーーーンッ!!

……
AM 13:01 芝公園付近

ブォオオオオーーーンッ!!

美世(結局GT-SSタ−ビンを選んだけど……)

美世(いい……C1によく合ってる!安直かと思ったけど全然いいっ!)

美世(このRであたしは自由になる……全て吹っ切るのっ!)

美世「早く来てZ!あたしを自由にしてよっ!!」

ガォアアアアアーーーーッ!!

アキオ「あのRは……」

レイナ「美世さんのッ!」

島(またR……)

P「美世っ!」

美世「うそ……あの34……」

北見「始まる……とびきりの時間が……」

……
芝公園のS字を200km/hで駆ける。

P(行くな美世!)

美世「今更あらわれたって……もう止まれやしないよっ!」

一ノ橋JCT。一般車が次々合流してくる。
飯倉トンネルを抜け谷町JCTで再び合流。
何重にも張り巡らされた罠が200km/hオ−バ−で後ろへ霞んでゆく。

P(この谷町JCTの後オ−ルクリアなら300km/hの領域!そんなことが起きてしまったら……!)

美世(来て……何もかも吹っ切るには300km/hが必要なのっ!!)

少しずつ、少しずつ、ストレ−トが顔を出す。

レイナ「オ−ルクリアッ!」

美世「やったぁ!」

アキオ(いくぞ……Z)

島「……」

北見「クククッ!」

P「行くしか……ないッ!」
220……250……
霞ヶ関トンネル入口までのチキンレ−ス。
270……290……298……

北見「300km/hッ!クククッ!!」

美世「アハハハハハハ!!」

P「狂っている……C1で300km/hなど……俺もこれほどのペースで昔は走っていたのか!?」

『とびきり』はそう長く続かない。
右コ−ナ−、そして霞ヶ関トンネル手前のジャンピングスポット……通称『霞ジャンプ』が迫ってくる。

島(RRの911では霞ジャンプは無理だ……)

P(ブラックバ−ドが離れていく……)

北見「いいのか?」

島「ここではどんなに速く走っても満たされないので。その代わり湾岸では絶対譲りませんヨ」

北見「クククッ……いい判断だ。でも正直羨ましいだろ?GT-Rのスタビリティは」

島「……それでも今日『本物』のGT-Rに囲まれて理解しました。きっと自分はこのカタチ、このタ−ボモデル、この911しか『車』と認められない独善的な人間なのだと……」

北見「クククッ……それでいい」

……
美世「大したことないねっ!ブラックバ−ドもっ!」

美世(やっぱりあたしを自由にしてくれるのはあなただけ……『悪魔のZ』ーーーッ!)

レイナ「ちょっとアキオくん!この先は」

アキオ「Zが行けるって、そう言ってる」

キュキュキュキュッ!

P(メ−タ−読み220で右コ−ナ−をクリア。じゃあ前の二台はそれ以上のスピ−ドで!?)

美世「ここからだよっ!」

霞ジャンプが迫る。

230km/h……240km/h……250km/h……

P(Zと32が並んだままトンネルへ!)

美世「行けっ!!」

アキオ「お前はオレだZッ!」

P(飛ん……だァ!)

ガシャン!

P「離されてたまるか!」

ガシャン!

アキオ「っ!」

美世「あたしが前を走るのーーーッ!」

200km/hオ−バ−……

Zの前に32が出た。

……
霞ヶ関トンネルを抜けるとすぐさま千代田トンネル。
トンネル内で合流。代官町、北の丸トンネルへ。

P(さっきから32の動きが怪しい……ボディか!?)

美世「こらえてっ!あなたに捨てられたら……あたし……」

アキオ「……」

高木『ボディには必ず『逃がし』がいる……』

アキオ(あのボディには『逃がし』が無いんだ)

レイナ「あのR……泣いてる……」ポロポロ

P(降りろ美世……江戸橋までもたない……)

美世「嫌だよ……まだ走りたいっ!!」

レイナ「もうやめて……勝負はついた……」

しかし美世は止まらない。
竹橋JCT、神田橋、呉服橋。神懸かったドライビングでRを押さえつけ、Zの前を走る……

美世「嫌だ……降りたくない……このままずっと……」

アキオ「レイナ、前に『横羽が永遠だったらいいのに』って」

レイナ「うん……でもどこかで必ず終わりがやってくる。それを受け入れなきゃだめだよね」

レイナ(スピ−ドの魔法がとける……もう終わりにしよう美世さん……)

P(来る……魔の6号分岐の右!)

美世(あっ!)

ボディの限界を大きく越えた32が姿勢を崩す。
P「美世!」

カシャン

美世(Pさん……ああ……あたしなんてことを……)

レイナ(34がぶつけて32の軌道を!でもこれだけじゃ!)

P「くッ……」

アキオ「……」

カシャン

美世「Zが……」

P「まるで手をさしのべるように……」

……
P「レッカ−ありがとうございます」

山本「じゃあこの32はうちで預かるから。いつでも取りにきてOKだヨ」

美世「ありがとうございました」

美世(あたしの大好きな……大好きなR……ごめんね……)

レイナ「美世さん……」

美世「はは……R乗り失格だね」

レイナ「……」

アキオ「じゃあ僕たちはこれで」

アキオ(多分……もうあの二人は二度とランナ−として首都高には来ないのだろう)

アキオ(それでも共に走ったこの夜をオレは一生忘れないと思う)

グァオオオオーーーンッ……

……
P「34は自走できるし、帰ろう美世」

美世「……どうして黙ってたんですか」

P「怖かった。一度のっぺらぼうになった俺を受け入れてもらえると思えなかった」

美世「それでも……」

P「グロかったぞ〜。焦げたゼリ−だ。デロデロしてた」

美世「それでもあたしは、同じ人を好きになったよ」

ぎゅっ

美世「……苦しい」

P「ごめんな……本当にごめ」

ちゅっ

美世(なにも言わないで……今はただ……)

12時過ぎのシンデレラ達……

300km/hの回転木馬の上、スピ−ドの魔法にかけられて

ありがとう『悪魔のZ』

もう二度と叶わない世界で、一緒に走ったことを忘れない

きっとあたしは、あたし達は、これからなにがあっても生きていける……


「油圧OK」

嗚呼、一体この車は

「水温OK」

次に誰を魅了するのだろう?

「アイドルOK」

「OK、Z!」

その車は

まるでくるおしく

身をよじるように走るという……

おしまい

ちなみに現実のC1外回りのタイムはMCRやマッドドック小○雅○が出した4分20秒台らしいです。マジキチ
雑誌情報だから鵜呑みにできんけど

>>38
実験色の強い古い道路ですからね……ほんとそんな場所を300km/hでルーレットするのやめて欲しいお……

>>45
たくみんがスープラに乗って最後しげののあとがき改変で締めたやつなら私のです

一応過去作
アリ「ガキ残酷すぎワロタwww」(オリ)

拓海「DREAM?」(イニDSS)

拓海「プロジェクトDだぁ?」(イニD×モバマス)

肇「秋名のハチロク、ですか?」(同上)

モバP「BE MY BABY?」(COMPLEX×モバマス)

11:30│原田美世 
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