2015年07月24日

志希「アイドルをオモチャにするクスリ」


●00

※R-18

※地の文のみ

※MC多め





メインキャラ

片桐早苗、的場梨沙、堀裕子









SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1437361049











●01







――ねぇ、プロデューサー。



――アイドルをオモチャにするクスリ、欲しくない?











●02



(片桐早苗編)







一ノ瀬志希から押し付けられたアヤシいクスリの使い道を考えた時、

俺が真っ先に思い浮かべた顔は片桐早苗だった。







『あたしがアイドル? キミ〜、冗談は困るなぁ。お姉さん暇じゃないんだぞ?』



早苗は、俺の担当アイドルの一人である。



事務所のアイドル部門が人出不足で、

俺がスカウトの手伝いをしていた時に見つけたアイドルだから、

彼女との付き合いもかなり長い。







『んもー……そこまで言うならお試しでやってあげよ。

 もし変なことしたら…タイホしちゃうぞ♪ ん、タイホっていうか、シメる♪』



声をかけてから驚いたのだが、当時の彼女は現職の警官だった。

驚いた理由は、彼女の身長が150cmそこそこしかないことと、

中高生と言っても違和感が無い童顔のせいだ。実際、酒を買うのも一苦労らしい。



プロデューサーの俺も、彼女が28歳ということを未だに疑う瞬間がある。







『アイドルは、たくさんの人を魅了出来ないといけないんでしょ?

 このあたしのセクシーポーズでみんなイチコロね♪ 任せなさいって♪』



早苗がアイドルとして持つ一番の武器は、その可愛らしい童顔と裏腹の豊満なスタイルだ。



首から下、どんな衣装もパンパンに張り詰めさせる凶悪なバスト。

そこからさらに下ると、なだらかなウエストが続く。

あとは警官として積んでいた鍛錬の賜物――引き締まったヒップと脚が延びる。



あまりに鮮烈なギャップがコラージュじみていて、

それがまた、独特の魅力を孕んでいる。







『プロデューサー君の反応、可愛いわねぇ……うっひっひ♪ あー楽し!』



早苗も自身の魅力に自覚的なのか、人の視線を弄ぶのが楽しいらしい。

早苗の内心にそういう一面があったからこそ、警官を辞して俺の勧誘に応じてくれたんだろう。



警官だって、努力を重ねた末に得た職業だろうに、早苗はそれよりアイドルをとった。

早苗はそれだけ真剣なのだ。







『はぁ…お姉さんちょっと飲み過ぎて酔っちゃった! おシゴト? 忘れてない忘れてないからー。

 ……ほらほら、ちょっと肩貸しなさいよぉ。あ、でもオイタはダメよ♪』



だから俺は、今まで早苗に酒へ付き合わされて悪酔いの面倒を見させられても、

俺とほかのアイドルとのコミュニケーションを――冗談交じりとはいえ――セクハラ扱いして、

ことあるごとにシメられても、『当人が楽しそうだし、しょうがない』で済ませてきた。







早苗のセックスアピール溢れるカラダを抱きたい、という欲望はもちろんあった。

だが、それに加えて日頃の鬱憤があったからこそ、

俺はあのクスリの被験体に、まず早苗を選んだのだと思う。









●03



志希印のクスリは、効果覿面だった。



『プロデューサー君、送ってくれるの? あたしが、熱あるように見えるって……。

 ま、まぁ熱っぽいのは否定しないけどさ、そんなコト言うと、下心があるように見えちゃうぞ♪』



仕事を終えて直帰する早苗を、俺はクルマで自宅まで送って行こうと持ちかけた。

俺の言葉に対して、早苗はあっさり首肯した。



『君の視線って、ほんっとに正直だよねー。あ、ほら。信号変わったから。

 お姉さんのセクシーダイナマイトボディがあるからって、脇見運転はダーメ』



頬を赤らめて、うっすら汗を肌に乗せて、こちらをチラチラ見てくる早苗の様子。

加えて、プロデューサー相手とはいえ、アイドルにあるまじきガードの緩さを見せられた。

俺は志希のクスリの効果を確信した。







『あ、プロデューサー君ったら、送り狼する気だなー?

 くんずほぐれつになったら、昔取ったキネヅカで、関節キメてシメてやるからっ』



俺は、早苗の住むマンションにクルマを停めて、

何くわぬ顔でオートロックを並んでくぐり、

早苗の部屋のドアを開けて、一緒になかに入って、鍵を締め、

これみよがしにチェーンロックを掛けた。



『も、もう、オトコとして後戻りできない、ってやつかな?』



それ以降、早苗は形だけの抗議さえしなくなった。









●04



「あっ! ぷ、プロデューサーくんっ…もうっ、視線と同じで、おっぱいばっかりなんだからっ」



俺は、部屋に唯一のベッドへ腰掛けて、早苗を後ろから抱きしめていた。

早苗は『あすなろ抱きだね♪』とか言い出して、

何故その単語を知ってるんだとツッコミを入れそうになった。



早苗の背後から手を伸ばして、白いシャツの上から凶悪なバストに手を伸ばす。

すると、紺色のタイトスカートと黒ストッキングにつつまれた足が、シーツにシワを作った。

早苗の『おとなしい方の私服』は、どことなく婦警のソレに似ている。







「早苗さんって、絶対学生の頃からモテてましたよね」



俺の胸板に預けられた早苗の背中が、言葉に反応して少し傾いだ。



「あ、あったりまえでしょ。見た目に自信がなきゃ、アイドルなんて誘われてもならないから」



俺は、ほとんど力を入れずに早苗の胸の膨らみを撫でた。

こうすると、宣材写真などで見ている早苗の扇情的なバストと、

今自分の懐にある圧倒的な柔らかさを、脳内で重ねることができた。







「彼氏とかも、途切れたりしなかったでしょう。

 こんないい人、放っとかれるわけがありませんし。

 この胸も、けっこうな男の人に揉まれたんじゃないですか?」



「ちょっと、人を浮ついた遊び人扱いしないでよ」



早苗が抗議の声を上げたと同時に、俺はいきなり早苗の胸を鷲掴みにする。



「ひゃああぅう!」



「だって……クルマに乗ってる時から、乳首勃ってるの、見えてましたから」



「はぁ? え、いや、ブラつけてて流石にそれは――」



俺が手探りで、それらしき感触のところを指で押し包むと、

早苗は首を後ろに反らして、ベッドに投げ出した両足をピンと真っ直ぐにさせた。







「ほら、早苗さん。これじゃあ、分かってしまいますよ」



俺が後ろから早苗のシャツの前を開け、ブラをずらして胸の素肌を晒してやると、

大きさが俺の指先ほどもある赤みがかった乳首が姿を現した。



「お、大袈裟なぁ。普段は、こんなんじゃないからっ」



早苗は狼狽していた。

もしかすると、クスリが回っていたせいで、普段よりも大きくなってたのかもしれない。

志希のクスリなら、ありがちな効能だ。



「へぇ、じゃあ、いやらしい気分のときだけですか」



早苗の貪欲に膨れた両乳首を、俺が指三本でこすり上げると、

早苗は戸惑いと悦びの混ざった声を聞かせてくれた。







●05



「はっ、あ、ああっ、プロデューサー君っ……胸、むねばっかり、ダメぇっ!」



俺は、早苗が余裕を失った様が面白くて、オモチャのように早苗の乳首を弄ぶ。

コリコリに充血した肉を、さすり、くすぐり、撫でて、つまみ、ねじる。

また乳首の勃起が一回り大きくなった。



「こんな有様じゃ、グラビアの時に特注のニプレスが必要ですね」



早苗は羞恥心からか、歯を食いしばって声を殺していた。

反応がわかりやすかったのは、早苗の手と足だった。



「い、やっ、あ、あたし、何かおかしいから……こんな、感じるなんて、何か、ヘンでっ」



早苗は俺の手を掴んで、胸から引き剥がそうとしていたらしい。



らしい、というのは――俺が乳首に刺激を加える度に、早苗の腕が力んで、

俺の手を掴んだままが精一杯という状態だったから。

これだと、むしろ早苗自身の手で、胸を揉めとせがまれているような気分になる。







「ちょっと触っただけでこれだけ感じられるなんて……

 早苗さん、昔の彼氏さんに相当開発されたんですね」



「ち、ちが……っ! あたし、そんなんじゃないからっ」



「じゃあ、もとから、こんなに感じやすいんですか」



早苗は感じると足を閉じるタイプなのか、俺が指を一捻りするたびに、

足をピンと緊張させては弛緩し、張り詰めてはだらりと崩れるのを繰り返す。



「む、むね、胸ばっかりっ、しつこいの……イヤ、こんなの、キライ、キライよっ」



早苗は首をぶんぶんと振って、拒絶の声を復活させた。



「いつも、得意気に見せつけてくるじゃないですか」



「見るのと、触るのは別って言ってるでしょ……」



でも、相変わらず早苗の両手は俺の手首を握ったまま。

ストッキングに包まれた両足は、ぴっちりと閉じられたまま、膝頭をしきりにこすり合わせている。

タイトスカートのなかから、ストッキング同士の衣擦れがさらさらと聞こえる。



拒絶しながら、同時に快楽を訴えてくる。

どうやら、早苗の体はとても器用らしい。







「ひあっ、も、もう、だめ、ちくび、シちゃ、あっ、んああっ!」



早苗の胸を責め続ける。これが妙に癖になる。

セックスの前戯というより、人形で遊んでいる感覚。



自分でも執拗なぐらい、俺は責めを続ける。手が勝手に動いてる気さえする。



「あ、う、うぁっ、はああっ!」



強制的な快楽が早苗を蝕む。手足の次は、早苗の声帯が音を上げる。

何かしゃべろうとしても、嬌声が勝手に言葉を塗りつぶす。



「は、ひっ……ひぁ、あ――ひぁっ、あっあっ……」



さらに胸をいじられ続けて、今度は早苗の呼吸が危なっかしくなる。

背中を曲げたり左右に振ったりして、必死で俺の腕から逃れようとする。







これ、そろそろまずいかもしれない。











●06









――ねぇ、プロデューサー。



――ナニを気にしてるの?







――だいじょうぶだって。コレ、オモチャだもん。









●07



俺の指は、まるで他人事のように動き続けた。



「ひ、いっ、いぐ、む……むね、い、ひっ、イ、イっ――」



さらに早苗の胸で遊んでいると、今度は口までダメになったらしい。

くちびるが半開きのまま引き攣ってて、その端から泡だったヨダレを垂らしている。



「ひ、ぐ、くっ、う――あ、うぁ、あっ」



ふと、早苗の表情が気になった俺は、両手で早苗の顔をこちらに向かせようとした。

が、首筋に力が入っているのか、手だけではなかなか上手くいかない。



俺が体を後ろに退かせると、早苗の体が傾いた。







「……早苗さん?」



早苗の童顔は、マスタートレーナーの特訓中でも見たことがない、引き攣った半笑いの表情だった。

大きく丸い両目が半開きで、瞳がまぶたの裏に半分隠れたり出たりをふらふら繰り返していた。



目を白黒させる、ってこういう様子を指す言葉なんだろうか。













●08



意識が混濁している早苗を、俺はしばらくぼうっと見ていた。

それに満足すると、俺は自分のペニスが痛いほど勃起していることにようやく気づいた。



そうだ。もともと早苗とセックスしようと思って、前戯で胸揉んでたのに。





俺は早苗のベルトバックルに手をかけて、紺色のタイトスカートを脱がせる。

タイトスカートの尻側と、その下敷きにされていたシーツと、

黒ストッキングがびちゃびちゃに濡れていた。



ストッキングを掴んで引きずり下ろしてやると、早苗の太腿から股間に薄い泡が広がっていた。

愛液垂れ流し状態で、足を閉じたままぎゅっとしたりもぞもぞしたりを繰り返したせいだろうか。



なんだかおかしくて、俺は笑ってしまった。









俺は、ようやく脱力してきた早苗を仰向けに転がして、

意識を失ったままの膣内にペニスをあてがい、無造作に突っ込んだ。



「ん……う、あ、ぅ……」



早苗のナカは、キツイというより窮屈な感触。背が小さいせいだろうか。

さんざん大人のお姉さんぶってるくせに、膣は口ほど経験が無いのか、と思うと、

早苗への優越感が湧いてくる。







抜き差しを続ける。

さっきまで弄んでいた早苗の胸が、リズムから少し遅れてぶるんぶるん揺れる。



「ん、ふ、あ……んっ……? ふぁ……あ、な、なにしてるのプロデューサー君っ!?」



狭い早苗のナカを慣らし慣らししつつ出入りしていると、早苗が覚醒した。

声がかなりかすれている。こりゃ、明日早苗はボーカルレッスン休ませないと。



「ナニって……セックス、だね」



「そ、そんなキョトンとした顔で言われても……って、ひあっ!? か、勝手に突っ込んでるんじゃなーい!」



俺が挿入していることに気づくと、早苗は両手で俺をポカポカ叩いてきた。







「だいたい、早苗が悪いんだよ。誘っておいて、自分が満足したらさっさと寝るとか……」



「いやおかしいでしょ!? プロデューサー君こそ、勝手にあたしのカラダいじり回して……

 というか、いつの間に呼び捨て? 一回シた女なら、呼び捨てでも構わないってコトかい!」



「俺のことを、いやらしい視線で見てるとか、適当な名目で今までシメてくれたくせに、

 いざ本番という時で、こんなだらしないところを見せられちゃ、ねぇ」







突っ込むのは昏睡姦じゃなく、呼び捨ての方かよ……と苦笑したのが、さらに早苗の癇に障ったようだ。











●09



「ふんっ、だ! そんなに好き勝手なエッチがイイなら、一人で腰振ってなさいな」



とうとう早苗はそっぽを向いてしまった。機嫌を損ねたか。



が、これでこちらが引いてペニスを抜くのも間抜けだ。



俺が軽く一突き入れると、今まで堅いほど圧迫感のあった早苗のナカが、

一瞬ぎゅっとした弾力で俺を締め付けた。早苗の眉が、ほんの少しだけ震えた。



「やっぱり、早苗がちゃんと目覚めてくれてるほうが、気持ちいいかも」



「それ、フォローだと思って言ってるなら止めときなさい。サイアクだから」



「単なる感想だって。次からは、早苗が起きてる時に入れることに決めたよ」







つれない早苗の態度とは裏腹に、早苗のナカは熱く、

まるでペニスを抱擁しているかのように優しく包み込んでくる。

失神しているときの、ぎこちない感触とはまったく違う。



「そういえば、早苗って普段このベッドで寝てるんだよね」



「……そーだけど、何か?」



俺は早苗のナカを探りつつ、そっぽを向いた早苗の顔のご機嫌をうかがう。



「さっき、早苗が粗相したから、終わったら布団干さなきゃなぁ、と思って」



「……もうやだ、このベッド買い換えるわ」



「イ○アぐらいなら今度付き合うよ」



「えー、最低でもシモ○ズだよ」



「それは、割にあわないかな」







ペニスを突っ込まれたままシモ○ズ以下扱いされて、早苗はさらに憤慨しだした。



「君ね、調子に乗ってるでしょ。こんなの、何かの間違いよ。

 付き合いの長いオトコとオンナには、よくある程度の間違いだから」



俺は、早苗が面白いことを言い出したので、抽送を止めた。



「……アイドルになって、ちょっと男と触れ合う機会が減って、

 このセクシーなダイナマイトボディを持て余したあたしが、一夜限りの気の迷いを起こしただけなの」



俺は腰を動かさないでいる。早苗も腰を動かしていない。

すると、早苗の粘膜が俺のペニスをどんな具合で包み込んでくれているか、わかりやすくなる。







「ここでシテること、全部気の迷いで済ませるなら、

 もうちょっと割りきって協力的になってくれてもいいじゃないか。

 早苗がマグロだったなんて、俺はショックだよ」



「だって、君こそあたしのコトをオモチャか何かみたいに……」



「不貞腐れてるフリしてるけど、実は感じてたりとかしてない?」



「ないない。お姉さんねー、そんな簡単なオンナじゃないですよーだ!」











「……本当は、足腰立たなくなっちゃってるとか。だらしないなぁ」



「あ゛? もっぺん言ってみなさいなコラ」





●10



「いい? 今度はね、あたしが生意気なプロデューサー君をヒーヒー言わせてあげる。

 一度あたしを上に乗せたら、泣いても止めてあげないぞ。覚悟するコトね」



「それは楽しみだ。もしそうなったら、シモ○ズでもフラ○スベッドでもどーんと来い」



早苗は仰向けになった俺の下半身に膝立ちでまたがり、挑発的な宣言をくれた。



それから早苗は俺のペニスを挿入し――ようとして、四苦八苦していた。

なかなかペニスをうまく膣の入り口にあてがえないようだ。







「……そんなご立派なモノをお持ちなら、下なんてロクに見えないよなぁ」



「わかってるなら、少しは手伝ってよ。君がやれって言い出したんでしょうが」



どうやら、くるみが靴紐を上手く結べないのと同じ苦労をしているらしい。

早苗の太腿が子鹿のようにぷるぷるしているのを眺めるのも面白かったが、

さすがに焦れてきたので、俺は早苗と協調し、ようやく挿入までこぎつけた。







「あ、う――んあっ……」



童顔に似合わない、艶っぽい声が早苗から聞こえる。

膝立ちで下半身に一定の力が入っているからか、

早苗のナカはより緊張感を増して俺のペニスを刺激する。



胸をさんざいじめた頃の早苗は、顔面筋が迷走していて病的な雰囲気さえ感じさせたが、

それと比べると今の顔つきはリラックスしていて――端的に言えば、ソソる表情を見せてくれた。



ただでさえ童顔な早苗に、そんな顔をされると、絵が本当に倒錯的になる。



「いい顔してるよ、早苗」



それをグラビアで見せたら、とんでもないことになりそうだ。

発禁になるかもしれない。







「――はっ!? い、いやプロデューサー君、これはね……」



早苗は挿入の瞬間、かなり本気で恍惚としていたらしい。



「……だいたいねー君、さっきの言葉ナニさ。だらしないカラダとか。

 オンナに言っちゃイケない言葉ナンバーワンだよ。わかってる?」



「それは確かに済まなかった。ごめん」



早苗は、自分が挿入の余韻に浸っていたのを誤魔化すためか、説教臭いことを言い出した。



「だから、俺がどれだけ浅はかなことを言ったのか、

 今から早苗『さん』がご教示してくれるんだよな。ありがたいことで」



「その余裕が、いつまでもつかしらねっ」





●11



「はあっ、あ、んあ……あ、はっ、んん……っ!」



早苗は悩ましい喘ぎを零しながら、俺の上で腰をくらくらと揺する。

それに合わせて、まだ勃起の引いていない乳頭と、

シャツの戒めから解き放たれたバストが、もう一度触ってみろと挑発的に躍る。



が、触ることはできない。

早苗は俺の手首を、また早苗自身の手で握りしめていた。

これは手錠をかける真似なんだろうか。



「あはっ……どーよ。余裕ぶっちゃってるけど、ナカでびくびくしてるぞ?」



早苗のナカは、もはや昏睡姦のときとは別人で、

俺のペニスをぐいぐいと責め立ててくる。

焦らされきったところにコレではたまらない。



「……プロデューサーくーん、まだまだ、だよっ!」



早苗は俺を追い詰めていると自覚して、得意顔で見下ろしてくる。

汗やヨダレでてらてらになった肌が、こんなに卑猥なのに、見上げると眩しくてたまらない。







俺が目を細めると、早苗はさらに勢いづく。



「あっ、んっ、んんっ……ふぅうっ……イイでしょ。

 ホラ、プロデューサー君……十分楽しんだよね。素直にイッちゃいなさいな」



「……いいのか?」



俺は耳を疑った。







「な、ナニ、その不穏な反応……え、ちょっと待って。

 プロデューサー君、念のため聞くけど……着けてるよね?」



「着けてないよ」



少なくとも、俺はコンドームを着けた記憶が無い。

また早苗も、ロクにペニスを確認しないまま手探りで上から挿入したので、

コンドームがついていないことに気付かなかったらしい。



「い、いやちょっとプロデューサー君っ、ナニ涼しい顔してるの!?

 子供、デキちゃったら……あたし、君のトコで、アイドル続けられないじゃない……っ」



この様子じゃ、早苗もピルやほかの避妊具のアテは無いだろう。







「ぷっプロデューサー君っ、とにかく……まず、抜く、抜いて! 抜くのよ!」



と言いながら、早苗は自分から腰を上げようとはしない。

さっきので、足腰にけっこうな無理をさせていたらしい。



「今、あまり動かないでくれ……割と、何かのはずみで、出そう」



早苗は、膣内射精の予感に身をこわばらせた。

が、俺は早苗をどうこうするつもりはなく、ただ嘘偽りの無い本音を口にしただけ。







「まぁ……ダメだったら、そうだ。アフターピル飲んでおいて」



「プロデューサー君……き、君ねぇ、アフターとか気軽に言うけど、

 あれはあれでキツ……というか、あたしのカラダを何だと思ってるのさ!」











●12







――早苗ちゃんのカラダを、何だと思ってるのか……



――決まってるじゃん。ねぇ?







●13



俺は、動揺で緩んでいた早苗の手を振り払うと、

早苗の腰を両手で掴んで固定した。早苗は短い悲鳴を上げる。



「ひっ、プロデューサー君っ、な、ナニやってるか、分かって――はひぃいっ!」



俺が下半身を踏ん張らせて、思い切りガツンとペニスを突き上げてやると、

早苗は奥歯をカチカチと鳴らしながら、面白い悲鳴をあげた。







俄然やる気になった俺は、腹筋で上体を起こす。

ペニスに串刺しで馬乗りとなったままの早苗を、そのまま体格差に任せて押し倒した。

これで正常位に逆戻りだ。



「んぐっ、う、あっ! お、おく……っ! だ、ダメ! おくダメっ、あっ、あたしっ」



どこかナカのイケないところを抉ってしまったのか、早苗は膣内を激しく収縮させた。

もうペニスが限界を超え、俺は早苗を見下ろしたままナカに射精した。







「プロデューサー、君……え、あは、まさか……まさかね」



「……バレちゃったか。出したよ、早苗のナカに」



「……ホントに?」



「本当だな。抜いて、確かめてみるか?」







早苗は、大きな目を無言で何度か瞬かせると、いきなり涙ぐんて、



「プロデューサー君の、バカっ、バカっ! アンタ、ナニしてくれてるのさっ!」



叫びながら、早苗は俺の腕を叩いた。

痛くも痒くもない。力がロクに入っていない。



「あたし……君に、声をかけられて……最初は、胡散臭いとか思ってたけど……

 それでも、君となら……本気で、アイドル、やれると……やれると、思ってたのに……っ!」



「別に、俺は今だってそのつもりだけど」



「バカ……どうしてくれるのよ、この有り様ぁ……」







俺は、挿しっぱなしのペニスが、

早苗が泣きじゃくる間もぎゅうぎゅうと締め付けられているのを感じていた。



俺は、早苗の腰を抑えていた両手を、早苗のへその下あたりにあてがった。







「――あ、君の手、ダメっ――おっぱい、みたいに、オカしくされ――」



下腹の肌の向こう、早苗の十分に成熟した女盛りの肉体が、熱く波打つ。手触りではっきりとそれを感じる。

それに連動して、精液にまみれたままペニスを包んでいる膣壁も、物欲しげにむずかる。



「一回出したなら……二回目も、三回目も一緒、だよな」



「ち、ちが――プロデューサー君、やめ、て――」













●14



俺は、正常位で早苗の腹を手で押さえつけながら、リズミカルに腰を使った。

射精は……とりあえず2回はしている。抜かずの3発が、本当にあるとは知らなかった。



「ぁはぁっ……! だ、めぇ……! ソコ、お、おく、突かれたら、あたし、あたし……っ」



俺の手には、早苗の皮膚の向こうで慄き喚く肉の様子が、よく伝わった。

その変化はとてもはっきりとしていて表情豊かだった。



それに比べれば、ナカがぎゅうぎゅうとペニスにしがみついてくるのなど、

駄々っ子が泣きじゃくるぐらい単調なものだった――それはそれで、気持ちよかった。



「あはぁあ――! お、おぐっ、あたしの……しきゅう、しきゅーダメっ、お、んおぉおっ!」



俺が当てずっぽうで早苗の奥に突き入れると、どこかアタリを引いたらしく、

早苗の腹の下が、ぎゅんっと一瞬膨らんで沸き立った。



「あ、くぅ、うぁあ、あ、あっ、ダメ――い、いく、また――イクっ、いっ、イク……っ!」



ペニスの先が、子宮口に届いたのか――とりあえず、俺はソコをグリグリしてみる。

膣内の肉襞とは違う、ふかふかした感触が、あるような――ないような。



でも、皮膚の下を激しく痙攣させている早苗の様子を見ていると、

もしかしたら、という気もしてくる。







本当にそうなのかは、知らない。

でも、オモチャだから、そんな気がする程度でいいだろう。



「ナカ、おく――こっ、こんなイキ方、おかしくなるっ、覚えたら、もどれない――」



戻れない――その言葉、前に早苗から聞いた気がする。







「あ――も……あたし、い――イキ、い、ひっ、いく、イグッ、ひっ、っ――!」



息も絶え絶えで、イクの『く』の字も言えない早苗の上半身。

顔も首も快楽でくしゃくしゃに歪んでしまって、悠然としているのはバストぐらいのものだ。



対照的に、下半身は色々と賑やかだった。

早苗の駄々っ子の膣はついに泣き出して、生暖かい体液を俺にぶっかけてくるわ、

早苗の下っ腹は弾けよとばかりに収縮と弛緩を行ったり来たり。



それはただ腹筋が痙攣してるだけ――とは思うのだが、手で感触を堪能してると、

それがまるで、三十路間際の雌欲でパンパンに膨れ上がった子宮そのものかと想像してしまう。







俺は、ペニスで早苗のナカを緩慢にぐりぐりさせながら、

早苗の子宮――のような痙攣する肉を、指でツンツンと押したり、手でぐいぐいと揉んでみた。

すると早苗は、『あぅ』だの『おぉおっ』だの、一風変わった叫びをあげながら悶え狂う。

早苗は腹のナカが痙攣して、それが尻や足にまで波及する。



俺はピストンを小休止した。ナカの痙攣は、面白いように膣内へも波及する。

腰を使って抜き差しするより、コチラのほうがラクで心地よい。



「あ、う、うあぁっ、くっ――うあ、んんんんっ、う、ううっ――」







●15



俺の手が、時を忘れて早苗の子宮を撫で擦っていると、不意にその手首へ何かが触れた。



「ぷ、ぷろでゅーさー……だめ、て、だめぇ……っ」





俺は、早苗のウエスト横に投げ出された早苗の手を握ってやると、

早苗はしゃっくりのような声を上げた。







「う、む……あたし……産むからぁ……君の、コドモ、産むからぁ……」



早苗の声は、譫言(うわごと)じみた響き。



「だから、だからぁ……ソレ、とめて……オチンチンで、ナカ、突いて、ついてぇ……っ!」



「……早苗は、これ、お気に召さないのか」



早苗は、俺の手がよっぽど怖いのか、俺の手首を爪が食い込むほど握りしめてくる。

どこにそんな力が残っていたのか。



「きもち……よすいて……でも、ナカには、とどかなくて……

 こんなの、つづけられたら……」



早苗の下っ腹は、手で触らなくても、こちらの視線だけで怯えるように引き攣った。



「あたし……きみに、こわされちゃう……」



早苗が、壊れる――それは、困る。







「あ――は、あはぁっ……♪」



早苗の手を握ったまま、俺は抽送を再開した。

早苗は泣き笑いの表情でこちらを見上げてきた。

俺の手で収まりきらないほどのバストが、ゆさゆさと大きめの周期で動く。



「あっ、んあっ! な、ナカ、届く、い、イイの、プロデューサーっ!」



かすれた喉から紡がれる嬌声が、ピッチを上げていく。



「そこ……もっと、シて、突いてぇ!」







俺はペニスで早苗のナカをつつきながら、

妊娠して腹の膨らんだ早苗の姿を思い浮かべようとした。



けれど、あまりはかどらない。

童顔に不釣合いの巨乳と、引き締められた下肢――グラビアの時と同じだ。

どうしても、コラージュじみた違和感が拭えない。



射精が近づいてくる。

もう我慢の必要がないため、俺は遠慮無く早苗に宣言する。



「早苗、そろそろ、出るから」



それを聞いた早苗は、ものすごい力で俺の手を引っ張ってくる。

俺はそれに負けて上体を倒された。



「スキ……スキ、なのぉ……♪」



早苗にくちびるをくっつけられる。こすられる。

べとべとで生乾きな唾液のニオイをさせながら、前戯にするようなバードキス。



そういえば、早苗とキスするのは、これが初めてだった。



俺は早苗に覆いかぶさる体勢で射精を迎えた。

早苗はトロンとした目つきで、しばしカラダを細かく震わせて、やがて大きく息をついた。







「君の手がアブなすぎて……君の手を握ってないと、安心できないカラダにされちゃった……♪」



早苗は俺の手を握ったまま、それだけ言い残してがっくりと脱力し、すぅすぅと寝息を立て始めた。









●16





――ねぇ、プロデューサー。わかる? 手は、特別なんだよ。



――オモチャって、フツー、手で遊ぶものでしょ。だから、ね。





(片桐早苗編 終了)









●17



(的場梨沙編)









事務所の一室で、俺はカーテンを一枚隔てて、

担当アイドル・的場梨沙と二人きりだった。



「プロデューサー、アタシのコト、しっかり見て……笑わないでよ」



カーテンの向こうから、梨沙の声が聞こえる。

そして梨沙は、天岩戸のように細くカーテンを開けて、中からこちらへ顔を見せる。



「アタシ……この衣装、着こなせるようになると思う……?」



「カーテンが細すぎて、梨沙の顔しか見えない。とりあえず、可愛いぞ」



「か、顔は……アタシなんだから、いつも可愛いに決まってるでしょ!?」







やがて、梨沙がおずおずとカーテンを開ける。



「ど……どう、かな」



梨沙の、二次性徴がちらりと見えてきたか――というぐらいの細いカラダに、衣装が絡みついている。



ショッキングピンクを上半身の主に、黒を下半身の主にした配色。

トップスのポイントは、ストラップを二の腕近くまで敢えて下げたデザイン。

ボトムスはサイハイソックスを釣り上げる、梨沙の細い足を彩るガーターが要だ。



細部にも目を配らなければいけない。

ゴールドのチェーンクロスは、動きの邪魔にならないギリギリの数まで着ける。

うっすら浮いた肋骨の傍らには、ハートと翼を模したシンデレラプロジェクトのペイント。







「いいぞ、梨沙ならこれを着こなせる。今度のフェスで、ファンの目線は釘付けだな」



つまり、梨沙がまとうのは、ローティーンにあるまじき挑発的要素に溢れた衣装であった。







梨沙は安堵の息を吐いた――が、すぐ呆れ半分の表情でこちらを見つめて、



「アタシ、プロデューサーのコトはデキるヒトだと思ってるけど……

 プロデューサーの持ってくる衣装、正直言ってキワドいよね。趣味?」



などとつぶやく。またロリコン扱いか。



「衣装は梨沙に合わせて考えている。それだけは保証する」



「売れるんなら、ありがたく着させてもらうけど……早苗にシメられちゃうんじゃない?」







梨沙の言葉を聞いてから、

俺はロリコン容疑で早苗にシメられなくなって久しいことを思い出した。





●18



的場梨沙は、この事務所で一番の――そしておそらく、芸能界随一の――パパっ子アイドルである。



アイドルを目指すような年頃の娘は、父親とギクシャクしていることがありがちだ。

ひどいケースでは父親に逆らって家出してきた者もいる。



が、梨沙は……







『アンタ、プロデューサーなんでしょ! アタシを今すぐトップアイドルってヤツにしなさいよ!

 ホントだったらアンタたちみたいなオトナとは話したくもないんだけど!

 パパに喜んでもらうためにアイドルになるんだから!』



『パパはアタシのことカワイイって言ってるの。だからアイドルできるし!』



『プロデューサー! 衣装姿写真とってパパにメールしといてよ! ヨロシク!』



……デビュー間もないころから、こんな調子だった。

そもそも、梨沙がアイドルを目指すことになったのも、梨沙パパの意向である。







『勝ってパパにたくさんホメてもらうの! 早く負けなさいよね』



『ちょっとカメラ止めて! こんなとこパパに見られたらダメ!』



俺も担当プロデューサーとして梨沙パパとは連絡を取り合っているが、

娘を持つ世の父親がデレデレしそうな梨沙の振る舞いも、

梨沙パパにとっては悩ましいモノらしい。







『趣味? パパとデートよ!』



『アタシはパパのモノなんだから!』



『パパとはやく結婚したいなー♪』



確かに、第三者の俺から見ても、梨沙の依存はキツめな気はする。

人――梨沙パパから――可愛がってもらうことばかり考えている。

アイドル活動を通して、ほかの人のことも考えられるようになってくれれば――と、梨沙パパは言っていた。







●19



そんな梨沙であったが、アイドルとしての素質は大したものだ。

可愛らしい外見、というのは誰でも見ればわかるが、目を向けるべきは彼女の内面。



『フフン♪ カワイイアタシを見なさい! あ、ちょっとジロジロはやめてよねっ』



『パパにアタシのこと頼まれてる? ふ、ふーん。じゃあ仕方ないわね!』



人――やっぱり梨沙パパから――どう見られるか、というのを強く意識していること。

自分だけでなく、人――筆頭はもちろん梨沙パパ――のために気張って仕事ができること。



ここが大事だ。

梨沙は、自分がチヤホヤされたいだけで終わるアイドル候補生とは、決定的な差がある。







『ヘ、ヘンタイって言われてどうして喜ぶの! アタシのファンは何なの!?』



『あ、アタシはイロモノじゃない! イロモノじゃないからねっ!』



『一番セクシーなアイドル……つまり、アタシが天下をとるべきでしょ!』



まだ梨沙は、ニッチなジュニアアイドルを脱せていないが、

向こう何年かしたら、同年代の筆頭アイドルは梨沙になるだろう。

そしてガラスの靴でステージに上がる日が来るのでは、とも俺は思っている。







『パパがアイドル・リサを待ってるの!』



その日までにパパっ子を卒業できているかは、ちょっと不安だが。











●20





――へぇ、そうだったんだー。



――キミのオモチャになる前の梨沙ちゃんって、そんなコだったんだねー。









●21



そうだった。

二人目のオモチャにしたのは、梨沙だった。







『アンタって、ロリコンじゃなかったんだねー』とか、

梨沙がいきなりぬかしやがった。それがきっかけ。



何のことかと思ったら――梨沙の奴、俺が早苗で遊んでる所を見てしまってたらしい。

『早苗がプロデューサーのコトをやたらシメてたのも、構って欲しかったからなんだー』

とか呑気に抜かしてた。困った困った。



梨沙は、自分がパパのこと好き好きって臆面もなく喋ってるせいか、

そこらへんの機微に疎いようだ。



ということで、迂闊な梨沙の口を封じるため、オモチャになってもらった。







●22



「ね、ねぇ、プロデューサー……」



衣装の見直しが終わった。

鮮やかなピンクのトップスに淡い桜色のミニスカートの私服へ着替えた梨沙が、

カーテンを開けて俺のそばに寄ってくる。



「アタシ……へ、ヘンじゃない? このまま帰って、パパに見られても、おかしくないよね?」



「変じゃないと思うが……

 パパ? あ、そうか。今、梨沙パパは山口から上京してるんだったな」



「そーよ! 久しぶりにナマのアタシを見せるの、ご無沙汰だったから、しっかりキメなきゃ」



梨沙は、ツインテールをしきりにいじりまわしながらしゃべっている。



ちなみに、梨沙の言う『ご無沙汰』とは、

ここ一週間スカイプでしか梨沙パパと会話していないことを指している。



梨沙パパは仕事の関係で東京に出張することがままある――らしいが、

それにしても毎度毎度、山口の自宅からご苦労様なことだ。



……あらためて考えると、梨沙が親離れできない原因は、

梨沙パパにもそれなりのウエイトがある気がしてきた。







「梨沙……髪、気になるのか?」



梨沙の長い黒髪は、色艶は本当に惚れ惚れする濡羽で、

年齢を超越した色気を醸し出している。



「髪はオンナの命なんでしょ? アタシの髪、こー見えて素直じゃないから」



だが、一方で形に関してはなかなかのじゃじゃ馬。

何度梳いても、少しだけクセが残ってしまう。

特に後ろ髪の頑固さといったら、只者ではない。



「アタシも、拓海とか芳乃みたいな、さらさらストレートヘアになれたらなぁ」



「今みたいに梅雨でジメジメムシムシしていると、ヘアスタイルは特に難しいよな」



「アタシはまだマシな方よ。キャシーとか、イヴとか、メアリーとかスゴいもん。

 金髪や銀髪って、アタシみたいな黒髪より柔らかくて、しかも一本一本が細いから、

 何もしないうちに伸びたり縮んだりして、勝手に型崩れしていくんだって」



「そうだな。今はどうか知らんが、昔はあいつらみたいな金髪を湿度計に使ってたんだと。

 人間の髪が、どれだけ敏感で繊細なのかがわかるな」



「へぇ、面白いわね♪ あとでパパに話してあげよ!」







梨沙は俺の顔にチラチラと視線を投げつつ、せわしない手つきで髪を弄んでいる。



「……梨沙、髪梳いて欲しいなら、そこらへんの姿見持ってきてくれ。

 梨沙も自分で見ながらのほうが、うまくいくだろうから」



「わかってるなら、さっさと言いなさいよねー!」



サインを察してやると、梨沙はパタパタと軽い足取りで、

部屋の収納からキャスター付きの姿見を転がしてきた。

ここは芸能事務所、鏡は不思議の国へ行けそうなほど揃っている。



梨沙の年頃だと、シンデレラよりアリスのほうが似合っているかもしれない。







梨沙が持ってきた姿見の位置に合わせて、俺が椅子を二脚並べると、

梨沙は鏡面に近い方の椅子へそそくさと座る。



「これから、パパに会うんだから……アタシがイイ、って言うまで、しっかり整えるのよ?」



「……俺も仕事があるんだけどなぁ」



「いや、アタシ、アンタの担当アイドルだから。

 アタシの身だしなみをチェックするのもプロデューサーの仕事よっ」





●23



――髪は女の命。アイドルならなおさらだよね。



――だから、梨沙ちゃんの髪をその手で梳いてあげるってことは……♪





●24



「じゃあ、始めるぞ」



俺も、梨沙のそばに自分の椅子を置いて腰を下ろし、まずは梨沙のツインテールを解いてやる。

髪を下ろすと、梨沙の印象が一気に変わる。

パッションには貴重なお淑やかさが、梨沙の後ろ姿から滲んでくる。



「……ゆっくり、よ? 力、入れちゃ、イヤ」



梨沙も自分の櫛を持ち歩いているが、俺に使わせない。

俺は手櫛で梨沙の髪に触れる。皮膚の上を滑っていく感触は、どんな繊維よりも滑らかだ。





髪をいじってると、妙に沈黙が重く感じられて、

その重さを吹き払うべく、俺は適当なことをしゃべりだす。



「梨沙って、梨沙パパに髪を触らせるコトはあるのか?」



「……あんま、ないかな。パパが触りたい、って言えば、触らせてあげるつもりなんだけど……んっ」



手のはずみで、梨沙のうなじを指がかすめてしまうと、

鏡の向こうに見える梨沙の目が、くすぐったそうに閉じられた。



「でも、パパはね、プロデューサーみたいなヘンタイじゃないから。

 髪の毛を触りたい、なんて言わないよ」



「おいおい、髪を触るのがヘンタイなのか?」



そんな話、スタイリストさんに聞かせたら笑われてしまう。







「……だって、プロデューサーの触り方が……プロデューサーに触られてると、

 なんか、ヘンな気分になるの……」



鏡の向こうの梨沙は、顔を俯けてぶつぶつつぶやく。



「じゃあ、俺は梨沙の髪を触らないほうがいいのか?」



「そんなコトは言ってないでしょ。

 でも、スタイリストさんとかに触られても、こんな気分にはならないから……

 やっぱりアンタの触り方が、ヘンタイじみてるんじゃないの?」



そうこぼしつつ、梨沙は俺の手に髪の毛を委ねたまま。







それにしても、綺麗な髪を梳くという行為が、こんなにもクセになるとは思わなかった。



「んんっ……ん、ふ……」



梨沙の髪は、ツインテールを結んだ後が残っている以外、正統派のストレート。

ウェーブヘアと違って、素直にまっすぐ指をくぐらせれば、

俺と同じ人間とは思えないほどの柔らかくくすぐったい肌触りに包み込まれる。



「ふぁ、んっ……んぁ、あっ……」



「どうだ? ちょっと、鏡見てみろ」



「うん……まぁ、まぁってカンジ……でも、まだ、もっと……しっかり、やって」



口ぶりとは裏腹に、梨沙は鏡面なんてまともに見ていなかった。











●25



結論から言って、俺がどんだけ精魂込めて梨沙の髪を撫でようとも、

梨沙の髪は一向にさらさらにならない。



もちろん、俺は細心の注意を払って、梨沙の髪を乱さないようにしている。



だが。



「ん……う、ん……ぁ、ふぁ……っ」



髪を撫でまわしているうちに、梨沙の肌がじっとりと汗ばむ。

油断すると、紅潮した頬に、首に、肩に、髪の毛が張り付いてしまう。

鏡の向こうの瞳が、ぐずぐずと崩れ蕩けていく。



「ふぁあっ、あ、そ、こ……っ」



梨沙の髪の毛でもっとも頑固な、後頭部頂点に近いハネた一房を、

俺は手のひらで撫で付ける。動作が頭を撫でるほうへ移る。







そういえば早苗は、俺の手で触られ続けるとおかしくなる、などと言っていたが。



このまま梨沙の頭を撫で続けたら、どんなオモチャになるんだろう。







「んんっ……! プロデューサー、アタシ、ちょっと……め、メイク直してくるからっ」



梨沙は声と同時に席を立ち、ぶるぶるっと小動物のようにカラダを震わせると、

逃げるようにして部屋を出て行った。



その不自然な足取りから見るに、梨沙の決断は少し遅かったようだ。









●26



世の中には、梨沙と同じくらいの年頃の女子に欲情し、

その未発達な女性器にペニスをねじ込みたがる男がいるらしい。



また、過去や世界レベルまで視野を広げれば、

梨沙の年齢で子供を作るのが不思議ではなかった時代や地域もある。



俺はそれに共感できない。







確かに、髪と頭を撫でられ続けた梨沙は、赤らんだ肌や乱れた息遣いを通して、

彼女自身の興奮をこちらに伝染させるほどに色っぽい。



でも、梨沙の女性器に勃起したペニスを挿入する気は起きない。

俺にとってそれは、熟れていない未成熟な果実――ですらない。



俺に言わせれば、梨沙の処女を奪うことは――まだサナギである未来のチョウを、

羽化もしてないのにピンで突き刺して展翅しようとする――つまり、

暴挙というか徒労というか、とにかく益体もない行為であった。







ただ、それをもって俺は幼児性愛者ではない――と主張することも難しい。







昔、中世の東方正教会には、マリアの聖画像(イコン)に穴を開け、

そこにペニスを突っ込んでオナニーして、破門されてしまった聖職者がいたらしい。

どこかで聞いた与太話だ。



で、その聖職者が聖画像のどこに穴を開けたかというと、

本来ペニスを突っ込むべき両足の間ではなく、なんと口の部分に穴を開けていたのだそうな。



つまり口腔にペニスを突っ込むということは、セックス以上の意味を持つこともある。







「プロデューサーの……ヘンタイ、ロリコンっ」



だから、今から俺が梨沙の前にペニスを晒して、梨沙にそれをフェラチオさせるなら、

それはセックスに及ぶ以上のヘンタイ行為なのかもしれない。







椅子に座ったままの俺に対し、梨沙は床に膝立ちとなって、

俺がベルトとスラックスをゆるめて晒しているペニスを見つめていた。

具合は半立ちといったところか。



「あんまり手間かけさせないでよ? パパを待たせたくないし」



普段はマイクを握る梨沙の手が、今は俺のペニスに指を絡めている。



「あと……プロデューサー。シテあげてる最中に、アタマ、撫でないで」



「手で撫でられるのは、イヤか?」



「イヤじゃないけど……集中できないの。ダラダラやってると、アゴが疲れちゃう」



梨沙は、まだ先走りも薄い俺の亀頭を、彼女のくちびるの間に埋めていった。







●27



――ふっふー♪ そうだね。プロデューサーも分かってくれたんだ!



――ホント楽しいよね、ヘンタイごっこ♪







●28



「んっ……じゅ、ちゅっ、んく……むぅ……」



梨沙は『フェラチオに集中したい』と口で言ったが、彼女の技巧は拙い。

幼い顔で、小さな口を開けてペニスを頬張る姿は、俺を煽ってペニスをさらに勃起させるが、

しかし射精にいたるほどの快楽をもたらしてはくれない。







「なぁ、梨沙。やっぱり、お前の頭を撫でていいか?」



俺の言葉に、梨沙は伏せていた顔をくいっと上げて、抗議の目線を投げつけてくる。



「梨沙のもっと可愛いところを見たら、興奮して、すぐ済むから」



俺は両手で、梨沙の髪を左右から包み込むように触れた。

梨沙がペニスを加えたまま声を出したのか、口内にノイズのような感触が走った。







それからの梨沙の変化は、いじっていてとても楽しかった。



「ん、んぐっ……う、んぉおっ、んんぐうっ……!」



下ろした黒髪の間から、ぴょこんと出ている耳は、リンゴと同じくらい真っ赤になった。

それが相当敏感になっていたらしく、指でくすぐってやると、面白いように反応する。



「んぐほぉおっ! お、んんっ、んんんー……っ」



鼻息は荒く、汗がキラキラ光る両肩の素肌は、肩甲骨や鎖骨が代わる代わる浮き沈みしている。

フェラチオしたままの口腔は、ヨダレの量が目に見えて増えだして、

梨沙のアゴをつたい、あるいは俺のボトムスを汚す。







上半身だけではなく、少しだけ見える下半身も変化を見せている。

一番露骨だったのは、膝立ちで天井を向いている足の裏とふくらはぎ。



「んぐっ、う、うっ、ううっー、ふ、ふぉおおっ、んぐうっ」



俺が梨沙の頭に手を滑らせる度に、靴越しにもわかるほど足の指がのたうち、

ふくらはぎの曲線は、足が攣ってるのを疑うほど張り詰める。







ふと、俺の足に何かがあたる感触がする。

何かと思って手を止めてみれば、梨沙がおぼつかない手つきで、

俺の膝あたりをタップしていた。



あ、いけないけない。つい梨沙に夢中になってた。



「あ、悪い梨沙、梨沙パパを待たせてしまうな。すぐ終わりにするから」







●29



俺は梨沙の頭を両手でしっかりとホールドすると、そのまま力任せにペニスを抜き差しした。



「んぐほぉおっ! お゛っおお゛お゛おっ!」



イラマチオを食らった梨沙は、濁った呻きと夥しいヨダレを垂らすばかり。

歯がペニスに食い込んで痛む。もう舌も頬も使ってくれない。ただ口にペニスを突っ込んでいるだけ。

ただ、梨沙のぬめぬめした体温と切羽詰まった吐息が味わえて、これでなかなか心地よい。



これなら気分よく射精できそうだ。



「お、お゛ほ――んお――おっ、ぉおっ」



射精の気配が伝わったのか、それとも単に酸欠になってきたのか、梨沙の声音が変わる。

俺は梨沙の頭を手早くシェイクして、射精へ突き進む。







「梨沙――出る、出る、ぞっ」



俺が梨沙の喉奥に精液を叩きつけた頃には、梨沙は半死半生だった。

口内に収めきれなかった精液が、くちびるの端から垂れ流しになる。

手足が散発的にびくついたかと思うと、膝立ちががっくりと崩れ、床の上にへたり込む。



それで床が何かおかしいと気付き、よくよく見てみると、

梨沙の足元はぬるく透明な液体でびちゃびちゃの水たまりができていた。

ミニスカートも両手で覆いきれないほどのシミが広がっていた。







どれだけの勢いで漏らしたのか――と俺が呆れると、また奇妙な点に気づく。

シミで濡れてミニスカートが透けているのに、下着の線が見えない。



「……ああ、さっきトイレ行った時に、下着取り替えようとして――替えを切らしてたのか」



「が……げほ、こほっ……み、みない、で……」



俺のひとりごとに、半死半生から戻ってきた梨沙が反応する。



「だからって、ノーパンにすることはなかったろうに」



「いや……や、だ、いやぁ……プロデューサー……アタシ、こんなの……っ」



べそべそと泣きじゃくりだした梨沙に、とりあえずハンカチを渡す。

梨沙にとっては、フェラチオは俺の遊びに付き合わされてるだけだから、しょうがないと割り切れる。

でも、粗相したり、ノーパンで歩きまわるハメになるのは、自分のせいだから恥ずかしいらしい。







「口は……飲み物分けてやるから、それですすいで……

 服が汚れたのは、トレーニングウェアの予備をもらってくる。

 ちょうどそこに姿見があるし、顔も拭いておけよ。パパが待ってるぞ」



梨沙は疲れきっていた様子だが、やがてのろのろと身支度を始めた。

梨沙パパが待っていることを思い出して、気力を奮い起こしたらしい。







事務所一階の広間で梨沙と顔を合わせた時、

梨沙パパは娘の体調がすぐれない様子を気にしていた。



俺が心配無用と言う代わりに梨沙の頭を撫でると、

トレーニングウェア姿の梨沙は、ぶるりと全身を震わせた。



しまった、これじゃ逆効果だ。





(的場梨沙編 終了)







●30



(堀裕子編)



例のクスリを使っているうちに、一つ深刻な問題に気づいた。



これは、使えば使うほど泥沼にハマっていくシロモノだ。







アイドルたちをいいように弄ぶ倒錯的な体験が、病み付きになってしまうせいか?



確かに、それもある。







ただ、もっと重大で、単純で、根本的な問題があった。







「プロデューサー! エスパーユッコに、さいきっくトレーニングをつけてください!」



「またまたー、プロデューサーは、私のさいきっくパートナーですよね?

 隠す必要なんか無いです! 私、プロデューサーのコト、信頼してますもん!」



「……えっ、だって、この間のお仕事のとき、早苗さんが言ってました。

 『プロデューサーのハンドパワーはマジでやばい』って!

 どうか、私にもハンドパワーを伝授してください……お願いしますっ!」







早苗のザルは、酒だけで勘弁してもらいたい――洒落はともかく。



最大の問題は、このクスリを使ったことをもみ消すために、

さらにこのクスリを使う必要があるという点だ。











●31





――その問題って、プロデューサーの用法用量に原因があるよね?



――クスリは、用法用量を守って正しくお使いください――ってコトで。











●32



『コホン……堀裕子、16才、特技は超能力ですっ。

 私の魅力に気づいてくれたプロデューサーの目は、確かですよ!

 サイキックアイドル、エスパーユッコをご覧あれ! えいっ!』



俺が堀裕子のプロデュースに力を入れ始めたころ、

事務所の一部から『またパッションのアイツは、イロモノを引っ張ってきた』

とかいう囁きが聞こえてきた。



エスパーユッコがイロモノであることは否定しない。

だがユッコは、ただ笑われるだけのイロモノでは終わらないアイドルだ。







『大予言! エスパーユッコ、大ブレイク!』



『さぁ、ファンのみなさん! ユッコのさいきっくイリュージョン!

 念動☆浮遊をご覧いただきましょう! いきますよーっ! ……ムムムンッ!!』



ユッコは、16歳の女の子に、愛嬌を詰め込めるだけ詰め込んだような人間だ。

加えて、グラビアを彩るのに十分な曲線美も持っている。



ユッコは見てすぐ分かるぐらい可愛らしく、ひたむきで素直な性格だ。

まともにやったって目があるのに……と多くの業界人が思う素質を、ユッコは持っている。







にもかかわらず、俺はユッコのアイドル街道に、

サイキックアイドルとかいうイロモノ路線を引いてやった。



それはひとえに、ユッコがサイキックアイドルを自称していたからだ。





●33



『安心を! スプーン曲げても、プロデュース方針は曲げないでいいから』



出会って間もない頃、ユッコとサイキックアイドルについて話し合った時、

俺は『サイキックアイドルとは、裕子自身が考えて決めたモノか?』と、

手を変え品を変え執拗に確認した。ユッコは問いのすべてに力強く頷いた。



『私も……アイドルの心意気は曲げませんからねっ』



『ミラクル起きます! 起こします!』



業界では、自分のおおまかな活動方針すらプロデューサーに投げてしまうアイドルが珍しくない。



そんな連中と対照的に、ユッコは自分の目指すべき理想像を明確に描き、

その理想像に向かって邁進できる決断力を持っている。とても重要なコトだ。



ユッコのように、自分で腹を括った過程を土台として経験を積む。

それでこそ、ちょっとやそっとの障害では揺るがない責任感や自信が育ってくる。

この土台は、所詮は他人であるプロデューサーが与えてやれるモノではない。







『みんなで歌いましょー! さいきっく! 大ユニゾン!』



また、先に列挙したユッコの素質が、

彼女の理想像『サイキックアイドル』を、ただの独り善がりで終わらせない。



ユッコが使う超能力は、たったひとつ。



『みんなを喜ばせる超能力が、私にはあるんですよ……ふふふふっ!』







スプーン曲げ、透視、空中浮遊、読心術、テレポート――そんな素人手品を、

愛嬌に溢れたユッコが、限りなく真面目にステージでキメる。

この力技で、観客の苦笑いを微笑みに変えてしまう。



こんなやり方、ほかのアイドルには真似できない。



『どんな――信じられない事も信じ続けて♪

 強く念じてみれば――スーパーナチュラル♪』



ミラクルテレパシーは、そんなユッコのために作らせた曲だ。







『プロデューサーがいれば、私のパワーは湧き続けます!』



ここまで揃うものが揃えば、イロモノであることが、むしろ可能性の大きさを示す。



昔の芸能界を少し振り返れば……



あどけない外見できわどい歌詞を口ずさんだり、

ぶりっ子とかいう過剰な演技をキャラとして確立したり、

普通っぽい女の子をアイドルに仕立てあげる物語性を売ってみたり……



時代を席巻するアイドルは、その当時に異端とされていた領域から生まれている。

俺は、ユッコならその領域を切り開けると見込んでいる。







『きまぐれなエスパーで――時々ミスもしちゃうけど♪

 失敗なんて恐れない――だって、きっと夢は叶うから♪』



つまりユッコは、エスパーユッコであるがゆえに、トップアイドルを狙える逸材なのだ。







『念動☆浮遊――あっ、あれっ、これ、ちょっとこわい、かも!

 で……でも……あ――かっ……快感……!』



『一大イリュージョン! 眼をかっぽじって見てください! え、違う? 耳?』



『大丈夫、、チャージしてきました! 寝溜め! 食い溜め! サイキック溜め☆』



トップアイドルを狙える逸材……のハズだ。







●34



――へぇ、プロデューサーったら、随分ユッコちゃんに入れ込んでるねー。



――でも、その期待の星・エスパーユッコも、今じゃキミの……。











●35



「なぁ、ユッコ」



俺は、ユッコの前に右手をパーの形で広げて差し出した。



「この手の指を、親指から順番に折っていって、それが小指まで行った時――お前は、催眠術にかかる」



「プロデューサーは、ヒュプノティストだったんですか?」



ユッコの面持ちは真剣そのもの。

催眠術は、科学にも疑似科学にもかぶっている領域で、

ユッコはその単語から勝手に科学的説得力を感じて、あっさり信じてくれたようだ。



「早苗さんも、パワフルなお姉さんのように見えて、隠している気苦労があるから。

 それを察してケアしてやるには、こういう技が必要になる」



「……プロデューサーって、エスパーじゃないとデキない仕事なんですね……」



早苗が人知れず気苦労を抱えているのは本当だ。



それ以外は全部デマカセである。







「ひとーつ」



ユッコに凝視されながら、俺は右手親指を折り曲げる。



「ふたーつ」



人差し指を折り曲げる。



「みーっつ」



中指を折り曲げる。



「よーっつ」



薬指を折り曲げる。



「いつーつ」



そして、小指を折り曲げた。











●36



翌日、仕事の打ち合わせのために事務所へやってきたユッコは、

いつもと様子が違っていた。



「おつかれユッコ――あれ、ユッコ……スプーン持ってないのか?」



「ふぇっ……?」



俺とユッコは、机の横に二人分の椅子を置いて、左右に並んで座っていた。

お互いの座っている様子が、ほぼ全身を視界に収められる位置関係だ。



いつもユッコは愛用のスプーンを持ち歩いていて、

頼みもしないのにスプーン曲げを披露してくれるのだが、今日はその気配がない。







「あ、あの、今日は……」



ユッコにしては珍しい、口籠った返事が聞こえる。



「前に『エスパーユッコに、さいきっくトレーニングをつけてください!』って言ってたじゃないか」



「今、持っては……いるんですけど」



「じゃあ、いつもみたいにスプーン曲げ見せてくれよ。

 まずは今のユッコの状態を知りたいし」







ユッコは手荷物から、おずおずとスプーンを取り出す。



いつもだったら、ユッコはスプーンの柄を力いっぱい握りしめて、

『ムーン、ムムムーン……ムンッ!』などと迫真の念力を見せてくれるのだが、



「む、むむ……んんっ……ふ、うう……っ」



今日のユッコには、昨日までの威勢が影も形もない。これでは致命的にダメだ。

エスパーユッコは本人の真剣さが伝わらなければ、小学生の学芸会以下なのだ。







「別に、焦らなくてもいいぞ。今日はユッコのために、時間とってるし」



俺は素知らぬ顔で、脂汗をかきだしたユッコを見つめる。



「ぷ、プロデューサー……あ、の、私……」



ユッコは目に涙を浮かべながら、俺に視線で何かを訴えかけていた。







昨日の俺は、催眠術でユッコに一つ暗示をかけた。

『ユッコが愛用しているスプーンは、実はユッコの性感帯であった』という、

極めてくだらない暗示だ。



「う……うぅう……はぁ、ふぁあっ……」



つまりユッコの主観では――自分は今、仕事の打ち合わせ中に、

性感帯をプロデューサーの前に晒して、それを握りしめて念力を込めている――という状況になる。



ユッコは、よく俺の催促に応じてスプーンを出したものだ。

サイキックアイドルに対するこだわりと、

自分が『さいきっくトレーニング』を頼み込んだという負い目が、

ユッコにこんな変則羞恥プレイを強制させているのだろう。







●37



「……なぁ、ユッコ」



「ひっ! あ、私、その、えと」



俺が重々しい声を出すと、ユッコは可哀想なほど動揺した。

今のユッコは、傍から見ればふざけているようにしか見えないのだ。



「そのスプーン、貸してみろ」



もうユッコは、誰が見てもおかしいほど震えていた。







「ユッコ、そのスプーンを俺に貸すんだ」



俺はもう一度提案を突き付ける。



「こ、これは、その……ダメ、ですっ、いくら、プロデューサーでも、これは……」



「俺の『ハンドパワーが見たい』とか言ってただろ」



ユッコは、ついに押し黙った。







「なんだか様子がおかしいな、ユッコ」



ユッコの両肩が、びくりと動揺する。



「もう、サイキックアイドルは卒業するか?」







ユッコの震えが、止まった。





●38



「プロデューサー、今のうち、一つだけ……言っておきます。覚えてて、ください……」



ユッコは、スプーンの柄と匙の部分に、汗の浮いた手をそれぞれ片手ずつ乗せていた。

スプーンの銀色のふくらみは、ユッコのぬくもりで曇っていた。



「私……みんなに、サイキックなんてって、呆れられたり、笑われてたのに……

 プロデューサーは、真剣に話を聞いてくれて、私を、エスパーユッコにしてくれて……」



スプーンを捧げ持つユッコの手は、腕ごとガタガタ震えていて、

今にもスプーンが床に滑り落ちそうだった。



「だから、私……プロデューサーと一緒に、サイキックアイドル、続けたい……

 これだけは、ホントなんですっ……だから、だからっ」



スプーンが床に落ちたら嫌なので、俺はユッコのスプーンに下から手を伸ばす。



「私がおかしなこと言っても……それだけは、信じて……」







俺がユッコのスプーンを握ると、

ユッコは椅子に座ったまま、がくんと机に突っ伏した。

顔を両腕で覆って、呻きだか喘ぎだか、とにかく何かの声を殺している。



ユッコが机に突っ伏したことで、

俺からはポニーテールに半分隠れたユッコのうなじが見えた。

ふわふわと火照った肌の様は、梨沙はもちろん、早苗より色気があるかもしれない。



「……具合が悪いのか、ユッコ」



「だめ、です……わたし、いま、みせちゃいけないかお、してます……」



なるほど、視界からスプーンが外れると、少し余裕ができるらしい。







それにしても、俺は『スプーンが性感帯』という大雑把な暗示をかけただけなのに、

ユッコときたら、こんなはっきりとした反応をしている。



まさか、ユッコは自分の性感帯がどういうところで、

そこを他人に見られたり触られたりすると、どう感じるか……という経験や記憶があるのか。



エスパーユッコなんて無邪気なキャラなのに、

コチラはなかなか進んでるらしい。







「なぁ、ユッコ。最近暑いよな。もう夏本番だもんな……暑さにアテられて、

 お前のカラダは本調子じゃないんだよ」



「……ぷろでゅーさー……あたし、は」







「さっき、ユッコが打ち合わせに来るのに合わせて、コンビニで甘いもの買ってきたんだよ。

 冷蔵庫で冷やしてるんだが、一旦それ食って休憩しよう。なぁ」



俺はコトリと音を立てて、スプーンを机の上に置いてから、

椅子から立ち上がって冷蔵庫の方へ体を向ける。



「ああ、そうそう――ユッコ」



ユッコは両手で顔を拭いつつ、席を立った俺を見上げていた。







「ユッコは、バニラとストロベリーだったら、どっちが好きだ?」



スプーンでストロベリーアイスをすくう瞬間の、

半分悟りを得たようなユッコの表情は、ちょっと忘れられそうにない。





●39



ユッコにかけたことがある暗示で、

今のところ一番面白かったのは、空中浮遊のイメトレだろうか。







「あっ、うぁあっ、んああっ! プロデューサー、これぇ……っ」



俺は、ステージ衣装を着せたユッコと向かい合い、

立ったままペニスをユッコの膣内に挿入していた。

ユッコは、腕を俺の首の後ろで組んで、足も俺の下半身に絡めている。



いわゆる駅弁という体位で、俺はユッコと行為に及んでいた。



「ふ、ふかいとこ、ぐりぐりしてっ、ふわふわして、きもちいいですっ……!」



俺は、これぞ体が浮遊している感覚に慣れるためのさいきっくトレーニングなんだ――

という暗示をユッコにかけた。はじめはぎこちなかったユッコも、飲み込みがすこぶる早く、

今では自分からこのトレーニングをせがむようになる有り様だ。







「あ、はあぁあっ、あうっ、なか――わたしの、なか、きて、きちゃい、ますっ!」



ユッコの体が脱力したら危ないので、俺は激しい動きは行わない。

腰と膝を使ってユッコを小刻みに揺するだけ。



それがユッコのお気に入りだ。



「ぐいっ、ぐいって! わっわたし、また、とんじゃい、ます、あ、うあっ、あああーっ!」



俺のペニスは、ユッコの奥の奥に達する。

ピストンの速さの代わりに、ユッコ一人分の体重が思いっ切りかかった抽送は、

抉るというより掘削するという勢いで、ユッコのナカを責めていく。



「あ――ふぁあっ、んんっ、ふ、ううっ、あっあっ」



この体位をしてて気持ちいいところは、ユッコの反応だろう。

俺がたいして動けないので、ペニスへの刺激はユッコ任せになるのだが、

そのおかげで、ユッコの膣内がにゅるにゅると蠢く感触に集中できる。



「ぎゅ――ぎゅって、してて、くださいっ! わたしが、おちちゃわないように……っ」



あとは、ユッコから全体重を預けられ、手足でひしとしがみついてこられると、

ユッコの全身の柔らかさをいっぺんに味わっている贅沢な気分になれる。



「あ――ま、また、きちゃいます、わたし、も、もうだめかも――」



「ユッコ……トレーニングだし、もうちょっとだから……頑張ろう、な」



それに、落下しないようにとか、トレーニングのためとか、なんだかんだ理屈はあるが、

ユッコが俺から離れないようぎゅっと抱きしめてくれる動作は、健気さすら感じる。



身も心も歪んだドロドロのセックスに興じているのに、なんだか癒やされていく。

これもユッコ独特の愛嬌のせいか。







●40



「ああっ! んく、うぅ、ふぁ、んああぁああっ!」



やがて、ユッコのびくびくとした痙攣を全身で感じる。

こんなに密着していると、ユッコの感覚が俺を侵食してくるんじゃないかって錯覚がする。

感覚同調――まるで超能力だ。







「ユッコ、ユッコ……よく、頑張ったな」



俺がユッコを抱いたまま、ベッドに腰を下ろす。

俺が座ったのに気がついたユッコは、上半身をもぞもぞさせて、俺にキスをせがむ。



「えへへ……いまなら、ちゅー、しちゃっても、いいですよね……☆」



「……ああ、そうだな」



ユッコは、不慣れな頃のトレーニングで、

駅弁の不安定な体勢のまま強引にキスしようとして、

歯がぶつかってくちびるを切ってしまったことを気にしていたらしい。







「ぷろでゅーさー……☆」



「……どうした、ユッコ」



ユッコは、俺の背中に回した腕に、力を込めてきた。



「わたし……ぷろでゅーさーといっしょの、とれーにんぐ、だいすきですっ!」



「……それは、よかったな。今日も、よく頑張って――」



ユッコは、合図も無しにいきなり俺のくちびるへ吸い付いてきた――さいきっく口封じか。



「ちゅ、ちゅっ――えへへ、だから、わたし、もっと、したい……ですっ」







すぐ近くのユッコの笑顔は、ステージ上で見せる営業スマイルよりも、屈託なく無邪気。



……実は、駅弁を長々と続けてたせいで、もう足腰がきついとか、

そんなことが言えないぐらい、ユッコの表情が眩しい。







「ああっ! ん、んああっ、ふああぁあっ、これ、すき、これすきいっ!」







ユッコとのさいきっくトレーニングで、唯一困るのがこれだ。

一度おっぱじめたら、ユッコが満足するまで絶対に離してくれない。



ユッコはアイドルとしてのパフォーマンスのため、ハードなトレーニングを積んだ高校生。

対して俺は、不規則・不健康を絵に描いたような――俺はユッコより体力がない。



ということで、さいきっくトレーニングの翌日は、足も腰も精力も気力もガタガタになる。

まさかここで、ティーンエイジャーと張り合う早苗の苦労を実感させられるなんて。







なおユッコによると、本番の念動☆浮遊では、紐で吊られているうちに、

浮遊感で俺とのさいきっくトレーニングを思い出して、空中で恍惚として、

そのままイッてしまったらしい。いろんな意味で危うく大事故である。



そんなことがあったので、

さいきっくトレーニングにかこつけたセックスは止めてしまった。





(堀裕子編 終)









●41



――へいへーい、楽しんでくれているようだねー♪



――使い過ぎて、おクスリ切らしちゃった?







――んー、キミもなかなかユカイなところを見せてくれるね。



――早苗ちゃんとか、レッスンで一緒になる度に、やたらウエストを気にしててさ。

  キュッとキレイに引き締まってるのに、なんでだろーと思ってたんだけど、

  キミがしこたま可愛がってあげたせいだったんだね♪



――あれ? ということは、梨沙ちゃんが髪の毛をいじり回すのも、同じ理由かなぁ。

  いやはや、キミも立派なロリコンさんになったもんだー。



――あと……シロート催眠術であんなことまでデキるなんて、志希ちゃんオドロキだよー。

  ユッコちゃんの才能もあるんだろーけどー。鰯の頭も信心から、ってヤツだね。ふっふー♪







――そして、キミもまた……女のニオイが染み付いてるのは元からだったけど、

  ずいぶんメス臭さにまみれてるねぇ♪ いつか刺されても知らないぞー。







――で、追加のおクスリ、欲しい? 欲しいなら、あげるよ。



――キミがアイドルをオモチャにするの見てると、けっこー面白いし。







――そ。そーゆーコト。アイドルは、キミのオモチャ。







――そしてキミは、あたしのオモチャ♪







(おしまい)







16:30│一ノ瀬志希 
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