2015年08月03日

夏樹「この前、輝子とライブハウス行ったんだけどよ」李衣菜「!?」


李衣菜「えっ……? それはなに、仕事で?」



夏樹「違えよ、オフ日にだ。意外と……ってほど意外でもねーけど、アイツとは結構話が合ってさ」





李衣菜「いやちょっと待ってちょっと待って。なつきちと一番話が合うロックなアイドルと言えば、私でしょ?」



夏樹「そうだな。んで話の続きなんだけどよ、輝子のやつ耳がよくてさぁ」



李衣菜「いや『そうだな』じゃなくて!」



夏樹「んだよ自覚あんじゃねーか。そうだよ、お前が一番話が合う相手なわけねーよ」



李衣菜「そういう意味じゃ無いから! ていうか普通にショックなんだけど!?」



夏樹「じゃあ、好きなバンドは?」



李衣菜「…………ビ、ビートルズ?」



夏樹「何で疑問形なんだよ……」



李衣菜「た、たくさんあって迷っただけだから!」



夏樹「へぇ……じゃあ、BEATLESで一番好きな曲は?」



李衣菜「へ? ……そ、それはほら! ……ス、スタープラチナ……?」



夏樹「ジョジョまでにわかじゃねーか」





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夏樹「じゃあ輝子、お前の好きなバンドは?」



輝子「フヒッ……スリップノットとか……あっ、李衣菜さんは…リンキン・パークとか……気に入ると思うぞ……」



李衣菜「居たの!?」



輝子「……フヒッ…居ましたけど…ずっと居ましたけど……」



夏樹「あー無駄無駄。コイツにお勧めの曲紹介したって聴きゃしねーんだ」



李衣菜「い、いやぁ……やっぱロックてさ、教えて貰うものじゃないと思うんだよねー、なんて……」



夏樹「お前はロックを何だと思ってんだ」



李衣菜「人生?」



夏樹「なに? ぶっ飛ばされたいの?」



李衣菜「そ、そんなに怒らなくてもいいじゃん……」



輝子「でも……本当に格好良いバンドだから……聴いてほしいと、思う……『Given Up』とか凄く……良いから」



夏樹「あっはっは! おもしれーな輝子! 諦めろってか? あっはっはっは!」



輝子「いや……そういう意味じゃなくて……え? ……あの曲訊くと、やる気出ないか……? 意味も含めて……逆に、頑張ろうって……」



夏樹「お前歪んでんなー。いや言ってる意味はわかるけどな。良い意味で、感性が違うよな」





李衣菜(ヤバイ、なんの話してるか全然わかんない)



輝子「でも……杏さんのスタンドっぽいよな……『ギヴンアップ』……きっと隠密特化だな…持続力はE……」



夏樹「ぶはっ! ちょっ…くひひっ…待てよ輝子……笑いすぎて腹が……!」



李衣菜「へ、へー? そんなにダルそうな曲なんだー」



夏樹「いやめちゃくちゃアガってる曲だけどな」



輝子「シャウトが格好良い系の……ノリノリで聴ける曲……だな……フヒッ……」



夏樹「杏っぽいっていうのもネタだからな? かなり悲壮な歌詞だから」



輝子「でも、引きこもりからは……共感が得られる……フヒヒッ……」



李衣菜(なんかめっちゃ責められたんだけど……!)



李衣菜「そ、そういえばなつきち、さっき何の話しようとしてたの?」



夏樹「ん? ……ああ、輝子の耳が良いって話か。いや、その日聴きに行ったのはインディーズのニューメタルだったんだけど――――」





李衣菜(くそぉ……絶対に見返してやる! 二人の話に付いていってやる……!)





――――――――

―――――

――





李衣菜「と言うことで奈緒先生! ジョジョについて教えてください!」



奈緒「いやそうじゃねぇだろ」



みく「ダメだこりゃ……」







李衣菜「なんで!? 二人の話題に付いていくためには必要なことでしょ!?」



みく「普通に洋楽訊こうよ……」



李衣菜「いやほら……モチベーションの問題で、ね?」



みく「モチベーションってなんにゃ。洋楽訊くためにモチベーションが必要っておかしくない?」



李衣菜「いやおかしくないでしょ!? なんかこう、ハードル高いじゃん!」



奈緒「まあ、その気持ちは少しわかる……けどジョジョから洋楽に入るって、完全に中二病のテンプレじゃねぇか」



みく「そもそもジョジョが受け付けなかったらその時点でこの作戦詰んでるよね?」



奈緒「んー…まあ、にわかだしその辺は大丈夫だと思うけどな……」



李衣菜「何? 大丈夫ならいいじゃん! なに渋ってるの?」



奈緒「諸々のディスりに突っ込まないお前のメンタルは素直に尊敬する」



みく「……にわかだから……あー、にわかだから渋ってるんだね。理解したにゃ」



李衣菜「え、なに? どういう意味?」



みく「オタクってにわかを一番嫌うからね」



奈緒「あたしはヲタクじゃねぇけどな、うん」





奈緒「そもそもさ、ジョジョこそ教わるものじゃ無いと思うんだよな。普通に読めよ、コミックス」



みく「ロックこそ教わって来てほしいにゃ。とりあえず辞書でも引いてみたら?」



李衣菜「ねぇみく、それはもしかして馬鹿にしてる?」



みく「え、じゃあロックで辞書引いたことあるの?」



李衣菜「………ないけど…」



奈緒「引いてたらそれはそれでロックじゃ無いしなぁ……」



李衣菜「で、でも! 意味は知ってるし! 『規制標識の破壊』でしょ!?」



奈緒「めちゃくちゃロックなこと言ってんなコイツ」



みく「標識の破壊は道路交通法115条で禁止されてるにゃ。普通に犯罪にゃ」



李衣菜「ふっ……甘いね、みく……ロックってのはさ―――そういうもんなんだぜ」



奈緒「ごめんな、みく。あたしが余計なこと言ったから調子のっちまったな」



みく「李衣菜チャンはわりとデフォルトで調子のってるから別に大丈夫にゃ」





李衣菜「じゃあなに!? 私にロックを教えてくれるって言うの!? このロッキンガール多田李衣菜に!?」



みく「もう失笑しかないにゃ」



奈緒「いや、だから夏樹さんとか輝子に教えて貰って来いっての」



李衣菜「嫌だよ! いまさら恥ずかしいじゃん!」



みく「それこそ今更だと思うけどにゃあ……」



奈緒「恥ずかしがっててロッカーが出来るかよ」



李衣菜「さっきからちょいちょい、『私ロック知ってます』見たいなこと言ってるけどさ! 奈緒だってロックなんて知らないんでしょ!?」



みく「ニルヴァーナ」



奈緒「おい」



李衣菜「なに……なにその秘密の呪文……もしかして私だけなの…? 洋楽を知らないのは……私だけ……?」



みく「ほ、ほら……芳乃チャンとか多分知らないし……」



奈緒「それフォローになってんのか? 芳乃レベルじゃないと話にならないってことだよな?」





みく「……ちなみに、李衣菜チャンが知ってるロックバンドってどのくらいあるの?」



李衣菜「へ? そそそそんなの、両手の指じゃ足りないって!」



みく「じゃあ10組以上上げてみて、どうぞ」



李衣菜「…ッ!? え、えっと……ビートルズに…ク、クイーンに……り、り…りんきんぱーく? と、ブ、ブルーハーツと……」



奈緒「……おいこれ四つ目って…」



みく「……まあ、ロックバンドだし……洋楽に限定してなかったから……」



李衣菜「あとは……あとは……ジョンレノン!」



みく「うん、その人ビートルズのメンバーね」



李衣菜「………あと、は……ど、ど忘れかなぁ? …ほら、喉まで来てるんだ……もう少しで名前が……!」



奈緒「嘘だろ速いよ……まだ半数にも到達してねぇよ……」



李衣菜「……はっ! ロック・ザ・ビート! これもロックバンドだから!」



みく「明らかに苦し紛れだよね。いま閃いたよね」



奈緒「そうじゃ無かったら自分たちのユニット名をド忘れしてたってことだもんな」





李衣菜「…………参りました」



奈緒「にわかにも程があるだろ……」



みく「わざとやってる? もうにわかキャラで突き進むって決めたの?」



李衣菜「あるいはそれもロックだよね」



奈緒「諦めてんじゃねえか」



李衣菜「Given Up」



みく「覚えたての英単語で遊ばないで」



李衣菜「諦めないよ! 私はロックなアイドルになる! その夢は絶対にあきらめない! コードだって二つも覚えてるし!」



奈緒「それは良く頑張ったな」



みく「コード覚えるなんて凄いじゃん」



李衣菜「なんで普通に感心されてるの……? 嘘でしょ……コードすら覚えられないと思われてたの……?」



奈緒「だってお前、何年にわかやってるんだって話だしな」



みく「普通なら李衣菜チャン成人してるよ?」



李衣菜「待って、これ禁忌に触れてない?」



――――――――

―――――

――





  【 二週間後 】



李衣菜「やっぱ私的にはさー、リンキン・パークがいま一番キてるバンドだと思うんだよねー」



莉嘉「リンキン……? 初めて聞くけど、そのバンドって有名なの?」



李衣菜「え? あ、そう? 初めて聞く名前だった? ふふっ、まあねー。洋楽に興味が無いと、知る機会は少ないかもね」



卯月「李衣菜ちゃん、洋楽も聴くんですね! さすがロックなアイドルです!」



李衣菜「えっへっへ〜、あったりまえじゃん? ロックな私が洋楽を聴いてないわけないでしょ?」









奈緒「……なあ、あれって……」



みく「どうせいつかボロが出るにゃ……今くらい良い夢見させてあげるにゃ……」



奈緒「いやでも……アルバム一枚貸しただけであそこまで調子に乗られるとさ…」



みく「一枚しか貸してないの!?」



奈緒「いや……あたしだってそこまで洋楽に傾倒してるわけじゃねぇし……リンキンはハイブリッド・セオリーしか無かったんだよ……」



みく「………ぐぬぬ…ほかに洋楽のCDを持ってそうなアイドルは……」



奈緒「飛鳥とか……? 連絡するか?」



みく「それだにゃ。頼んだよ奈緒チャン」





奈緒「つーかみく、お前李衣菜のロック化に割と積極的だな」



みく「まあ、一応相方だし……いつまでもにわかじゃ居られないでしょ」



奈緒「夏樹さんの話だと、内面的には意外とロックになって来てるらしいけどな。『知識だけの頭でっかちはロックじゃねー』って」



みく「………それ李衣菜チャンに言ってあげたらいいんじゃないの?」



奈緒「『だからと言って学ぶなってことでもねーけどな』とも言ってたぞ」



みく「見透かされてるにゃ……ロッカーとしての格が違うにゃ……」



奈緒「まあ夏樹さんだって聴くもんは聴いてるだろうし、ギターだって勉強しただろうからなぁ」



みく「……李衣菜チャンって、普段どんな曲聴いてるの?」



奈緒「ああ……それなんだけどな。この間、携帯に入ってる音楽をざっと見せて貰ったんだけどな」



みく「どうだったの……? ポップスしか入って無かったとか?」



奈緒「いやそれが……意外と入ってたんだよ、ロックバンドの曲」



みく「…………は? 嘘でしょ?」



奈緒「それが本当なんだよ。何を言ってるかわからねぇと思うが、あたしにもわからなかった」





みく「………じゃあ、なんであんなに知識が無いの?」



奈緒「たぶん『音楽』意外に興味がないから、調べたりしないんじゃねぇかな。英字だから、曲名も一々覚えてないとか」



みく「……あれ? それって結構ロックじゃない?」



奈緒「だよな……だからやっぱり、夏樹さんの言ってることは当たってんだよ。内面的には結構ロックなんだ、李衣菜」



みく「……いや…でも……」







李衣菜「つまりさー、ここのギターリフが最高なんだよね。ギターリフだよギターリフ、わかる?」



莉嘉「なにそれ? なんかおいしそう」



李衣菜「あっはっは! わかんないかぁ! あのね、ギターリフのリフはリフレインのことで――――」







みく「どう見てもにわかロッカーなんだけど……」



奈緒「だからきっと、問題なのは振る舞い方なんだろうな……」



みく「ある意味、無意識に自分のキャラを守り通してるってことかにゃ……?」



奈緒「あいつ本当は天才なんじゃねぇの?」



――――――――

―――――

――





 【 飛鳥の部屋 】





飛鳥「ようこそ、ボクの部屋へ。何も無い所だけど、ゆっくりして行ってよ」



奈緒「いや……何も無いか? 漫画とかラノベとか、あたしが驚くほどの取り揃えなんだけど……」



飛鳥「気にしなくて良い」



奈緒「お、おう……」



李衣菜「え、これなに? なんで私呼ばれたの? アニメとか興味ないよ?」



みく「むしろなんでアニメ鑑賞だと思ったの? みくもいるんだけど?」



飛鳥「待ってくれ。それは聞き捨てならないな。それじゃあまるで、ボクがオタクみたいじゃあないか」



奈緒「これだけラノベ読んでて良く言うよな……」



飛鳥「ライトノベルがイコールでオタクという図式が出来ているキミのほうがよっぽどオタクだと思うけどね」



奈緒「ぐっ……この……」



李衣菜「オタクって言われて嫌がるのって、なんかオタクっぽいよね」



みく「あっさり核心突かないの」





奈緒「で、持ってるんだよな。洋楽のアルバム」



飛鳥「嗜む程度にはね。勧めてもいいけれど、そういうことじゃないんだろう?」



李衣菜「まあね。ロックは魂だからね。聴いて心で感じないとね」



飛鳥「なるほど、言っていることは確かにロックだ」



みく「言動だけ、ね。知識は皆無に限りなく等しいにゃ」



李衣菜「そ、それは言いすぎじゃ無い……? ギターリフとか知ってるよ……?」



みく「大してバンドに興味の無いみくでもギターリフくらいは知ってるにゃ……」



飛鳥「まあ、興味を抱いた対象について本当に熱心なら、全てを理解っておきたいと思うのが人の性ではあるかな」



奈緒「ちなみに夏樹さんは『知識だけの頭でっかちはロックじゃねー』って言ってたけど」



飛鳥「誰かの発現を持ちだすのが間違っているよ。彼女だって、自分の意見を押し付けたかったわけじゃ無いはずだろう?」



奈緒「……まあ、そうだけど…」



飛鳥「簡単に言語化出来る物なら、ここまで多くの人々を惹きつけたりはしない。掴めないから手を伸ばすんだ」



みく「……普通に格好良くてぐうの音も出ないにゃ」





飛鳥「まあだからと言って、蓄えた知識を徒にひけらかすのは感心しないかな。知識というのは自慢するものじゃ無くて、語り合うものだ」



李衣菜「ぐぅ……!」



奈緒「ピンポイントで李衣菜の傷口を抉ってきやがる……」



飛鳥「だから知識を持つことそのものは罪じゃ無い。例えば、包丁を料理に使うのは普通だろう? 知識も一緒で、使い方が問題なんだ」



李衣菜「つ、つまり私が中途半端な知識を莉嘉や卯月に語っていたのは……」



飛鳥「包丁でそうめんを一口サイズにカットするくらいの暴挙だね」



奈緒「イタリア料理にいちごをトッピングするくらいの無謀だな」



みく「疲れて帰ってきたら鯖の押し寿司を渡されたくらいの絶望だにゃ」



李衣菜「良かれと思って……良かれと思って……」



奈緒「あとでその浅い知識を卯月や莉嘉がブログに出も上げてみろ。ファンから衝撃の真実が明かされることになるぞ」



みく「良かれと思ってって何? 良かったのは李衣菜チャンの気分でしょ?」



飛鳥「自分のキャラを把握しての行動だとしたら、尊敬に値するけれどね」



奈緒「無意識だから尚やべぇだろ。キャラの一貫性に関しては346のトップ3に入るんじゃねぇ?」





李衣菜「で、でもさ! なんかこう、勉強するのってロックじゃ無くない!? 知識を深めようとするのって、ちょっと格好悪いじゃん!」



飛鳥「李衣菜。一つ良いことを教えてあげよう」



李衣菜「……?」



飛鳥「ミック・ジャガー、ブライアン・メイ、ジェリー・ハリソン……他にも挙げれば切りがないが、彼らには共通点がある」



李衣菜「……そ、それは…?」



飛鳥「一流大学を卒業しているんだよ」



李衣菜「ッ!? ロ、ロッカーが!? 大学!?」



飛鳥「ハーバードとかロンドン・スクール・オブ・エコノミクスとか、耳にしたことくらいはあるだろう?」



李衣菜「ッッ!? ハーバード!? ハーバード大学!?」



奈緒「……まあ、意外と高学歴な人が多いよな」



みく「学歴が関係あるわけじゃ無いけど、考え方によっては関係ないからこそロックだよね」



飛鳥「つまりだよ、李衣菜。勉強することがロックじゃ無いなんてことは無い。極論、勉強することがロックであるとすら言えるんだ」



奈緒「極論も極論だなオイ」



みく「極論なのになにこの意味不明な説得力……」





李衣菜「そ、そんな……じゃあ今までの私は、ただ意地を張っていただけだって言うの……?」



飛鳥「意地を張るのがロックじゃ無いとは言わない。けど、あまり拘り過ぎるのも良くない。このままだと何れ、キミはロックに殺されてしまう」



みく「ロックに殺されるってなに? 格好良いこと言ってごまかそうとしてない?」



奈緒「それが結構あるから困るんだよな……ロックに殺される事案……」



飛鳥「生き様に背負う咎は、選んだ方が良いよ。あれもこれもと背負い込むと、すぐに身動きが取れなくなる。貫く物はたった一つで良いんだ」



李衣菜「貫く物……たった一つ……!」



飛鳥「さあ、答えを聞かせてくれ。キミが貫くべき、たった一つの咎を……!」



李衣菜「私は……私は……!」





李衣菜「私はロックを貫くよ!」





飛鳥「………」



みく「……結局なんにもわかって無いってこと?」



奈緒「いや、逆にどう答えたら正解だったんだよこの問いは」



―――――――――

―――――

――





 【 事務所 】



みく「あ、奈緒チャン。おはようにゃ」



奈緒「ああ、おはよう。あれからどうだ、李衣菜の様子は」



みく「んー、まあそこそこ? ギターも真剣に練習してるみたいだし、良いと思ったバンドを調べたりはしてるみたい」



奈緒「そっか……まあ、にわかの領域からはギリギリ脱したってかんじだな」



みく「ただまあ良し悪しで……飛鳥チャンに言われたことに感銘を受けすぎてる面がある気もするにゃ」



奈緒「どういうことだよ」



みく「この間二人で雑誌の取材を受けたんだけどね。その時に、よく聴く音楽について質問されたの」



奈緒「う、おぉ……」



みく「それについての回答が、『言葉で主張を押し付けるのはロックじゃないから。答えは歌で伝えるよ』」



奈緒「えぇ………」



みく「他の質問に対しても大体こんな感じだったにゃ」



奈緒「それインタビューとして成り立ってんの?





奈緒「つーかたぶんだけど、その質問に望まれてた答えはそれじゃ無いよな。李衣菜のキャラ的に考えて」



みく「みくもそう思うにゃ……もっと慌てふためく姿を望まれてたんだと思う……」



奈緒「……余計なことしたかなぁ。あのままにわかだったほうが、アイドルとしては正しかったのかも……」



みく「でも本人が悩んでたし……」



奈緒「悩ん……でたか? あんまり深刻さを感じなかったのはあたしだけか?」



みく「あれで結構、李衣菜チャン的には悩んでたと思うにゃ」



奈緒「そ、そうか……あたしにはよくわからないけど…」



みく「深刻なのはむしろ、真剣に悩んで出した答えがキャラのブレを産んでることだにゃ」



奈緒「あー…うわぁ…」







李衣菜「おはようございまーす。 おっ、奈緒じゃん! この前はありがとう!」



奈緒「えっ、あっ、お、おう、おはよう。そんな、別にあたしは何もしてないから、例とか別に……」



李衣菜「いやいや、言わないわけには行かないって。なんたって、二人のおかげで真のロックアイドルに近づいたんだからね!」



奈緒(そんなに良い笑顔で言われるともう身動きが取れない)



みく(真のロックアイドルに近づいたことで窮地に陥るかもしれないって気付いてるのかな……)





李衣菜「……ふっふっふ。わかるよ二人とも……心配なんでしょ?」



みく「え?」



奈緒「なな何の事かな?」



李衣菜「隠さなくても良いって。私の路線がファンの求めるものと食い違ってくると、それだけ人気が下がるかもってことだよね?」



みく「その事実ちゃんと受け入れてたんだ……驚天動地にゃ…」



奈緒「というか自分の需要がにわかわいい部分だって気付いてたのかよ、お前」



李衣菜「冷静に分析した結果だよ。飛鳥に言われたんだ、自分を貫き通すためには客観的に自分を見ることも必要だ、って」



みく「飛鳥ちゃんが言うと説得力がヤバいにゃ……」



奈緒「客観的に自分を見た上で曲がらない本物の中二病だからな。厨二病じゃなくて」



みく「良く考えたら李衣菜チャンも中二病の気があるし、わりと相性は良かったのかも……」



李衣菜「理屈だろうと言い訳だろうと、迷わない理由をくれたんだ。だから私はもう迷わない」



奈緒「なんだろう、なんか少し飛鳥と喋ってる気分になって来た……」



みく「と、とにかくこれで一件落着……?」





李衣菜「まあ、そうだね。これで心置きなく、なつきちや輝子の話に入って行けるよ」



奈緒「……ん? いや待てよ、それは―――」



李衣菜「じゃあ行ってくるね! 期待して待っててー!」





奈緒「―――……行っちまった」



みく「……奈緒チャン? どうしたの?」



奈緒「いや……なんつーか…夏樹さんって、なんだかんだ李衣菜のことは認めてたよな?」



みく「うん? う、うん……そうだけど…それがどうかしたのかにゃ?」



奈緒「いやそれってさ……『ロックは理屈じゃ無いからね!』とか『言い訳なんてロックじゃない!』とか言ってる李衣菜だよな?」



みく「………えっと、うん。たぶん。……そういう、ナチュラルに本質突いてくる部分を認めてたんじゃない?」



奈緒「だとするとさ、今のあいつって真逆じゃねぇか? 飛鳥のアレは、捻くれて穿った感性と思考で創る意見だろ?」



みく「………」



奈緒「いや、それはそれでロックではあるけど………夏樹さんが李衣菜に求めてるのって、そう言うことじゃ無いような……」



みく「り、李衣菜チャンを止めるにゃ! 今すぐ記憶を消すにゃ!」



奈緒「晶葉に記憶消去装置持って無いか聞いてみるか!?」





輝子「いや……その必要は…ない……ぞ…」



みく「し、輝子チャン!? いつからそこに!?」



輝子「……フヒッ…最初から…居ましたけど………」



奈緒「必要ないって……でもこのままだと、あたしらのせいで…!」



輝子「……ロックアーティストが叫ぶことは……一人一人、違うんだ……」



みく「輝子チャン……?」



輝子「一人きりが嫌で……叫んだり……群れるのが嫌で、叫んだり……理屈じゃ、無かったり……思想を…叫んだりも、する……」



輝子「どうでも良いことだって……叫ぶ……。叫ぶ意味が、グループの中で違うことも……ある。……一人一人に……叫びが、あるんだ……」



輝子「李衣菜さんは……全部肯定、してるから……だから、フラついてるみたいに…みえるけど……それってさ……凄いこと、だよな……」



みく「肯定って……否定するほど知識が無いだけじゃないの……?」



輝子「……フヒッ…そうかも、な……大体は、夏樹さんの受け売り……だしな……」



奈緒「いや受け売りかよ……いやでも、受け売りってことは……」





輝子「…だから、さ……夏樹さんは……呆れながら…それでも、喜ぶ……と思う…ぞ……?」



奈緒「……そういうもんかなぁ」



みく「まあ確かに、しばらく置いておけばいつもの李衣菜チャンに戻ってそうな安心感はあるけど……」



奈緒「それを安心感と言っていいのかは微妙だけどな……」



輝子「どちらかというと……安定感……? 真っ白で……真っ直ぐだから、って……そういうこと……だと、思う……」



奈緒「少しくらい寄り道したって、迷ったりはしないってことか?」



輝子「……迷う…かも知れないけど……李衣菜さんなら、たぶん……大丈夫……だろうって……」



みく「……迷うのもロック、とか言いそうだにゃ。でも、それでいいってことだよね?」



奈緒「ああ、なるほどな。全部肯定ってそういうことか」



みく「みくたち……本当に、余計なことしたみたいだね」



奈緒「ははっ、みたいだな。……じゃあ、余計なことついでにカフェでも行って反省会でもするか?」



みく「みく猫カフェがいい! 輝子ちゃんも来るでしょ?」



輝子「……っ!? っ!? い、良いの……? 良いんですか……?」



みく「こ、これは喜んでると取って良いのかな……?」



――――――――――

――――――

―――





 【 そのころ 】



夏樹「そういやアンタら、来週のツーリングどこ行くか決めたか?」



拓海「夏はどこも道が混むから、どっちかっつーと……空いてそうだし海より山だな」



里奈「えーマジ? アタシ水着かっちった☆ つーか泳ぐ気マンマンだったわー、ウケるー」



夏樹「いや……そもそもツーリング行って泳ぐかよ普通。疲れて帰り事故るぞ」



里奈「あそっかー、そりゃそうだわ♪ 安全第一っつーか?」



美世「うんうんっ、アイドルなんだから気を付けないとね!」



夏樹「あー、そう言えば美世。この前言ったマフラーの話なんだけど」



美世「ん? あれならもう探してるよ? 目星はある程度付いたから、リストアップして後で送るね!」



夏樹「悪い、助かる。来週には間に合いそうか?」



美世「んー、まあ発送次第かな? 届いたら急ぎでやるから任せといて!」



拓海「なんだ夏樹、マフラー替えんのか? どんな感じにすんだ?」



夏樹「最近財布も温まってるし、奮発してフルエキにしようと思ってさ。音も今より低くして―――」





李衣菜(ヤバイ、なんの話してるか全然わかんない……)



おわり



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