2014年03月05日
渋谷凛『不思議なお店?』 最終話 白紙
渋谷凛『不思議なお店?』 第1話 何でも入る箱
渋谷凛『不思議なお店?』 第2話 だまし絵
渋谷凛『不思議なお店?』 第3話 夢喰い
渋谷凛『不思議なお店?』 第4話 枯れる
渋谷凛『不思議なお店?』 第5話 ループ
渋谷凛『不思議なお店?』 第6話 契約
第7話 白紙
モバP(ふと目が覚めると、筋肉質な黒人男性が白い歯を見せながら親指を立てていた)
モバP(何故か、非常に腹が立ち、思わず拳を繰り出していた)
モバP(しかし、見事なバックステップで回避され、逆にボディブローを喰らった)
渋谷凛『不思議なお店?』 第2話 だまし絵
渋谷凛『不思議なお店?』 第3話 夢喰い
渋谷凛『不思議なお店?』 第4話 枯れる
渋谷凛『不思議なお店?』 第5話 ループ
渋谷凛『不思議なお店?』 第6話 契約
第7話 白紙
モバP(ふと目が覚めると、筋肉質な黒人男性が白い歯を見せながら親指を立てていた)
モバP(何故か、非常に腹が立ち、思わず拳を繰り出していた)
モバP(しかし、見事なバックステップで回避され、逆にボディブローを喰らった)
『イキナリ ナニ シヤガル』
モバP「ご、ごめん。何故か体が勝手に」
『マア アレダ ヨウコソ シゴノ セカイヘ』
モバP「全く記憶にないけど、体が透けてるってことはそういうことか」
『マダ シニカケ ダケド』
モバP「そうなのか?」
『シンデモ コウメ ナラ ミエルゾ』
モバP「だろうね」
『ンジャ セツメイ スルゾ』
モバP「ああ、なんでこんな状況になったんだ」
『フクジョウシ』
モバP「ふくじょうし?」
『テクノブレイク』
モバP「は?」
『バレンタイン ダッタナ』
モバP「ああ、そうだね」
『チョコレート モラッタナ』
モバP「ああ、小梅とか、周子とか、奈緒ちゃんとかから貰ったよ」
『コンキ ノガシタ グミ カラハ?』
モバP「婚期って……ああ、貰ったよ」
『タベタナ』
モバP「そりゃあ、食べたよ」
モバP「おい、待て、何が入っていたんだ?」
『テクノブレイク』
モバP「え、何?盛られたの?媚薬かなんか盛られたの?」
『アア、ソノトオリダ』
モバP「…え、マジで」
『マジデ』
モバP「嘘だな」
『アア ウソダ』サムズアップ
モバP「よし、覚悟はいいな、ボブ」
『コイヨ』
モバP「……んで、結局、どういう状況なんだ」
『スタドリ ノ セイダ』ボロボロ
モバP「スタドリ?ああ、ちひろさんが売捌いてる変な栄養ドリンクか」
『アレ イロンナ プロデューサー ガ ノンデルダロ?』
モバP「まあ、業界にいる大半の人は飲んでると思う」
モバP「副作用がありそうで怖いから極力飲まない様にしているけど」
『アレナ ノムト インポ ニ ナル』
モバP「ごめん、もう一回言ってくれる」
『ノムト セイヨク ガ ナクナル』
モバP「性欲が無くなる?」
『アイドル ノ アンゼン ノ タメ』
モバP「確かにアイドルは年頃の女の子が多いけど、いくらなんでもそれはないと思う」
『ゴメン コンカイ ハ ホントウ』
モバP「つまり、スタドリは服用を続けると性欲が無くなると」
『ソウ』
モバP(残業を乗り切るために飲んでいるドリンク剤が不能になる副作用があるなんて、普通誰も信じないと思うけど)
モバP(ちひろさんならやりかねない)
モバP(アイドルを長持ちさせるためにプロデューサーの一人や二人不能にする)
モバP「小梅に誓えるか、この話は本当だと」
『チカウヨ』
モバP「ちひろさんはそれを知ってて売ってた?」
『タブン』
モバP「鬼、悪魔ってレベルじゃないぞ」
『ソウダネ』
モバP「まあ、ほとんど飲んでないから、大丈夫か」
『ウン セイジョウ ダネ』
モバP「…なんで分かる?」
『リョウトウ ダカラ』
モバP「そ、そうか」
『ンデ ユウレイ ニ ナッタノハ』
モバP「あー、なんとなく思い出した」
モバP「ねえ、今、アレからどれくらいたった?」
『アア、オモイダシタンダ?』
モバP「概ね」
『ジャア、 ハジメ ヨウカ』
モバP「全てを白紙に戻すために」
『エンディング』
渋谷凛「私とプロデューサーの間に恋愛感情はほぼ皆無と言っていいと思う」
凛「ただ、お互いを尊重し、信頼できる間柄だった」
凛「だから、私達は夫婦になった」
凛「何がきっかけだったのか、正直分からない」
凛「私がアイドルだった頃、事務員だった人が売っていた栄養剤に副作用があって、事務所の信頼は地に落ちた」
凛「幸い、プロデューサーのおかげで路頭に迷うような人はいなかったけど」
凛「皆、苦労はしたと思う」
凛「アイドルを止めた私は学校に通いつつ、プロデューサーの実家でのあさんから装飾品の造り方を学んだ」
凛「元アイドルということもあって、花をテーマにした私の作品はそこそこ売れた」
凛「それから、プロデューサーの下で一緒に事業を始めた」
凛「周子さんが親の事情で実家に帰ってから、気が付くと一緒に居ることが多かった」
凛「お互い寂しかったのかもしれない」
凛「私達の間に明確な恋愛感情は無い。ただ、一緒に居ても大丈夫という信頼関係があった」
凛「気が付いたら、夫婦になっていた。たぶん、これからも一緒なのだろう」
このデータを削除しますか?
⇒Yes No
若林智香「アタシ、学生の頃、チアリーディングの練習の時に怪我しちゃったんです」
智香「足腰を酷く痛めちゃって、チアリーディングも、アイドルも、もう無理って」
智香「本当は皆を応援したいのに、なかなか声が出なくなっちゃって」
智香「そんな時にプロデューサーさんに新しい仕事を貰いました」
智香「踊れなくても、声で応援すればいい。声が出ないなら文字か絵を使えばいいって」
智香「声がまだ出なかったので、プロデューサーさんに絵を教えてもらいました」
智香「絵や手紙でたくさん応援のメッセージを書きました」
智香「しばらくしてからラジオのお仕事も始めました」
智香「ラジオでたくさん、応援のメッセージを送ってます」
智香「色々ありましたけど、アタシは今日も誰かを応援しています」
智香「これからもよろしくお願いします。プロデューサー」
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⇒Yes No
周子「お腹すいたーん♪」
周子「大体こういうとPさんがご飯を作ってくれる」
周子「いい人に拾われたもんだよね」
周子「あたしの部屋もくれたし」
周子「小梅ちゃんは可愛いし」
周子「温かいし、いい人だよ。あたしの旦那は?」
周子「ん、特に恋愛云々というよりも、Pさん一時期へこんじゃってたからさ」
周子「同じ事務所で勤めていた人がやらかしちゃってね」
周子「優しい周子ちゃんは全部受け止めてあげただけ」
周子「それくらいしか、できないしね」
周子「ま、末永くよろしく」
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⇒Yes No
加蓮「まあ、体力には自信なかったし、アイドルに成れただけでも運がよかったのかも」
加蓮「引退が早かったのはしょうがないって割り切ってる」
加蓮「それに、Pさんが最後まで面倒見てくれるって言っていたから」
加蓮「ステージに立てて、衣装脱いで、好きなヒトのところに帰って」
加蓮「うん、幸せだね」
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⇒Yes No
まゆ「うふふ、まゆはちゃーんと分かってましたよ」
まゆ「だって、まゆとPさんはアカイ糸で繋がってるんですから」
まゆ「悲しくて、疲れたPさんを癒してあげるのもまゆのお仕事ですよぉ」
まゆ「だから、おかえりなさい」
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⇒Yes No
卯月「普通の女の子だった私にPさんはたくさんチャンスをくれました」
未央「人気なかなか伸びなかったけど、アイドルできてよかった」
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⇒Yes No
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モバP「……ただいま」
小梅「お、おかえりなさい」
のあ「おかえり」
『オツカレ』
モバP(古びた埃だらけの焦げたオフィスの残骸)
モバP(かつて、ここがCGプロダクションと呼ばれていた面影は無い)
モバP(数年だが、僕はここでプロデューサーとして勤めいていたことがある)
モバP(担当していたアイドルは、皆、素晴らしい逸材ばかりだった)
モバP(この業界では珍しい程、内部の信頼関係が整っていた。業界の異端児)
モバP(異端だったが故に、話題となり、晒され、消えた事務所)
モバP(稼ぎ頭だった渋谷凛の引退を契機に、徐々に勢いを無くしてしまった)
モバP(正確には古き、悪しき、因習に飲み込まれてしまった)
モバP(不思議な道具では、幻想では、現実社会の、人の、限りない悪意には対抗できなかった)
モバP(僕の力量不足と言われればそこまでだけど)
モバP(かつてアイドルだった女性たちは皆、それぞれの道を歩き続けている)
モバP(幸い、皆逞しく生きているし、まだアイドルを続けている人もいる)
モバP(ちひろさんが彼女らの力量を見抜き、様々な事業に売り出したのが大きい)
モバP(あの人は本当に何故、事務員だったのだろうか?)
モバP(そして、僕は、かつての職場に引導を渡すためにきていた)
モバP(多くの人の夢を飲み込み過ぎたこの建物は、かつての栄光を見せ、人を取り込む魔窟と成り果てていた)
モバP(この建物で目を閉じれば、誰もがかつてのCGプロダクションのプロデューサーになれる)
モバP(そんな夢を見せる。夢の残骸に成り果ててしまった)
モバP(正直、いつまでもあの懐かしい日々に浸っていたかった)
モバP(でも、現実はノスタルジーを許してくれる程甘くはない)
モバP(だから、僕は消した)
モバP(この建物にこびり付いていた大事な思い出を白紙にした)
モバP(僕もきっと、いつかは忘れてしまうのだろう)
モバP(そうと分かっていながら消した)
モバP(白紙にして、もう一度、何度でも、僕が望むストーリーを書き直すために)
モバP(リセットボタンは押せないけど、書き重ねた)
モバP(ちひろさんと協力して、僕はこの場所を買い戻した)
モバP(そして、かつて共に志を持っていた仲間に、家族に声を掛けた)
モバP(僕は、ただ何も無いまま人生を漫然と終えたくなかった)
モバP(母さんも、妹もそんなことは望まないだろう)
モバP(もう一回、真っ新な場所で、もう一回社会に挑んでみたくて)
モバP(僕はここに戻ってきた)
モバP(僕にはまだ、家族がいて、帰る場所が、実家がある)
モバP(なら、恐れることなんて金銭的な問題以外何もなかった)
渋谷凛「ふーん、アンタが私の新しい雇い主?」
モバP「おいこら、社会人」クスッ
凛「冗談だよ。それで、今度は何をするの?」
モバP「ある程度決まってるんだけど、皆が来てからもう少し絞り込むよ」
凛「そうなんだ。でも、よかったの?不思議な道具を取扱うお店にしなくて」
モバP「うん、なんていうか。今回は道具抜きで夢を見せてみたくてね」
小梅「で、でも、お友達はいっぱいがいるから大丈夫」
凛「うん。そのお友達が生きているのかどうかは聞かないでおく」
モバP「まあ、夢を見るのも、見せるのも人だしね」
凛「まあね」
モバP「大丈夫。退屈で、同じことの繰り返しにならないことは約束するから」
凛「退屈かどうかなんて、人次第だよ」
モバP「へえ」
凛「こうやって、また会えただけでも十分不思議なできごとだよ」
モバP「そうだね。それじゃあ、次は何をしようか?」
最終話 白紙 〜終〜
モバP「ご、ごめん。何故か体が勝手に」
『マア アレダ ヨウコソ シゴノ セカイヘ』
モバP「全く記憶にないけど、体が透けてるってことはそういうことか」
『マダ シニカケ ダケド』
モバP「そうなのか?」
『シンデモ コウメ ナラ ミエルゾ』
モバP「だろうね」
『ンジャ セツメイ スルゾ』
モバP「ああ、なんでこんな状況になったんだ」
『フクジョウシ』
モバP「ふくじょうし?」
『テクノブレイク』
モバP「は?」
『バレンタイン ダッタナ』
モバP「ああ、そうだね」
『チョコレート モラッタナ』
モバP「ああ、小梅とか、周子とか、奈緒ちゃんとかから貰ったよ」
『コンキ ノガシタ グミ カラハ?』
モバP「婚期って……ああ、貰ったよ」
『タベタナ』
モバP「そりゃあ、食べたよ」
モバP「おい、待て、何が入っていたんだ?」
『テクノブレイク』
モバP「え、何?盛られたの?媚薬かなんか盛られたの?」
『アア、ソノトオリダ』
モバP「…え、マジで」
『マジデ』
モバP「嘘だな」
『アア ウソダ』サムズアップ
モバP「よし、覚悟はいいな、ボブ」
『コイヨ』
モバP「……んで、結局、どういう状況なんだ」
『スタドリ ノ セイダ』ボロボロ
モバP「スタドリ?ああ、ちひろさんが売捌いてる変な栄養ドリンクか」
『アレ イロンナ プロデューサー ガ ノンデルダロ?』
モバP「まあ、業界にいる大半の人は飲んでると思う」
モバP「副作用がありそうで怖いから極力飲まない様にしているけど」
『アレナ ノムト インポ ニ ナル』
モバP「ごめん、もう一回言ってくれる」
『ノムト セイヨク ガ ナクナル』
モバP「性欲が無くなる?」
『アイドル ノ アンゼン ノ タメ』
モバP「確かにアイドルは年頃の女の子が多いけど、いくらなんでもそれはないと思う」
『ゴメン コンカイ ハ ホントウ』
モバP「つまり、スタドリは服用を続けると性欲が無くなると」
『ソウ』
モバP(残業を乗り切るために飲んでいるドリンク剤が不能になる副作用があるなんて、普通誰も信じないと思うけど)
モバP(ちひろさんならやりかねない)
モバP(アイドルを長持ちさせるためにプロデューサーの一人や二人不能にする)
モバP「小梅に誓えるか、この話は本当だと」
『チカウヨ』
モバP「ちひろさんはそれを知ってて売ってた?」
『タブン』
モバP「鬼、悪魔ってレベルじゃないぞ」
『ソウダネ』
モバP「まあ、ほとんど飲んでないから、大丈夫か」
『ウン セイジョウ ダネ』
モバP「…なんで分かる?」
『リョウトウ ダカラ』
モバP「そ、そうか」
『ンデ ユウレイ ニ ナッタノハ』
モバP「あー、なんとなく思い出した」
モバP「ねえ、今、アレからどれくらいたった?」
『アア、オモイダシタンダ?』
モバP「概ね」
『ジャア、 ハジメ ヨウカ』
モバP「全てを白紙に戻すために」
『エンディング』
渋谷凛「私とプロデューサーの間に恋愛感情はほぼ皆無と言っていいと思う」
凛「ただ、お互いを尊重し、信頼できる間柄だった」
凛「だから、私達は夫婦になった」
凛「何がきっかけだったのか、正直分からない」
凛「私がアイドルだった頃、事務員だった人が売っていた栄養剤に副作用があって、事務所の信頼は地に落ちた」
凛「幸い、プロデューサーのおかげで路頭に迷うような人はいなかったけど」
凛「皆、苦労はしたと思う」
凛「アイドルを止めた私は学校に通いつつ、プロデューサーの実家でのあさんから装飾品の造り方を学んだ」
凛「元アイドルということもあって、花をテーマにした私の作品はそこそこ売れた」
凛「それから、プロデューサーの下で一緒に事業を始めた」
凛「周子さんが親の事情で実家に帰ってから、気が付くと一緒に居ることが多かった」
凛「お互い寂しかったのかもしれない」
凛「私達の間に明確な恋愛感情は無い。ただ、一緒に居ても大丈夫という信頼関係があった」
凛「気が付いたら、夫婦になっていた。たぶん、これからも一緒なのだろう」
このデータを削除しますか?
⇒Yes No
若林智香「アタシ、学生の頃、チアリーディングの練習の時に怪我しちゃったんです」
智香「足腰を酷く痛めちゃって、チアリーディングも、アイドルも、もう無理って」
智香「本当は皆を応援したいのに、なかなか声が出なくなっちゃって」
智香「そんな時にプロデューサーさんに新しい仕事を貰いました」
智香「踊れなくても、声で応援すればいい。声が出ないなら文字か絵を使えばいいって」
智香「声がまだ出なかったので、プロデューサーさんに絵を教えてもらいました」
智香「絵や手紙でたくさん応援のメッセージを書きました」
智香「しばらくしてからラジオのお仕事も始めました」
智香「ラジオでたくさん、応援のメッセージを送ってます」
智香「色々ありましたけど、アタシは今日も誰かを応援しています」
智香「これからもよろしくお願いします。プロデューサー」
このデータを削除しますか?
⇒Yes No
周子「お腹すいたーん♪」
周子「大体こういうとPさんがご飯を作ってくれる」
周子「いい人に拾われたもんだよね」
周子「あたしの部屋もくれたし」
周子「小梅ちゃんは可愛いし」
周子「温かいし、いい人だよ。あたしの旦那は?」
周子「ん、特に恋愛云々というよりも、Pさん一時期へこんじゃってたからさ」
周子「同じ事務所で勤めていた人がやらかしちゃってね」
周子「優しい周子ちゃんは全部受け止めてあげただけ」
周子「それくらいしか、できないしね」
周子「ま、末永くよろしく」
このデータを削除しますか?
⇒Yes No
加蓮「まあ、体力には自信なかったし、アイドルに成れただけでも運がよかったのかも」
加蓮「引退が早かったのはしょうがないって割り切ってる」
加蓮「それに、Pさんが最後まで面倒見てくれるって言っていたから」
加蓮「ステージに立てて、衣装脱いで、好きなヒトのところに帰って」
加蓮「うん、幸せだね」
このデータを削除しますか?
⇒Yes No
まゆ「うふふ、まゆはちゃーんと分かってましたよ」
まゆ「だって、まゆとPさんはアカイ糸で繋がってるんですから」
まゆ「悲しくて、疲れたPさんを癒してあげるのもまゆのお仕事ですよぉ」
まゆ「だから、おかえりなさい」
このデータを削除しますか?
⇒Yes No
卯月「普通の女の子だった私にPさんはたくさんチャンスをくれました」
未央「人気なかなか伸びなかったけど、アイドルできてよかった」
このデータを削除しますか?
⇒Yes No
全てのデータを削除しますか?
⇒Yes No
全データの削除が完了しました。
ファイルは全て白紙の状態に戻されました。
モバP「……ただいま」
小梅「お、おかえりなさい」
のあ「おかえり」
『オツカレ』
モバP(古びた埃だらけの焦げたオフィスの残骸)
モバP(かつて、ここがCGプロダクションと呼ばれていた面影は無い)
モバP(数年だが、僕はここでプロデューサーとして勤めいていたことがある)
モバP(担当していたアイドルは、皆、素晴らしい逸材ばかりだった)
モバP(この業界では珍しい程、内部の信頼関係が整っていた。業界の異端児)
モバP(異端だったが故に、話題となり、晒され、消えた事務所)
モバP(稼ぎ頭だった渋谷凛の引退を契機に、徐々に勢いを無くしてしまった)
モバP(正確には古き、悪しき、因習に飲み込まれてしまった)
モバP(不思議な道具では、幻想では、現実社会の、人の、限りない悪意には対抗できなかった)
モバP(僕の力量不足と言われればそこまでだけど)
モバP(かつてアイドルだった女性たちは皆、それぞれの道を歩き続けている)
モバP(幸い、皆逞しく生きているし、まだアイドルを続けている人もいる)
モバP(ちひろさんが彼女らの力量を見抜き、様々な事業に売り出したのが大きい)
モバP(あの人は本当に何故、事務員だったのだろうか?)
モバP(そして、僕は、かつての職場に引導を渡すためにきていた)
モバP(多くの人の夢を飲み込み過ぎたこの建物は、かつての栄光を見せ、人を取り込む魔窟と成り果てていた)
モバP(この建物で目を閉じれば、誰もがかつてのCGプロダクションのプロデューサーになれる)
モバP(そんな夢を見せる。夢の残骸に成り果ててしまった)
モバP(正直、いつまでもあの懐かしい日々に浸っていたかった)
モバP(でも、現実はノスタルジーを許してくれる程甘くはない)
モバP(だから、僕は消した)
モバP(この建物にこびり付いていた大事な思い出を白紙にした)
モバP(僕もきっと、いつかは忘れてしまうのだろう)
モバP(そうと分かっていながら消した)
モバP(白紙にして、もう一度、何度でも、僕が望むストーリーを書き直すために)
モバP(リセットボタンは押せないけど、書き重ねた)
モバP(ちひろさんと協力して、僕はこの場所を買い戻した)
モバP(そして、かつて共に志を持っていた仲間に、家族に声を掛けた)
モバP(僕は、ただ何も無いまま人生を漫然と終えたくなかった)
モバP(母さんも、妹もそんなことは望まないだろう)
モバP(もう一回、真っ新な場所で、もう一回社会に挑んでみたくて)
モバP(僕はここに戻ってきた)
モバP(僕にはまだ、家族がいて、帰る場所が、実家がある)
モバP(なら、恐れることなんて金銭的な問題以外何もなかった)
渋谷凛「ふーん、アンタが私の新しい雇い主?」
モバP「おいこら、社会人」クスッ
凛「冗談だよ。それで、今度は何をするの?」
モバP「ある程度決まってるんだけど、皆が来てからもう少し絞り込むよ」
凛「そうなんだ。でも、よかったの?不思議な道具を取扱うお店にしなくて」
モバP「うん、なんていうか。今回は道具抜きで夢を見せてみたくてね」
小梅「で、でも、お友達はいっぱいがいるから大丈夫」
凛「うん。そのお友達が生きているのかどうかは聞かないでおく」
モバP「まあ、夢を見るのも、見せるのも人だしね」
凛「まあね」
モバP「大丈夫。退屈で、同じことの繰り返しにならないことは約束するから」
凛「退屈かどうかなんて、人次第だよ」
モバP「へえ」
凛「こうやって、また会えただけでも十分不思議なできごとだよ」
モバP「そうだね。それじゃあ、次は何をしようか?」
最終話 白紙 〜終〜
02:30│モバマス