2014年03月14日

あずさ「ええねん?」

真「はい、ではそう言うことで」



雪歩「プロデューサーたっての願いなので、練習してきましたぁ」



春香「ウルフルズで『ええねん』です、聴いてください」







SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1394206528



春香「ええねん♪」

真「何も言わんでも ええねん♪」

雪歩「ええねん♪」

真「何もせんでも ええねん♪」



………………………



P「……この度、あなたの担当プロデューサーになりました。よろしくお願いします」



あずさ「あ、あらあら……そうでしたか。こちらこそ、よろしくお願い致します〜」



P(きれいな人だな……アイドル候補生って言うんだから、そりゃそうなんだろうけど)



P(彼女の人生を左右する大きな仕事だ、がんばらないと)



あずさ(……ちょっと頼りなさそうだけど、でもすごく優しい目をしているわね)



あずさ(この人となら、私もアイドルとして成功できるかしら……がんばらなくちゃ)



P「……え、えーっと……じゃあ、三浦さん。軽くミーティングしましょう」



あずさ「そんな、三浦さんだなんて堅苦しいのは、やめてください」



P「いや、でも……いきなり下の名前でお呼びするのも……」



あずさ「これから私たち二人三脚なんですよね? なら、もっと近しく呼んでください」



P「あー、うん……そうですね……じゃあ、あずささん?」



あずさ「はい、なんでしょうか? プロデューサーさん」



春香「ええねん♪」

真「笑いとばせば ええねん♪」

雪歩「ええねん♪」

真「好きにするのが ええねん♪」



………………………



あずさ「……きゃっ!」



P「あずささん! 大丈夫ですか!?」



あずさ「す、すみません……私、ダンスは苦手なものですから」



P「そうじゃなくて、足首捻ってませんでした? 捻挫、してませんか?」



あずさ「そ、それは大丈夫ですけど……ごめんなさい、せっかくのレッスンの時間を」



P「よかった。俺はまた、あなたに怪我でもさせたかと思って、ヒヤヒヤしましたよ」



あずさ「えっ……プロデューサーさん?」



P「苦手なんて、誰にでも有るんです。時間を掛けて、少しずつ変えていけば、それでいい」



あずさ「でも……」



P「失敗するたびにしょげていたら、前を向けなくなってしまいますよ。さぁ、もう一度」



あずさ「……はいっ!」



春香「ええねん♪」

真「感じるだけで ええねん♪」

雪歩「ええねん♪」

真「気持ちよければ ええねん♪」



………………………



P「そう、そう! 良くなって来ましたよ、あずささん!」



あずさ「ホントですか、プロデューサーさん?」



P「そうですそうです、まずは曲の雰囲気を感じ取ること、気持ちを乗せることです」



あずさ「まだぜんぜん、リズムにも振り付けにも合っていないんですけど……」



P「ははっ、そんなことはどうでも良いんです。思うがままに踊るのは、気持ち良かったでしょう」



あずさ「……確かにそうですね。こうしなきゃいけない、と思っていると窮屈で」



P「ダンスは確かに大切な要素ですが、ダンスに囚われちゃダメです。自由に音楽を感じればいい」



あずさ「音楽を……感じる?」



P「そうです。音を楽しむと書いて、音楽なんですから。楽しみましょう、体全体で!」



あずさ「……はい!」



………………………



真「それでええねん それで〜〜〜〜♪」

春香・雪歩「えーーえーーえーーーー♪」



真「ええねん♪」



春香「ええねん♪」

真「後悔しても ええねん♪」

雪歩「ええねん♪」

真「また始めたら ええねん♪」



………………………



あずさ「オーディションって、こんな雰囲気なんですね……」



P「ええ。生存競争の第一歩は、みんなここからスタートしていくんです。号砲は鳴ってしまった」



あずさ「レッスンで学んだこと、少しも出せなくて……緊張感に飲まれてしまって」



P「結果は出ていませんよ。それに焦れば焦るほど、緊張感は蟻地獄みたいにあなたを引き込む」



あずさ「…………」



P「オーディションですから、他の出場者に『勝つ』ことが目標です。でも、それだけじゃない」



あずさ「それは……どう言うことでしょう?」



P「負けることの悔しさも、ここで学ぶんです」



あずさ「……っ!」



P「ここで敗れても、それがすべての終わりではない。もう一度、俺達は立ち上がれるんです」



あずさ「プロデューサーさん……」



P「負けて悔しいのは、あずささん。あなただけじゃない。俺の力も、まだ足りないんです」



あずさ「そんなことは……」



P「俺に対する試練でもあるんです。悔しいと思わなくなったら、ゲームセットですから」



あずさ「…………」



春香「ええねん♪」

真「失敗しても ええねん♪」

雪歩「ええねん♪」

真「もう一回やったら ええねん♪」



………………………



『今回のオーディション合格者は、4番の方! おめでとうございます!』



あずさ「……やはり、ダメでしたね」



P「ええ。結果は結果として、厳粛に受け止めましょう」



あずさ「そうですね、次はがんばれば、良いんですから」



P「……がんばるのは、あなただけじゃない。俺もがんばりますよ」



あずさ「はい、プロデューサーさん」



P「なにせ俺らは、二人三脚なんですから。そうですよね、あずささん?」



あずさ「……はい!」



春香「ええねん♪」

真「前を向いたら ええねん♪」

雪歩「ええねん♪」

真「胸をはったら ええねん」



………………………



『かんぱーい!』



P「んぐっ、んぐっ……っぷはぁ〜、仕事の後の一杯は染みますね〜!」



あずさ「ふふっ、プロデューサーさんったら」



P「あずささん、次は祝杯にしましょう! 俺達の力で! ねっ!」



あずさ「もちろんです。今度は、美味しいお酒が飲めるようにしましょうね」



P「んぐっ、んぐっ……っかあああ、すぁーっすぇーん! 生おかーりー!!」



あずさ(……プロデューサーさん、本当は悔しくて仕方ないのね……それを隠して、こうして)



あずさ(この人といると、落ち込んでるヒマなんてないわね。ありがとうございます)



………………………



真「それでええねん それで〜〜〜〜♪」

春香・雪歩「えーーえーーえーーーー♪」



真「ええねん♪」



春香「ええねん♪」

真「僕はお前が ええねん♪」

雪歩「ええねん♪」

真「好きでいれたら ええねん♪」



………………………



あずさ「おはようございます、プロデューサーさん」



P「おはようございます、あずささん。今日も忙しいですが、よろしくお願いしますね」



あずさ「はい。今日も一日、よろしくお願い致します〜」



P(あずささん、最近はずっと忙しくなってきたのに、すごく輝いて見える。疲れてるだろうに)



P(……なんだろうね。俺はあずささんに、無理ばかりさせているんじゃないだろうか)



あずさ「あの……プロデューサーさん?」



P「あ!? は、はい! なんですかあずささん!?」



あずさ「……ふふっ。大丈夫ですよ、私、いまとっても楽しいんです。充実しているんです」



P「あずささん……」



あずさ「疲れたなんて、一息つくヒマができてからで、良いじゃありませんか。ね?」



P「……そうですね。じゃ、行きますよ!」



春香「ええねん♪」

真「同じ夢を見れたら ええねん♪」

雪歩「ええねん♪」

真「そんなステキなふたりが ええねん♪」



………………………



P「……全国ネットの番組のオーディションが、決まりました」



あずさ「そうですか……大きな番組に出られるかも知れないんですね」



P「出られる『かも』、じゃなくて、出ます。絶対に」



あずさ「……そうですね。弱気になったら、いけませんよね」



P「それに、全国ネットとなれば、もしかしたらあずささんの『運命の人』も見ているかも?」



あずさ「!? ……もう、覚えていたんですか? そんなこと」



P「ははっ。良いなぁ、あずささんの『運命の人』。あずささんといつまでも一緒にいられたら……」



あずさ「……いられたら?」



P「俺ぁ、その『運命の人』とやらの横っ面を、張り倒してやりたいですよ。うらやましい」



あずさ「まぁ、プロデューサーさんったら」



P「でもね、いまこうして、二人三脚でやって来てるだけで、俺ぁ充分幸せですけどね」



あずさ「…………」



春香「ええねん♪」

真「心配せんで ええねん♪」

雪歩「ええねん♪」

真「僕を見てれば ええねん♪」



………………………



あずさ「…………っ」



P「どうしました? あずささん」



あずさ「あの……これから私、全国放送の番組で歌うんですよね?」



P「緊張するな、なんて言えません。これからお茶の間の視線は、あなたに釘付けになる」



あずさ「私……できるかしら」



P「不安になっても、心配になっても、大丈夫です。俺はずっと、あなたのことを見ていますよ」



あずさ「プロデューサーさん……?」



P「だから、怖くなったら、俺のことを見ていてください。俺のために歌うんだと思ってください」



あずさ「でも……」



P「今日は、それでも良いです。昔を思い出して、気持ち良く歌うことだけを、考えてください」



あずさ「……はい、プロデューサーさん」



『三浦さん、スタンバイお願いしまーす!』



あずさ「……じゃあ、行ってきますね」



P「ええ。今夜もまた、美味しいお酒を飲みましょう」



あずさ「はい!」



………………………



真「それでええねん それで〜〜〜〜♪」

春香・雪歩「えーーえーーえーーーー♪」



真「ええねん♪」



春香「ええねん♪」

真「アイディアなんか ええねん♪」

雪歩「ええねん♪」

真「別になくても ええねん♪」



………………………



あずさ「映画、ですか?」



P「ええ。先方が、どうしてもあずささんでお願いしたい、と言う話しでして」



あずさ「そうですか……でも、私、お芝居の経験なんてないですし……」



P「うーん、そんなに気負わなくても大丈夫なんかじゃないかな、と思いますよ」



あずさ「そんなこと言われても……」



P「あずささんはデビュー前、何千人ものお客さんの前で、歌ったことはなかったでしょう?」



あずさ「そ、それはそうですけど」



P「誰だって『初めて』はあるんです。小手先の技術より、気持ちでぶつかって行けばいい」



あずさ「そんなことで……大丈夫なんですか?」



P「大丈夫ですよ。何とかなるもんです、意外とね」



P(……ごめんなさい、あずささん。俺はあなたにいま、ウソをついています)



P(でもそれもこれも、みんなあずささんと一緒にトップに登りたい、ただ、それだけなんです)



春香「ええねん♪」

真「ハッタリだけで ええねん♪」

雪歩「ええねん♪」

真「背伸びしたって ええねん♪」



………………………



『……ふーん、三浦あずささん、ね』



あずさ「はい、どうぞよろしくお願い致します、監督さん」



『キミ、ちょっと良いかい?』



P「あ、俺ですか?」



『大丈夫なのかい、この子。時代劇の経験なんて、ないじゃないか』



P「大丈夫です。うちの三浦には、天性のカンがありますから」



『ホントかい? キミみたいなひよっ子に、そんなことわかるってぇのかい?』



P「……他の人のことはわかりません。でも、あずささんにはそれが有るんです。絶対に」



『ほぉ……ずいぶんカマすじゃねぇか。使えなかったその場で突っ返すぞ。それでも良いのか?』



P「もちろんです。俺の首を賭けても、構いません!」



春香「ええねん♪」

真「カッときたって ええねん♪」

雪歩「ええねん♪」

真「終わりよければ ええねん♪」



………………………



あずさ「……ウソ?」



P「ごめんなさいっ! 先方がどうしても、と言うのは俺の作り話で、俺が捩じ込んだんです!」



あずさ「そんな……もし私が失敗したら、どうなっていたと思ってるんですか!?」



P「確かにそのリスクは有りました。でも、もし俺が捩じ込んだと言ってたら?」



あずさ「…………」



P「監督も最初は渋ってましたよ。でも、クランクアップのあとで、こう言われたんです」



――――『あの子は確かに、お前さんが言う通り、天性のカンが有る。良い子だ』



あずさ「そうだったんですか……私、現場ではいつか怒られるんじゃないかって……不安で」



P「これからはお芝居の仕事も増えますよ。歌に芝居にビジュアルに。終わりよければすべてよしですよ」



あずさ「もう……でも、もうそんなウソをつくのは、やめてくださいね?」



P「……はい。今回は、本当にごめんなさい」



………………………



真「それでええねん それだけで〜〜〜〜♪」

春香・雪歩「えーーえーーえーーーー♪」



まこはるゆき「ええねん!♪」







真「つっぱってー! 突っぱしるぅー!♪」



春香「転んでー! 転げまわるぅー!♪」



雪歩「時々ぃー! ドキドキするぅー!♪」



まこはるゆき「そんな自分が好きなら ええねん♪」



まこはるゆき「そんな日々が好きなら ええねん♪」







真「情けなくても ええねん♪」



真「叫んでみれば ええねん♪」



………………………



あずさ「…………活動……終了?」



P「……はい。社長の方針で、俺があずささんの担当でいられるのは、一年までと」



あずさ「そんな……」



P「あずささん。あなたはもう、トップアイドルと言っても過言ではない」



あずさ「でも……」



P「俺の仕事は、アイドルを育てること。あなたの仕事は、日本中に夢を与えることです」



あずさ「でも……私たちは二人で、同じ夢を見てきたじゃありませんか……」



P「…………」



あずさ「確かにプロデューサーとアイドルは、立場も違います。でも、それでも……」



P「…………俺だって……俺だってこれで終わりなんて、イヤなんですよっ!!」



あずさ「……っ!?」



真「にがい涙も ええねん♪」



真「ポロリこぼれて ええねん♪」



………………………



P「俺だってもっと、あなたと一緒に夢を見たかった。二人三脚で駆けて行きたかった!」



あずさ「プロデューサーさん……」



P「会社の方針なんて知ったこっちゃねぇ、って言いたいんです! でも、それじゃダメなんだ!」



あずさ「…………」



P「俺たちがお互い、アイドルとして、プロデューサーとして、もっと高みに登るためには」



あずさ「……そこまでして、登らなきゃいけないんでしょうか?」



P「現状維持を是認するようなあずささんは、俺の知ってる、俺の育てたあずささんじゃない」



あずさ「…………(ぐすっ)」



P「その先の選択はあなたに委ねます。続けるのもマイクを置くのも。あなたの意思で決めて良い」



あずさ「……プロデューサーさん」



P「なんですか?」



あずさ「『運命の人』の話しの、続きなんですけれど」



真「ちょっと休めば ええねん♪」



真「フッと笑えば ええねん♪」



………………………



あずさ「私、『運命の人』が私を見付けてくれると思って、アイドルになろうと思ったんです」



P「それは……はい、俺も知ってます」



あずさ「その宛のない人探しのために、迷子になりそうな私をいつも引っ張ってくれた人」



P「…………」



あずさ「アイドルとして、ここまで手を引いてくれたプロデューサーさんに、お願いがあります」



P「……なんでしょうか?」



あずさ「私ね、見付けちゃったんです。『運命の人』」



P「えええっ!? マジですか! どこの誰なんですかそいつは!!」



あずさ「はい」



P「……鏡?」



あずさ「その中に映っている人が、私の『運命の人』だったんですよ?」



P「あずささん……」



あずさ「私、ここまで走ってこれたから、『運命の人』も見付かったんだと思ってます。だから」



P「だから?」



あずさ「……これからは、私の人生のプロデュース。お願いできませんか?」



P「……ふふっ。ふははっ、あはははははっ!!」



あずさ「プロデューサーさん……?」



………………………



真「それでええねん それで〜〜〜〜♪」

春香・雪歩「えーーえーーえーーーー♪」



真「ええねん♪」



春香「ええねん♪」

真「何もなくても ええねん♪」

雪歩「ええねん♪」

真「信じていれば ええねん♪」



………………………



あずさ「……本当に、良かったんですか?」



P「ははっ、何を言ってるんですか。俺は自分を信じて、あなたを信じているだけですよ」



あずさ「ふふっ……他には何もなくなっちゃいましたものね」



P「かまやしませんよ。俺はアイドルプロデューサーとして、また誰かをトップにする」



あずさ「私のときと同じように、転んで泥だらけになっても、あなたはアイドルを信じるんですね」

P「まぁ、風当たりは強いでしょうけどね。なにせ担当してたアイドルと結婚するってんだから」



あずさ「だから、本当に良かったんですか?」



P「良いんです。俺があなたを信じているように、あなたも俺を信じてください」



春香「ええねん♪」

真「意味がなくても ええねん♪」

雪歩「ええねん♪」

真「何かを感じていれば ええねん♪」



………………………



あずさ「ふふっ……そんな簡単なことで、良いんですか?」



P「そうですよ。俺たちはそんな、シンプルな間柄で良いと思うんです」



あずさ「なら、信じます。あなたのこと」



P「…………ありがとう、『あずさ』」



………………………



真「他に何もいらんねん♪」

真「他に何もいらんねん♪」

真「それでええねん それだけでぇ〜〜〜〜♪」

春香・雪歩「えーーえーーえーーーーー♪」





まこはるゆき「ええねん!♪」



真「……はい、と言うことで、プロデューサー、あずささん、おめでとうございます!」



雪歩「なんかプロデューサーさん、感極まって泣いちゃってますねぇ」



春香「あの、言っておきますけど、今回のコレ、ギャラきっちりいただきますからね?」







おしまい





17:30│三浦あずさ 
相互RSS
Twitter
更新情報をつぶやきます。
記事検索
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計: