2015年09月15日
佐久間まゆ「強く抱きしめて」
あ、こんにちは……。
そうですねぇ、この高さから落ちたら確実に死んじゃいます。
大丈夫ですよ、落ちたことないですから。
そうですねぇ、この高さから落ちたら確実に死んじゃいます。
大丈夫ですよ、落ちたことないですから。
でも、もし突風が吹いたり、地震などでバランス崩しちゃったら……。
そのときはしょうがないかなって思ってます。
飛び降りる勇気もないから、運を天に任せてるんです。
おかしいですよね。
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嫌なこと?
嫌なことはないけど、良いこともないかなぁ……。
ずっと満たされなくて……なにもかもつまらないって感じてるんです。
親も、友達も、仕事関係も、上手くいってなくて。
みんな、私のことなんてどうとも思ってないんです。
少なくとも、好きじゃない。
バイト? ……そう、アルバイトみたいなものですね。
いえ、コンビニとかではなく……。
読者モデルやってるんです。
すごくないですよ、私の代わりなんていくらでもいます。
ついさっき、そう言われちゃいました。
もうやめようかなぁって思ってるんですけど、それもなかなか言い出せなくて。
親だって同じです。
小さい頃はずっと、私をお祖母ちゃんに預けて仕事ばっかり。
稼がないといけないのは、もちろん分かりますけど。
ようやく一緒に過ごせるようになっても、どう接して良いか分からないんですよね。
友達は……一応いますけど。
あまり深く踏み込まないというか。
親友と呼べる人はいないです。
進学して学校が変わったりしたら、たぶんそれっきり。
なんでも? 本当になんでもしてくれますか?
じゃあ、そうですねぇ……。
キス、してもらおうかな。
まだしたことないんですよ。
こんなことしてますけど、やっぱりそれくらいは経験しておきたいかなって。
……恋人に申し訳ないですか?
いない? キスも初めて?
じゃあ初めて同士ですね。
ときどきここに来て黄昏れてますけど、あなたのような人が来たのは初めてです。
……良いですよ、唆されちゃいます。
そっちに行きますね。
言ったでしょう、ときどき来てるって。
大丈夫、踏み外したことなんてないんですから。
ほら到着。
途中でバランス崩すとでも思いました?
ドラマならそういう一波乱あったかもしれませんねぇ。
じゃあ……お願い、します。
良いですよ、恋人みたいに……腰に手を回してください。
はむっ、んちゅ……。
……。
このまま離さないで……。
もっと強く、抱きしめて。
ぷはっ、はぁっ……。
……ダメ、まだ抱きしめていて。良いって言うまで……。
…………。
愚痴、聞いてもらえますか?
私、ママに抱きしめてもらった記憶がなくて……。
お祖母ちゃんには抱っこしてもらってましたけど。
やっぱりママに抱いてほしかったんですよね。
仕事で忙しいのは子供ながらに分かってて、わがまま言えなかったんです。
今思えば、言えばほんの10分くらい時間作ってもらえたかもしれませんね……。
いまさらおねだりなんて……どうして良いか分からないし。
この歳になって、なんてつまんない見栄もあって。
あなたに抱きしめてもらって……とっても嬉しかったです。
ずっとずっと、誰かにこうして欲しかったのかも。
愛情に飢えていた?
……そうですね、言われてみればまさにそのとおりです。
あ、あの、失礼なこと聞いちゃいますけど……。
恋人、いないんですよね? 好きな人は……いますか?
じゃあ私を、その……こ、恋人にしてもらえませんか?
もっとあなたに愛して欲しい……。
あなたなら、愛情に飢えた私に、真剣に応えてくれる気がする。
ママが出来なかったことを、あなたがしてくれる気がするんです。
ダメ、ですか……?
そう……ですよね、ごめんなさい。
今日会ったばかりなのに……。
えっ、出張で? そうだったんですか。
じゃあもう会えない……ですね。
抱きしめてもらって、本当に満たされた気がします。
キスも、その……。
会って数分でキスなんて、遊んでる子みたいですけど……。
ち、違いますからね?
誰でも良いとかじゃなくて。
私が飛び降りると思って、私のためにここまで来てくれた人だから。
……でも、やっぱり。
これでさよならなんて嫌です。
なんとか、また会えませんか?
……。
アイドルって……私が?
アイドルになったら、あなたのそばにいられますか?
…………。
分かりました。どこまででもあなたに……プロデューサーさんについていきます。
そういえば、名前言ってなかったですね。
まゆ……佐久間まゆです。
どこまででもついていきますから……。
だから、まゆを置いてかないで下さいね。
・
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・
他の子とお話するの、楽しいですか?
まゆじゃ……プロデューサーさんのお相手は務まりませんか?
だって……不安なんです。
皆可愛くて良い子ばっかりだから……。
まゆみたいな手のかかる子は面倒でしょう?
でもまゆには、あなたしか頼れる人がいなくて。
だから嫉妬してしまう……。
あっ……。
…………。
うふふ、まゆが不安になるとプロデューサーさんが抱きしめてくれる。
そうすると、まゆの不安はスーッと消えていって。
誰かに抱かれるって、こんなに心地良いものなんですね。
また不安になったら、抱きしめてもらえますか?
そんなこと言って、後悔しても知りませんよ?
寂しくて不安になったらいつでも……呼びだしちゃいますから。
そ、そう……でしたね。
恋人ならそれくらい……当然ですよね。
えへへ……。
まゆはプロデューサーさんの恋人……。
・
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・
ライブバトルなんて初めて……。
プロデューサーさん、まゆを見てくれてますか?
あっ、もう。
あなた達……邪魔。
プロデューサーさんの視界に入らないで。
まゆをプロデューサーさんに見てもらえないじゃない。
負けちゃった……。
負けたら、褒めてもらえない……。
きゃっ、プロデューサーさん……!
こんなところで……他の人に見られちゃいますよぉ。
でも……うふふ。
抱きしめてもらえると、やっぱり安心します。
上手く出来なかったら見捨てられるんじゃないかってずっと不安で。
不安が顔に出てた?
そっか。それで……負けちゃったんですね。
本当はまゆって、まだまだ弱い子なんです。
でもプロデューサーさんがぎゅーってしてくれたら、それが力になるから……。
次はもっと頑張りますから……。
だから、不安が顔に出なくなるくらい、安心させて下さい。
もっと強く、抱きしめて。
あなたの温もりを忘れないように。
甘えん坊でうんざりしてないですか?
……本当に?
じゃあ次勝てたら、デートしてくれますか?
・
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・
……最近は、あんまり不安を感じなくなったんですよ。
プロデューサーさんが毎日抱いてくれるから。
離れていても、心はつながってるって思えるようになったんです。
他の子とお話してても、嫉妬しなくなったでしょう?
余裕ですよ、余裕。
だってまゆは、プロデューサーさんの恋人ですから。
この絆は誰にも壊せないくらい、2人は愛し合ってるんです!
ええっ、ドヤ顔なんてしてないですよぉ。
終わり
22:30│佐久間まゆ