2015年10月09日
裕子「あなたに届け、みんなに届け」
モバマス・堀裕子のSSです。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1444224977
何かを強く思ったならば。
必要なのは、
素敵な仲間。
信じる気持ち。
そして、楽しむ意欲です!
マストレ「よーしそこまで!」
晴「ハーッ! ハーッ! よし終わったーっ!」
梨沙「ハーッ! ハーッ! …終わり!? 終わりね!!」
裕子「はぁぁ〜…ふひぃ」パタリ
こんにちは。
みなさんと非日常の架け橋、
サイキック美少女アイドル・堀裕子です。
えー…私は、もとい、私たちは、今、
マストレさんの鬼トレーニングで、グロッキー直前です。
笑顔とサイキックパワーを誇るユッコをもってしても、
今日はもうムリです。
足も腕ももうパンパンです。
飛鳥「…ふうっ、はは、いや疲れた…」
ネネ「はぁ、はぁ、はぁ、ふふっ、お疲れ様、ですっ」
最近、集中的におこなわれているマストレさんの特別メニュー。
どうしてこんなことになったのか。
話は、一ヶ月ほど前にさかのぼります。
裕子「ネネさんの誕生日をお祝いしましょう!」ダンッ
そうだ、しなくては。
全ては私のこの一言から始まった。
あい「…また急に改まってどうしたんだい」
晶葉「えっと…ネネの誕生日っていうと」
裕子「明後日です!」
レッスンを終え、事務所でくつろいでいた9月初旬の午後。
サイキックトレーニング中の私の脳内を、
一つのメッセージが駆け巡った。
<< そういえば、ネネさんの誕生日が近いんじゃないか >>
…そうだ。
ネネさんの誕生日って9月だったハズだ。たしか。
そんな気がする。
以前お仕事が一緒になった時に聞いた記憶がある。
裕子「えーっと…」モチモチ
スマホのカレンダーにメモしていたハズだ。
そう思い、サイキックに従うままに、誕生日を調べたら。
9月9日。
つまり。
裕子「…明後日だ」
ムムーン。
明日…は、レッスンもお休み。
…。
…。
よし! お祝いをしよう!
以上が、さっきの宣言までのいきさつだ。
裕子「というわけです」
あい「たった今思い出したんだってことはわかったよ」
そうなのだ。
誕生日に間に合うタイミングで思い出すとは、
さすがエスパーの私。
晶葉「ちょっとギリギリに言いすぎじゃないか?」カチャカチャ
裕子「そんなことないですよ、誕生日は明後日ですよ! 明日があるじゃないですか!」
あい「その前向きさは、見倣いたいところだね」
ぐうぜん居合わせたのは、
読書中のあいさんと、
ウサちゃんロボを修理中の晶葉ちゃんだった。
カッコイイあいさん。
かわいいけど発明家の晶葉ちゃん。
そして、美少女サイキッカーの私。
なんというか、こう…、
知的でクールな空気が流れていますね。
ええ、その自覚はあります。
あい「ふむ、ネネくんとユッコくんは親しいのか」
晶葉「一緒に海外の仕事にも行っていたな、たしか」
裕子「そうなんですよ、オースラリア! あれは大自然とサイキックの融合による! 摩訶不思議アドベンチャーでした! 本当楽しくってですね」
あい「うむ、思い出話はまた聞くとして。つまり仕事をキッカケに仲良くなったネネくんの誕生日を祝いたいと」
裕子「そういうことです!」
ネネさんとはオーストラリアのお仕事をきっかけに仲良くなった。
とても面倒見のいいお姉さん的な女の子で、
みんなの信頼も厚い。
CuとPaでチームこそ違うけれど、
歳も近いし、なにかと親近感がわく。
だってホラ、ネネさんも私と一緒でやさしい美少女って感じだし!
ちなみに私の方が一歳年上だ。
なぜか誤解されることが多いが、私の方がお姉さんなのです。
フフン。
あい「友人の誕生日のために何かをしようとするのはいいことだね。だがすまない、私はこの後レッスンがあるし、明日は終日仕事でいないんだ。協力できることは少ないかもしれないね」
裕子「あー…そうでしたか」
晶葉「私もだな。今日この後も、明日も予定は入っているし」
さっそくつまづいてしまった。
プロデューサーも最近は忙しいみたいだし、何かこう…タイミングが。
晶葉「まあ、まだレッスンまでは時間があるから、相談くらいなら乗るぞ?」
あい「そうだね。それは私も」
裕子「ありがとうございます! じゃあさっそくなんですけど、…どんなお祝いがいいと思いますかっ!?」
晶葉「丸投げしていいって意味じゃないぞ」
しばらく二人と雑談を交わしながら、
誕生日お祝いの中身を考える。
あい「…ふむ。となると、何かちょっとした食べ物とかでも悪くないかもしれないな」
晶葉「ちょっとしたお菓子とかならその場で食べたりもするし、味だなんだで交流もできるしな」
あい「手作りとかはどうなんだい? ユッコくんは料理はするのかな?」
裕子「いやー、たまにやるくらいで。以前もイベントの時に作ったことがあったんですけど、あっ」
あい「?」
裕子「…」
…ひらめいた、かな?
晶葉「どうしたユッコ?」
…そうだ。以前のイベント。それだ。
裕子「ひらめきました! フェアリーブレッドにします!」
オーストラリアイベント以来交流があるネネさん。
そのオーストラリアの思い出ってことで、どうだろう。
フェアリーブレッドならあの時もプロデューサーに作ったから、私も多少覚えている。
そんなに手間もかからなかったハズ。
明日の午後にでも、事務所の一室を使わせてもらって作ろう。
よし、何かちょっと見えてきた。
裕子「ありがとうございました! すみません、これで失礼します!」バタン
晶葉「台風のようなキャラクターだな」
あい「あれもまた魅力なんだろうね」
翌日。
午前に別用を済ませ、昼過ぎに事務所へ。
料理をするというイメージはわいてきた。
ムムーン、今日もいい日にするぞぉ!
裕子「お疲れ様です!」バン
…。
あれ、誰もいない。
業務連絡のボードを眺める。
あー…今日はあまり暇な人いなさそうだ。
ムムーン。ちょっとざんねん。
誰かいたなら、いっしょに作ろうと思ったんだけど。
まあ、仕方ない。
部屋を移る。
とりあえず、調理の準備だ。
裕子「♪〜」
フェアリーブレッドは我ながらいいアイデアだと思う。
オーストラリアの思い出だし、
私もその時に、調べながらだけど作った経験があるから、たぶんなんとかなる。
とはいえ、料理が得意な人といっしょに作るなら、
もっと心強かっただろうなとは思う。
それに何より、誰かと作るなら、
もっと楽しくなりそうなんだけど。
裕子「…」
誰かいないかなぁ。
裕子「ムムムーン! 愛梨さーん! かな子さーん! お暇じゃないですかー? サイキックぅ〜現れろ〜!」
事務所の一室に、私の声が響く。
………。
あはは、急には無理ですよね。
まあ仕方ない! 一人ででも頑張りましょう!
裕子「♪しんじるーきーもーちーがーあたえるパワーでー」
えーっと、パンはあるし…
あ、スプリンクルはこれじゃ少ないか。
買いにいかなきゃいけないな。
裕子「よし、お出かけしますか!」
ガチャッ!
梨沙「話は聞かせてもらったわよ!」ババーン
裕子「わ! …あ、梨沙ちゃん! どうしたんですか?」
梨沙「どうしたもこうしたもないわよ! 私たちも一緒にネネを祝おうってのよ!」
裕子「え! ホントですか!? やったーうれしい!」
威勢よく現れたのは梨沙ちゃんだった。
今日も堂々とした立ち振る舞いと、その笑顔。
彼女がいると場が賑やかで、とにかく楽しくなる。
何より、仲間がほしかった今、梨沙ちゃんの登場はとてもありがたい。
…と。
裕子「えっと、『私たち』ということは…」
「ご明察」
飛鳥「ボクもいるさ」スッ
梨沙「フツーに出てこられないのかしら。相変わらずめんどくさいわね」
裕子「飛鳥ちゃんだ! わー」ワシャワシャ
飛鳥「ちょっ、むやみになでないでほしいな」ムッ
裕子「あはは!」
梨沙ちゃんと飛鳥ちゃん。
オーストラリアイベントのメンバーだ。
まさか来てくれるとは。サイキックが通じたのだろうか。
裕子「あれっ、でも二人とも今日はレッスンだったハズでは?」
梨沙「それがね、トレーナーさんに急用が入って短時間で切り上げになっちゃったのよ。急に何なのかしらね」
飛鳥「予定より随分早く事務所に戻ってね。今朝あいさんからユッコの話を聞いていたから、駆けつけた次第さ。これも縁ってヤツだろう」
裕子「それはそれは!」
あいさん、広めてくれていたんですね。
ありがとうございます。
サイキック、心の中で感謝。
みんなで作るなら、もっと楽しくなりそうだ。
まして、オーストラリアイベントのみんなでなんて。
みんなで…。
…そうだ。
裕子「そうですよ!!!」バンッ
梨沙「わっ、何よいきなり大きな声出して」
裕子「みんなで作れば楽しいし、思い出っぽいしバッチリじゃないですか! それですよ!!!」
飛鳥「…う、うん。そのつもりだから、ボクたちも来たんだけど」
梨沙「そうよ、何言ってんのユッコは」
いや違う。まだだ。
あとオーストラリアのメンバーといえば。
裕子「あと晴ちゃん! 晴ちゃんは今日お仕事でしたっけ!?」
ここまで来たら、彼女も誘いたい。
梨沙「晴ならイベントの準備とか言ってたけど…今日はどうかしらね」
裕子「ぜひ晴ちゃんも呼びましょう! サイキックオーストラリアメンバー・ネネさんサプライズ大作戦チームってことで!」
梨沙「ひっどいネーミングね」
飛鳥「…まあユッコの気持ちもわかるよ」
梨沙「ま、みんなでネネの誕生日を祝うってのは悪くないわね」
裕子「でしょう!」ニコー
あずきちゃんが言いそうな大作戦名になってしまった。
でもいいんじゃないかな。
お祝いって楽しいし、
みんなとならもっと楽しいし。
飛鳥「んー、じゃあ晴にメールしてみようか」
梨沙「めんどくさいわね、アタシが電話するわ」
みんな、イベント以降も仲がよさそうで何よりだ。
もちろん私も。
お仕事での共演を通じて交流が増えるのはうれしい。
アイドルって、いいものだ。
梨沙「あ、晴? もう仕事終わった? じゃあ事務所帰ってきたらルーム2に来て! ちょっと何人かで集まってるから。ん? 別になんでもないわよ、ちゃんと来なさいよ! うるさい! いいから早く来てよ!」ニヤ
あ、悪そうな顔してる。
くわしい説明はしないみたいだ。
飛鳥「梨沙は悪い子だねぇ」
それもそうだし、飛鳥ちゃんは飛鳥ちゃんで、
頑張って大人っぽくみせようとする感じがとてもかわいい。
なんだろう、ちょっと不思議なメンバーだ。
晴「…で、急に呼び出された挙句、料理を作ろうってか。オレも…か?」
梨沙「そうよ、いいじゃない! せっかくユッコが珍しくいいこと言ってんだから、アンタも乗っかりなさいよ!」
裕子「いいこと言ってるエスパーユッコです!」ババーン
晴「ああうん、知ってる知ってる。…いやそりゃ、ネネの誕生日ってんなら、まあ考えるけどさ」
梨沙「アンタこんど大和撫子がどうとかってイベントやるんでしょ? たまには料理も悪くないわよ!」
さすが梨沙ちゃん、情報が早い。
晴「うへぇ…まあ仕方ないか。ネネのお祝いはしたいし、いいよ、やるよ」
飛鳥「ふふ、晴はあれこれ言いつつも、前向きに何でも乗ってきてくれるからありがたいね。素直な子だ」
梨沙「大人ぶっちゃって」
なんだかんだ言いつつメンバーは揃った。
よし、いい流れだ!
裕子「はいはい、みんないいですかー! 私が一番年長者でリーダーですからねー! 聞いてくださいねー!」ペカー
梨沙「(ユッコが一番心配だわ)」
飛鳥「(裕子が一番心配かもしれない)」
晴「…ユッコが一番不安だな」
裕子「なっ! 何か理不尽な評価!!」
梨沙「で、ユッコはフェアリーブレッドを作るのよね?」
裕子「そうでーす!」
飛鳥「オーストラリアイベントの際にユッコが作ったものか…するとボクはプロフィットロールかな?」
梨沙「妥当な線ね。というか、飛鳥が料理するのってちょっと意外だわ」
飛鳥「まあ…、嗜む程度のことさ」
晴「(ちょっとできるぜ、ってことでいいのかな?)」ヒソヒソ
裕子「(そんな感じですね)」ヒソヒソ
飛鳥「梨沙はパンケーキだっけ?」
梨沙「私はそうね、あの時パンケーキを作ってたんだけど、今回はこっちにしようかしら」バッ
梨沙ちゃんの見せてくれたスマホの画像には、ホイップケーキのような写真が。
イチゴが盛られれいて、とても美味しそう。
えっと、これは確か…。
裕子「なんでしたっけ、ババロア?」
梨沙「パブロア!」
裕子「あっそれ、パブロア」
梨沙「そうよ!」
飛鳥「ババロアはまた別の食べ物だね」
そうだそうだ、パブロアだ。
晴「…ネネが作っていた方か」
梨沙「そう! せっかくだし、こういう演出も粋でしょ!」ニカー
飛鳥「たしかに、ちょっと粋かもしれないね。それにおいしそうだ」
梨沙ちゃんはとても気がきく。
なんだかんだ、みんなを気遣ってくれる感じが嬉しい。
晴「オレあの時はハンバーガーとか作ってたからなぁ。どうしよっか」
梨沙「それもいいけど、晴はアタシの手伝ったり、みんなのフォローしたりはどう? それだって大事なことよ」
晴「それでいいのか?」
裕子「バラバラに作るより、協力する感じがいいかもですね!」
飛鳥「作る過程にこそ意味がある、って考え方は嫌いじゃないよ」
梨沙「飛鳥はもう少し気取らずに話せないのかしら」
みんなが意見を交えると、とても楽しい時間になる。
裕子「よしでは、たりない物の買い出しに行きますか!」
梨沙「そうね!」
そうなのだ。楽しい時間はもう始まっているのだ。
裕子「あっみちるちゃん!」
みちる「フゴフゴ…あ、お疲れ様です!」モグモグ
買い物から戻る際、みちるちゃんと遭遇した。
裕子「今からレッスンですか?」
みちる「そうです、今日も頑張りますよー!」
パン好き少女、みちるちゃん。
今日も笑顔でほおばっているパンがおいしそうだ。
これからレッスンだというのに大きなパンを食べているのは
なんともすごいなと思うけど。
みちる「ユッコさんはもう帰宅ですか?」
裕子「いえ、これからネネさんの誕生日お祝いを準備しようかなと」
軽くいきさつを話す。
みちる「…へええ、いいですね!」
裕子「でしょう! スプリンクルだけ向かいのスーパーにいいのがなかったんで、今ひとっ走り駅前の大きいお店に行ってきたんですよ」ガサッ
みちる「スプリンクルというと…フェアリーブレッドとかですか?」
裕子「あ、そうです! まさにそれ!」
ここでケーキとかドーナツと言わないのが
みちるちゃんっぽい。
みちる「あたしもお手伝いできたらよかったんですが、ちょっと忙しいので…ごめんなさい」
裕子「いえいえ、気持ちだけでもうれしいです!」
時間があるようならお誘いするのもありかな、と思ったけれど。
そうもいかないみたいだ。残念。
あ、でも。
裕子「そうだ、みちるちゃん、何か美味しくなるコツとかありますか?」
みちる「フゴッ?」
裕子「フェアリーブレッドってパン料理じゃないですか」
みちる「あー、そうですね…」
つまりそうだ。みちるちゃんといえばパン。
専門家みたいなものだ。
裕子「みちるちゃんならパン料理のことだし、何かコツとか秘訣みたいなもの知ってるかも!」
みちる「秘訣…と言われましても…ムム」モグッ
考え事しながらもパンはかじるんだ。
ちょっとおもしろい。
みちるちゃんには妙な親近感みたいなものがある。
何を隠そう、彼女は私と同じ福井県出身だ。
私が16歳、彼女が15歳。
それぞれ上京し、奇遇にも同じ事務所で今アイドルをしているのだ。
こういうのなんて言うんですかね。
サイキック? …うん、サイキック…ですね! きっとそうです。
みちる「…気持ちって、大事ですよね」
裕子「えっ」
しかし、みちるちゃんの言葉はちょっと意外なものだった。
みちる「今回のもそうですけど、誰かに喜んでほしいって思う気持ちというか。相手が美味しいとかうれしいとか言ってくれるためにはどうしたらいいか考えるのって、とても大事ですよね」
裕子「あ、はい! なるほど、わかります!」
一瞬メイドさんとかによくある「もえもえきゅん☆」みたいなことをやれと言われたのかと思ったけど、
そうではないらしい。
何のことかと思ったが、すぐに納得した。
何を隠そう、私はサイキックパワーの使い手なのだ。
信じる気持ちと心意気なら自信はある。
裕子「ネネさんの好きなものとか喜びそうなこととか、そういうのを考えることが一番大切ってことですね!」
みちる「はい!」ニコー
技術的なアドバイスではなかったけれど、
私もこういう話は好きだ。
エスパーも、気持ちが大事だし。
みちる「あたしも実家のパンをおすそ分けしたり、自作のパンを食べてもらったりしますけど、こういうときはこのパンだと喜んでもらえるんじゃないか、今の時期ならこういうパンがうれしいんじゃないか、とか考えますよ」
裕子「どのみちパンなんですね!」
みちる「あ、そうですね! あははー!」
みちるちゃんらしいな。
裕子「自分でもパンを作ってるんですね。みんなにも好評ですか?」
みちる「そうですね、晶葉ちゃんとか、ライラちゃんとか、…えーと、あとはうちのプロデューサーとか。みんな美味しいって言ってくれるし、あたしもうれしいですね!」
ムムッ。
…プロデューサー、か。
Cuのプロデューサーさん。
あまり交流はないけど、知っている。
とても丁寧でやさしい感じの人だ。
裕子「みちるちゃんは、最近特に担当プロデューサーさんと仲いい感じ…ですよね」
みちる「…あ、えへへ、そう思いますかー? どうなんでしょうね! あははー!」テレテレ
一瞬だけとまどった後、
みちるちゃんは照れ隠しっぽく笑った。
みちる「ふふ」
頬に手を添えて笑う仕草とか。
なんかいいな、って思う。
みちるちゃんとCuのプロデューサーとの関係はよく知らないけれど、
なんというか、こう、みちるちゃんらしくて。
いつももぐもぐしているあの姿の向こうに、みちるちゃんっぽい恋がありそう。
もぐもぐの向こうの恋心…なんて。
私もプロデューサーに何か…。
おっと、
今その話はおいといて。
まず今は、誕生日のネネさんのために。
そう、ネネさんが喜ぶことを考えよう。
裕子「ネネさんの好きそうなもの…ムムーン…」
確か、健康志向なんだと言っていた。
裕子「健康…元気………スタドリ…!」
みちる「やめましょう、それは」
違う方向で考えよう。
みんなに優しくて、えっと。
裕子「あ」
みちる「?」
…。
ひょっとして、もっと大切なことがあるのではないだろうか。
今ちょっと、今ほんのちょっとひらめきが、
ひらめきサイキックがあった。
裕子「…」
みちる「どうしました?」
裕子「あ、いえ、なんでもないです! アドバイスありがとうございます!」
みちる「いえいえ! お疲れ様でーす!」モグモグ
裕子「もしもしネネさん、お疲れ様です。今どこにいますか?」
梨沙「遅ーい! スプリンクル探しに行くのにどんだけかかってんのよユッコは!」
飛鳥「まあまあ、気長に待とう。焦っても仕方ない」
晴「そうだけど、さっさと始めたいよな〜」
ガチャッ
裕子「お待たせしましたー!」バーン
梨沙「あー来た! ユッコアンタどんだけ待たせ…て…」ギョッ
飛鳥「えっ」
晴「あれ」
ネネ「こんにちは、みなさん」ヒョコッ
裕子「本日最後のメンバー! ネネさんでーす!」
梨沙「ちょっ、ユッコ! 本人連れてきてどうすんのよ! だいたいこれサプライズじゃないの?」ヒソヒソ
裕子「あー、それなんですけど…いきなりでごめんなさい、予定変更させてください! …その、ネネさんが一番喜ぶことって何かなーって考えてたら、たぶん」
飛鳥「…ああ、なるほど」
梨沙「…」
晴「え、何? どういうこと?」
梨沙「…ネネにはサプライズのプレゼントするより、みんなと一緒の作業に参加させた方が喜んでもらえるだろってことでしょ」ペシッ
晴「痛っ、なんだよ」
梨沙「まったく…ユッコにしてはいいアイデアね!」
飛鳥「やれやれ。まあ、ボクもそう思うよ」クスッ
晴「…よくわかんねーけど、みんなでやった方が楽しいもんな!」
ネネ「ふふっ、よろしくお願いします!」
裕子「さあ、あんまりダラダラしてられませんね! 作業に入りますよー!」
ネネ「私もお手伝い、頑張ります!」
ワイワイ
裕子「えーそれでは、一日早いですが、ネネさんのお誕生日会を始めまーす!」
パチパチパチパチ
ネネ「えっと、みなさん今日は私のために、わざわざありがとうございます。すごく嬉しいです!」
うんうん、いい形になったかな!
料理は無事完成した。
途中いろいろ危ういところはあったかもしれないが、
ネネ「混ぜるのは私がやりますよ」
ネネ「あ、梨沙さん盛りすぎないように…」
ネネ「裕子さん、もう少し全体にまぶす方がよいかと」
ネネさんがいろいろ手伝ってくれたこともあり、
問題なく、完成しました!
料理中の会話で、ネネさんが明日けっこう忙しいんだと知って。
じゃあこの後みんなで食べるのはどう? という梨沙ちゃんの提案から、
ネネさんもそれを希望し、みんな時間もあるので…となり、今。
いろいろアドリブで進んだけれど、結果的には大成功だった気がする。
ネネさんも喜んでくれているし、みんなも楽しそうだし。
頑張ったかいがあったというもの!
ネネ「美味しいです、このフェアリーブレッド」
裕子「よかった! 梨沙ちゃんのも美味しいですね!」
梨沙「当たり前よ! アタシはパパ相手に時々料理してるからね!」
晴「飛鳥ー、それも一口もらっていいか」
飛鳥「遠慮なくどうぞ。だが甘いものはほどほどに、ね」
ワイワイ
みんなに感謝しないと。
みんなのおかげで、こんなに素敵な会になったのだから。
裕子「ではここで、エスパーユッコがサイキックを披露しまーす! まずはスプーン曲げを」
梨沙「あっけっこう甘いのねコレ。でも美味しい」
飛鳥「見た目以上な感じあるけど、いけるね」
裕子「あの、ちょっと見てほしいかなーと思うんですけど」
楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
飛鳥「さすがに多いね。各自少しずつ寮に持って帰って、誰かにあげるかい?」
晴「そうだな、じゃあオレ、ありすとほたるの分もらっていくよ」
ネネ「私も紗南ちゃんの分頂いていいですか?」
梨沙「アタシはこれパパに送るわ!」
裕子「じゃあ私は柚ちゃんと茜ちゃんの分を!」
飛鳥「…これは蘭子にあげるかな」
お誕生日会が終わった頃にはもう日も落ちていた。
裕子「いっぱい食べましたね!」
ネネ「美味しかったです。みなさん本当にありがとうございます」
梨沙「楽しかったわよ! ユッコもたまにはやるわね!」
裕子「ふっふっふ! もっと言ってくれていいんですよ!」
晴「ユッコはあいかわらずだな」
ネネちゃんもみんなも楽しんでくれたみたいなので、私も大満足だ。
飛鳥「少し甘いものを摂りすぎた気がするけどね」
晴「そうだな、ふだんこんなに甘い物ばっか食べないしなー。太ったかな?」
裕子「あはは、太りそうならまたマストレさんにトレーニングしてもらわないといけませんね」
ネネ「ふふっ、トレーニングもみんなでやれば楽しいですよ!」
お誕生日イベントも終了し、みんな帰路につく。
私はちょっと寄るところがあるので、と離脱。
プロデューサーの分を届けに行こう。
まだいるかな? きっといるはず!
相手の喜ぶ笑顔のために。
わかるよ、みちるちゃん。
裕子「サイキックぅ〜フェアリーブレッドおすそわけデリバリー!」ダダッ
サイキックに必要なもの。
不思議な何かを、信じる心。
私たちの毎日は、楽しいことでいっぱいだ。
世界をワクワクさせる美少女サイキックアイドル、堀裕子です!
さあみなさま、あっと驚く準備はいいですか?
この数週間後、
「特訓お願いします! 私たち、甘い物をたくさん食べて身体が鈍り気味なので!」
というネネさんのやたらポジティブな告発により、
オーストラリアメンバー全員、
マストレさんの鬼トレーニング期間に突入するのだが、
この時の私はまだ知らない。
おまけ
裕子「…」ヒョコッ
いた。
P「…」カタカタ
裕子「プロデューサー!」
P「わっ! …おおユッコか。お疲れ様」
裕子「えへへ、お仕事お疲れ様です」
P「ユッコもお疲れ様だな。遅くまでどうしたんだ?」
プロデューサーがこちらに向き直ってくれる。
今も忙しそうなのに、私たちアイドルとの時間をとても大切にしてくれる。
こういうの、とってもうれしかったりするんですよ。
裕子「えーっと、今日ですね、一日早いんですけど、ネネさんの誕生日をみんなでお祝いしてまして」
P「栗原さんか。オーストラリアでお仕事一緒だったもんな」
裕子「そうなんです、それ以来の縁で。で、みんなで料理を、あ、みんなっていうのはオーストラリアの時の梨沙ちゃん、飛鳥ちゃん、晴ちゃん、ネネさんなんですけど、そのメンバーで料理を作ってたんですよ」
P「へえー」
心なしか、早口になる私。
おちつこう。
いや、ムリなのかな。
少しおおげさに、後ろからプレゼントを出す。
裕子「で、あの、プロデューサーの分も作ったので、これどうぞ!」バッ
P「おおっ、俺の分もあるのか」
裕子「もちろんです!」
P「…ありがとう。嬉しいよ」
フェアリーブレッド。
もちろんネネさん用に、そしてみんなで食べる用にたくさん作った。
それとは別に、プロデューサー用も作っておいたのだ。
P「星型、頑張って作ったんだな」
裕子「はい!」
☆の形は最近お気に入りの、私を表すシンボルマーク。
さんざん悩んで作った色紙のサインにも入れている、☆マークだ。
ユッコはプロデューサーといっしょに、スターになります!
♪SAY☆いっぱい輝く 輝く星になーれー…なんちゃって。
P「さっそく食べてみていいか?」
裕子「あ、ちょっと待ってくださいね」
P「?」
裕子「ムムムーン…サイキックぅ〜」
…。
裕子「ハッ!!!」
裕子「はいオッケーです! サイキック注入完了!」
P「サイキック注入しちゃったかー」
裕子「きっと美味しくなりましたよ!」
まちがいない。
たくさん込めたから。
日頃の感謝とか、
少しは休んでくださいねという気持ちとか、
また頑張りましょうねという気持ちとか、
あといろんな想い、とか。
うん。
もえもえきゅん☆とかは、ちょっと恥ずかしいので、ハイ。
でもいいのです! サイキックスタイルこそ私流!
エスパーユッコらしい、気持ちたっぷりの料理です!
P「…あ、美味しい! 甘い物が欲しいタイミングでもあったし、すごく嬉しいよ」
裕子「ホントですか? やった! よかったです!」
P「ありがとうなユッコ」
裕子「えへへ、そんなそんな」ムフー
うれしい。
うん、でもきっと喜んでくれると思っていた。
プロデューサーはそういう人だ。
いつだって優しいし、とても暖かい。
だから好き。
P「…ユッコは料理も好きなんだっけ?」
裕子「え! あ、いえ、あ、はい! 料理はそうですね! そういうお仕事も、いつでもやりますよ!」
びっくりした。
一瞬、「好き」に反応されたのかと思った。
プロデューサーまで心を読める人になったら、ちょっと大変だ。
P「そっかー…。よし、またいろいろ計画してみるよ」
裕子「ありがとうございます! どんなのでも望むところですよー!」
♪どんな信じられないことも信じ続けて
強く念じていれば スーパーナチュラル
プロデューサーが私のために取ってきてくれるお仕事ならば。
きっとうまくできるハズ。
大丈夫。私は信じていますから!
裕子「さあ、それじゃースプーン曲げますよー!」
P「おっ、今日こそ曲がるかな?」
スプーンは曲げるけれど。
私のアイドル活動は、これからもこの道をまっすぐ往くのだ。
アイドルのみんなと。
支えてくれるたくさんの方々と。
そして、プロデューサーと。
裕子「ムムムーン!」
サイキック。
それは夢見る魔法の合言葉。
さあ、みんないっしょに笑顔になりましょう! ね!
それからほどなくして、ひとつの料理イベントへの私の参加が決まる。
実際は料理と称して究極のイチゴ探しの旅に奮闘することになるのだが、
それはまた別のお話。
比奈「(超能力ってホントにあるんスかねぇ)」
杏「(さぁねぇ…。ま、ユッコの存在自体が超常現象みたいなトコあるよね)」
輝子「…フ、フヒッ!? またキノコたちが…大きくなっている…??」
おわり
21:30│堀裕子