2015年12月09日

晶葉「恋する秋は、いと深し」






モバマス・池袋晶葉のSSです。











SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1448891233









うまくいかない日だってあるし、



誰かにすがりたい夜もある。







止められない思いだってあるし、



止められない言葉だってある。







情熱の矛先は、どこだ。







* * * * *







<『甘くて美味しいあたしのステージ、お腹いっぱい楽しんでくださいね!』



< ワアアア!!!







柚「楽しそうだねーいい感じ!」



裕子「そうですね! かわいい!」



みちる「いやぁーそれほどでも! えへへ!」







法子「このシーンのみちるちゃんカワイイよね〜!」



晶葉「たしかに笑顔もバッチリだし、いい感じだな!」



みちる「あはは、いえいえそんな……、でもありがとうございます!」







茜「あとステージ全体がおいしそうです!」



みちる「そうなんですよ! なんというか、パンというか! ね!」













ワイワイ







今日も事務所は賑やかだ。



モニタで流されているのは、先日あったみちるの単独ミニライブの映像。



振り返りを兼ねた上映会だとかで。



たまたま居合わせた私も参加している……が、







悠貴「お疲れ様ですっ! みなさんお茶会楽しそうですね!」



柚「あ、悠貴ちゃんおつかれー。悠貴ちゃんもおいでおいで」







まあそうだな、お茶会にしか見えないよな。







< ウワアアアアア!!!!!



< みーちーる!!! みーちーる!!!



< パーン! パーン!







晶葉「おい今パンってコールしてる声聞こえなかったか?」



法子「聞こえたー! いいなーあたしもドーナツって言われたい!」



柚「言われたいんだ」



みちる「そうなんですよ! いきなりでしたけど、それあたしもうれしかったんです! ねープロデューサー!」



P「ん? まあそうだな。それだけみんなに理解してもらえて、応援してもらえるってのはいいことだな」



みちる「はい! えへへ♪」ニコー







……。













悠貴「みちるさん、かわいいですねっ!」



晶葉「そうだな」







本当にそう思う。



最近のみちるは特に。







愛くるしい姿。



明るい言動。



そして何より、







P「また頑張っていこうな」ナデナデ



みちる「はい!」







彼とのチームワークがあってこそ、という雰囲気だ。







我々Cuチームのプロデューサー。



多くのアイドルを抱え多忙な毎日だが、



そんな中でも我々との時間を大切にしてくれる。







優しい人だ。







彼は私のプロデューサーであり、私の助手だ。



そしてみんなのプロデューサーでもあり、みんなのよき理解者でもある。



そうなんだけど、な。







晶葉「……他意はないんだけどな」



柚「ん、どうかした?」



晶葉「いや、なんでもないぞ」







最近は、自分に嘘をつくのが下手になったものだ。











比奈「(え、杏ちゃんもうそんなトロフィー集めたんスか)」



杏「(比奈はサイコロの目の拾い方が下手なんだよ)」



あい「真っ昼間から君たちは何をやっているんだ」









* * * * *







助手への思いが、単なる信頼関係のそれではないと自覚したのは、最近のことだ。







まあ、私はもともと彼に対する特別意識が強い。



それだけプロデュースでも、それ以外の場面でも、頼りになる存在だったからだ。







ただ恋愛に疎い私は、その先を意識するのに時間がかかった。



それと、助手に対して好意を抱く人が他にもいるだろう事実に対して、どう思っていいのかわからなかった。







とはいえ、助手と呼ぶようになったのも、彼と私の間にしかない関係を意識したからだし、



彼の近くに居るための口実だったといえば、たぶんそうだ。







晶葉「〜〜〜っ」///







頭の中で整理するだけで、顔が熱くなる。



自覚はした。確かにしたんだ。



でも私はまだまだ、こんなものなのだ。







躊躇するのは私らしくない。



できるところから、踏み出してみよう。



そう思ったりもしたのだが。







さっきのみちるのような姿を見ると。



どこか臆してしまう自分がまた、そこにはいた。









* * * * *







晶葉「助手よ、私の最近はどうだ? いい活動ができている……かな?」



P「……急にどうした? 何かあったのか?」



晶葉「あ、いやその、その……」







翌日、仕事への移動の最中。



思わず言葉が溢れてしまった。







晶葉「すまない、別に何がというわけじゃないが、ちょっと不安になったから」







自分で言っておいて悲しい。



アイドル活動に大きなトラブルはない。



研究だって停滞しているわけじゃない。



じゃあ何の不安なんだって、それはもう。







P「そうか。……じゃあ成長のチャンスかもしれないな」



晶葉「えっ」



P「人は悩んで大きくなるって言うし、壁を乗り越えてこそだもんな」







失望されるか、それとも過度に心配されるかと思っていたが。



どうにも彼は、そうでないらしい。







晶葉「……君は前向きな言葉を発する才能なら超一流だな」



P「あはは。今日の仕事後なら時間取れるけど、少しゆっくり話を聞こうか?」



晶葉「そうだな……」







いつもこうやって、仕事の内外で優しい言葉をくれて。



私はいつも、彼の言葉に助けられている。







P「それか、晶葉は来週に仕事休みの日あるだろ? あの日どこか出かけるか?」



晶葉「え」



P「俺もちょうど休み取ってるし、もし時間あるなら、たまには気分転換でもどうだ?」



晶葉「……」







ちょっと待ってくれ行きたいところなんか腐る程あるしまして君となら行きたいところもやってみたいこともいっぱいあるしそれは私的な満足スポットすなわち科学的なあるいは学術的なところに君を連れて行って片っ端から説明をするという魅力溢れるプランも考えられるけどそうでなくとも君とならゆったり過ごすだけでもいいんじゃないかとかそういうえっとちょっと待ってくれ













P「晶葉?」



晶葉「ああすまんちょっとボーっとした、お出かけ! お出かけいいじゃないか! ぜひ行こう、気分転換にな!」







急なことだが嬉しい話だ。



頭を巡らせる。







晶葉「そうだな、えっと、えっと、あ! このあいだー」







……隣県の科学館がリニューアルされたから、という言葉を寸前で飲み込んだ。







晶葉「……えっと、えっと」



P「どうした?」







少し、熟慮の時間がほしい。



……いや、違うぞ。







晶葉「あ、あの。どこというのはないけど、というかその、行き先は君に決めてほしいというか……」



P「あ、そうなのか。特に希望はない?」



晶葉「その、助手のオススメでエ、エスコートしてほしい……な?」



P「え」



晶葉「ああっ、変な意味じゃないんだがその、つまりだ。助手のその、助手を、私は信頼しているからな!」///



P「……うん、ふふっ、じゃあ頑張ってエスコートするよ」



晶葉「わっ、笑うな! 何だまったく!」



P「ごめんごめん、そんなつもりじゃなくて。あはは」







まったく。この男はまったく。







P「わかりました、お嬢様。素敵なデートをぜひ」スッ



晶葉「……」



P「……なんちゃって」



晶葉「……!」ハッ







晶葉「バ、バカッ!!!!!」ベシッ



P「あはは」



晶葉「〜〜〜ッ!」







この男は! この男は本当にもう!







私はすっかり上機嫌になってしまった。



さすがにちょっと、乗せられすぎていないか。



この日の夜、いろいろ思いを馳せてなかなか眠れなかったことはここだけの話だ。







* * * * *







翌日。







事務所近くのカフェにやってきた。



普段の私にはあまり縁のない、オシャレなオープンテラスだ。







晶葉「わざわざ申し訳ない、時間を割いてもらって」



千夏「いいのよ、今日は暇だったから」







相川千夏。



カフェでの読書を趣味としている、Coチームのお姉さん。



いつもオシャレで、知的で落ち着いた物腰が印象的だ。



代官山系ファッション? っていうんだっけか。



そのあたりは、私にはよくわからないけれど。







しかしひとたびステージに立てば、



躍動感とともに秀麗な輝きを見せる、艶のある女性へと変身する。







素敵な大人女子だ。







千夏「アナタに相談を受けるなんて光栄ね」



晶葉「いや、そんな」



千夏「それで、どうしたの」



晶葉「あのー」







困った時は頼りになりそうな人に聞くのが一番だ。



たとえそれが、どんな話でも。







晶葉「今度助手、あ、いやうちのチームのプロデューサーと……二人でお出かけすることになって」



千夏「あら素敵じゃない」



晶葉「あ、ありがとう。でも……話のなりゆきで決まって、行き先とかは向こうが考えてくれるんだけど、……そういうのって、格好とか、立ち振る舞いとか、わからなくて」



千夏「ええ……デートの指南をしろって言うの?」







明らかに怪訝そうな顔をする千夏。



それもそうだ。



だけど、私も私なりに考えてのことなのだ。













晶葉「何か少しでも、気にかけておけることがあればと思って」



千夏「おかしいのね。私がそういうことに長けてるように見えるの?」クスッ



晶葉「……わからないけど、千夏は大人の女性だなと思っているんだ。だから」



千夏「そっか……晶葉は担当プロデューサーのこと、好きなの?」



晶葉「う……」







しばしの逡巡。



ぐるぐると視線を泳がせた果てに、



口を開くでもなく、ただ私は控えめにうなずいた。







千夏「……そっか」







いろんな思いが頭を巡る。







千夏「オシャレな服とか、無理に気張る必要はないと思うわよ。なるべくいつも通りで。まあ白衣姿はさすがにやめておいた方がいいけど。でもあまり無理のない範囲がいいわね」



晶葉「そういうものか」



千夏「あなた別に、プロデューサーと外に出かけたことがないわけじゃないでしょう。急に畏まる方が変なのよ」



晶葉「……そうだな」



千夏「晶葉とCuのプロデューサーが話しているところは私も見かけたことがあるわ。いつもとても楽しそうで。でもそれって、自然な感じだから成せることなんじゃないかしら」







彼女の説明はとてもわかりやすく、いつも聡明さを感じさせる。







千夏「いつもの自分たちと違う何か、それを求めてこそ楽しさも感動もあるものだけど、だからといって無理はだめよ」



晶葉「……千夏はすごいな」



千夏「あら、そんなことないわよ。みんな同じよ。悩んで、考えて大人になるの」フフッ







彼女に限ったことではないが、



大人というのは、



みなそれぞれ何かしら自分の「芯」を持っているようで。



それが魅力のように思える。



だから私は千夏含め、



事務所の大人組はみな好きだし、頼りにしている。







千夏「たとえば街を歩くならー」







その後も不器用で不慣れなデート(?)相談をさせてもらった。



心なしか、この話自体も楽しく感じたのだが、



まあそれは千夏のトーク力によるところだとしておこう。









* * * * *







そのくらいかしらね、と話し、千夏は立ち上がった。







千夏「ごめんなさい、そろそろ行くわ。この後約束があるから」



晶葉「あ、ああ。いろいろありがとう」







私はこんな風に、凛とした大人になれるだろうか。



見習うところが、まだまだたくさんある。







千夏「どういたしまして。あ、それと」



晶葉「?」



千夏「私たち年長者に聞くのもいいけど、たまには同世代にも頼ってみたらどうかしら」







また突然酷なことを言う。







千夏「アナタは14歳でしょ。そのくらいの年齢、そのくらいの年代にしか説明し得ない”微妙な感覚”ってあるものよ。自覚はないかしら」







思う節は、なくはないけれど。



何が、と言われると困ってしまう。







千夏「わからなければ、それこそ周囲の同世代にあたってみるといいわ。別に恋愛の話じゃなくとも、今感じていること、抱えていること、そんな中に共感もあれば反発もあるし、理解できないこともあれば、学びもきっとあると思う」



晶葉「そう……なのかな」



千夏「人ってたぶん、幾つになってもファジーなところはファジーなままなの。でもそれをより鮮明に出しているのが10代半ばなんじゃないかなと私は思っているわ。らしさがむき出し、みたいなね」



晶葉「……」



千夏「曖昧な気持ちも大切にね。それでこそ、科学のような”厳密さにこだわる”大切さもわかるハズよ」







それじゃお先に失礼、とだけ言い残し、千夏は行ってしまった。



後ろ姿さえカッコよく見えたのは、気のせいだろうか。







かなわない、な。







天才科学者と呼ばれてはや幾年。



欲張りなもので、科学一筋に生きる自分、とはならなかった。



アイドルも然り。仲間も然り。そして助手然り。



大切なものには真っ直ぐ向き合いたいし、



挑戦することはきちんと成し遂げたい。



それが私、池袋晶葉なのだ。









* * * * *







飛鳥「……で、その流れでボクの所に来たと?」



晶葉「まあ、そんなところだ」ニカッ



飛鳥「……同い年の天才科学者を前に言うのもなんだが、少し疲れているんじゃないか?」



晶葉「酷い言い草だな」



飛鳥「14歳と言ったって他にも適役がいるだろう」



晶葉「ふっふっふ、そんなことはないさ」



飛鳥「……アブないキノコでも食べたのかと疑いたくなるね」







説明しよう!



二宮飛鳥と私は同じ14歳だ。



別に普段からそれほど親交があるわけではないが、



独特な世界観を持っている飛鳥はなかなかに興味深く、



割と楽しい仲間だと、私は勝手に思っている。







飛鳥「しかしまぁ、天才にも人並みな部分があるんだね。暦の上では秋深し……だけどキミには春が来ている、のかな?」







相変わらず言い方がキザだ。



でもそれが飛鳥らしさなのだろう。







飛鳥「コーヒーでも一杯どうだい」



晶葉「ありがとう」







おや?







晶葉「……ブラックも飲むんだな」



飛鳥「フフッ、まあ、嗜む程度にね」







飛鳥「えふっ」







今むせたぞ、おい。













飛鳥「まあしかし……ボクはあまり、そういうことで悩む晶葉は見たくないかな」カチャ







その得意げな顔はなんなんだ。



まあ話は聞こう。







飛鳥「キミはボクと同じで、非日常な存在であってほしいし、できれば恋だ愛だとそんな話にウツツを抜かしてほしくはないんだけどね」







ボクと同じで?







晶葉「……飛鳥だってCoのプロデューサーと仲良く出かけていたという話g」



飛鳥「それはさておき」



晶葉「おい」







まあ恋愛は自由なんだけど、と断りを入れつつ、飛鳥は続ける。



このテの話にやきもきする私には、あまり肯定的ではないようだ。







晶葉「やっぱりこういうの、私らしくないかな」



飛鳥「……晶葉、それは少し違う」







ここから、飛鳥は一気にまくしたてるように喋った。







「晶葉。同僚として、そして同じ14歳として言うよ。



 ボクはキミの存在がとてもスキだ。



 身近にいる天才なんて、ボクのような普通を嫌う人間には、



 そりゃあ魅力的なもんさ。



 異質さの象徴のようなものだからね。







 でもね、同時にとても憎らしくもあるんだ。



 ボクにはできないことがたくさんできて。



 ボクには理解らないことをたくさん解いて。



 ボクが知り得ないことを本当にたくさん知っている。



 そんな同い年なんて、憎いに決まっているだろう?」













晶葉「え、あ、急にどうした?」



飛鳥「……ああすまない、気にしないでくれ。キミ自身が憎いという話じゃないんだ。……ただ、それくらい羨ましいって話だし、一種の憧れなんだよ」







少し冷静になったのか、いつもの気取った仕草に戻った。







飛鳥「カッコいいキミが好きだよ。正直、妬けるしね」







……何を言っているんだ、飛鳥は。



しかし少し思う。



私は割と細かなことにこだわっている節があるらしい。



些細なことだったり、やってみないとわからないことだったり。







「つまんないことで迷ってないで、こだわりに華を持ちなさい。己に意地を持ちなさい」







かつてアドバイスとして年長者にもらった言葉だ。



私は今もこれを思い出す。







変わっていないのかもしれない。



まあ、そうそう人は変わらないものだ。



だから仲間が、だから先達が必要なんだろうな。













飛鳥「晶葉、天才の定義を知っているかい?」



晶葉「うん?」







あくまで一例だけど、と言いながら飛鳥は語る。







飛鳥「『積極的な価値感情を広い範囲の人々の間に永続的に、しかも稀にみるほど強く呼び起こすことのできる人格』なんだってさ」



晶葉「……誰かの言葉なのか? 私は知らないけれど」



飛鳥「まあ、そんなところだ。ボクはキミをいろんな意味で天才だと思っている」







何が言いたいのだろう。







飛鳥「学問に明るいわけではないけど、前提や既往研究を大切にする世界なんだろう? それはいいが、キミが巷の恋愛作法に縛られる必要はないハズだ。これは恋愛学じゃないんだから」



晶葉「……つまり」



飛鳥「キミにはキミのセオリーが、キミの世界があるだろう。それがキミの魅力のハズだ」



晶葉「……」



飛鳥「ボクは、カッコいいキミが好きだよ」







まるで口説き文句のような口上を経て、得意げな笑みを見せる。



中二病と揶揄されていた飛鳥は、いつのまにこんな優男になったんだ。



いや違う、女の子だな。うん。







晶葉「飛鳥は、私が思っている以上に大人なのかもしれないな」



飛鳥「フッ……知らなかったのかい」







ファサッ







飛鳥「ボクは結構、大人なんだよ」



晶葉「……」







なるほど、やっぱり飛鳥って感じだ。









* * * * *







帰り道。



昨日今日にあったことを、いろいろ振り返ってみる。







結局学問も、アイドル活動も、こういう話も、みんな共通していて、



動いてみなくちゃ始まらないし、心配ごとも杞憂だったりすることだって多い。



でも人は不安になるし、迷うし、相談もする。



だから、仲間が必要なんだ。







法子「あ、晶葉ちゃん!」







声に振り返ると、ドーナツの妖精、法子がいた。







法子「今帰り? 一緒に帰ろっか?」



晶葉「ああ。法子も仕事終わりか?」



法子「あたしはドーナツ買いに行ってた帰り! じゃーん!」







はずむような明るい声。



いつも元気で前向きな法子は、



Cuチームのムードメーカー的存在だと思う。







一緒に寮まで歩く。



彼女は大切そうにドーナツの袋を抱えてウキウキしている。







晶葉「……なぁ法子」



法子「うん?」







今日の私は、こういう話をしたくて仕方ないのかもしれない。







晶葉「法子は、その……好きとかそういうの、あるか?」



法子「ドーナツ」



晶葉「うんそうだな、それはわかってる。……『何言ってんの当たり前でしょ』みたいな顔するのはよせ。質問はそういう意味じゃなくて、えっとその」



法子「好きな人とか、そういう話?」



晶葉「まあ、そうだ」



法子「うーん、……プロデューサーは好きかなー」



晶葉「!」



法子「だっていい人だもんね。あたしをドーナツアイドルとして育ててくれているし!」







法子はあまりこのテのことに抵抗とか羞恥心とかないのだろうか。



相変わらずたくましい女の子だ。



まあ本気で恋愛だなんだという感じではなさそうだが。











法子「晶葉ちゃんはプロデューサーのこと好き?」



晶葉「ええっ…いやその、なんだ、まあ」







聞いておいてこのザマである。







法子「んー。あたしも言っておいてなんだけど、好きって難しいよね」



晶葉「……そうだな」



法子「でも今は、ドーナツが好きで、事務所のみんなが好きで、プロデューサーが好きって感じかな!」



晶葉「そうか」







無垢な少女の瞳がそこにある。



好きの形も、それぞれだ。



だからこそ、相手の気持ちも考えないとな。







* * * * *







ピッ







― やあ、私だ



― 来週のお出かけの件だけどな、その……私に気にせず助手が行きたい所を選んでくれよ



ー ああいや、深い意味はないんだ、君はそういうところかなり気を使いそうだなと思ったから……









* * * * *







翌日。







ガチャッ







晶葉「お、みちるお疲れ」



みちる「フゴフゴ! お疲れ様です!」モグモグ



晶葉「…一人か?」



みちる「そうですね、今は。プロデューサーも外出してます。もうすぐ戻ってくるらしいですけど」フゴフゴ



晶葉「そうか」







……。







みちる「パンいります?」



晶葉「あ、じゃあ一つ……ありがとう」







モグモグ。



モグモグ。







晶葉「あ、おいしいなこれ」



みちる「でしょう! 新作です!」フフン







ふふっ。







いや違う違う、そうじゃないだろ。



飲み込んで、一度深呼吸をする。













みちる「?」モグモグ







晶葉「みちる! 実は来週、私は助手とデ、デートをするぞ!!」



みちる「フゴッ!? なんと!」フゴッ



晶葉「……」



みちる「……」



晶葉「……報告は以上だ!!」



みちる「……ぷっ、あはは!! どうしたんですか急に!!」



晶葉「……ふふっ」







なんだこれ。



自分で言っていても不思議な話だ。







みちるはたぶん、そんなこと気にとめるタイプじゃないと思うんだけどな。



いや、だからこそ言っておきたかったのかもしれない。







みちる「えーどこ行くんですかー? いいなーうらやましいなー」ツンツン



晶葉「あっこら、やめんか」







言動の奥に真意はどのくらいあるだろう。



わからないけれど、



だから青春は楽しくて、



だから難しいのかもしれない。







未知なるものはすべてロマンだ。



科学者がロマンとか、おかしな話だって?



何を言う、夢やロマンがなくて何が科学か。







天の光はすべて星、



未知なるものはすべてがロマンだ。







P「ただいま戻りましたー」ガチャッ







よし、さあ行こう!







晶葉「助手、仕事の準備だ!!」







池袋晶葉、14歳。



コイスルアキハ、イトフカシ。









* * * * *







おまけ







P「晶葉、来週のお出かけの件だけどな」



晶葉「お、おう。何か決まったのか?」



P「じゃーん! 見ろこのパンフ!」



晶葉「これは……」



P「いろいろ調べたらさ、つい最近、隣県の科学館がリニューアルされたんだって! これなら晶葉もまだ行ってないだろうし、どうだ!? こういうの好きだろう?」



晶葉「……ぷっ、あっはっはっは!!!!!」



P「え、何、どうかした?」







なるほど世の中奇っ怪なものだ。



でも、そういうものかもしれないな。







晶葉「いやいやなんでもない! さすが助手だ! これがいい! これに行こう!」



P「お、おう……?」







こういうの、何というんだっけな。



相思相愛かな。



サイキックかな。



世界レベル……ではなさそうだな。







晶葉「ありがとう、すごく楽しみだな!」







私は彼が、大好きだ。





おわり



21:30│池袋晶葉 
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