2016年01月05日

時子「アァ? 待ち合わせ場所に辿り着けそうにないですって?」

【モバマスSS】です





――――1月3日、神社入り口





時子「面白い冗談ね千奈美。そういうのはいいからさっさと来なさい」



千奈美『そうしたいのはやまやまなんだけど、思った以上に人通りが多くて気付いたら久美子がはぐれちゃってて……』



時子「なにしてるのよ……混雑してるのは想定できたでしょう。私に電話する前に久美子に連絡して合流したら?」



千奈美『それが愛結奈がさっきから電話してるんだけど、久美子がでないのよね』



時子「ハァァ……だったらちひろにでも連絡して探させなさい。その手のことには無駄に優秀よ、彼女は」



千奈美『なるほどその手が。ありがとう時子、やっぱり連絡して良かったわ♪』



時子「で、結局こっちには来ないつもり?」





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千奈美『久美子がいつ見つかるかわからないし、愛結奈がまた夜から仕事だからあんまりのんびりも出来ないもの。ごめんね?』



時子「……しょうがないわね。その代わり私を待ちぼうけにしたことは、明日きっちり謝礼してもらうわ」



千奈美『その辺りはお手柔らかにお願いね。ともかく時子は私達を待たなくていいから、好きにお参りしていって。それじゃ』ピッ



時子「最初に誘ったのはそっちのはずでしょう……まったく」



時子(それにしても好きにお参りしていってですって? これの中で?)



ワイワイガヤガヤワイワイガヤガヤ



眼鏡の男「今年こそ司法試験に今年こそ司法試験に今年こそ」ブツブツブツ



女「今年こそ結婚今年こそ結婚今年こそ結婚今年こそ」ブツブツ





少年「ママー! たこやきたべたーい! ママーッ!!」



赤ん坊「ビエーッ! ビエーッ!! ビエエエエエッ!!!」



屋台の親父「いらっしゃいらっしゃい。焼きそばうまいよー!」



ワイワイガヤガヤワイワイガヤガヤ



時子(ふざけた話よ。行列も長いし、場所取りさせるつもりだった久美子が来ないのなら参拝するまでの時間をゆっくり過ごせないわ)スッ



時子(……今からだったらまだデパートに買い物でも行ったほうがマシね。そうと決まればすぐにでも)ピリリリリ



時子「また電話? まったく、なんなのよ」ピッ



時子「はい、誰」





ちひろ『どうも時子ちゃん。新年明けましておめでとうございます』



時子「ちひろ……? 何の用かしら、これから私は買い物に行くつもりなのだけど?」



ちひろ『なら良いタイミングだったみたいですね。実は先程、千奈美ちゃんから連絡がありまして』



時子「久美子を探して欲しいってきたんでしょう。見つかったの?」



ちひろ『ええ無事に。ただ久美子ちゃんを探すために街の監視カメラなどの映像を見ていましたら、偶然別の子も見つけまして』



時子「……で?」



ちひろ『それでその子を見つけた瞬間、ゆかりちゃんからある子を探して欲しいと連絡が入ったんです』



時子「勿体ぶるわね、私に関係のない話なら切るわよ」





ちひろ『まぁまぁ最後まで聞いて下さい。私が見つけてゆかりちゃんから探してほしいと依頼された相手が、実は法子ちゃんなんです』



時子「……」ピクッ



ちひろ『事情を聞いたらゆかりちゃんと有香ちゃんと法子ちゃんの三人で初詣に行ったみたいなんですが、そこで法子ちゃんだけ人混みの中ではぐれてしまったと』



時子(なにをしているのよあの子は……)



ちひろ『この事をゆかりちゃんにも伝えたのですが彼女たちも人混みに揉まれて身動きが取れないらしく、それで時子ちゃんに連絡させて頂きました』



時子「……ちょっと待ちなさい。今の流れでどうして私に連絡する必要があるのかしら」



ちひろ『それがですね、今、法子ちゃんに一番近い位置にいるのが時子ちゃんなんですよ』



時子「なるほど、法子達も同じ神社に参拝しに行こうとしてたわけ……けど、それを聞いて私がなにかすると思ったの?」





ちひろ『と、言いますと?』



時子「法子は13歳よ? いちいち誰かとはぐれたくらいで迎えに行く必要もないわ。ましてなぜ私が」



ちひろ『うーん、でも今映像を見ていますと、どうも法子ちゃんに近づこうとしている不審な男性が』



時子「……場所」



ちひろ『はい?』



時子「法子の場所を言いなさい、早く!」



ちひろ『さすが時子ちゃん、そう言ってくれると思いましたよ。法子ちゃんの場所はですね、時子ちゃんの現在位置から――』





――――5分後、神社近くの商店街



法子「それでおじさん、ほんとうにゆかゆかのいる場所知ってるの?」



太った男「あ、ああ、さ、さっきあっちで見たよ……本当だよ……」



法子「良かったぁ……屋台やお店覗きながら歩いてたら二人を見失って不安だったんだ。ありがとうおじさん!」



太った男「お、お礼は今はいい。ぐふっ、あとでたっぷり……」



法子「あとで? じゃあさっき美味しそうなドーナツ売ってるお店見つけたから、そこでドーナツ一緒に食べよっ♪」



太った男「そ、そうだね、食べる……食べる……ぐふっ」ジュル



法子(なんだか嬉しそうだなぁ、そんなにドーナツ食べたかったのかな?)





太った男「と、とにかくこっち、あぁ、はやく、こっち曲がって」フニュン



太った男「うお? な、なんだ」



???「法子」



法子「え……この声……わぁー!! 時子さん!!」



太った男「え、な、なに、知り合い?」



時子「ハァ……法子、あなたはもう少し危機感を持ったらどうなの? 自分が迷子になっている自覚もなしにうろちょろして」



法子「あ、あれ、なんだかいきなり怒られてる……ご、ごめんなさい時子さん……」シュン



時子「まぁいいわ。さぁ行くわよ」グイッ





法子「あ、ま、待って時子さん! そ、その前にこの人がゆかゆかのいる場所を教えてくれるって……!」



太った男「そ、そうだぞ、おばさんは邪魔を」ハッ



太った男(まて、時子? どこかで聞いた――)



パァン!



太った男「いてぇええええ!?」ジタバタ



時子「あら、まだ二本足で立っているなんて面白い豚ね。でもまずは……跪きなさい」ヒュパ



パァン!



太った男「ブヒィイイイ!?」ドスンッ





法子「ちょ、ちょっと時子さん! なにしてるの!? 鞭でぶつなんて可哀想だよ! この人私を……」



時子「連れ去ろうとしたのよ法子」



法子「え?」



時子「こいつは仲間と一緒にあなたを連れ去ろうとしたの。ゆかり達の居場所を知っているなんてのも大嘘よ」



法子「えっ……えぇー!? そ、そうだったんだ……なんだか変な人だなって思ってはいたけど……」



時子「だから危機感を持ちなさいと言ったのよ。とりあえずこいつは」ヒュパ



パァン! パァン!



太った男「ブヒッ!? ブギィイイ!!」





時子「これくらいかしらね。ねぇ豚、私のことを見てなんと言ったか覚えてるかしら?」



太った男「そ、それは……ぜぇぜぇ……おばさ――」パァン



太った男「ブヒィ!! と、とても麗しく美しいお方ですぅっ!!」



時子「よろしい。豚、法子にやましいことをしようとしたことを認めるわね?」



太った豚「ぶ、ぶひ……(コクン)」パァン!



太った豚「ブヒィイイイ!!」



時子「なら反省としてそこで豚らしく鳴き喚きながら這いつくばっていなさい。いいわね」



太った豚「ブヒィ!」





時子「……さて、じゃあ行くわよ法子。ぼーっとしてないの」



法子「……あ、えと、時子さん、この人どうするの……? 結構人が集まってきちゃったけど……」



太った豚「ブヒ……ブヒヒヒ、ブヒィ!」



時子「あぁこれ? 心配しなくてもしばらくすればちひろの手配した連中がこいつの仲間と同じような感じで片付けるでしょうから、問題ないわ」



法子「そっか、なら大丈夫かな……?」



時子「一々こんなのの心配してたらきりがないわよ。その優しさは……まぁ、美点といえるけれど」





法子「時子さん……えいっ♪」ギュッ



時子「ちょっと、腕にしがみつかないで」



法子「だって時子さんが心配してくれるなんて嬉しいんだもん! ありがと時子さん!」



時子「……そういうのじゃないわ、たまたまよ。偶然ちひろから連絡を受けたのが私だったってだけよ。他意はないわ、本当よ。いいわね?」



法子「はーい♪ それじゃ行こうよ時子さん!」タタッ



時子「こら走らない! チッ、人の調子を崩すのが上手い子……本当にね」





――――神社入り口



時子「ところで、法子はこれからどうするつもり?」



法子「もちろんここまで来たからお参りして帰るよ! 時子さんにもそのつもりでついてきてもらったもん!」



時子「……嫌よ。見えるでしょう、あの行列。私があそこに並ぶなんてなんの――」



〜〜〜♪ 〜〜〜♪



時子「なによ、こんな時に……」



法子「あ、あたしの携帯だ。ちょっとごめんね時子さん!」ピッ



法子「もしもし! あ、ゆかりちゃん! ……うん……うん、そうなの、それで時子さんが……」





時子(しかし新年そうそう危なっかしいわねこの子は……まぁ、これであとはゆかり達と合流させれば私は買い物に)



法子「そうなんだ、ゆかゆか達も大変だったね……うん、分かった……ううん、あたしはこのまま時子さんと初詣したいなって」



時子(……うん?)



法子「そうだよ、すごかったんだ♪ だから大丈夫、ゆかゆか達も気をつけてね……うん、またね!」ピッ



法子「よーし、それじゃあ並ぼうよ時子さん!」



時子「……法子、今の電話は誰から?」



法子「え、ゆかりちゃんからだけど?」



時子「あなたは最初ゆかり達と初詣に来たんでしょう。だったら早く二人と合流しに行きなさい」





法子「それがゆかゆか達、人混みの中であたしを探してたら疲れちゃったらしくて……今、駅の近くの喫茶店で休んでるって。悪いことしちゃったなぁ……」



時子「そう。で、それならそれで会いに行けばいいじゃない」



法子「二人共もう帰るつもりなんだって。初詣はまた今度するつもりらしいから、あたしも誘われたんだけど……」



時子「だけど?」



法子「せっかく時子さんに今年初めて会えたから、このまま一緒にお参りしたいってことで断っちゃった。だからいいでしょ時子さん♪」



時子「あのねぇ……何度も言ってるように私はこの行列に並びたくないの、分かるわね?」



法子「えっと……が、頑張って時間つぶしになるお話するから!」



時子「そういうことじゃなくて」





法子「な、なら初詣終わったらお買い物に付き合うよ! 時子さん、時間があったらデパートとかに行きたいでしょ?」



時子「出来れば今すぐ行きたいくらいだけど」



法子「あぅ……が、我慢してくれたらドーナツ買ってあげる!」



時子「あなたが食べたいだけでしょう?」



法子「……時子さぁん……」グスッ



時子「……あぁもう、分かったわよ。一緒にお参りすればいいんでしょう!?」



法子「やったー!」バンザイ



時子「法子、まさか今の嘘泣き……!」





法子「時子さんとずっと一緒にいるからどうすればいいか分かっちゃてるもん。あたしだって成長してるんだよ♪」テヘッ



時子「……嫌な成長ね。頼むからせめて私みたいになりなさいよ?」



法子「それはちょっと」



時子「なんですって」



法子「……」



時子「……」



法子「……えへへ♪」



時子「……ククッ。クックック、そうね、そうよね、私みたいになった法子なんて三流の道化師と一緒ね」





法子「あ、時子さんひどい。あたしは時子さんみたいにすごいこと出来ないからって意味だったのにー!」



時子「あら、じゃあ私みたいな喋り方をしたら似合うとでも?」



法子「時子さんみたいな喋り方だね、いいよ、見てて! すぅ……――『この、豚……!』」



時子「……アーッハッハッ! なによそれ……ククク」フルフル



法子「ひ、ひどーいっ! やらせたの時子さんなのにーっ!」カァァ///



時子「初詣に付き合わされるのだから、これくらい面白いものを見せて貰わないと困るわ。列に並んでいる時もその調子で頼むわよ法子」



法子「うぅ〜///」



時子「ククッ……さぁ、いつまでもここで話してたら時間の無駄。さっさと並ぶわよ」



法子「うん! ……あ、そうだ、一つ大事なこと忘れてたっ!」





時子「なに、まだなにかあるの?」



法子「あるよ。だって、時子さんにまだ新年の挨拶してないんだもん!」



時子「……新年のあいさつ? あ、丁度列が動いたから並ぶわよ」グイッ



法子「わわっ! ――よいしょ……! と、とりあえず列に並んで……」



時子「それで新年の挨拶がどうしたの。そんなの、元旦になった瞬間に電話でしてきたじゃない」



法子「で、でも実際こうして会って話すのは今年初めてだから! やっぱりちゃんと時子さんに言いたいもん!」



時子「変な所で強情よねあなた……いいわ、好きにしなさい」



法子「それじゃ時子さん! あけましておめでとうございます♪ 今年もよろしくお願いします!」ニコニコ



時子「えぇよろしく」



――その後無事に初詣を済ませた二人は、そのまま夜遅くまで共に過ごすのであった。



〈終〉





20:30│財前時子 
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