2016年01月14日

モバP「ロングの二人は秋を歩く」


プルルルル



ピッ





ありす「……はい、Pさん。何かご用ですか?」



『今帰ってるところだよな』



ありす「このまま直帰で、その後駅から自宅まで」



『もしかしてだが、今、○×公園の前か?』



ありす「えっと……」キョロキョロ



ありす「……見てるんですか?」ジトッ



『ありすの歩行速度ならそれぐらいかな、とヤマを張っただけだ』



ありす「そうですか。で、公園前の私に何か」



ありす(Pさんって、私の歩く速さまで想像出来ちゃうんだ。……ふふ)



『用事が無いなら、頼まれて欲しい』



ありす「今、引き受けるって言いました」



『ありがとう。メールで場所を指定するから、その場所の写真を撮って欲しい。余裕はありそうか?』



ありす「私、そんなのに苦労する余裕無い子だって評価されてたんですね。……ありますよ、余裕」



『仕事に使う訳じゃないが、出来るだけ綺麗な方がいい。じゃ、よろしく』ピッ





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ありす「あっ。……もう、一方的にかけてきて、一方的に切って」



   てぃろん♪



ありす「……私が引き受ける前提で、メールを下書きしてましたね。早すぎます」



ありす(お見通しにされすぎてるっていうか、わかってもらうのは嬉しいけど、全部わかった気になってたりしてたとしたら、……それは楽しくありません)ムッ



ありす「公園北口、噴水広場、交番前ですか。北口……あ、目の前」



ありす「いい風景ですね。もうすっかり色づいてて」パシャ



ありす「これで一枚目、と。どんな写真に……あれ」



ありす「何なんでしょう、端っこの、水色の人。四つん這いで、おかしいです」



ありす「……あ、光さんだこれ」



猫「なぁぁご、ふにゃあー」



光「あぁよしよし、大丈夫だぞペロちゃん! 君をとって食おうってわけじゃないんだ!」ナデナデ



ありす「あの、何やってるんですか?」テクテク



光「よーしよしいい子いい子。雪美ちゃんの所に帰ろうねっ」



猫「ふなぁ〜……」コロコロ♪



ありす「あの、光さん!」



光「ん? ……あ、ごめん! 呼んだ?」



ありす「呼びました。何をしてるんですか」



光「雪美ちゃんのペロちゃんを探してたんだ」ピポパポ



ありす「だからって、這って探すのはどうかと思います」



光「猫の気持ちになって探した方がいいかなって……失礼」プルルルッ



ありす「あ、はい」



光「もしもし都さん、うん、うんこっちで確保できた! ━━じゃ、噴水広場で落ち合おう!」ピッ



ありす「噴水広場?」



光「盗み聞きは感心しないなぁ」



ありす「声、大きかったですよ?」



光「そう?」



ありす「そうです」



光「ムムム、そっかぁ。ところで、どうしてありすちゃんはここに?」



ありす「写真を撮りに」



光「へぇ。芸術の秋、ってワケだ!」



ありす「そういうワケじゃ……いえ、まぁ、そんなところです」



光「楽しそうだね」



ありす「……それなり」



光「良かったらさ、一緒に噴水広場に行かないか? 綺麗な場所だし、撮影にいい場所だと思うんだ。どう?」



ありす(噴水広場の写真は必要だし、そうですね)



ありす「わかりました。じゃあ、行きましょうか」テクテク



光「うん!」ニコニコテクテク





………………

…………

……



   少女移動中……



猫「にゃぁぁぁ……」



光「よしよし、元気元気!」コショコショ



ありす「ペロさんにしては、ずいぶん元気というか」



光「二三日外で過ごしたから、野生帰りしちゃったって解釈でいいのかな?」



ありす「適応、早すぎますよ。それにしても、もっと雪美さんにベッタリな猫だと思ってました」



光「アタシもだ。けど、猫ってきまぐれだし、家出したい気分の日もあるんだろうなぁ」



ありす「そういうこと、なんでしょうか」



光「一昨日から君がいなかったお陰で、雪美ちゃん寂しそうだったんだぞ、ほらほら〜」ウリウリ



猫「しゅふぅ……」ゴロゴロ



ありす「そうなんですか? そうだとは思いますけど」



光「Pには雪美ちゃんが寂しそうに見えたって、都さんが言ってたんだ」



ありす「又聞きの又聞きじゃないですか」



光「そうだね。確実じゃない話って、嫌いか?」



ありす「正直、好きじゃありません」



光「賭け事みたいだから?」



ありす「そんなところです。……む……」チラチラ



光「……ありすちゃん?」



ありす「……あ、何でもありません」



光「何かあるなんて言ってないけど」



ありす「何でもないったら、ないんです」



ありす「…………」チラチラ



猫「ふにゃあ〜……」





光「……後で手を洗えば、汚くないよ?」



ありす「え、何で私がペロさんに触りたいってことになってるんですか?」



光「チラチラって見てたから。けど、勘違い、……かな?」



ありす「何で質問するんですか……そうですよ、勘違いです」



光(ちょっと怒ってる? それともこんなものか?)



ありす(……ペロさん、楽しそう……)ジッ



光(水場が見えるまでは待つか)





光「そっか。ま、あとはペロちゃんを都さんに渡して解決だな」



ありす「雪美さんでは?」



光「アタシ、あくまで都さんの手伝いなんだ」



ありす「そうなんですね。それにしても、この時期に外で過ごすのは大変そうです」



光「食欲の秋って言ったって、公園で猫の食べ物が多くみつかるわけじゃないしなぁ。よくがんばったね、えらいえらい」ナデナデ



猫「〜♪」



ありす「そうでなくても、最近冷えてますから」



光「そう?」



ありす「年中半袖短パンの光さんはわからないかもだけど、冬が目の前ですよ。私、もうコート出してますし」



光「確かに、時期的にはそうだな。けど、ナントカは風邪ひかないって言うし、それに、あんまり寒いって思ったことなくって」



ありす「自分で言っちゃだめです。それと、周りの人の服装とかで判断しましょうよ」



光「……確かに、言霊を読んじゃうよな。うん、服のことも今後気をつけてみるね」



ありす「なら良かったです。光さんはもう晶葉さんに改造されてるから暑さ寒さを感じない、みたいなこと、インターネットとかで言われてるんですからね」



光「あ、まだそれはしてないから大丈夫だぞ」



ありす「まだ? それは? 他にしてることがあるし、今後する予定があるとでも……?」



光「冬が近づいてるにしたって、この音は面白いよな。紅葉踏み!」ザグサク



ありす「話を逸らさないでください!」



光「ン……ありすちゃんは嫌いか?」ザグサク



ありす「……そうでもないです」ザグサク





光「黄色にオレンジ、焦げ茶に黄緑! いろんな葉っぱで、見た目にも綺麗だなぁ」



ありす「黄緑の葉も、茶色のまだらが混じってて……けど、それが乾いて道路に落ちちゃってるから、もう秋も終わるんだって気持ちになりますね」



光「でも、これをかき集めるお掃除が楽しかったりするんだよな。それを燃やして焼き芋を作れるのもいい!」ニコニコ



ありす「焚き火って犯罪では?」



光「え? ……ってことは、小学生の頃の先生は、前科者だったのか……!?」ワナワナ



ありす「あ、それなら許可とってる気がします」



光「む、そうなのか。なら良かった……」ホッ



ありす(一秒も同じ表情が続いて無くって、忙しい人ですね)



光「あー、それにしても食べたくなって来たなぁ」



ありす「焼き芋ですか?」



光「うん! 繊維がほぐれた、アツアツでトロットロのサツマイモ!」



ありす「公園だし、売ってるかもしれませんね」



光「調べられたりする?」



ありす「出店とか、移動屋台ばかりは流石に」



光「うーん、そっか。まぁこういうのって巡り合わせだし、運が良ければ見つかるよね」



ありす「そうでなくても、耳をそばだててれば見つかったりするはずです」



光「『や〜きいも〜』って歌ってるから?」



ありす「お芋屋さんだってお仕事で、私たちに買って欲しいはずですから」



光「よし、……じゃあ、聴いてみる!」









           ビュォォォ……



   がさがさ

        シャァァァァァァッ!



  しゅくるるる……





     グゥーッ!



ありす「……あ、あ、秋の音です!」アセアセ



光「え? い、今アタシ音楽聴いててわかんなかった!」イソイソ



ありす「今からカッコつけて聴かなかったフリするの、遅いです!」



光「アタシは何も聴いてないぞ! 秋の音しか聴いてない!」



ありす「聴いてるんじゃないですか!」



ありす「……まぁいいです。光さんって、いつもは何を聴いてるんですか?」



光「おお、聞いてくれるのか!?」



ありす「いや光さんが聴いてる音楽の話をしてるんですってば」



光「あ、ごめん。んっと……」



光(ありすちゃんみたいな子に素直に特ソンって言うと、話聞いてくれなくなるよなあ。それに、無理に布教する理由もない)



光(……ここは、『嘘は言ってないぞ』作戦だ!)



光「大黒摩季さんとか、松岡充さんとか!」



ありす「ポップスやロックが中心?」



光「うん。ありすちゃんはバラードや演歌、かな?」



ありす「種類はあまり決めてないけど……あ、最近は奄美民謡が気になってます」



光「島唄、ってこと?」



ありす「沖縄民謡と同じで三線を使うんですけど、使う音階がちょっと違うんです。あ、それと、奄美大島では三線を蛇皮線って言うそうです」



光「たくさん勉強したんだな! シャミセンって呼び方が転じたとか?」



ありす「恐らく。いくら調べても飽きが来ないし、悲恋の歌、あとお仕事の歌とかもあって、とても奥深いですよ。今度貸してあげましょうか?」



光「いいの? ありがと!」



光(案外ありすちゃんも、特撮ハマるかもなぁ。データ集めそのものも好き、みたいだし)



ありす「? どうかしました?」



光「ううん、何も!」



ありす「そうですか。あと、やっぱり事務所のみんなの歌もとっても参考になります」



光「聖ちゃんの歌、こう、心をガラス管やビイドロみたいな透明感のあるものにした上で震わせる、って言えばいいのかな……ああっ、綺麗な言い方が出来ない自分が悔しい!」



ありす「凛さんも素晴らしいですよね。左右に動く気持ちの振れ幅が、本人の気性通りに表現されてて」



光「そこまでわかるって、羨ましいな。……『根拠はない だけど trust me trust you』♪」



ありす「……『where is 蒼穹』♪」



光「……いえい♪」パチン♪



ありす「ふふっ」パチン♪





プルルルル



ありす「え? あ、すみません」ピッ



光「うん! ……え、アタシも?」プルルルル  ピッ



ありす「もしもしPさん、何かありましたか?」



光「もしもし都さん、もう広場についちゃったりした?」









ありす「━━どういうことですか? 写真、撮らなくていいって」



光「━━ペロちゃんが事務所で見つかった!? じゃあ、アタシが見つけたのは誰だ!?」



猫「ふなあああご」





………………

…………

……



   噴水広場



猫「ふにゃぁあああ……」



ありす「わ、暴れないでください、暴れないでっ」



光「おーい、お芋買えたぞ!」ポリンッ



ありす「お店、あったんですか?」



光「広場は広いからな。ペロちゃんのお守り、代わる?」



ありす「また手を洗わなきゃいけなくなりますし……というか、この子ペロさんじゃないですよ」



光「そうなんだよなぁ。けど、首輪ついてるから、誰かの飼い猫で迷子猫なんだよね」ハー……



ありす「光さんって、猫飼ったことあります?」



光「無い。それに、寮はペット禁止なんだ」



ありす「私もです……」



光「ムムム、どうしたものか……都さんも他のミッションがあるからって帰っちゃったし、目的地がない……」



ありす「……あの、とりあえずお芋を貰っていいですか。焼きたての方が美味しいですし」



光「そうだな。猫で手が一杯だし、ついでにフーフーしてあげよっか?」



ありす「子供扱いしないでください」



光「大人だって、熱い物は熱いと思うぞ。はいあーん」



ありす「いただきます。……あつっ! ……くありません! 本当に金色なんですね、焼きたてって」



光「レモンイエローにも見えるな。ふー、ふー、ふーふー、ふーふー」



ありす「……それはいらないって言ったじゃないですか」



光「猫ちゃんの分だ、こっちは。タマネギは入ってないし、食べさせて大丈夫かな?」



ありす「まずタマネギが入ったお芋を見たことないです」



光「じゃあ大丈夫か。はい、ありすちゃん」スッ



ありす「猫さんの分じゃないんですか?」



光「せっかくだから食べさせてあげてみてよ。ハムハム口動かしてて面白いぞ!」





ありす「じゃあ、一回だけ」



猫「ふむ、ふみゅっ」ペロペロ



ありす「あ、きゃ、や、やめてくださっ、た、助けっ!」モジモジ



光「あはははは、指も美味しいのか! 悪いけど、それはあげられないな!」



ありす「む……助けてくれないんですね」



光「うん。それとも、アタシも指舐められればいいか?」



ありす「ならそれで」



光「え?」



ありす「しないんですか」



光「う……ほら、猫ちゃんっ」



猫「ふなっ、ふにゃっ」ペロペロ



光「あひゃははっ、ちょ、だめ、そこよわ、くすぐった、あはっ!?」



ありす「いい気味です」



光「酷いよ!?」



ありす「ふふ……。あの、一時的でいいから、名前付けませんか?」



光「猫ちゃんに? 確かに、猫ちゃん呼びは厳しい物があるけど」



ありす「洗ってあげればいい毛並みになりそうだし、紫色に光りそうだからアメシスト、みたいな」



光「眼、黄色いよ?」



ありす「たとえばの話です」



光「長くて呼び辛いな。アメちゃんでどう?」



ありす「……じゃあそれで。とりあえず交番に向かいませんか?」



光「交番? アメちゃんを落とし物として預かって貰うとか?」



ありす「それ、最悪保健所送りになっちゃうから絶対ダメです」



光「む、そうなのか……。なら、どうして交番に向かうんだ?」



ありす「探し猫の張り紙があるかな、と」



光「そっか。飼い主さんを探すんだな!」



ありす「……見つからなかった時を、覚悟しなくちゃいけないかもしれませんね」



光「交番に預けるのはダメ、アタシたちは預かれない。考えるだけにしときたいけど、本当に最悪に最悪の場合、どうする?」



ありす「……アメさんを逃がしましょう。また見つかる可能性だって、……あります」



光「当たるも八卦、当たらぬも八卦だ。行こう、日が暮れる前に!」



ありす「はい!」



アメ「フミュ……」クゥクゥ



光「……寝てるな」



ありす「寝てますね。お腹が一杯になったから?」



光「ありすちゃんを気に入ったのかもね」



ありす「だと、いいんですけど」



ありす(……えへへ……)







………………

…………

……



   少女移動中……



光「けっこう近いんだっけ?」テクテク



ありす「広場からはすぐですよ」テクテク



光「見つかるといいな」



ありす「見つかる気は、します」



光「どうしてだ?」



ありす「猫を飼ったことは無いけど、こういう子が見つからなくなったら、私だって怖くなって、張り紙をきっと沢山張っちゃうだろうなって、想像出来たからです」



光「優しくって、想像力も強いんだな」



ありす「光さんならどうします?」



光「そうだな……そもそも猫に発信器をつけておきたい、って言うのは野蛮かな?」



ありす「野蛮です」





光「だよなー……張り紙を見つけたら、あとは飼い主さんが来てくれるか否か、だな」



ありす「もし、今日回収に来るのは無理だって言われたらどうします?」



光「うーん、アメちゃんと一緒に野宿する!」



アメ「zzzzz」



ありす「来て貰わないと困るってことですね」



光「一日ぐらいなら大丈夫だって。体丈夫だもん」



ありす「この時期にそんなことしたら、本格的に体を痛めますよ。あと喉も」



光「のど飴じゃ! ……ダメ?」



ありす「のど飴って、ほとんど気休めなんですよ?」



光「なんてこっただな……まぁ、きっと来てくれるよ。アフターファイブって時間帯だし!」



ありす「飼い主さんが残業してるパターンは?」



光「今のうちに恵さんから、野宿の方法を教わらないと、かも……」シュン……





ありす「……その、母は忙しくって、今日も帰ってこれないかもなんです」



光「ん?」



ありす「アメさんの毛の掃除、手伝ってくれるなら、……一日ならいいですよ」



光「……ありがと!」



ありす「もしもの時は、ですよ」



光「もち。ところで、『今日も』ってことは、……答えたくない話なら無視して欲しいんだけど、君のお母さん、あまりお家に帰ってこないのか?」



ありす「…………」



ありす「……黙るってことの意味はわかりますよね」



光「うん。━━あ、みっけ!」







   交番



光「━━ええ、はい、ありがとうございます。ではっ!」ピッ



ありす「……どうでした?」



光「ぶいっ!」



ありす「ほっ……」



光「ちょうど近くって、あと三十分くらいで来れるそうだ」



ありす「よかったです。見つかるかどうかってだけでも、ほとんど賭け同然だったのに」



光「勝負運が強かったんだよ!」コチョコチョ



アメ「〜……」クゥクゥ



ありす「手、汚れますよ」



光「あとで洗うって。……それにしても、短い間だったけど、もうお別れかぁ」



ありす「……気に入ってくれたかな……」ニッキュウプニプニ



光「アメって名前?」



ありす「懐いてはくれたと思いますけど、私たちのことを飼い主だなんて思ってないでしょうし、呼んだ期間も少ないから、そもそも名前だとも考えてないだろうな、って」



光「寂しいな。ありすちゃんは?」



ありす「……少しだけです。少しだけ」



光「……今度さ、遊びにいっていい?」



ありす「光さんが?」



光「テレビ見たり、音楽聴いたりお泊まりしたり。そういうのって、ありすちゃんは嫌いか?」



ありす「……今度、ですよ。今からじゃ仕込みが間に合わないので」



光「仕込みって?」



ありす「イチゴ料理って準備が大事なんです。旬からズレてる時は、材料の用意だけで予算がキツキツになりますし」



光「……ご飯食べたりしていいって解釈でいいのかなっ!?」



ありす「とびっきりのをご馳走してあげます」フフン



光「へへへ、楽しみだなっ♪ ならアタシも、チャーハンとか作ってみようかな?」



ありす「え、光さんって料理が出来るんですか?」



光「出来る! ……って言うと嘘になっちゃうな。でも、家庭科実習程度のことはやれるから!」



ありす「心配ですね……そういう状態で創作料理をしようとする人に限って、ゲテモノを作ったりしちゃうんですよ?」



光「そうなのか? なら、出来るだけ手引書通りにやった方がいいかな?」



ありす「……エプロン、ちゃんと持ってきてくださいね」



光「げ、持ってないかも」



ありす「着替えないで料理してたってことですか?」



光「うん。ホームセンターとかで売ってるかな?」



ありす「ホームセンターじゃ売ってませんよ」



光「なら、駅前の服屋さん?」



ありす「あそこ、ゴシ系専門のお店だし、流石に売ってないかと」



光「……ゴシ系エプロンなら売ってる?」



ありす「蘭子さんが好きそうですね、ふふっ」



光「あははっ」



ありす「売ってません」



光「だよなー」ショボーン





ありす「……光さん、もう最後だし、触ります? 肉球ぷにぷにですよ」プニプニ



光「おお、本当だ。ぷにぷにだな!」プニプニ



ありす「ぷにぷにです」プニプニ



光「……お願いをしていいかな?」



ありす「何を、ですか?」



光「アメちゃんとありすちゃん、あとアタシの写真を撮って欲しくって。カメラ貸してくれないか?」



ありす「いいですよ。タブレットを使います」



光「画面、汚れないか?」



ありす「あとで洗います。寄ってください」



光「こう?」ズイ



ありす「……熱いです」



光「君もだろ?」



ありす「これなら確かに、年中半袖でも大丈夫ですよね……あの、もっと寄ってください」



光「ふぁいんだー? に、入らないから?」



ありす「アメさんのスペースを混みにすると、もっと詰めて貰わなきゃ入らないんです」



光「そっか。はい」ギュッ



ありす「せーのでいきますよ」



光「はい、チーズ!」



アメ「……ふひゃあ」クシクシ







     ぱしゃっ





   翌日:事務所

 

P「すまないな、ありす。昨日は無駄足踏ませちゃって」



ありす「まったくです。どうして突然、写真を撮らなくて良くなったんですか?」



P「ペロがな、見つかったんだ」



ありす「え?」



P「雪美の話だと、メールで送った場所ではぐれた可能性が高かったらしくてな。探し猫の張り紙を作りたくて、写真が欲しかったんだ」



ありす「けど、ペロさんが事務所で見つかったから」



P「張り紙作りそのものが必要なくなった。都にも悪いことをしちゃったな……」



ありす「光さんも、ですよ」



P「光? なぜ?」



ありす「都さんの手伝いをしてたって、知らないんですか?」



P「初耳だな……あとでペロと一緒に労ってあげないと」



ありす「ひどい言い方だけど、猫と同列ですか」クスッ



P「光は頑丈だし。それに、ペロは全員ドロまみれで、大変だったんだろうからな」



ありす「公園から自力で事務所に来た、……とでも?」



P「尊敬に値する子猫さんだな」



ありす「雪美さんが大好きなんでしょうね」



P「日頃かわいがってもらったぶん、なんだろうな。俺はもう外回りに出るんだが、何か連絡はあるか?」



ありす「えっと、来週のスケジュールの話がしたいです」



P「来週? 変更は無いし、地震でも無い限り変わらないはずだが」



ありす「それを聞いて安心しました。そのままにしてくれますか?」



P「しとくしとく。じゃ、精進するように」



ありす「言われるまでもありません。Pさんこそ、お仕事沢山持ってきてくださいね」



P「ン」バタン



ありす「気をつけてください」



ありす「……無駄足かどうかは、私が決めます」



ありす(……チャーハン、楽しみにしてますからね。ふふふ……)



おしまい



おまけ・嘘次回予告



光「どうもっ! シンデレラガールズの、優先席前じゃなく電車に乗る前にケータイの電源を切ってる方、南条ですっ!」



ありす「はぁ。シンデレラガールズの、最近のスマホはペースメーカーに影響を及ぼさないと知ってるから電源を切ったりとかしない情報強者の方、橘です」



光「晴ちゃんのお兄さんのメイジン級テクニックのおかげで、まゆさんはガンプラにハマってしまった。それはそうと、LMBGの皆を守ろうとして怪我した美由紀ちゃんは、仙人ののあさんに謎のベルトを渡されてしまった!」



ありす「次回、シンデレラガールズ『the end justifies the mean(勝てば官軍)』。see you……」



光「おおっ、発音綺麗だな!」



ありす「光さんだって、ずいぶん良くなってますよ。最初と比べれば」



光「へへ……パワーレンジャーを吹き替え無しで観れる日が近いかも!?」



ありす「いい勉強方法だと思いますよ。アメリカ映画って、比較的平易な英語が使われるよう心がけられてるみたいですから」



光「ふむ……やっぱりスゴいなぁ。とっても物知りなんだね!」



ありす「それほどでも、ありませんって」



ありす(……えへへ、へへ……)





今度こそおしまい



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