2016年01月25日

森久保乃々「ギフト」




(生まれながらに持っている才能のことを「神様からのギフト」……と呼ぶことがあるらしいです……)



(もりくぼがもらった“ギフト”ってなんなんでしょう……?)











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―――――事務所―――――





乃々(うう……レッスン疲れました……)



乃々(でもユニット単位のレッスンはサボれないぃ……)



乃々(その上、この後は雑誌のコラムのお仕事でもりくぼだけ事務所待機……)



乃々(机の下にはなぜかペロさんが居座っていらっしゃったのでソファに逃げてきました……)









乃々(ああ、逃げ出したい……でもコラムくらいのお仕事なら……でも緊張するぅ……)



乃々(コラムすら書けないもりくぼはクビくぼかも……いやでもクビでも別に……)



乃々(どうせなら絵本を描いたりしてみたいですけど……もりくぼにそんな才能は……)



「―――ゃん?――ちゃん?」



乃々(才能……)



「−のちゃん?乃々ちゃん!」



乃々「は、はいぃぃぃ!!??」ビクゥ



「わ!びっくりしました……!」



乃々「す、すみません、岡崎さん」



岡崎泰葉「いえいえ、こっちこそ、驚かせてごめんなさい」









泰葉「でも、無視されてるのかと思って悲しくなっちゃいました……」



乃々「ご、ごめんなさ……」



泰葉「ふふっ、冗談ですよ」



乃々「そ、そうですか……」ホッ









泰葉「それにしても、乃々ちゃんが机の下にいないなんて珍しいですね?」



乃々「そうしたいのはやまやまなんですけど……」チラッ



泰葉「?」



「ニャーン」



泰葉「なるほど」クスッ









乃々(岡崎泰葉さん……歌に演技に踊りにお芝居に……まさに多芸というか……)



乃々(もりくぼなんかとは月とスッポン……いや、比べることすらおこがましいです……)



泰葉「……」



泰葉「何か悩みごとですか?」



乃々「……え?」



泰葉「今日の乃々ちゃん、なんか気が抜けてるというか……あ!悪く言ってるわけじゃないんですけどね?」



乃々「……」



泰葉「普段はもっと周りに良くも悪くも敏感だった気がして……」



泰葉「もしかしたら、口にすれば軽くなるかもしれませんよ?この後お仕事があるんですが、それまでなら聞くことはできますし……」



乃々「……あ、ありがとう……ございます……」



泰葉「はいっ!」









乃々「……この前読んだ本に、『才能は神様からのギフト』って書いてあったんです」



乃々「とってもステキな話だと思って……」



乃々「……でも、じゃあもりくぼは?って考えてしまって……」



乃々「もりくぼが神様から何をもらったのか……って考えると、何にもないんじゃないかって……」



泰葉「……」









乃々「もりくぼがもらった箱は、ちっちゃくて、地味で、きっと装飾なんてなくて……」



乃々「そんな自分が恥ずかしくって……今まで隠して、隠して、隠して……でもなぜかアイドルになってしまって、なぜかファンの人までいて……」



乃々「わからないんです……自分が……」



泰葉「……」









泰葉「じゃあ乃々ちゃんは、アイドルを辞めたい?」



乃々「……昔の森久保なら、すぐにハイって答えたと思います」



乃々「でも今は……プロデューサーとか、キノコさんとか、美玲さんとか、みんなの顔が浮かんできて……」



泰葉「……うん」









乃々「岡崎さんは……もりくぼと違っていろいろな才能があって……羨ましいです……」



乃々「しかも小さなころから活躍していて……」



泰葉「……」



乃々「……あ!すみません……苦労も知らずに勝手なことを……」



泰葉「ううん、大丈夫」









乃々「なんでみなさん、もりくぼを見捨てないんでしょう……」



乃々「期待されても、信頼されても……きっといつか裏切ってしまいます……」



乃々「それが怖いんです……」



泰葉「乃々ちゃん……」









泰葉「話してくれてありがとう。そろそろお仕事なので出発しますけど……」



乃々「あ……!聞いてくれてありがとうございました……。ちょっと楽になったかもしれません……」



泰葉「乃々ちゃん」



乃々「は、はい……?」









泰葉「乃々ちゃんはきっと、まだ、箱を開けてないんですよ。たったそれだけです。……それでは。」



ガチャ



乃々「泰葉さん…………」









ガチャ

「フフーン!カワイイボクが帰ってきましたよ!!!」



乃々「あ……おかえりなさい……幸子さん」 



輿水幸子「あ、なるほど……乃々さんが机の下にいないとは確かに珍しい……」



乃々「???」









幸子「いえ、たった今、そこで泰葉さんが『あ、幸子ちゃん、今なら事務所でちょっと珍しいものが見れますよ!』って教えてくれたんです」



乃々「そ、そういうことですか……恥ずかしいぃ……」



幸子「何を言ってるんですか!ボクほどではないにしても、乃々さんもカワイイんですから!ちゃんとアピールしてですねぇ!」



乃々(“カワイイ”…………)









乃々「……」



幸子「……」



幸子「泰葉さんはこうも言ってました『乃々ちゃんの話を聞いてあげて』」



乃々「……!」



幸子「まあ、誰かの悩みを解決することも世界一かわいく生まれたボクの使命……!」



幸子「さあ!なんでもぶっちゃけちゃってください!」











――――――――――――――――――――



幸子「なるほど……神様からのギフト……ですか」



乃々「はいぃ……」



幸子「それなら、この事務所で最も大きなギフトを神様からもらったボクに聞くのはまさに適材適所としか言いようがないですね!!」



乃々「……」



幸子「……なんですかその目は」









幸子「では、乃々さんはご自身の才能を把握して、さらにアイドルとして羽ばたきたいということですね!!」



乃々「え!?ええ……いえ、そんなポジティブなことではなく……そもそももりくぼには才能なんてなくて……」



幸子「……何を言ってるんですか?」



乃々「え?」









幸子「乃々さんに才能がない?じゃあなんでアイドルをやれているんですか?」



乃々「それは……親戚にやらされて……辞めるタイミングが……」



幸子「そうじゃなくて!!」



乃々「!?」ビクッ



幸子「乃々さんにはプロデューサーさんがいて、ユニットの輝子さん美玲さんがいて、なによりたくさんファンの方がいるじゃないですか!」



幸子「本当に才能がなくて!続けたくても続けられない人がたくさんいて!それでも乃々さんはアイドルとして“成功”しているんですよ?」



乃々「でも……」



幸子「でもじゃないです!誰かが乃々さんのことを才能ないって馬鹿にしていましたか?」



幸子「少なくともボクは聞いたことがありません!確かにちょっと逃げグセはありますが、いつも乃々さんは最後には逃げなかったじゃないですか!」



幸子「それでも悪口が聞こえるというなら!それを言っているのは乃々さん自身です!」



乃々「……!」









乃々「……」



幸子「あ……す、すみません、少し熱くなってしまって……」



乃々「いえ……ありがとうございます……」









幸子「では、ボクはそろそろお邪魔しますね」



乃々「は、はい……あの、いろいろとありがとうございました……」



幸子「気にしなくていいですよ!カワイイボクに話せば心も軽くなるでしょうからね!」



幸子「それでは!」

ガチャ











乃々(…………)



乃々(……もりくぼはずっと、輝くステージとか、キラキラした服とか、そういうのとは無縁な人間だと思っていました……)



乃々(鳴りやまない歓声を浴びるなんて、違う世界のお話だと思っていました……)



乃々(でも……)









ガチャ

P「おーい乃々―!」



乃々「あ……プロデューサーさん……もう時間ですか……?」



P「いや、そうじゃないんだが……仕事のオファーの話だ」



乃々「お、お仕事……あ、あうう……」



P「1つ目がグルメレポーターの仕事で、2つ目がクイズ番組の出演だな。」



乃々「い、一気に2つも……しかも……」



P「ああ、どっちも今までやったことのない仕事だな」



乃々「……」









P「俺としては、もっと乃々のいろいろな魅力を知ってほしくて取ってきたつもりなんだが……」



P「まあ、どうしてもイヤなら他の子に……」



乃々「……」





「まだ、箱を開けてないんですよ。たったそれだけです。」





「誰かが乃々さんのことを才能ないって馬鹿にしていましたか?」





乃々「――――ます……」



P「え?」



乃々「やってみます……どっちも……」



P「!」









P「そうか、じゃあスケジュール調整しておくな」



乃々「……はい」



P「でも、こう言っちゃなんだが……珍しいな?無理してないか?」



乃々「いえ……ただ……」







乃々「……開けてみたい箱があるんです」







おわり













22:30│森久保乃々 
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