2016年02月02日
グリP「なでなで中毒」
――駐車場、車内にて
風花「なでなで券……ですか?」
グリP「茜ちゃんの頭を撫でる券、通称なでなで券。今までは回数券だったの」
風花「なでなで券……ですか?」
グリP「茜ちゃんの頭を撫でる券、通称なでなで券。今までは回数券だったの」
風花「しかしプロデューサーさんがバレンタインに渡されたなでなで券は定期だったと」
グリP「しかも次のバレンタインまで丸々一年ね」
風花「で、それがどうしたんです」
グリP「……? なんかそっけないな、機嫌悪いのか?」
風花「ひとまず私のことは置いておいて、お話を」
グリP「いやあね、正直に言うと最初は適当だったのよ」
風花「…………」
グリP「回数券持ってるとさ、茜ちゃんが期待の眼差しでジロジロ見ていて、――まあ可愛いんだけど。状況的に使わないわけにもいかなくて、結果的にすぐに券は底をつく」
風花「なるほど」
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グリP「で、脅迫的に茜ちゃんを撫で続けていたんだけれど、ある日を境にあいた手が宙をさまよい始めるわけ、フラフラと」
風花「フラフラ……ですか、なるほど」
グリP「認めたくないけど、好きだったのよね。茜ちゃんの頭を撫でるのが。……で、今回の定期券でトリガーが外れて」
風花「そういえば、ここのところ茜ちゃんと一緒にいることが多かったですよね」
グリP「撫で放題となるとね、あと1回、あと1回だけって感じで、気づいたら一日中なでなでなでなで」
風花「まるで中毒症状ですね」
グリP「なんでだろうね、止まらないのね。猫を撫でているようなんだけど、でもどこか違う」
風花「と、言いますと」
グリP「考えてみればね、これまでの人生灰色だった」
風花「GLAYの全国ツアー、そろそろですよね」
グリP「学校では女子との関り合いがなく成人。今はプロデューサーという職業柄、女性とお仕事をさせて貰っているが、直接的な接触の経験は皆無に等しい」
風花「『平成の世を駆ける君』もすっかり成人した時代です」
グリP「だからというか、……だからなのか。茜ちゃんの頭に触れてると自分、変な成分出ちゃうのかもね、脳内に」
風花「もしかすると、今も出ているかもしれませんね、ドバドバーっと」
グリP「……? ああ、そうかな?」
風花「無意識って怖いですね」
グリP「こわいねー、いつか問題起こしちゃかも」
風花「………………あの、言いづらいんですが」
グリP「おお、どうぞ」
風花「プロデューサーさん、さっきから私の胸を揉んでます」
グリP「……………………」ナデナデ
グリP「………………うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」ナデナデ
風花「いい加減に離して下さいね」
グリP「いつから、……俺いつからなでなでしてた?!」ナデナデ
風花「なでなで回数券の話の冒頭からです」
グリP「おいおいずっとじゃねえか! なんで早く言わねえんだよ!」ナデナデ
風花「いやだって車の中ですし、騒いでプロデューサーさんが逆上したら、これ以上何されるか分かりませんし」
グリP「さっきも言ったけど、青春灰色の俺にそんな勇気ねえよ!」ナデナデ
風花「胸を揉み続ける勇気はあるのに?」
グリP「あああいやまあそうだねその通りちょっと待って風花さんの左手に持ったスマホのスクリーンに『110』のナンバーが見える俺視力良いから分かるまってまってまって早まらないでごめんなさい土下座でもなんでもしますから嗚呼風花さん何か欲しいものありますか寿司天ぷらゲイシャ給料日後だから奮発できます借金もできます警察よりは借金の方がマシです!」ナデナデナデナデ
風花「don't touch me」
グリP「oh...yeah↑」サッ
グリP「完全に無意識だった……風花さんのおっぱいが茜ちゃんの頭ぐらいだからか」
風花「私のおっぱいは茜ちゃんの頭ほど大きくありません!」
グリP「お願いします訴えないで」
風花「証拠もないですし、仕様がないですね。特別に猫カフェおごりで許してあげますよ」
グリP「ありがとう風花さんマジ天使」
風花「あと、露出系のお仕事を減らして下さい」
グリP「へへへ、お安い御用で……」
風花「今回は病気ってことで見逃してあげますけど……早いところなんとかしないとマズいですよプロデューサーさん」
グリP「………………ですね」
――レッスン前、ロビーにて
瑞希「プロデューサー。まるでSQに行ってタガが外れた漫画の主人公のようです」
グリP「あそこまで酷くないです、……ぐすん」
瑞希「むかっ、真似しないで下さい」
グリP「ごめんごめん。ゲッサン総選挙一位おめでとう瑞希」
瑞希「ありがとうございます。なにか、ご褒美が欲しいです」
グリP「うーん、そういえば今プリン持ってるけど」
瑞希「プリンですか、どうして」
グリP「これも無意識でな、最近茜ちゃんと一緒にいることが多くて。……プリンがあると茜ちゃん扱いやすいし」
瑞希「プロデューサー。プリンはいただきますけど、何か複雑です」
グリP「大丈夫、欲しいものを言ってくれれば瑞希のために用意するさ。寿司天ぷらゲイシャ給料日前だから奮発できます」
瑞希「うーん、いますぐ思いつかないです。保留にしてもいいでしょうか」
グリP「かまわんよ」
瑞希「それで……本日は、野々原さんはいらっしゃらないのですか?」
グリP「今日は地方営業だな、だからこそ俺の禁断症状が発症している」
瑞希「その症状は野々原さんの頭を撫でると軽減するのですか?」
グリP「おそらくなー。明日には会えるから、それまでの辛抱さ」
瑞希「プロデューサー。根本的に問題が解決していないです」ツンツン
グリP「ですよねー、どうにかしてナデナデを身体から抜けないものか」
瑞希「何か……代わりのモノで代用して、少しづつ毒を抜きましょう」
グリP「ふむ」
瑞希「タバコを止めるために、専用のガムを噛む。そういった要領です」
グリP「代わりのもの……」
グリP「なにか代わりのモノ……何が良いだろう」フラフラ
瑞希「野々原さんの頭と形が似ているモノ……たとえばおっぱい。すいません、冗談を言いました」
グリP「現実に起きてしまった以上、笑えないな……」フラフラ
瑞希「私の胸は間違えようがないから安心ですね……ムカッ」
グリP「いや一人で勝手に怒らないで」フラフラ
ピタッ
瑞希「ひっ!」
グリP「風船……だと感触が違いすぎる」
瑞希「………………」
グリP「ボールにカツラをかぶせるか、でも硬そうだな」
瑞希「………………」
グリP「事務所にバランスボールあったよな。ためしに撫でてみるか」
瑞希「………………」
グリP「うーん、モノじゃなくても。茜ちゃん以外の子の頭を拝借して」
瑞希「………………」
グリP「それで別の子に中毒を起こしたら元も子もないか?」
瑞希「………………」
グリP「……ん? どうした瑞希、さっきから静かだぞ」
リトルミズキ「そりゃそうですよ!」ヒョイ
グリP「おろ、リトルミズキ君、久方ぶり。そりゃそうと言いますと?」
リトルミズキ「だってさっきからミズキのお尻触ってるもの、ミズキ仰天しているわ」
グリP「………………」ナデナデ
リトルミズキ「ずっと撫でてるけど、ミズキのお尻そんなにさわり心地良いの?」
グリP「………………」ナデナデ
リトルミズキ「ねえ、聞いてる?」
グリP「…………またやっちまったああああああああああああああああああああああああああああ!」ナデナデ
リトルミズキ「うわっ、びっくりした」
瑞希「し、しかたないです、これは病気……」ポロポロ
グリP「うわあああああ無表情で泣かないで、なんかすごい罪悪感が!」ナデナデ
瑞希「プロデューサーさんの手は無意識。だから私の手も無意識」ポチポチ
グリP「ぎゃあああああああ瑞希の手にあるスマホのスクリーンに『110』のナンバーがまってまってまって落ち着いて深呼吸だ瑞希ひーひーふーひーひーふーあああああああああ何でもします何でもしますから通報しないで土下座します焼き土下座します心の底から謝りたい気持ちでいっぱいだから肉焦がし骨焼く鉄板の上でも謝罪できますだって通報よりマシだもの!」ナデナデ
瑞希「don't touch me」
グリP「oh...yeah↑」サッ
グリP「なんていうか、俺心配だよ。ケツ触られて無表情なんて。もし本物の痴漢にでも遭ったら」
瑞希「もしもし警察でしょうか。いま私の目の前に痴漢が」
グリP「土下座します、いまから焼き土下座します! 宣誓! 我々選手一同は焼き土下座することを誓います!」
リトルミズキ「まーまーミズキ、仕方ないよ許してあげよう。ミズキだってよくプロデューサーの身体触るじゃない、胸板とか背中とか」
瑞希「うっ」
リトルミズキ「挙句には背後からギュッとしたり、口の中に入った花びら取らせたり」
瑞希「プロデューサー。いま私がされたことは、いつも私がプロデューサーにやっていたことなのでしょうか。……しゅん」
グリP「……いや、俺がするのと瑞希がするのじゃ次元が違うから、気に病む必要はない」
瑞希「そうですか、じつは私も釈然としません」
グリP「許して下さいお願いします」
瑞希「そうですね。じゃあ、お願いを1つ」
グリP「な、なんでしょうか」
瑞希「私をギュッとして下さい、正面から」
――事務所、デスクにて
グリP「(本格的に耐えないとマズい状況だった)」カタカタ
グリP「(何でもっと早く気づかなかったのだろう)」カタカタ
グリP「(現在俺の状況は麻薬中毒者のソレと変わらん)」カタカタ
グリP「(奇跡的に二度許されたが、次はない)」カタカタ
グリP「(とにかく今はデスクワークに集中して、毒が抜けるのを待つ)」カタカタ
琴葉「(プロデューサー大丈夫かな、すごい追い詰められているみたい)」
グリP「カタカタカタカタカタカタカタカタ」
グリP「はぁ……はぁ……」カタカタ
琴葉「(プロデューサー、息が荒い……)」
グリP「(やばい、視界が霞んできた。手足も感覚が薄れて……クソっ苛々する)」
グリP「(茜ちゃんをなでたい、茜ちゃんをなでたい、茜ちゃんをなでたい、茜ちゃんをなでたい、茜ちゃんをなでたい、茜ちゃんをなでたい、茜ちゃんをなでたい、茜ちゃんをなでたい、茜ちゃんをなでたい、茜ちゃんをなでたい、茜ちゃんをなでたい、茜ちゃんをなでたい、茜ちゃんをなでたい、茜ちゃんをなでたい、茜ちゃんをなでたい、茜ちゃんをなでたい、茜ちゃんをなでたい、茜ちゃんをなでたい、茜ちゃんをなでたい、茜ちゃんをなでたい、茜ちゃんをなでなで)」
グリP「なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、なでたい、」
グリP「(なでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなで)」
琴葉「(プロデューサーの目が死んでる?!)」
グリP「はっ!」
琴葉「(戻った?!)」
グリP「(アカン、仕事に集中。神経を落ち着かせて、何も聞こえない、何も聞こえない)」
琴葉「あの、プロデューサー。よかったらお茶どうぞ、汗がすごいですよ」
グリP「(何も聞こえない、俺はいま広い草原に存在している、ちっぽけな存在だ)」
琴葉「忙しいのでしょうか、なにか私に手伝えることはありませんか?」
グリP「(この草原には茜ちゃんもなでなでも存在しない。ただ俺だけが存在している、正常な俺だけが)」
琴葉「プロデュー」
グリP「うるさい」
琴葉「っ!」ガタンッ
琴葉「……あ、お茶が床に」
グリP「…………………」
琴葉「すいません、すぐに片付けますね。迷惑にはならないようにします」
グリP「………………」
琴葉「ちょっと忙しくて、大変なんですよね、申し訳ありません。出すぎた真似をしました」
グリP「………………」
琴葉「あ、あの、プロデューサー。プロデューサー?」
グリP「………………」
琴葉「プロデュ、……う……ぐすっ」
グリP「………………」
琴葉「うぅ……ぐっ、ふ、ふふふ」
グリP「心頭滅却、なでなでよ滅びよ」
琴葉「っふふふ、プロデューサーにとって私なんて喧しいだけですよね」
グリP「なでなでの無い無我の境地へと辿り着くのだ」
琴葉「プロデューサーがプレゼントしてくれたネックレス」
グリP「自我を思いのままに操る精神力を身に付けろ」
琴葉「あれから毎日してますけど、もう必要ないですねぇ。えへへ」
グリP「よし、心が落ち着いてきた」
琴葉「プロデューサーにお・か・え・しっ・します!」サッ
グリP「?!」
琴葉「落とさないように、首にっ、しっかり固定して!」
グリP「ぐえええええええええ?!」
琴葉「ふーん!!」ギリギリ
グリP「(ギブギブギブギブギブ!)」ダンダンダンダン
琴葉「プロデューサーのこと信じてたのに!」
グリP「おごごごごごご」
琴葉「プロデューサーのためにウェディングドレス着たのに!」
グリP「ががががががが」
琴葉「クリスマスの日、泣いてる私を慰めてくれた癖に!」
グリP「おごっ」
琴葉「仮面をした私に気づいてくれて、運命だと思ってたのに!」
グリP「ご……ど……はっ」
琴葉「プロデューサーと一緒に、このあと私もっ!」
グリP「don't touch me」
琴葉「oh...yeah↑」サッ
――事務所、休憩スペースにて
グリP「プロデューサーとデート券20回分でなんとか許してもらえた……」
グリP「やっぱり我慢はダメだ、少しづつ直していこう」ナデナデ
グリP「とりあえず、問題が起こらないように」ナデナデ
グリP「胸も尻も未成熟の子にお世話になろう」ナデナデ
グリP「これぐらいの等身なら、ケツに手は向かない」ナデナデ
グリP「胸も、なでなでしても永遠に満たされない」ナデナデ
グリP「心配なく、この手は頭へと向かう」ナデナデ
グリP「……というわけで、スマンな環! 困ったちゃんの親分を許しておくれ」ナデナデ
このみ「………………」
グリP「…………あれ」ナデナデ
このみ「………………環ちゃん、いまレッスン中よ♪」
グリP「」
グリP「ぎゃああああ、許して許して、酒瓶はダメ! 酒瓶は人を殴る道具じゃありません!」
このみ「どうやったら! 12才と24才を! 間違えるのよ! 倍も違うじゃないのよ!」ドコッバコッ
グリP「だ、だから! だからごめんなさいって! ごめんなさいごめんなさい!」
このみ「だれが! 永遠に満たされない胸! 未成熟なケツで! 悪かったわね!」ドコッバコッ
グリP「のんのん! ちがうのん! ちがうのん! このみさんのケツにはちゃんと興奮できますのん!」
このみ「あー、私は温厚な人間、できたお姉さんだと、自分で勝手に思ってたけれど、どうしよう。怒りが収まらないわ」
グリP「アイエエエエエエエエエエエ!」
このみ「幸い、この辺には誰もいないし、ちょっとマジで一線越えて分からせてやろうかしら」
グリP「いやぁ! 一線を越えるのはらめぇー! このSSは健全なのー!」
このみ「よくよく考えて見れば、口だけの私も悪い」
このみ「アダルティアダルティ言いながら、風花ちゃんみたいに脱いではいないし」
このみ「莉緒ちゃんみたいなヘンテコマニアックの嗜好にも走らない」
グリP「大丈夫です、このみさんは存在そのものがマニアックです」
このみ「フンッ」ガンッ
グリP「ちぐはぁ!」
このみ「プロデューサーないし、世間の男に分からせるには、一肌脱ぐしかない」ヌギッ
グリP「ストップストップマジで見えちゃいけないとことが見えそうあーだめだめエッチすぎます安心して下さいエッチですよ!このみさんは十二分エッチです、イヨッ!アダルティ! うわー鼻血とまんねー! 酒瓶で殴られたせいだけど鼻血マジとまんねー! ああズボン脱がないでパンツもNGです、俺のを脱がせるのもアカンです、ナニ握るのはもっとアカンのです! いやいやいや小さい身体のどこからこんなパワーがああああああああああああ」
このみ「ふふーん、大丈夫、一回やっちゃえば楽に…………」
グリP「don't touch me」
このみ「oh...yeah↑」サッ
グリP「やった、本物のたまきちだ! わーい!」ナデナデ
環「くふふっ、親分。たまきに会えてそんなに嬉しいのか?」
グリP「ちょー嬉しいZE! じつはな、俺ちょっと変な病気にかかっちゃって。誰かの頭を撫でてないと落ち着かないんだ」ナデナデ
環「うわー親分くすぐったい! この前に遊んだ大きな犬みたいだぞ!」
グリP「動物番組で遊んだゴールデンレトリバーだな、……今の俺、そんな感じなのか」ナデナデ
環「ちょっと重くてうっとうしいけど、親分なら大丈夫」
グリP「そうかー重くて鬱陶しいかー」ナデナデ
環「くふふっ」
桃子「…………………………」
――ふたたび、事務所デスクにて
グリP「環のおかげで症状が落ち着いた。発作のない内に仕事をできるだけ進めよう」
桃子「………………」
グリP「次のライブのデータがまとまっているから、コレに目を通して。必要な部分は個別にリスト化」
桃子「………………」
グリP「わー、今度の箱は収容人数でかいなー。まあ合同イベントだからな、しかしここは常連になりたいな」
桃子「………………」
グリP「………………」
桃子「………………」
グリP「どうした桃子?」
桃子「別に、なんでもないけど。なに、何か文句あるの?」
グリP「いや……俺の仕事、見ていても面白くないだろ。あっちで遊んでいていいぞ」
桃子「いまはここに居たい気分なの! 私のことはいいからお兄ちゃんは仕事してて!」
グリP「す、すいません……」
桃子「ふんっ」
グリP「………………」カタカタカタ
桃子「………………」
グリP「(資料を見ながらデータの再確認)」サッ
桃子「(……お兄ちゃんの左手がコッチにきた)」
グリP「(左の棚の資料を……)」ファサッ
桃子「(…………ちっ。違ったか)」
グリP「あ、あの、桃子。そうやって頭をひょこひょこされると気が散るっていうか……」
桃子「ふえっ?! お、お兄ちゃんの集中力が足りないんじゃないの! しょうがないな、お兄ちゃんがちゃーんとお仕事できるか、ここで桃子が見張っててあげる!」
グリP「いや、だからそれが……いや。なんでもないです」
桃子「…………ふん!」
グリP「そわそわしてるけど、踏み台ないからか? 持ってきてやろうか」
桃子「いい、いらない」
グリP「えっ、なにそれ珍しい」
桃子「この高さがちょうどいいから! うーん、ちょっとかがんだほうがいいかも……」
グリP「え、高さ?」
桃子「こっちの話だから、ほらお兄ちゃんはキビキビ働いて!」
グリP「うーん……」
グリP「(この資料は余分だな、ホッチキスを止め直さないと。文豪具は左の小物入れ)」
桃子「(また左、こんどこそ!)」
スカッ
桃子「くうぅぅぅ〜」
グリP「(ここは先方に連絡して確認したい。電話帳は右の一番下の引き出し)」
桃子「(次は右、桃子も右に移動しないと!)」グイッ
桃子「あ、足がもつれてっ」
グリP「?!」
桃子「きゃっ!」
グリP「………………」
桃子「………………」
グリP「いきなり俺のヒザにダイブしてきてどうした?」
桃子「…………うう」
グリP「ごめん、ちょっと手が混んでて。あとで遊んでやるからヒザからどいて」
桃子「」//////
桃子「ち、違うの! これはそういうのじゃなくて!」ジタバタ
グリP「どうどう! 人のヒザで暴れるな」ナデナデ
桃子「………………」
グリP「あれ、おとなしくなった」ナデナデ
桃子「痛い……足ひねったかも」
グリP「大丈夫かよ、足見せて。とりあえず、あっちのソファに運ぶぞ」
桃子「……はぁ」
グリP「酷くなければいいけど、……次の桃子のダンスレッスンいつだっけ」
桃子「大丈夫、そこまでじゃないと思う。ごめんねお兄ちゃん、お仕事の邪魔して」
グリP「いいよ、ネックレスで首絞めてくるほどじゃないし」
桃子「なにそれ、火曜サスペンス?」
グリP「小学生の口から火サスが出てくるとは……」
――夜の事務所より
グリP「嗚呼、散々な一日だった。なんて言ったら世の男性に怒られてしまうか。しかし俺には仕事柄死活問題なのだよ、分かっておくれ。……誰に弁解してんだ俺」ガクガク
グリP「どうしよう、おちごと終わらないよ。右手が宙を荒ぶって何もできない」ガクガクガクガク
グリP「茜ちゃんがいてくれれば、ただそれだけでいいのに」ガクガクガクガク
グリP「あー、発狂しちゃう。虎になっちゃう」ガクガクガクガク
茜「ふーんふーんふふーんふーん♪」
グリP「ははっ、茜ちゃんの鼻歌か。幻聴まで聞こえてくるとは」ガクガクガクガク
茜「ぷーろーちゃん♪ やっほー!」ヒョイッ
グリP「幻聴だけじゃなくて幻覚まで……、俺死ぬのかな」ガクガクガクガク
茜「本当は直帰の予定だったんだけどさ」
グリP「アーメン、来世はピンク色の青春を送りたいと願う」
茜「冷蔵庫のケーキ、悪くなるから事務所に戻って来ちゃった」
グリP「マジかよ」
茜「さっき思い出してさ。あーあ、プロちゃんが遅くまでいるって分かっていれば。連絡して食べてもらったのに」
グリP「あはは……」
茜「でもプロちゃんに会えたしいっかー、お仕事お疲れ様プロちゃん」
グリP「おー、おつかれさん」
茜「おっ、プロちゃんが子犬のような目で茜ちゃんを見ているぞ〜。んふふ、茜ちゃんがいなくてそんなに寂しかったのかな? ニヤニヤ」
グリP「おう、そのとおりだ」
茜「そうかそうか〜、しょうがないよね茜ちゃんはかわ…………え? マジ?」
グリP「………………」
茜「え、ちょっとプロちゃん、なんで無言で近づいてくるの、普通に怖いんですけど」
グリP「ふーっ、茜ちゃん……茜ちゃん……」
茜「にゃ〜?! プロちゃんがバイオハザートみたいになってる」
グリP「かゆ……うま……」
茜「茜ちゃんがプロちゃんをがぶがぶしたばっかりに……プロちゃんもゾンビに……」
グリP「なんで後ずさりするんだ茜ちゃん」
茜「いやだって虚ろな顔してズンズン接近されたら誰だってこうなるって、まるで不審者だよ、今のプロちゃんを写メって警察に見せたら警官が立ち上がるレベル」
グリP「ふふっ、待て待て……ふははは」
茜「いやー、さすがの茜ちゃんもちょっと冗談言えなくなってきたよ、コレ本当にアカンやつか?」
グリP「茜ちゃんっ!」
茜「ぐあっ、しまった! 気づいたら壁際に追いつめられている! ここはヨコに反復横跳び……」
グリP「逃げるな!」
ガンッ
衝撃音がした、下腹部から脳天へ糸が抜けるような、変な感覚に脳は混乱、茜の身体が硬直した。「あ……あ……」声にならない声をこぼしてカクカクと首を落とす、その先。茜の股下ギリギリにプロデューサーのヒザが折り込まれていた。――股ドンである。巷でホットワードな壁ドンや床ドンや和田ドンの亜種でナウいJKがうっかり発情しちゃうイケメンアクションだ。茜は股下のヒザが障害になって横に逃げられない、しかし後ろは壁、前方に変質者。八方ふさがりである。……否、この拘束された事態よりも茜を困惑させたのはプロデューサーの行動であった。
茜「(馬鹿なっ、リア充の影に怯えて日陰でコソコソと生き、女性との接点が満足に星座も引けない都会の夜空レベルの点でしかないプロちゃんが茜ちゃんを壁際に追い込んで股ドンだと? 明日は槍が降るんじゃないの……)」
グリP「……俺、茜ちゃんがいないとダメみたいだ」
ドンッ、プロデューサーの肘が壁を打った。茜の左耳がささやかれた直後である。右耳数センチの第二撃に弾かれて、彼女の意識が少しづつプロデューサーの言葉を吸い込んでいく。比例し、みるみると茜は頬を染めていった。日頃はヘタレなチェリーボーイのプロデューサー、あまりにもギャップが激しすぎた。
茜「あ……あのっ、プロちゃん、もしかして熱でもあるんじゃ……」
グリP「あ? 熱があるのは茜ちゃんの方じゃないか? 顔が赤いけど」
茜「いやっ、嘘っ……これは……その……うん」
語調が弱る、何と言えば良いか分からない。所在なさ気に茜は指を絡めた。妙な雰囲気に耐えられなくなって顔を伏せてしまう。ちょうどプロデューサーの前に彼女の頭部が差し出された形だ。丸々一日おあずけを食らっていた彼の食事が目の前に転がり込んできた。プロデューサーの胸が高鳴る。
グリP「茜ちゃん、触っていい?」
茜「…………えっ?」
うつむきざまに茜は目を見開いた。ようやっと茜は自身の状況を分析し始める。夜の事務所、壁際に追いつめられた女、追いつめる男。プロデューサーの台詞は安直にして明白。そういう意味で求められている、彼女は理解した。
茜「い、いや!」
反射的に両手でプロデューサーを押しのけた。しかし飢えたゴールデンレトリバーは引き下がれない、彼は左腕を素早く茜の背中に回し一気に引き寄せた。拒絶から前方に重心を置いた茜の身体が一気にプロデューサーのヒザの上に乗り上がる。
グリP「おっと」
茜「ひぎっ?!」
壁一面に右肘と左足のスネを固定、左の手のひらを茜の背中に左足に力を込めてプロデューサーは彼女をしっかりと持ち上げた。彼の左足にまたがる形となった茜は体重を一点で支えるデリケートゾーンへの圧迫感に悲鳴を上げて、すかさずに彼の両肩を掴んだ。プロデューサーのジャケットに沈んだ指の数々がわなわなと震える。じんじんと局部が疼く、冷や汗を浮かべて茜は呼吸を整えた。
茜「……はぁ、はぁ。プロちゃん、これはさすがにマズいと思うんだけれど」
グリP「気にするな、茜ちゃんは普段通りにしてくれればいいから、とにかくじっとしてて」
茜「分かった分かったプロちゃんに免じておとなしく……できるかーい! なんなんだこの格好は、ドラマでもここまで過激なヤツは中々お目にかかれないよ!」
口ではツッコミを入れてみたものの、それこそ普段通りに突っ込んではみたものの、一方で茜が状況を受け入れるか否かの葛藤しているのも事実であった。これまでプロデューサーにはお世話になっているし、彼に好意がない、というわけではない。今後の付き合いは置いておいても、ここいらで一発ぐらい彼に付き合ってやるのも一興なんじゃないだろうか。童貞力が高く、女性の扱いを分かっていない彼に身を委ねるのは一抹の不安が残るが、彼との行為に嫌悪感はおそらく抱いていない。
茜「(いやいやいやいや、女子高生のクセに身持ちがユルすぎないか。茜ちゃんはそんなに安い女じゃないはず……だめだだめだ!)」
グリP「俺……もう茜ちゃんなしでは生きていけない」
茜「ぐぅ………………」
誰もいない職場に二人きり。強引に迫られ拘束される肉体。使い古された台詞は深みはないが甘い。女心の何たるかを知らない彼にときめく日が来るなんて思わなかった。まるでドラマのワンシーン、相手はプロちゃん。……悪くない気分だ。
グリP「なあ、いいだろ?」
茜「……いいよ、……どうぞ」
彼の言葉は理屈になっていないが、こればっかりは理屈じゃない。
茜は覚悟を決めた。
グリP「いや、良かった。実はこの体制ツラくてさ」
茜「茜ちゃんはもっとツラい…………きゃあ!」
プロデューサーが茜を抱きかかえて後方に倒れた、固い床に彼の背が衝突、数秒の沈黙、おそるおそる大丈夫かと茜は訊ねる、問題ないとプロデューサー、それでも心配する茜を疎ましげにして、彼は茜を抱きしめた。
グリP「ほら、この通り大丈夫」
茜「………………床は固いでしょ、あっちのソファでしようよ」
グリP「嫌だ、もう我慢できない。俺が下になるからいいだろ?」
茜「う、うん……しょうがない、な……」
茜はため息をして彼の胸板に頬をあずける。
グリP「それじゃあ、やっちゃるぞ茜ちゃん」
茜「はいはい」
グリP「な で な で フ ェ ス テ ィ バ ル の 開 幕 だ」
茜「…………………………え?」
グリP「なでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなで」
グリP「よーしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよし」
グリP「わしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃ」
グリP「もふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふ」
グリP「クンカクンカクンカクンカクンカクンカクンカクンカクンカクンカクンカクンカ」
グリP「わさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさ」
グリP「おかゆい所はございませんかー」
グリP「はい、シャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカ」
グリP「最後にもう一回、なでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでー!」
茜「……………………………」
グリP「あー生き返ったー! これで仕事に集中できるわー! サンキューアカッネ!」
茜「………………」
グリP「ふー、今日一日はどうなることかと思ったけれど、茜ちゃんが戻ってきてくれて良かったぜ」
茜「………………」
グリP「あー! そういや冷蔵庫のケーキ、桃子にあげちゃった!」
茜「………………」
グリP「なんか足を怪我してさー、悲しそうな顔してたから、仕方なく、ね!」
茜「………………」
グリP「後で買って返せばいいかって思って。さて、あのケーキいくらだった? いま返金しちゃうわ。あ、やっぱり買って来たほうがいい? もうケーキ屋閉まってるか! あはははは」
茜「………………」
グリP「茜ちゃーん、そろそろ俺の上からどいてくれないかな?」
茜「…………バカ」
グリP「ほい?」
茜「ばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかーっ!」ズカボコズカボコ
グリP「ぐふぅ、ごほぅ! あひん! ……ひでぶぅ」
茜「あーもうっ! プロちゃんにときめいた茜ちゃんがバカだったよ! そりゃそうだよね! 女の子を口説く目的で壁ドンとか股ドンとか! 年齢イコール彼女なしのプロちゃんにできる真似じゃないよね! あんな歯の浮く台詞も告白が目的だと言えないんだろうなーっ! プロちゃんはさっ!」
グリP「あ、茜ちゃん顔近い、プロちゃんドキドキしちゃう」
茜「この一生童貞野郎が! お前は一生摘み取られないチェリーそのものだなっ! ああ、それともイ○ポなのかなぁ! 手前のチ○コは何のために存在してんだ! 使わないなら腐り落ちればいいと茜ちゃんは思うよ!」
グリP「……ア、アイドルがなんたる暴言を」
茜「くああああああああああああああああああああああああああ!」
グリP「ひぃ!」
茜「……もういいや、犯るわ」
グリP「うい?」
グリP「いやあー、ジャケット破かないでぇ、高かったのにー! シャツのボタンもちぎっちゃや〜よ! ……ベルトの金具が外れた……だと? ズボンのチェーンが引き裂かれた?! いやー犯されるぅー!」
茜「コシュー、プシュー」
グリP「っべーわ、茜さんっべーわ、なんか人間じゃない音してるぅ」
茜「プロチャンノ、チェリー、ツブス」
グリP「潰すっ?!」
茜「キリトル」
グリP「切り取る?!」
茜「モチカエル」
グリP「愛のコリーダかよ!」
茜「I think you, I drink you
I'm being served you on a tray」
グリP「ぎゃあああああ、don't touch me! don't touch me! don't touch me!」
茜「…………………」
グリP「…………………」
茜「はぁ……。プロちゃん、茜ちゃんのこと愛してる?」
グリP「うんうん! 好き好き大好き超愛してる!」
茜「じゃあ、特別に許そう、特大プリンで」
おわり
23:30│野々原茜