2016年02月28日

まゆ「これは、プロデューサーさんの椅子……」


※ラジオドラマ風



※ ナレーション(cv大川透)





『――某日 事務所』



 ガチャ。

 

まゆ「おはようございます」



『佐久間くんがやって来ました』



まゆ「……誰もいないんですね。スケジュールは……」



『辺りをきょろきょろと見回すと、とことことスケジュールの書き込まれたホワイトボードの前へ」

 

まゆ「どうやらお仕事やレッスンで……しばらくは事務所に一人ですか」



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1455955624





まゆ「どうしようかな……一人で待ってるのもつまらないから……ちょっと喫茶店にでもいこうかな――」

 

まゆ「…………!」



『おや? どうやらプロデューサーの椅子が目に入ったようですね』



まゆ(一人っきりの事務所、無防備に置かれたプロデューサーの椅子、誰かが戻ってくるまではまだ時間がある――)



まゆ(でも、それってどうなのかしら? 人の目を盗んで座るなんてまるで悪い事してるみたいで――)



まゆ(いけない、いけないわ! まゆ! 誘惑に負けちゃだめ! ここはほら、強い自制の心を持って――)



 ぽふっ。

 

まゆ「――っ! い、いつの間に!?」



『佐久間くん、誘惑に陥落』

『もばます!』



まゆ「あぁ……これがプロデューサーさんの椅子……」



まゆ「大きくって固くって、それでいてゴツゴツして……」



『うっとりとした表情ですね。なんだか、いけないものを見ている気分です』



まゆ「……でも、はっきり言って座り心地は最悪です」



まゆ「お尻が痛くなっちゃう。今度、椅子用のクッションをプレゼントしようかな……もちろん、手編みで♪」



まゆ(まゆ、嬉しいよ。俺のために手作りの座椅子カバーをプレゼントしてくれるなんて)



まゆ(そんな! まゆはただ、プロデューサーの身体を心配して……)



まゆ(いや、その優しさにお礼をしなくちゃいけないな。そうだ! 今度二人でドレスの下見にでも――」



まゆ「ど、ドレスってもしかして……や、ヤダ! プロデューサーさんったら!」



まゆ「でも、どうしてもっていうのなら……着てあげても、いいんですよ?」



まゆ「なんて、なーんてっ! キャー! 恥ずかしいですぅ!」



『両手をほっぺたに当てて恥ずかしがる佐久間くん。可愛いですねぇ』

『もばます!』



まゆ「――つい、取り乱してしまいました」



まゆ「ダメですね。事務所だって言うのに、一人だとちょっと気が緩んじゃいます」



まゆ「あぁ……でもこの椅子に、いつもプロデューサーが座ってるんですよね」



まゆ「つまりまゆは今、プロデューサーの膝の上に乗っていると言っても過言ではない……!?」



『それは、どうなんでしょうか』



まゆ(プロデューサーさんの膝の上って、なんだかドキドキしますね……)



まゆ(重たくないですかぁ? 薫ちゃん達と違って、まゆは大きいですし)



まゆ(全然そんな事はない? そうですか、よかったぁ)



まゆ(――きゃっ! いきなり頭を撫でるのはダメで――可愛かったから? な、ならしかたない……かな?」



まゆ「い、イヤじゃないですよぉ! 出来れば、もっと撫でて欲しい……なんて」





『またもや、妄想が駄々漏れです』

『もばます!』



まゆ「はっ! 普通に座った姿勢が膝の上に乗る事になるならば」



『おっと。佐久間くんが一度椅子から立ち上がり、背もたれに向かって正座するように座りなおしましたよ?』





まゆ「腕をこう……背もたれに回すと……」



まゆ「なんとなく、プロデューサーさんと抱き合ってる気分が味わえるかも……」



まゆ「あぁなんだか……ドキドキで熱くなってきちゃいました」



『これはいけませんね。アイドルとしてあるまじき表情になってます』



まゆ「このまま、溶けちゃいそう……」



『先ほどから机の下で気配を殺している星くん! 同じユニットの仲間として、止めるなら今しかないですよ!』



輝子(フヒッ!? い、今のいままで気配を消してたのに……)



輝子(急に話を振られても……私にこの状況をどうにかできる自信なんて……ないぜぇ)

『もばます!』



まゆ「…………」



輝子「…………やぁ」



まゆ「……いつから?」



輝子「えっ?」



まゆ「いつから見てました?」



輝子「え、えっと……まゆ……さんが、事務所にやって来た時から……です」



『物音に振り返った佐久間くんは、机の下でキノコを抱える星くんに気がついてしまいました』



まゆ「……ホワイトボードには、輝子ちゃんの予定はなかったはずですけど」



輝子「き、キノコの世話……日課だから」



『そう言って霧吹きを見せる星くんの手は、ぷるぷると震えて……その胸中、お察しします』



まゆ「そうですか」



輝子「……なんか、ごめん」



まゆ「いいんですよぉ……私と……輝子ちゃんの仲じゃないですかぁ?」



輝子「ヒッ! な、なんで近づいて……こわっ――」

輝子『も、もばますぅぅーッ!!』



まゆ「それで、どうですかぁ?」



輝子「……凄く、恥ずかしい……です」



『先ほどの佐久間くんのように椅子に正座する星くんと、それを机の下から眺める佐久間くん』



輝子「あの……いつまで続ければ……?」



まゆ「まだダメですよぉ。私も同じくらい、恥ずかしかったんですからぁ」



輝子(今誰かが帰って来てこの姿を見られたらと思うと……じ、地獄だぜぇ)



 ガチャ。



『案の定、タイミングよく誰かが帰ってきちゃいました』



P「うー外はまだ寒い寒い……ただいまー」



輝子「……あ」



P「…………」



輝子(す、凄くこっち見てるぅぅっ!)



輝子「あ、あの……これは、その……なりゆきというかなんていうか」



輝子「別に、やましい気持ちがあったりしたわけじゃなくって、その……」



まゆ(ふぁ、ファイトですよ輝子ちゃん!)



輝子「あの……その……」



P「……輝子」



輝子「あ、暖めてた……」



輝子「そ、外回りから冷えて戻ってくるプロデューサーのために、私が体で椅子を暖めて待ってたんだぜぇー!! ヒャッハー!!」



『戦国時代、信長の草履を秀吉が懐で暖める、有名な逸話があるんです』

『もばます!』



P「うん……確かにほんのり温かい」



輝子「そ、そうか……良かった……フヒッ」



P「方法はともかく……心配してくれてありがとな」



『星くんが人力で暖めた椅子に座り、Pが感想を言います』



まゆ(どうしましょう……なんだか凄く出て行きづらいです)



『机の下では気がついてもらえなかった佐久間くんが、這い出るタイミングを完璧に逃してしまっています』



P「そうだ! なにかお礼でもしてあげようかな……ちょうど昼時だし、ご飯でも奢るよ」



輝子「へっ……そ、そんな……良いのか?」



P「あ! でもあんまり期待しないでくれよ? そう高いものは無理だからな」



輝子「ぷ、プロデューサーと一緒なら……ど、どこでも……後、キノコさえあれば……」



『こうして、そのまま事務所から出て行く星くんとP。部屋には、佐久間くんが一人残されました』



まゆ「今のうちに……机の下から出て……っと」



まゆ「うぅ……それにしても輝子ちゃん……プロデューサーさんとお昼なんて羨ましい」



まゆ「……あのまま私がここに座っていたら、今頃はまゆがプロデューサーさんとお昼を……」



『再び椅子に正座する佐久間くん』



まゆ「あ……プロデューサーさんの温もりが残ってる……気がする」



『星くんのものかもしれませんけどね』



 ガチャ。



未央「今日も元気にぃ! おっはようござ――」 

 

まゆ「――――ッ!!」



未央「――います……?」



まゆ「…………あ、あの……」



未央「お、お邪魔しましたぁ!」



 パタン!!

 

まゆ「ま、待って!! 誤解、誤解ですからぁー!」



まゆ「このまま一人にしないでくださいーっ!」





『個性的なアイドル達が生活する。そんな日常の風景でありました』





 おわり



12:30│佐久間まゆ 
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