2016年04月20日

モバP「ベランダ越しの佐藤心」

P(仕事から帰って、飯食って、風呂入って、明日の準備をして)



P(あとは寝るだけになったら、窓を開けてベランダに出る)



P(アパートの一人部屋から眺める月にほんのり哀愁を感じていると、やがていつものように――)







ばたばたばたっ



がららっ





心「こんばんは♪ プロデューサー♪」



P「こんばんは」



P(隣の部屋でどたどた物音を鳴らしながら、彼女がベランダに現れる)







SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1460996030



心「今日は出てこないかと思ったぞ? 日付変わりかけだし」



P「別に、約束しているわけじゃないですからね。わざわざ夜にここで話さなくても、昼間に事務所でいくらでも顔を合わせるわけですし」



心「んもう、わかってないなあプロデューサーは! こういう、直接顔が見えないやり取りはとってもスウィーティーなんだぞ☆」



P「それを言うならロマンチックでは」



心「スウィーティーという単語はロマンチックの意味も含みます」



P「そんな無茶苦茶な」



心「いいだろ♪」



P「……まあ、ダメではないですけど」



心「ふふ♪」





P(このアパートに引っ越してきたのは、俺のほうが後。しかし隣にアイドルが住んでいるとは知らなかった)



P(当時は心さんが別の事務所に所属していたので、当然彼女の住んでいる場所など知らなかったのだ)



P(その後、なんやかんやあって彼女はうちに移籍。今では担当アイドルがお隣さんという状況が生まれている)



P「……風、結構冷たいですね」



心「だね。今夜はちょっと冷えるかも」



P「こんな時間に外に出ていたら、風邪ひいちゃうかもしれませんよ」



心「へーきへーき♪ 実家から持ち込んだどてらを装備してるからな! 防寒はバッチリ☆」



P「顔が見えなくても、今あなたがドヤ顔をしているのがなんとなくわかります」



心「お? それは『好きな子のことはなんでもわかる宣言』?」



P「違いますけど」



心「もう、ノリ悪いぞ?」



P「夜も更けてきたのに、そんなにテンション高くいられませんよ」



心「ふうん。ところでさ」



P「はい」



心「はぁとのこと、好き?」



P「……酔ってます?」



心「26が酒飲んじゃ悪いかよ〜」



P「やっぱり飲んでる」



心「酔ってないって♪ 普通に呂律も回ってるでしょ?」



P「……まあ、泥酔ってわけじゃないみたいですね」



P「………」



心「………」





P(最初にちょっと話したら、そのあとは黙って夜景を眺めるのがお決まりだ)



P(ベランダの壁越しに心さんの気配を感じながら、ただぼーっと月や街並みに目をやる)



P(昼の彼女と過ごす時間はたいがい騒がしいので、静寂を大事にするこの時間は、なんとなくお互い気に入っている)





心「………ふう」



P(たまに彼女の息遣いがはっきり聞こえて、少々どきりとさせられる時もある)





P「心さんって、夜は印象違いますよね」」



心「ん、そう?」



P「昼間は常時ハイテンションですけど、今は静かだし」



心「あぁ……まあ、そうかも? ツインテールほどいてるし」



P「髪型関係あるんですか?」



心「あるよ? ツインテールにすると元気100倍だからな♪」



P「そんな設定があったんだ」



心「なんならプロデューサーもやってみる?」



P「髪の長さが足りませんし、やったらやったで気持ち悪いだけですよ」



心「いやいや、意外とかわいく決まるかも………ごめん、やっぱないわ」



P「でしょう」



心「あははっ」





P「……っと。そろそろ一服」



P「ふう……」スパー



心「あ、はぁとも吸いたいから一本ちょーだい♪」



P「いいですけど……一個聞いてもいいですか?」



心「なぁに?」



P「毎回俺からもらうくらいなら、自分で持って来ればいいのでは」



心「ククク、人の金で吸うタバコは最高だぜ☆」



P「ひどい」



心「って、さすがにこれは冗談。はぁとはね、自分のタバコを買わないことにしてるの」



P「買わない? どうして」



心「タバコ吸いすぎると、運動に支障をきたすでしょ? もうその辺考えなきゃいけない歳だし、タバコは一日一本までって決めてるんだ」



心「でも家にあったらついつい吸っちゃいそうだから、毎日誰かから一本もらおうって♪」



心「どうよこれ、名案でしょ」



P「わりと図々しいアイデアですね」



心「まあまあ、そんなこと言わないの♪ これにはちょっとした思いがこめられているんだから♪」



P「思い?」



心「気軽にタバコをもらえるような、そういう人間関係を大事にしましょうってことだぞ☆」



P「なにをちょっといい話風にしようとしてるんですか」



心「てへぺろ☆」



P「だいたい、誰かからもらうって言ってますけど……ほとんど毎日俺からしかもらってないじゃないですか」



心「ま、それはそうだけど」



心「……どういう意味があると思う?」



P「………」





P「さあ」



心「わかってるのに答えないのはチキンだぞー、チキン」ブーブー



心「ふう……プロデューサーの好きな銘柄、はぁとも好きだぞ」スパー



P「気に入ってもらえてなによりです」



心「………」



P「……心さん?」





心「ねえ、もう一本ちょうだい?」



P「もう一本って……一日一本じゃなかったんですか」



心「日付変わったからセーフ」



P「え? ……あ、ほんとだ。12時回ってる」



心「ふふっ♪ ということで、お願い?」



P「しょうがないですね」



P(心さん側に近づいて、腕を伸ばして壁の向こうにタバコを差し出す)



心「サンキュ……へくちっ!」



P「やっぱり、身体冷えてるんじゃないですか? そろそろ戻ったほうが」



心「へーきへーき……くしゅんっ」



P「まったく、強情なんだから」



P(様子をうかがおうと、向こう側のベランダに顔だけ伸ばす)





心「つーかまえた」



P「え」



P(その瞬間、両頬を心さんの両手で挟まれた)



P(髪をおろした彼女の鼻はまったく汚れておらず、俺はさっきのくしゃみが演技だったことに気づく)



P「……顔、近くないですか」



心「わざとだよ」



P「いや、わざとって」



心「………」



P「心さん……あの」



心「………」スッ



P「ちょ、ま……!」









心「なーんちゃって☆」デコピン



P「あいてっ!」



心「ものの見事に引っかかったなー♪ 顔真っ赤にしちゃって、かわいいやつめ☆」



P「………あのですねぇ」



心「それじゃ、心配してくれてるみたいだしそろそろ寝るわ。おやすみー」ヒラヒラ





がららっ

ばたんっ





P「………」



P「はあ……まったく」





P「顔が真っ赤だったのはどっちだと思ってるんだか……それとも、単にアルコールがまわっていただけなのか」



P「……敵わないなあ、あの人には」



P「俺も寝るか……」







おしまい





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20:30│佐藤心 
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