2016年04月28日

一ノ瀬志希「できたよ! 惚れ薬♪」佐久間まゆ「待って下さい」






※登場アイドル 一ノ瀬志希、佐久間まゆ

※短め



※メタネタ・ダイマ注意







SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1455118306









志希「え、どしたの? まゆちゃん、そんな慌てた顔して」



まゆ「“どしたの?”ではありません。

   それ……絶対プロデューサーさんに使うおつもりですよね?」



志希「うん! プロデューサーには、いつもあたしの犠牲者――もとい、被験体(強制)になってもらってるから♪」







まゆ「…………」



志希「…………?」







まゆ「……いやいやいや、ダメじゃないですか、それ」



志希「え、何が? 志希ちゃん印の惚れ薬、効き目バツグンだよ?

   これを盛られたら最後、プロデューサーの脳下垂体からフェニルエチルアミンがどばー♪ って出て、

   瞳孔が開く頃には志希ちゃんにイチコロだから!」



まゆ「それがいけないんです……そんなの、恋じゃありませんっ」











志希「んー、志希ちゃん、化学的にはカンペキ! と思ってたけど……

   事務所でもっとも恋深き乙女・まゆちゃんに全否定されると、ちょっと自信が揺らぐなぁ」



まゆ「そもそも、志希さんって誰かに恋したことがあるんですかぁ?」



志希「無いね♪ 志希ちゃん、イロイロと手を出しては、3分で飽きてポイーしてきた悪い子だからっ」







まゆ「まったく……それで、なんで惚れ薬なんて作ろうと思ったんですか……」



志希「それがねー。あたし、今度自分の曲を出してもらうことになったんだけど……」



まゆ「ああ、『秘密のトワレ』ですね」



※『秘密のトワレ』歌:一ノ瀬志希(試聴) 税込¥720







志希「これはね……主人公の女の子――あたしが、なかなか振り向いてくれない男の子に恋してて、

   業を煮やしたあたしは、自分の匂いから媚薬をつくって、タランタラーン、それから

   ガッとやってチュッと吸って、ムズムズドキドキ、ハダカになっちゃおっかなー♪ って歌なんだ」



まゆ「それ……途中からササキトモコさんの曲を混ぜ過ぎですよ」













志希「せっかく、あたしのために素敵な曲をつくってもらったのはいいんだけど……

   ほら、さっき言った通り、あたしってラブとかそーゆーの、あまり深く考えたことなくてね」



まゆ「だから、曲に気持ちを込めるために、曲のマネをしてみたってことですか」







まゆ「まぁ、お仕事ならしょうがないですけど……

   いや、お仕事だからこそ、同じアイドルとして見過ごせません。

   恋愛についてそんな認識で、こんな難しいラブソングを歌うなんて……」



志希「じゃあさ、ここで一番恋愛に造詣のふかーいまゆちゃん先生が、

   志希ちゃんの『秘密のトワレ』のために、Love Lsesson! してくれないかな?」



まゆ「えー……ま、まゆが、人に恋愛を教えるなんて……」







志希「もちろん、タダとは言わないよ。あたしに付き合ってくれたら、この惚れ薬を進呈しちゃう♪」



まゆ「…………っ!」







まゆ「しょ、しょうがないですねぇ……恋愛初心者の志希ちゃんが、

   そんなキケンなお薬を持ってたら大変ですから、まゆが預かっておきます」



志希「やった、交渉成立♪」











まゆ「……きっかけはともかく、やるからには真面目にやりますよ。

   まず、志希ちゃんは、恋に落ちたらどうなってしまうのか……それを理解すべきだと思います」



志希「よく、恋の病とか言ったりするねー。具体的には?

   もし志希ちゃんが、ふぉーりんらぶ! しちゃったら、どーなっちゃうの?」







まゆ「そうですね……いくつかありますが……例えば。



  【一人でいると、決まってその人のことばかり考えて、会いたくてしょうがなくなる】



  ……なんてことになってしまうんですよ」



志希「わぁ、知ってる♪ 『エヴリデイドリーム』で聞いたよ!

  “まぶたの裏まで貴方だけ”だよね!」







まゆ「まゆは、自分の部屋に一人でいるときとか、

   特にプロデュ――そ、その人のことばかり考えてしまって。

   

   でも、会えなくて、寂しくて……

   そういうときは、その気持ちを日記につけて、心を落ち着かせてます……」



志希「んー、さすが、まゆ先生はレベルが高い……あたしは一人暮らしだから、

   けっこうな時間を一人きりで過ごしてるけど……

   実験に集中したりしてるときは、あんまりプロデューサーのことは考えてないねぇ」







志希「あ、でも。朝に目覚めのコーヒー淹れて匂い嗅いだときとか、

   プロデューサーのことが思い浮かぶようになったねぇ」



まゆ「? どうしてですか」



志希「この間、仕事前に寝坊しちゃって、プロデューサーが志希ちゃんのガレージまで起こしに来てくれたんだよー。

   で、そのときにモーニングコーヒー二人で飲んだから、それのせいかなぁ」



まゆ「あ、朝とはいえ、家で二人っきりになったんですか!?」







志希「ん? 待って……あたし、プロデューサーとは仕事とかで色んなところに行ったねぇ。

   レッスンルーム、ステージ、街中、海、桜並木、雪原……ほかにも、いっぱい。



   そこに行くたびに、場所の記憶がプロデューサーの匂いと一緒に、あたしの脳に焼き付いて……

   条件反射ってやつかなぁ、プロデューサーの匂いが鼻腔に蘇るようになっちゃってるよ」



まゆ「……志希さんは、一度嗅いだ匂いは絶対忘れませんものね……」



志希「ということは……このままプロデューサーとあちこち回ってたら、

   そのうちどこへ行くのにも、プロデューサーのコトがアタマから離れなくなっちゃうね……」







志希「それって、もしかして恋かな? 恋じゃない?」



まゆ「うっ…………そ、そうかも知れません……」











まゆ「で、でも! それだけじゃまだ足りません……

   恋をすると、女の子はまだまだ劇的に変わってしまうんですよ」



志希「なるほど……じゃあ、まゆ先生、第二の恋の条件は?」







まゆ「それは……【その人を幸せにすることが、最大の関心事になる】でしょうね」



志希「シアワセの、セキニン?」







まゆ「そうなんです……まゆは、プ――そ、その人を幸せにするのは、絶対にまゆであって欲しいです。

   そのためだったら、どんな努力も苦じゃありません。むしろ楽しくて仕方がなくなるんです」



志希「なるほど、だから“毎朝悩むコーデも、頑張って作るお弁当も”……」



まゆ「“全部全部、あなたの好み”なんです。その人に喜んでもらうためなんです」







志希「んー、あたしは朝が弱いからなぁ……髪だって、いつもロクに梳かしてないし」



まゆ(それであのヘアスタイルに髪がまとまるなんて、羨ましすぎます……)



志希「コーデだって、アイドルの衣装はともかく、私服は……

   実験ですぐに汚しちゃうから、めんどくさくていつも白衣だし……」



まゆ(コーデ……歌詞にはありますけど……

   プロデューサーさんは、志希さんがラフに着崩した服で肌を見せてると、鼻の下を伸ばしてます……

   結局は、中身が勝負になるんですよね……)







志希「あとは、お弁当か……アメリカ時代は、

   食べ物の匂いが合うの少なくて、仕方なく自炊してたけど」



まゆ「へぇ、そうなんですか……まぁ、志希さん、匂いや味には敏感そうですからね……」



志希「いやホント、何年経ってもあっちの味には慣れなくてさ……」







志希「志希ちゃん、生まれは岩手ね。三陸の海と山の幸で育った子だよ♪

   上京した今でも、昔食べた味が恋しくなる時があるんだ。東京と田舎でも違うし」



まゆ「それ、よく分かりますっ、まゆも仙台生まれですから……。

   地元にいるときは分かりませんでしたが、東京に来ると、色々と味が違いますよね」







志希「よし、じゃあ今度プロデューサーに、あたしの故郷の味をおごってあげよー♪

   味覚は嗅覚と同じくらいダイレクトに本能へ働きかけるからねー。

   美味しいものを食べさせて、プロデューサーのリビドーを満足させちゃおう!」



まゆ「…………あっ」













まゆ「いやいやいや、美味しいものを食べさせてあげたい……ってのは、いいことなんですが。

   それだけじゃ、恋とは言えません……友達同士でも、普通に思うことですし」



志希「ほうほう。一理あるね」



まゆ「じゃあ、最後に……恋でもっとも深く激しい感情について、話しておきましょう……。

   これが無ければ、恋とは言えません……そのぐらい重要な感情です」



志希「……そ、それは……?」







まゆ「それは……独占欲、です。



  【その人のことを独り占めしたい】と思うこと、です」







志希「ふっふー……“デートはいつも二人の世界――誰にも邪魔はさせないから”ってこと、かな?」



まゆ「もっと言えば……“あたしなしではもう――渇望も癒えずに”してしまいたくなるんです」







志希「…………」



まゆ「…………」











志希「まゆちゃん」



まゆ「……なんですか、志希さん」







志希「この惚れ薬……盛られると、具体的にどうなると思う?」



まゆ「……どうなるんですか?」







志希「この薬に仕込んだあたしのフェロモンを、鋤鼻器官に焼き付けて、

   いつもいつでも、あたしの匂いが嗅ぎたくて嗅ぎたくて仕方なくなるようにしちゃうんだ。



   独り占め、したくなっちゃうぐらいに」



まゆ「…………えっ、それって」







志希「まゆ先生、レッスンありがとっ♪ じゃ、プロデューサーで実験してくるねー」



まゆ「ま、待ちなさいっ、せめてその惚れ薬はこっちに――約束でしょう!?」



志希「ふっふー、それは無かったことに――恋のためなら“ずるいって言われてもいい”の!」













まゆ「……それを使ったら――絶対に後悔しますよ、志希さん」









志希「……へぇ、いやにキッパリと断言するんだね、まゆ先生?」



まゆ「これで最後です。志希さんが本当に恋へ落ちているなら、その惚れ薬を使っちゃいけません」







志希「理解できないなぁ……コレ、そんなにオカシイ?

   あたし手作りの素敵なプレゼントでしょう。



   この惚れ薬が……例えば、まゆちゃんがプロデューサーにマフラーや手袋編んであげたり、

   お弁当を作って食べさせてあげてるのと、何か違う?」







まゆ「じゃあ、聞きます……



   志希さんは……自分のニオイを、好きになってもらいたいのですか?」











まゆ「まゆは……違います。

   プロデューサーさんに、料理や編み物の腕前を好きになってもらいたいんじゃありません……

   まゆは……まゆの気持ちを……好きって気持ちを受け止めて、応えてもらいたいんです……っ」



志希「……好きって、気持ちを?」



まゆ「志希さんのそれは、本能の力で気持ちをねじ伏せて、有無を言わさず頷かせる代物です。

   文字通り心を奪ってしまうんです。心と心が通じ合うことは永久にありません――“もう戻れない”から。



   だから、それを使ったら、志希さんは後悔しますよ」







まゆ「そして、その後悔を理解できない内は、『秘密のトワレ』もモノにできないと思います。

   “清浄なる世界でキミとこうなりたかった”なんて、心から歌えないでしょう?」















志希「……まゆちゃん」



まゆ「なんですか?」







志希「約束通り、この惚れ薬をLove Lsessonの授業料として進呈するよ」



まゆ「……そうですか」



志希「もともと、『秘密のトワレ』をしっかり歌うために作ったものだからね。

   その意味では、これはもうお役御免だよ。予想とは違ったカタチで役立ってくれたけど」



まゆ「いい曲ですから、しっかりモノにしないと、もったいないですよ。

   可愛らしくて、セクシーで、だけどワガママで物悲しい恋の歌……」













まゆ「ところで……この惚れ薬を盛ると、志希さんのニオイ中毒になってしまうんですよね?



志希「うん、そーだよー」







まゆ「……これ、まゆがもらって、何に使えば良いのでしょうか……?」



志希「…………さぁ?」







まゆ「……フレデリカさんにでも、プレゼントしましょうか」



志希「待って、待ちなさいまゆちゃん。その薬は、製造者としてあたしの責任で破棄するから」



まゆ「冗談ですよ……志希さんも、まゆの言った意味が分かったみたいですね」







(おしまい)







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