2016年07月08日

あずさ「流離」


石畳の上を、こつ、こつと靴音を鳴らしながら歩く。

鈍色をした石畳の上に、所々赤や黄色い箇所。



イチョウやカエデの落ち葉ね。





道の両脇に、沢山の木々が並び立っている。

並木道の中はとても静か。



「ここは、どこなのかしら?」





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とても綺麗で穏やかな景色と空間だけれども、今、自分が立っているこの場所が判然としない。

なんとなれば車の音も聞こえない、右も左も分からないまま歩みを進めると、所々にしか無かったイチョウやカエデの落ち葉が、並木道を覆っている。

もしかしたらここは夢の中なのではないか。

そう思ったけれど、黄色や赤の絨毯を踏みしめる感覚が、夢でないことの証明だった。



暖色に包まれた空間を一人歩き続け、並木道を抜けると、一軒の旅館が。

誘われるように中に入り、まるで当然であるかのようにその旅館の温泉に浸かる。





露天風呂から外を眺めると、さっきまで黄色と赤だった景色は一変して、そこから見える景色は白銀の世界。

遠くに見える峰々は、雪化粧を施され、陽の光を浴びながらキラキラと輝いている。



そうしてしばらく景色を眺めて、冷たい外気と温かいお湯を楽しんだ後、旅館を後にした。



数歩進んでから振り返ると、旅館は影も形も見えない。

不思議に思いながらも、あてど無く歩を進める。

相変わらず、ここがどこなのかは分からない。





さっきまで気持ちの良い天気だったのが嘘のように、今は雪がチラついている。

いつの間にか着ていたコートの襟を立て、次第に強くなっていく雪の中、寒さに身を強張らせて歩く。

視界が雪で白く塗りつぶされたかと思ったら、次の瞬間には綺麗な青空に変わっていた。



雪を被った木の、枝に転々と桃色の花が付いている。



梅の花だった。



雪の中でも力強く、そして美しく花を開かせていた。

木を眺めながら歩くと、次第に雪はなくなり、代わりに梅よりも太い幹の木々が立ち並ぶ景色に変わる。



瞬間、少し強めの風が吹いた。

薄いピンクの花弁が、風に吹かれ、ヒラヒラと舞い始めた。



桜の花だ。





風に弄ばれるように花弁が宙に舞う。

その様に見とれながら、それでも足は自然と進んでいく。

どちらが前か後ろかも分からないのに。



桜吹雪を抜けた時、目の前には海が広がっていた。

雲一つない空に、燦々と太陽が辺りを照りつけている。





いつの間にか薄着になっていた私は、靴を脱ぎ、素足になって、波打ち際を、ぱちゃぱちゃと水音を聞きながら歩いた。

歩いていると、次第に空はオレンジ色に変わり、太陽は海へ沈んでいこうとしていた。

オレンジに染まる海、そこから空に向かうに連れて藍に染まり、天頂付近では濃紺に包まれている。

ぽつぽつと星も見え始めていた。



陽が沈みきると、満天の星空。

あれは、南十字星かしら?





すっかり暗くなった頃には、砂浜は終わり、気づけば街を見下ろす高台を歩いていた。



自然の灯りから、人口の灯りへ。



高台に設置された柵に手を置いて、そこで立ち止まった。

ふと、誰かに呼ばれた気がして、その場で背後へ振り返る。



「――――迎えに来てくれるって、信じてました……っ」



そう投げかけた相手に、私は微笑むのだった。













〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜













監督「はい、カーーーット!!」



あずさ「ふぅ……」



監督「あずさちゃん、良かったよ、いや良い画が撮れた!」



P「お疲れ様です!」



監督「おぉ、Pくん! いや〜、こりゃ良いCMになるぞ〜」



P「ありがとうございます!」





あずさ「お疲れ様です〜」



P「あずささん、お疲れ様です」



あずさ「プロデューサーさん、お疲れ様です」



監督「お疲れさん、あずさちゃん!」



あずさ「お疲れ様です〜、監督さん」



監督「いやホント良い画が撮れたよ! あずさちゃん様様!」



あずさ「いえ、そんな……」





監督「最後のセリフなんて、誰かに向けて言ってるみたいなリアリティがあったよ!」



あずさ「そ、それは……その……」



監督「わっはっは! それじゃあチェックしてくるから、休んでていいよ!」



あずさ「あ、お、お疲れ様です!」



P「良かったですよ、あずささん」



あずさ「そ、そうでしょうか?」





P「えぇ。最後のセリフなんて、思わずドキッとしちゃいましたよ」



あずさ「本当ですか?」



P「勿論!」



あずさ「そうですか……」



P「色んな景色を背景に立つあずささんが見られて、楽しかったですよ」



あずさ「私も、色々な場所でロケができて楽しかったです」





P「あずささんの迷子癖が、こんな形で仕事に繋がって良かったですよ」



あずさ「も、もぅ! プロデューサーさん!」



P「ははは、冗談ですよ。まぁでもJ◯の駅にも広告が出ますから、かなりの反響が期待できそうですね!」



あずさ「あの……プロデューサーさん」



P「どうしました?」



あずさ「……もしも私が、遠くへ迷子になっても……その……い、いえ、なんでもありまs」



P「迎えに行きますよ、どこにいても」



あずさ「えっ?」





P「だって俺は、あずささんのプロデューサーですから。どこに行っても、必ず探し出しますよ」



あずさ「プロデューサーさん……!」



P「はは、ちょっと、クサかったですかね?」



あずさ「ふふっ、そうですね」



P「ちょ、あずささぁん!」



あずさ「うふふ、ちゃ〜んと見つけてくださいね? 約束ですよ?」





おわり



22:30│三浦あずさ 
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