2016年08月10日

渋谷凛「誓いと秘密」

短いけど凛ちゃんお誕生日おめでとうSSだよ





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いつからだろう、プロデューサーに対してこんなことを思うようになったのは。



いくつもの通過点を越えるうちに私は……。

私が学校で不愛想だとか怖いだとか陰でいろいろ言われているのは知ってた、それを何とかしようともしていなかった高校1年の私。



ただ実家の花屋の手伝いをしながら家族と、愛犬と過ごしてた。



そんな私にいきなり声をかけてきた一人の男がいたんだ。



初めて見た時はさえないやつって思った。



それが私のプロデューサーへの第一印象。



そいつは、私にアイドルにならないかって聞いてきたよ。



意味わかんないよね、いきなり外で女子高生にそんなこと話しかけてたら完全に不審者だよ。



「いきなりなんなの」

「私がアイドルなんて冗談でしょ、だいたい興味ないし。」



そう言うつもりだった。





でもね、冗談みたいなことを言いながらそいつの眼だけは本物だったんだ。



真剣、真摯、そんな言葉が似合ってたんだよ。



だから私は言っちゃったんだ。



「いいよ、話ぐらいなら聞いてあげる。」

はあ、なんであんなこといっちゃったんだろ。



早速後悔し始めてた。



学校近くの喫茶店、高校生と向かい合わせで座るは30近い、お兄さんというよりは……おっさん。



明らかにアヤシイ組み合わせ。



まあそんなこと考えててもどうにもならないか、と思って話を促す。



「で、アイドルにならないかってどういうこと?」



なんで私をスカウトしたのか聞くと、ティンときたらしい。



「帰る」



そう言って帰ろうとすると、慌てて引き留められた。



「アイドルってあのステージで歌ったり踊ったりする仕事でしょ、そんなのいきなり言われても……」



曰く『キミならトップアイドルになる素質がある』らしい。



結局その日はアイドルの仕事について教えてもらって、家でゆっくり考えることにした。

家に帰っても、帰り際あいつに言われた言葉が頭から離れなかった。



自分の部屋のベッドの上、一番落ち着ける場所で復唱してみる。



「キミがやりたいことがあるならば、そっちを優先したほうがいいだろう」

「でももし何もないならば……私が城へと導く馬車になろう」



私が……やりたいこと。



今までやりたいことなんかなかった。



何かを必死にやったこともなかった。



部屋に入ってきたハナコを抱きかかえて呟く。



「ねえ、ハナコ……、私できるよね……」

翌日、同じ店にあいつを呼び出すとすぐに飛んできた。



暇なの? と聞いてしまったけど流石に失礼だったかな。



「アイドル、やってみるよ」

「私ならトップアイドル、なれるんでしょ」



私はそこでプロデューサーと誓ったんだ。



その時もプロデューサーは『灰かぶりを乗せたかぼちゃの馬車の行く先はお城だけだよ』なんていつも通りキザなセリフを言ってたっけ。



これが、初めの通過点。



“私がアイドルである理由”

そこからはまさに怒涛の日々だったよ。



レッスン漬けの毎日、DCデビューの後すぐライブ、またレッスン。



アニバーサリーなんていうのもやったね。



疲れて、クタクタのボロボロになっても、プロデューサーと2人だとなぜか何でもできる気がしたんだ。









3年。







そんな調子でいくつもの通過点を越えて3年間プロデューサーと二人三脚、必死に走ってきた。

そして運命のあの日。



私はシンデレラガールに選ばれた。



選ばれてしまった。



灰かぶりは城へとたどり着き、頂点に立ってしまった。



3年前のあの日に2人でたてたトップアイドルになるという誓いは果たされた。



そうしたら私とプロデューサーとの関係はどうなるの?



そんな風にわからなくなってしまう。



そんな時でもプロデューサーは、いつもと変わらずかっこつけて、『ただ新しい目標や夢を作ればいい、そうしたら俺はいつでも凛のプロデューサーだ』って。

きっとこの時、初めてプロデューサーに信頼以外の感情を持ってるって自覚したんだと思う。



そんなプロデューサーを少しからかってみたくてこういったんだよ。



「子供の頃の夢は……お花屋さんか、お嫁さん……なんて」



そしたらプロデューサー真っ赤になっちゃって。



照れてるプロデューサーもかっこよかったよ。



「行こうプロデューサー、これからが始まりなんだ。」



今日から私はプロデューサーのためのアイドルになろうって決めたんだ。



私が今、一番落ち着ける場所はプロデューサーの隣だから!

あれからさらに2年。



またいくつもの通過点を越えて、でもプロデューサーは5年前と同じように歌い終わってステージから戻るたび、笑顔で迎えてくれる。



まだ、2つ目の目標はかなえてもらっていないけど。



その目標をかなえるのは私もプロデューサーもやり切った時だっていう2人の暗黙の了解。





2人だけの大切な秘密。



アイドルをする理由がトップに立つことからプロデューサーのために変わっても、私はこう言うよ





「プロデューサー、明日からも走っていこうよ。ほら……どこまでも一緒に、ね」



23:30│渋谷凛 
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