2016年09月02日
友紀「夏祭り?」ありす「巴さんの関係者が屋台を出すそうです」
巴『東京に居るうちの系列で、若い衆が出るらしくてな』
巴『良かったら行ってやってみてくれんか』
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《某夏祭り会場》
ガヤガヤ
友紀「……って訳で来てみたけれど」
ありす「凄い人出ですね……」
友紀「これじゃ、歩いてる時にはぐれちゃいそうだね。手でも繋ごうか?」
ありす「結構です。私はそこまで子供ではありません」
友紀「もー、可愛くないんだから」
友紀「……んー、でも、思ってたよりフツーの夏祭りなんだね」
ありす「え?」
友紀「巴ちゃんの関係者だから、怖い要素があるのかと……」
ありす「『巴さんの父親の会社の人』に何か怖い要素があるんですか?」
友紀「あー……ごめん、何でもないよ。行こう」
ありす「?」
ありす「何処の屋台を見ましょうか」
友紀「そうだねー、あたしならまず……」
パァン
友紀「……」
ありす「何でしょう、今の。そこの茂みの奥から聞こえましたが」
友紀「……誰かがねずみ花火でも使ったんじゃない?」
ありす「ねずみ花火って何ですか?」
友紀「えっとね、火を付けるとクルクル回って時々音を立てて破裂する、地面を這う花火なんだけど」
ありす「へえ……パァンって音が出るんですか?」
友紀「そうそう、だから今の音もきっとねずみ花火の音だよ。さ、ここから離れてあっちに行こうか!」
【射的】
ありす「何で最初に射的をやるんですか……景品がかさばるじゃないですか」
友紀「景品にねこっぴーのぬいぐるみがあるからね。誰かに取られる前に取らないと!」
店員1「まいど。それじゃあそっちの銃から好きなのを選んでくれ」
友紀「はーい。さて、どれを選ぼう……」
友紀「……」
ありす「どうしました?」
友紀「……随分、精巧なおもちゃだと思って……」ガチャ
ありす「私にはよく分かりませんが」
友紀「しかもズッシリ重い……」
ありす「リアル志向のお店なんですね」
友紀「そ、そうなのかな。じゃあこの鉄砲で……」
店員1「じゃ、弾を込めるから待っててくれよ」
友紀「よし……準備完了!」
ありす「頑張ってください」
友紀「へへ、球(弾)のコントロールには自信があるからね……よーくねこっぴーを狙って……と」
友紀「えいっ!」カチャ
バァン
友紀「あ……」
店員1「一発で大当たりー!はい、こちらが景品のねこっぴーぬいぐるみ」
友紀「わぁ、胸に穴が開いててかわいい……」
店員1「ワンポイントのオシャレってヤツだ。大切にしてくれよな!」
ありす「友紀さん、意外な才能があるんですね」
友紀「あいたた……」
ありす「……腕、痛めたんですか。今ので……?」
友紀「張り切りすぎちゃったかなー。しばらく待てば大丈夫だよ……あはは」
【輪投げ】
店員2「これが輪です。一回につき10個までですよ」
友紀「これもまた立派な金属製で……」
ありす「不思議なデザインの輪ですね。何故鍵穴が付いているんでしょう?」
ありす「この輪……二つセットの姿でどこかで見たような……」
友紀「ありすちゃん、そろそろ別の屋台に行ってみようか」
【かき氷】
ありす「私はイチゴシロップでお願いします」
友紀「じゃああたしもイチゴで」
店員3「あいよッ、イチゴ二つね」
ありす「えっ、同じのにするんですか?」
友紀「広島(赤)を食うって縁起を担いでね、だからイチゴ!」
ありす「それじゃあ交換して別の味が楽しめないじゃないですか……」
ありす「……あれ?」
友紀「何かあった?」
ありす「屋台の奥に、シロップの瓶がたくさん置いてあります」
友紀「……イチゴが人気なんだろうね。だからたくさん用意してあって……」
ありす「あのあたりの瓶のイチゴシロップは他と違って赤黒いですね。別のシロップなんでしょうか?」
友紀「……ト、トマト味のシロップなのかな」
店員3「はい、イチゴ二つお待ちィ!」
☆
友紀「ふぅ〜………」
ありす「これで、大体見て回ったでしょうか」
友紀「うん…….色々あったね。もうそろそろ帰らない……?」ゲッソリ
ありす「では、最後にクジでも引いて終わりましょう」
【クジ引き】
友紀「でもお祭り屋台でのクジ引きって、胡散臭いよ。当たりの確率とかすごく低いんだろうし」
ありす「ええ、ですから運試し程度に一回……ん?」
《一等:イチゴパスタ用イチゴ味スパゲティー》
《二等:○○》
《三等:□□》
……
ありす「……」
友紀「……お金貸そうか?」
ありす「いえ、自分の手持ちで限界まで引いてみたいと思います」
店員4「はい、ハズレ」
ありす「もう一回お願いします」
店員4「はい、十等」
ありす「もう一回……」
友紀「……」
友紀「ありすちゃん、そろそろ止めようよ。六等より上が全然出ないんだし、一等は当たらないって」
ありす「いえ、まだお金は尽きていません。それに、そろそろ『流れ』が来るはずなんです」
友紀「えぇ……」
ありす「こいこいシンデレラでもそうでした。長い負けを耐え忍んだ後に必ずチャンスが……」
友紀「ありすちゃーん、こっち側に帰ってきて」
ありす「勝負師橘としてここは退けません。さぁ、お願いします!」
店員4「四等!お嬢ちゃん、いい引きしてるねぇ」
ありす「来ましたね、『流れ』が。では、もう一回……」
パァン
ありす「……?」
店員4「……ふぅ。お嬢ちゃん、ちょいと待っててくれんか?野暮用が出来ちまってな」
ありす「え、はい……」
ありす「……」
友紀「あれ、店員さん何処に行っちゃったの?」
ありす「急用が出来たらしいです。すぐに戻るらしいですが……」
バァン
ギャァァァァァ
友紀「……」
ありす「……今の音は?」
友紀「え、ええっと、あれは……」
ヒュルルルルル
ドーン
友紀「!……もう花火の時間だったんだ」
ありす「なるほど、花火の音でしたか」
友紀「そうだね、花火の音だったんだよ……」
ヒュルルルルルパァンルル
ドーン
友紀「……あの花火、キレイだね」
ありす「ええ、本当に……美しいです」
店員5「あーっ、お客さん、待たせちゃってすみません!」
ありす「……先ほどの店員の方は?」
店員5「ちょっと、交代しましてね……」
友紀「……」
店員5「ここからは私が引き継ぎます。さぁお客さん、次のクジいきましょうか」
ありす「そうですか。では再開の一回を……!」
店員5「出ました!一等!イチゴパスタ用イチゴ味スパゲティ」
ありす「友紀さん!やりました!当てましたよ!!」
友紀「うん、おめでとう……」
ありす「残金ギリギリでしたが、粘った甲斐がありました」
店員5「はい、こちらがスパゲティーです。お帰りの際はくれぐれも『気をつけて』!」
友紀「あっ……」
☆
巴「どうじゃ、夏祭りは楽しめたかの?」
ありす「はい。いろいろな屋台を回れましたし、クジでも一等を引けて最高でした」
巴「ほうか、それなら良かった」
ありす「クジを引く瞬間なんか、指先の感覚でピーンと来たんですよ」
巴「ありすはギャンブラーの素質があるかもしれんな」
友紀「うぅ……怖い……怖いよぉ……」
巴「しかし友紀はどうしたんじゃ、さっきからずっとこんな調子で」
ありす「昨日の夏祭りで怖いものを見たらしいですよ」
巴「ほぉ……」
ありす「私は何も見なかったのですが」
巴「幽霊でも見たんじゃろうか」
おしまい。
21:30│姫川友紀