2016年11月10日
まゆ「朋さんと風邪」
朋「……」
朋「……は」
朋「はくしゅんっ!」
朋「……は」
朋「はくしゅんっ!」
朋「……あー」
朋「まさか風邪ひくなんて……」
朋「……うー……やっぱあたし不幸かも」
朋「はぁ……」
朋「……くしゅんっ」
朋「あー……もうっ!」
朋「すぐに風邪が治るような風邪薬でもあればいいのに!」
朋「……」
朋「……あーあ」
朋「……」
朋「……もー……なんか寝ようにも寝れないし……」
朋「……」ピンポーン
朋「……ん?」
朋「誰だろ……」
朋「よいしょ……ふぅ、風邪だと体を動かすのもだるいわ」
朋「はーい!」ガチャ
まゆ「うふ……こんにちは、朋さん」
朋「あ、まゆちゃん。こんにちは」
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朋「今日はごめんね、一緒にレッスン出来なくて」
まゆ「いえ、風邪ですからしかたないです」
朋「うん……最近温度差が激しかったし……やられちゃったみたい」
まゆ「そうですねぇ……暑かったと思ったら急に寒くなったりしますし」
朋「ねー」
まゆ「……調子はどうですか?」
朋「……まあ元気よ」
まゆ「そうですか。それは何よりで――」
朋「――っくしゅん!」
まゆ「……」
朋「……」
朋「……あ、あはは」
まゆ「体の方はまだまだ元気じゃないみたいですねぇ」
朋「う……」
まゆ「……立ち話も辛いでしょうし、お邪魔していいですかぁ?」
朋「あー……でも、あたし今風邪だから――」
まゆ「――うふふ、大丈夫です。ちゃんとマスク持って来ましたから」
朋「……用意周到ね」
まゆ「このために来たようなものですから」
朋「へ……?」
まゆ「うふ……今日はまゆが朋さんを看病しちゃいます♪」
朋「ちらかってるけど、どうぞ」
まゆ「うふふ……どうも」
朋「あー……ちょっと片付けとけばよかったかも」
まゆ「病人は安静にしてなきゃダメですよぉ」
朋「わかってるわよ……さっきまで寝てたし」
まゆ「あら……じゃあまゆが起こしちゃったんですか?」
朋「あ、ううん。起きてたわよ」
まゆ「?」
朋「とりあえず風邪薬飲んで、寝て――で、目が覚めて。もっかい寝ようと思っても寝れなくて」
朋「仕方なくゴロゴロしてたらまゆちゃんが来たの」
まゆ「うふ、ちょうどいいタイミングだったんですねぇ」
朋「ふふ、そうね」
朋「……ごめん、まゆちゃん。また寝転がってもいい?」
まゆ「もちろんです」
朋「ん、ありがと」
朋「……ふぃー」ゴロン
朋「……っくしゅ」
まゆ「やっぱ立ち上がるの辛いですかぁ?」
朋「まあねぇ……」
朋「さっき測ったけど、熱あったし……ちょっとふらふらする感じ」
まゆ「あら……」
まゆ「……立ち上がらせちゃってごめんなさい」
朋「別に謝ることないわ」
朋「まゆちゃんが来てくれた嬉しさに比べたら立ち上がる労力なんて無いようなもんだしね、ふふっ」
まゆ「……うふふ、よかったです♪」
まゆ「飲み物持ってきたんですけど、飲みますかぁ?」
朋「あ、うん。もらうわ」
まゆ「うふ、どうぞ。スポーツドリンクです」
朋「ありがと……んくっ」
朋「……ぷはぁ」
朋「はぁ……スッキリするわ……」
まゆ「おかわりもありますよぉ」
朋「や、そんなに飲んだら水っ腹になっちゃうからいいわよ」
まゆ「うふ、冗談です♪」
朋「ふふっ」
朋「いやー……風邪ひいちゃうと、立ち上がるのも辛いし、まして買い物なんていけないし……」
朋「だからありがとね、まゆちゃん」
まゆ「いえいえ」
まゆ「……そうだと思って他にもいろいろ買ってきたんです」
朋「いろいろ?」
まゆ「はい。たとえば……えっと……ほら、りんごです」
朋「わっ!」
まゆ「食べますか?」
朋「食べる!」
まゆ「じゃあ包丁借りますねぇ」
朋「んー」
まゆ「お待たせしました」
まゆ「一口サイズにするのに少し時間かかっちゃいました」
朋「ううん、ぜんぜん待ってないわよ」
朋「ありがと」
まゆ「いえいえ……♪」
まゆ「……さて」
朋「……?」
まゆ「朋さん」
朋「えっ、何、急に改まって……?」
まゆ「少し起き上がってもらえますかぁ?」
朋「あ、うん……寝転がったままだと食べれないもんね」
朋「よい……しょっと」
まゆ「ありがとうございます」
まゆ「それでは――あーん」
朋「……へ?」
まゆ「……むぅ」
まゆ「口を開けてくれないと食べれませんよぉ?」
朋「あ、うん……あーん」
まゆ「どうぞ♪」
朋「あむっ」
朋「……ふふ、おいしい」
朋「でも……」
まゆ「でも?」
朋「や……あたし一人でも食べれるわよ」
まゆ「病人は安静にしていなきゃです♪」
朋「……」
まゆ「うふ……まゆが看病しますから、至れり尽くせりになってください♪」
朋「……んー」
まゆ「うふふ……朋ちゃん、もうひとつ食べますか?」
朋「……うん」
まゆ「あーん」
朋「……あーん」
朋「あむっ……」
朋「……でも、本当おいしいわ」
まゆ「そうですかぁ……?」
朋「まゆちゃんが作ってくれたからかもね」
まゆ「まゆは切っただけですけど……」
朋「あ、そっか……」
まゆ「うふふ……でも嬉しいかも」
まゆ「もうひとつ食べますかぁ?」
朋「んー……」
朋「じゃ、後ひとつだけ」
まゆ「はぁい♪」
朋「ふぅ……ご馳走様」
まゆ「お粗末さまです♪」
朋「はぁ……だいぶ楽になったわ」
まゆ「うふ、よかった……」
まゆ「後は……」
まゆ「汗かいたりしてませんか?」
朋「んー……今はそんなでもないから大丈夫」
まゆ「そうですかぁ……」
朋「……いや、そんな顔しても汗かいてないもんは汗かいてないからね」
まゆ「……どんな顔してました」
朋「一言でいうなら『残念』って感じだった」
まゆ「あら……」
朋「……もっと、重病にかかってた方がよかった?」
まゆ「あっ……い、いや、別にそういうわけじゃ……!」
朋「あははっ、冗談よ!」
まゆ「えっ……?」
朋「ふふっ、そんな勢いよく否定しなくたってわかってるわよ、もう」
まゆ「あ……か、からかったんですね……!」
朋「いくらなんでもあわてすぎよ、もう」
まゆ「むぅ……!」
まゆ「……でも、からかえるほどには元気みたいで、よかったです」
朋「まゆちゃんが来てくれたからよ。きっと」
まゆ「あら、嬉しい……」
朋「ふふ、ほんとよ」
朋「……けど、ごめん」
まゆ「?」
朋「せっかく来てもらったのにまた眠くなってきちゃった……ふぁ」
まゆ「……なんだ」
まゆ「それくらいならぜんぜんいいですよ」
まゆ「いっぱい寝て、早く治してください……うふ」
朋「……そうね」
朋「ありがと、まゆちゃん」
まゆ「うふふ、お休みなさい、朋ちゃん」
朋「うん……」
朋「……あ、でもその前に」
まゆ「?」
朋「まゆちゃんも帰るでしょ?」
朋「見送るわ……鍵閉めないとだし」
まゆ「……まゆ、帰りませんよぉ?」
朋「……へ?」
まゆ「朋さんの看病するって決めてましたから」
まゆ「だから……朋さんがぐっすり……気持ちよく眠れるまではここにいるつもりです」
朋「……そしたら、まゆちゃんどうするの?」
まゆ「そうですね……この部屋を開けっ放しにすることもできませんし」
まゆ「朋さんのことずっと見てます♪」
朋「いやいや……」
朋「……まゆちゃんだって、風邪うつっちゃうかもしれないじゃない」
まゆ「まゆにはこのマスクがあるので大丈夫です」
朋「マスクへの信頼高いわね……」
まゆ「……ダメですかぁ?」
朋「……」
朋「……」
朋「……わかった」
まゆ「!」
朋「どうせ、まゆちゃん頑固だし……あきらめないだろうし」
朋「だったら……うん、いいわよ」
朋「まゆちゃんがいいっていうなら……」
まゆ「うふ、ありがとうございます」
朋「お礼を言うのはあたしのほうよ」
朋「……ありがとね、まゆちゃん」
まゆ「いえいえ」
朋「それじゃ、おやすみ」
まゆ「うふ、おやすみなさい」
まゆ「……子守唄歌いましょうか?」
朋「いや、それはいらない」
まゆ「あら……」
朋「……」
朋「……でも」
まゆ「?」
朋「ちょっと……手、握ってくれる?」
まゆ「……はい、もちろん」
朋「ん……ありがと」
まゆ「……」
朋「……ねぇ」
朋「風邪って心細いわね」
まゆ「……」
朋「あたし……ちょっと……ううん、だいぶ、寂しかった」
朋「だから、まゆちゃんが来てくれて、本当に嬉しくて」
朋「今だって、帰さないといけないのに、残るの許可しちゃって」
朋「でも、嬉しくって……嬉しくって」
まゆ「……」
朋「……風邪ひいちゃったらごめんね、まゆちゃん」
朋「そのときはあたしが看病するね……」
まゆ「うふ……楽しみにしてますねぇ」
朋「いや、楽しみにしちゃだめでしょ……」
まゆ「……そうでした」
朋「ふふっ」
朋「……でね、嬉しくて、まゆちゃんがいることが嬉しくて」
朋「だから……手、繋いでてくれると嬉しいな……」
まゆ「……ええ。ずっとつないでます」
朋「そっか……ありがと」
朋「ふふ、安心して寝れそう……」
まゆ「それならまゆも看病しにきたかいがあります……うふ♪」
まゆ「……それじゃあ、朋さん、おやすみなさい」
朋「ん、お休み」
朋「……」
朋「……」
まゆ「……」ナデナデ
朋(……あ)
朋(心地いい……ふふ)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
朋「……すー」
まゆ「……うふ」
まゆ(ぐっすり眠ったみたいですねぇ)
まゆ(このまま風邪も治ってくれるといいんですけど……)
まゆ「……」
まゆ(……気持ちよさそうに眠ってますねぇ)
まゆ「……」
まゆ「……」ナデナデ
朋「ん……っ」
まゆ「!」
まゆ(いけない……あまり触ると起こしちゃうかも)
まゆ(せっかくぐっすり眠ってるんだから、このまま……)
まゆ「……」
まゆ(……でも、すごいですねぇ)
まゆ(こんなにぐっすり眠ってるのに)
まゆ(まゆの左手と朋さんの左手……ぐっとつながれたままです)
まゆ(……いえ、まゆもぎゅっと握ってるんですけど)
まゆ(朋さんもぎゅっと……)
まゆ(……)
まゆ(これじゃ、帰ろうと思っても帰れませんね……)
まゆ(うふ……朋さん子供みたい……かわいい……♪)
朋「すー……」
まゆ「……」
まゆ「……」ナデナデ
朋「んぅ……」
まゆ(あら、いけない……)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
朋「……ん」
朋「ふぁ……」
まゆ「うふ、おはようございます。朋さん」
朋「おはよ、まゆちゃん……」
朋「……あれ、まゆちゃん?」
まゆ「調子はどうですかぁ?」
朋「結構楽になったけど……」
朋「んー……あ、そっか」
朋「看病してくれてたんだっけ」
まゆ「はい」
まゆ「うなされることもなく、ぐっすり眠っていたみたいで……よかったです」
朋「うん……ほんとにぐっすり寝ちゃった……」
朋「まゆちゃんがずっと手を握ってくれてたからかも」
まゆ「うふ……♪」
朋「……ほんとに握っててくれたのね」
まゆ「約束しましたから」
まゆ「朋さんの寝顔見るの楽しかったです」
朋「……うー」
朋「恥ずかしいわ……」
朋「っていうか、思い出した! あたし、寝る前すっごく恥ずかしいこと言った気がする!」
まゆ「そんなことないですよ」
まゆ「朋さんの本心が聞けましたし」
朋「それが恥ずかしいことなのよ!」
朋「あー……もー……」
朋「ねぇ、あたしどんくらい寝てたのかな?」
まゆ「えっと……2,3時間くらいですかね」
朋「あ、そんなもんなのね……」
朋「なんか、もっと寝てた気分」
まゆ「うふ、それだけ良い睡眠が出来たんですね」
朋「そうかも――」グウゥ
朋「……あ」
まゆ「うふ……お腹が空いたから起きちゃったのかもしれませんね♪」
朋「……仕方ないでしょ。朝から食欲無くて、あんまり食べてないのよ」
まゆ「まあ病気の時は食欲なくなりますし……」
まゆ「……あら、ということは今は……」
朋「……お腹空いたしなんか食べたいわよ」
まゆ「そうですか……うふふ」
まゆ「食欲も戻ったみたいですし……もう少しで元気になりそうですね」
朋「うん、明日にはもう治ってるわ、きっと」
まゆ「それなら明日は一緒にレッスンできそうですねぇ」
朋「そうね」
朋「……今日の遅れも取り戻さないとだし、明日は大変かも」
まゆ「うふ、そうかもしれませんね」
まゆ「……さて」
まゆ「朋さん、どれくらい食べれますか?」
朋「ん……まあ、普通くらい……?」
まゆ「普通……わかりました」
朋「……もしかして、まゆちゃん、ご飯作ってくれるの?」
まゆ「はい……材料もちゃんと用意してます♪」
朋「……ほんと、用意周到ね」
まゆ「うふふ……今から作りますから待っててくださいねぇ」
朋「ん、待ってる」
朋「……ふふ、風邪ひいて得しちゃったかも」
まゆ「うふふっ」
まゆ「まゆも、色々得しちゃいました♪」
朋「もう……」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
朋「ご馳走様でした」
まゆ「うふ、お粗末さまでした」
朋「美味しかったわ、まゆちゃん」
まゆ「うふ、嬉しい……」
朋「ふふっ……ふわぁ……」
まゆ「……また、眠気ですかぁ?」
朋「うん……」
朋「……食べてすぐ眠くなるなんて……あたし牛になっちゃったかも」
まゆ「牛居朋ちゃんですね、うふ」
朋「何よそれ……ふふっ」
朋「……んじゃ、あたしもう一眠りするね」
朋「今寝て、次起きたら体調がバッチリになる気がするの」
まゆ「わかりました」
まゆ「じゃあ、まゆはまた手を……」
朋「いや、今度こそ帰らなきゃでしょ」
朋「あたしのわがままでここにいさせちゃったけど……ほんとにまゆちゃんにうつっちゃうし」
まゆ「マスクがあるから――」
朋「――それでもダメ」
まゆ「あら……」
朋「……たぶんあたし今寝たら朝まで起きないし」
朋「明日もレッスンあるんだから、まゆちゃんもちゃんと寝なきゃ」
まゆ「……」
朋「……あたしならまゆちゃんのおかげで元気になったからさ、だいじょーぶ!」
朋「だから、ね?」
まゆ「……」
まゆ「……わかりました」
まゆ「まだ少し不安ですけど……ちゃんと薬飲んでくださいね」
朋「わかってるわよ、もう……」
朋「……まゆちゃんはあたしのお母さんなの?」
まゆ「お姉ちゃんです♪」
朋「お姉ちゃんはあたしよ!」
まゆ「それでは、今日はこれで失礼しますねぇ」
朋「うん。今日はほんとにありがとね」
まゆ「いえいえ……あ、最後に」
朋「ん?」
まゆ「明日、元気になったら一緒にレッスン場まで行きましょう?」
朋「もちろんオッケーよ!」
まゆ「よかった……」
まゆ「じゃ、時間は――くらいでいいですか?」
朋「ん、わかった」
まゆ「うふ……それではお大事に、朋さん」
朋「ありがと。まゆちゃんもあたしの風邪うつっちゃダメよ」
まゆ「マスクがあるので大丈夫です♪」
朋「ふふっ、その信頼はほんとに何なのよ、もう!」
まゆ「うふふっ」
朋「……それじゃ、また明日」
まゆ「はい、おやすみなさい♪」
朋「おやすみー」
朋「……」
朋(……まゆちゃんがいなくなって、ちょっとだけ寂しくなったけど)
朋(でも、もう大丈夫……)
朋(……ふふっ)
朋(ほんとにまゆちゃんが風邪ひいたら、しっかり看病してあげよっと)
朋(あたしがもらった分だけ……ううん、それ以上に!)
朋「……ふわぁ」
朋(……そのためにもまずは元気にならなくちゃね)
朋(だから――)
朋「……」
朋「……」
朋「すー……」
おしまい
おまけ
〜翌日〜
朋(朝起きたらすっかり体調が良くなってた)
朋(これもやっぱりまゆちゃんの看病のおかげかも、ふふっ)
朋(ってことで、約束通りまゆちゃんを待ってるんだけど……)
朋「……まゆちゃん来ないわね」
朋(連絡しても『大丈夫です』としかこないし……)
朋(……すっごい心配)
朋「……」
朋「……もっかい連絡し――」
まゆ「――おはようございまふ」
朋「あ、まゆちゃんおは……」
まゆ「おくれてひまっへごめんなひゃい……ともしゃん……」ペコリ
朋「まゆちゃん」
まゆ「ひゃい……?」
朋「帰るわよ」
まゆ「へ……?」
朋「ああもうっ、完全にあたしの風邪うつってるじゃない、これ!」
朋「だから、うつるって言ったのに……!」
朋「なんならあたしのよりひどいし!」
まゆ「まゆはだいじょうぶでひゅよぉ……?」
朋「鏡見てから言いなさいよ!」
朋「とにかく、帰るわよ、まゆちゃん!」
まゆ「でも、れっしゅんに――」
朋「――そんな状態でレッスンできるわけないでしょ!」
朋「帰って、薬飲んで、ゆっくり寝なさい!」
朋「あたしが看病するから!」
おしまい