2016年12月27日

及川雫「もぉーっとちゅー」

「……ねぇ、雫」



「はいー。なんでしょうー?」



「なんだかんやでこうして潜っちゃったわけだけど……今日も、その、これで?」





「もちろんこれで、ですよー」



「そっかぁ」



「はい。初めての時から、この前も、昨日も、ずっとずうっとこうしてきましたしー。今日も、このままでいたいですー」



「まあうん、確かに初めの時からずっとこうだけれども」



「プロデューサーさんは、私とこうしているの、嫌ですか?」



「や、嫌とかじゃないよ。ないんだけどさ」



「えへへ、それなら良かったですー。私も、プロデューサーさんとこうしていられると、とぉーても嬉しいですから」



「雫が喜んでくれるのは嬉しいよ。……ただ、ちょっと」



「? なんですかー?」



「いや、今日はいつにも増して近いなーというか。くっついてるなーというか、抱き締められてるなーというか」



「駄目でしたかー?」



「駄目というか」



「でも、こうしてぎゅうーってすると幸せですよー? 気持ちよくてー。心地よくてー」



「まあ、幸せなのは幸せかなーとも思うけど」



「でしょうー? 私、プロデューサーさんとこうしていると、とってもとぉーっても幸せになれるんです。胸がとくんとくんしてー。お腹の奥がぽかぽかしてー。ほっぺがゆるゆる緩んだりー。ちょっと熱いくらいあったかくて、いっぱい幸せなんですー」



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「……そっか」



「はいー。……えへへ、だから、もぉーっとぎゅうってしちゃいますっ」



「んっ、雫……」



「あ、ごめんなさい。強かったですか?」



「いやそれは……それは、大丈夫」



「なら良かったですー」



「でも、こう、近いね?」



「? さっきからずうっと近いですよー?」



「それはそうなんだけど。ほら、顔が、さっきよりも」



「顔、そうですねー。同じ枕の上に乗って、ぴたーってくっついちゃいそうなくらい、近くです」



「近くになるのはいいんだけど、これはちょっと近すぎない?」



「駄目でしたかー?」



「まあ、うん、できれば」



「……分かりました」



「ごめんね」



「いいえー。……でも、だから、それなら」



「?」



「えいっ」



「ん、わっと……ちょ、雫?」



「えへへ。プロデューサーさんの髪、ちょっと固くて、でも撫で心地がよくて……私、これ、大好きですー……」

「えっと……あの、そんなふうに頭を抱えて撫でられてると」



「動けませんかー?」



「ん、うん」



「そうですかー。……ふふ、それならずうっとこのままですー」



「え、いや」



「こうしていれば、ずうっともぉーっと近くにいられますからー。プロデューサーさんと、たくさんたーっくさん」



「……離れてくれるんじゃ?」



「ごめんなさい。……でも、プロデューサーさんも本当に嫌がっていたわけではなさそうでしたしー」



「それは」



「お父さんとお母さんから言われたんです。本当に嫌がられているわけでなければ、私がそうしたいと思うことをもっともぉーっとお願いして叶えてもらいなさいーって。そうすればきっと、そのお願いがプロデューサーさんとの毎日になるからーって。……今、こうして同じ布団の中にいられているみたいに」



「……なるほど。雫の実家へ来る度、毎回こんなふうに寝床の用意がされてたのはあのお父さんとお母さんの……」



「はいー。プロデューサーさんとは長い付き合いになるから、ちゃあんと仲良くするようにーって言ってくれてー。……えへへ、おかげでこぉーんなに仲良しさんですー」

「仲良し。……仲良しかー」



「そうです。仲良しですー。だって私、プロデューサーさんのことこぉーんなに好きで、とぉーっても大切で、いっぱいいーっぱい大好きですからー。……プロデューサーさんも、私のこと、大好きだーって言ってくれましたよねー?」



「それはうん。雫のことはまあ、大切なアイドルだし、好きだけど」



「ふふ、ありがとうございますー。大好きと大好きで、私とプロデューサーさんはとぉーっても仲良しさんですー」



「そうだね。仲は……ちひろさんに釘を刺される程度には良好なのかなぁ」



「ちひろさんですかー。私、ちひろさんも大好きですー。優しくしてくれますしー。たくさん誉めてくれてー」



「まあ良い人だからね。それに、誉めてもらえるのは雫が良い子で頑張り屋さんだからだよ」



「そうですかねー?」



「そうだよ。……いつも明るくて、皆のことを気遣って、心の底から一生懸命で。本当、頑張り過ぎなくらい頑張り屋さんなんだから」



「そうですかー。でも、もしそうなら、それはプロデューサーさんのおかげなんですよー?」



「僕の?」



「はいー。プロデューサーさんはいつも私のことを見守っていてくれますしー。プロデューサーのことを考えると、もぉーっと頑張ろうって思えてー。プロデューサーさんが傍にいてくれるから、私はこんなふうでいられるんですー」

「……そっかぁ」



「んっ……プロデューサーさん……?」



「ごめんね、嫌だった?」



「……そんなわけありません。嬉しくて、ドキドキで、幸せに決まってますー……。こんなふうにプロデューサーが抱き締め返してくれて、背中を優しく撫でてくれて……ぽわぽわして、幸せですー……」



「そっか、良かった」



「えへへー……」



「……」



「……えへ。でも、それならー……プロデューサーさん」



「うんー……?」



「ん……ちゅー……ですー……」



「っ、雫」



「えへへー」



「……もう、いきなりどうしたの」



「お返し、ですー。プロデューサーさんが私のことを抱き締めて撫でてくれたから、そのお返しに、満足のちゅーですよー」



「満足の?」



「はいー。前にお母さんが『キスにもいろんな種類があるの。ちゃんと知っておけば、プロデューサーさんに喜んでもらえるわよー』って教えてくれたんですー。だからプロデューサーさんに、私はとぉーっても嬉しくて大満足ですーって満足のちゅー。ほっぺにちゅー、ですー」



「お母さん……」

「……あ、でもー」



「ん?」



「いっぱい満足で大満足でしたけどー。でも、もっともぉーっと欲しいのでー」



「ので?」



「……えへへ。……もぉーっとちゅー、ですよー……」



「んっ……」



「ちゅー……ん、むゅ……んー……」



「……雫」



「あ。っ……えへへー……喉に『まだ足りません』の欲求のちゅーとー。お耳に『もぉーっとしてください』の誘惑のちゅー、ですー」



「喉と、耳と?」



「はいー」



「雫?」



「……えぅ、ごめんなさい。あと、その……唇にも、愛情のちゅー……したいなぁ、って思ってー……」

「それは……まあ今までのこのこれもあんまり駄目は駄目なんだけど……でも、それは本当に駄目、でしょ?」



「……はいー」



「雫はアイドルなんだから。……それは、そんなに想ってもらえて嬉しくはあるけどさ」



「っ、えへへー」



「うわっ、と。……もう、ちょっと強いよ」



「ごめんなさい。でも、……えへへー……嬉しい、って……えへ、嬉しいですー……」



「もう……ん、足まで絡めて……」



「嬉しくて、とぉーっても嬉しいですから……だから、もぉーっと……」



「ん。……んっ」



「えへへ……もっと、もぉーっとちゅーですー。……髪にもー額にもー。瞼にもお鼻にも。耳にも、ほっぺにもー。プロデューサーさんが許してくれるところには、ぜんぶ、ぜーんぶ、ちゅーするんですー……」



「それはまた、まあ……」



「プロデューサーさんも嫌だとは思わないでいてくれるみたいですしー……それなら、私がしたいなーって思うことをたくさんしよう、って」



「嫌は、まあそうだけど……ほどほどにしてくれると助かるかなぁ」



「はいー。ほどほどに、いっぱいいーっぱいしますねー」



「や、その……んー……」



「えへへ……私、大好きです……。ずっとずうっと大好きで……もっともぉーっと大好きになります……。だーいすき、ですよー……私の、プロデューサーさん……」



22:30│及川雫 
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