2017年01月17日

十時愛梨「炬燵へ潜ってぎゅうっとちゅうっと」

「……プロデューサーさん」



「ん……何、どうしたの……?」



「いえ、えっと、用みたいなことは特に何もないんですけど……その、ちゃんと居てくれてるかなーって思って」





「居てくれてるか、って……こんなに近くで、こんなにくっついて、こんなに抱き締めあってるのに?」



「こんなにしてるのに、です。……目の前には、もうそれしか見えないくらいプロデューサーさんの顔が見えて。濡れた吐息の焼けそうな熱さまで感じられるくらいくっついてて。固さも柔らかさも何もかも、心地よく伝わってくる心臓の音まで分かるくらい抱き締めあってて。……でも、それでもです。だって……」



「だって?」



「……だって、こんなの幸せ過ぎます。一日の間をずっとずうっと、プロデューサーさんと一緒にいられるなんて。こんなに近くで、寄り添って、二人で明日までを迎えられるなんて。幸せで……幸せすぎて、まるで、夢みたいで」



「夢。……不安になっちゃったんだ」



「はい。……こんな本当の夢みたいに幸せな時間、本当は、本当に夢なんじゃないかって。私、不安で」



「そっかぁ。――それは、僕に解決してあげられる?」



「もらえます。きっと、プロデューサーさんにしか解いてもらえません」



「どうすればいい?」



「簡単です。ちょっと触れてくれれば、それで……」



「触れれば?」



「はい」



「でもそれ、今日こうして一緒になってから何度も――というか、ついさっきだってしたような気がするんだけど」



「……足りなくなっちゃったんです。さっき不安を消してくれたあれじゃ、もう、今の不安には足りないんです」



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「愛梨は欲しがりさんだなぁ」



「そうです。私は欲しがりで、堪え性がなくて、わがままなんです。……さっきのじゃ、さっきのキスじゃ、もう足りません。……もっと、もーっと欲しいんです」



「もう。――いいよ、どこに?」



「もちろん、んっ……ここです。いーっぱい愛情の込もったキス、唇に、ください……」



「分かった。それじゃあ、ほら、目を閉じて」



「……閉じなきゃ駄目ですか?」



「いや、べつに駄目ってことはないんだけど……」



「それなら、このままで。このまま、プロデューサーさんが見えてるままで、したいです」



「……そんなにまっすぐ見つめられたままなのは、流石に照れるなぁ」



「えへへ、顔、赤くなっちゃってますもんね。炬燵に潜って、抱き締めあって――でも、そういう暑さは関係ない、熱い色」



「愛梨も赤いよ?」



「私だって照れてるんです。胸がたくさんドキドキして、吐息がどんどん濡れてきて、表情がなんだか上手く作れなくなっちゃって……。……でも、照れちゃってますけど、そんな照れよりもずっと、プロデューサーさんにまっすぐでいたい気持ちのほうが大きいから」



「……愛梨はずるいなぁ。心の底から本当、素直で、まっすぐで」



「ふふ、でもプロデューサーさんだってそうじゃないですか。今もこうしてずうっと、まっすぐ見つめる私のこと、ちゃんとまっすぐ見つめ返してくれてますし」



「そんなにまっすぐな愛梨を受け止めずに放ることはできないからね。……なんだかんだ、惚れた弱味って言うのかな。愛梨にはもう、甘くなっちゃって」



「いいじゃないですか、甘くって。甘いのはいいことですもん。いっぱい気持ちよくて、たくさん幸せで」



「まあ、愛梨といると幸せだ。っていうのはそうだと思うけどさ」



「本当ですか? ……えへへ、同じみたいで嬉しいです。私も、プロデューサーさんといられるととーっても幸せですから」

「……愛梨は可愛いなぁ」



「えへへ。……私、可愛いですか?」



「うん。とっても」



「それじゃあそれじゃあ、私のこと、大好きですか?」



「大好きだよ。それはもう、これ以上ないくらい」



「なら……私のこと、愛してくれてますか?」



「もちろん。……好きで、大好きで、愛梨のこと愛してるよ」



「……えへへ」



「愛梨?」



「んっ……。んーっ!」



「ん……!」



「ん、ぅ……ふぁ、……えへへ……」



「……どうしたの、いきなり」



「えへへ……ごめんなさい。プロデューサーさんに嬉しいこと言ってもらえたから堪らなくなっちゃって……自分からしちゃいました。……嫌でしたか?」



「嫌なわけはないけどさ」



「良かったぁ」



「それじゃあ愛梨」



「はい?」



「不安なのは消えた?」



「はいっ。幸せでいっぱいで、ぽわぽわしてふわふわで、もうすっかり大丈夫ですっ」



「そっか」



「はいっ。……あ、でも」



「ん?」



「不安なのは大丈夫になりましたけど……でも、今のキスで私、もっともーっとたくさんキス、したくなっちゃいました……」

「……愛梨は欲しがりさんだなぁ」



「ごめんなさい。……えっと、いいですか?」



「こんな、喋る度に唇が擦れるような近さまで迫った状態で聞くのかな?」



「我慢、できなくて……それにきっと、プロデューサーさんは許してくれるって思って」



「それはまあ、もちろんいいんだけどさ。その……」



「んむっ……!」



「んっ……」



「ん、ぁ……あー……ん、むゅ……」



「あ、んぅ……」



「んぁ、は……あぁ……。ふ、ふふ……えへへ……」



「……また急に。今度は吸ったり舐めたりまでしてくるし」



「べつに、いつもしてることですよー?」



「そうだけど」



「それに、吸ったり舐めたりまで、じゃありません。吸ったり舐めたりしか、です」



「足りなかった?」



「はい。……だって、プロデューサーさんのほうからしてもらえませんでした」



「や、あんな急にされたら」



「吸ったり舐めたりできたのも、唇だけでした。プロデューサーの舌も、歯も、ほっぺの裏側も……プロデューサーさんの口の中まで、キス、できませんでした」



「そんなふうに膨れられても」



「ぶぅー」



「ほっぺた膨らませてる愛梨も可愛いなぁ」



「あっ、えへへ、本当ですか? ……って、駄目ですよっ。今の私はぷんぷん愛梨なんです。怒ってるんですっ」



「その割にはキスし終わった後は満足そうに蕩けてたけど」



「蕩けてませんっ。ただちょっと、幸せ過ぎてとろとろーってなっちゃってただけですっ」

「そっかそっか。……それで、ぷんぷんな愛梨は何がご所望なのかな?」



「えっとですね。今度はプロデューサーさんからしてほしい、です」



「僕から?」



「そうです。……プロデューサーさんのほうから、私に。いっぱい、いーっぱい、キスしてほしいんです」



「キスかぁ」



「キスです。触れるだけの優しいキスも、吸ったり舐めたりするとろとろなキスも、お口の中のぜんぶを絡め合う幸せなキスも、どれもどれも何もかもです」



「そっか。……キスね、いいよ、それじゃ」



「ん……」



「ん、ちゅっ」



「……」



「……」



「……? えっと、プロデューサーさん……?」



「どうしたの、そんなに呆けちゃって」



「え、だって、今の」



「キスだよ? 愛梨に求められた通り、ちゅーって」



「……プロデューサーさん」



「ふふ、ごめんごめん。……愛梨があんまり可愛いものだからさ、つい悪戯心がね」



「……酷いです。プロデューサーさん、意地悪です……」



「キスはしたでしょ。可愛い愛梨へ、愛玩の鼻へのキス」



「口にしてほしかったのに……」



「口にしてもよかったんだけどさ」



「……むー!」



「ん、っと……もう、膨れながらキスしてくるのはどうなの」



「キスー……プロデューサーさんと……プロデューサーさんからの、ちゅー……」



「そんなに落ち込まれても」



「……ぶぅ。……分かりました。いいです。いいですもん」



「愛梨?」



「プロデューサーさん。身体、上を向くようにちょっと動かしてください」



「上に?」



「上です」



「ん、まぁ、いいけど……」

「……」



「……愛梨」



「なんですか?」



「その、身体、動かしたいんだけど」



「……? はい、動かしちゃってください」



「いや、こう……愛梨が絡まり過ぎてて、動けないというか」



「え?」



「ほら、両腕でぎゅうって思いきり抱き締められてて。お腹の辺りはもぞもぞ擦り付かれながらくっつかれて離れられないし。足も絡められちゃってるから解けなくて……動くに動けないというか」



「あっ……えっと、ごめんなさい。今離れますから」



「うん、お願い」



「……」



「……」



「…………」



「…………愛梨?」



「……駄目です。いやです。私、プロデューサーさんと離れたくありません……」



「あー……でも、これだと上を向いてあげられないよ?」



「それも困ります……上を向いてもらえないと、その……」



「?」



「その、耳にキス……誘惑の、プロデューサーさんから唇へキスしてもらうための、誘惑のキス、できません……」



「……なるほど。そういう」



「うー……でも、離れるのは絶対いやだし……むー……それなら……」



「愛梨?」



「……んっ」



「……っ」



「ん……プロデューサーさん」



「……?」



「私、プロデューサーさんと離れたくなんてありません。でも、プロデューサーさんから唇へキス、してほしいです。……だから」



「だから?」



「だから、いっぱいいーっぱい、たくさんたーっくさん、キスします。誘惑のキスは、私にはできないかもしれませんけど……愛情のキスなら、私、できますから」



「唇への、キス?」



「はい。だって私、プロデューサーさんのことこんなに好きで、こーんなに大好きで、こんなにこーんなに愛してるんですもん。だから、プロデューサーさんへの愛情をいっぱいいーっぱい込めて、プロデューサーさんが応えてくれるまで、たくさん尽くして贈るんです」



「……愛梨」



「えへへ……私はプロデューサーさんのこと愛してますから、何度だっていつまでだってできちゃいます。……だから、プロデューサーさん。プロデューサーさんも、私のこと、きっと愛してくださいね……?」



20:30│十時愛梨 
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