2014年06月25日

貴音「なぽりたんを所望します」

貴音「響、なぽりたんです!なぽりたんなのです!」



響「……貴音、いつにも増して意味が分からないぞ。何で開口一番ナポリタンなんだ?」



貴音「ああ、済みません。わたくしとしたことが取り乱してしまいました。――『な ぽ り た ん』なのですよ響!」





響「いや違うから!言い方の問題じゃないから!何でナポリタンなのかを聞いてるんだぞ」



貴音「そういう事でしたか。いえ、実は昨日プロデューサーにふぁみれすへ連れて行って頂いたのですが、

其処で――出たのです」



響「ナポリタンが?」



貴音「ええそうなのです。あれは大変美味でした。ですから響に作ってもらいたいのです。――――なぽりたんを!」



響「……いや別に作るのはいいけど」



貴音「真ですか!」



響「うん、今から作ればちょうどいい時間になると思うし」



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貴音「ありがとうございます響。ふふ、しかし本当になぽりの人は各も美味なる物をよく思いついたものだと感心します。

ぱすた麺と『けちゃっぷ』のはぁもにぃ、そして嬉しい『そぉせぇじ』の旨味と微かに主張する『ぴぃまん』の苦味。

真素晴らしい味です。なぽりの人はなんと発想力豊かなのか……賞賛に値しますね」



響「貴音。ナポリタンはナポリ生まれじゃなくって日本生まれだぞ」



貴音「…………えっ?な、何を……ああ、なるほど。ふふ、響。わたくしを謀ろうとは、ふふふ、

騙されませんよ!なぽりたんが日本生まれ?否、断じて否!なぽりたんはなぽり生まれです!つまり日本生まれではない!

現に名前になぽりと付いているではありませんか!それに麺もぱすた麺です!

ふふ、嘘ならもっとましな嘘を付くのですね響!」



響「いや、本当だって!ホールトマトを使ったナポリタンソースってのはあるけど、

ケチャップを使ったナポリタンは無いんだぞ!

幾つか説はあるけど戦後アメリカ軍が持ち込んだケチャップ味のスパゲティがルーツって――」



貴音「てぇい!」

響「痛って……何で叩くんだ!」



貴音「響が嘘を申すからです!なぽりたんはなぽりのものと尊敬するプロデューサーがそう申していたのです!

いくら響と言えどもあの方を嘘つき呼ばわりすることは許しませんよ!」



響「嘘つきというより詳しく知らないだけじゃ……」



貴音「何か言いましたか!」



響「な、何も言ってない!ナポリタンはナポリのもの!ほら、これでいいでしょ!」



貴音「分かればいいのです響」



響「……貴音……面倒くさいぞ」



貴音「響が強情だからですよ……理解したところで早速調理を」



響「もうなんでもイイや…………ええっとまず麺だけど、できるだけ太いものを使う」



貴音「ぱすた麺にも種類があるのですか?すぱげってぃしか知らないのですが……」



響「スパゲッティは1.8mm前後のパスタ麺さ。太い順に2mm以上の物をスパゲットーニ、1.8mm前後をスパゲッティ、

1.4mm前後をスパゲッティーニっていうんだけど、販売してるメーカーによって太さと名前が一致してないことも多いぞ。

それにJAS規格で1.2mm以上はスパゲッティ、1.2mm未満はバーミセリーって記載できるからなおのことややこしいんだ」



貴音「ふむ、なるほど。ではなぽりたんには具体的にどのくらいの太さの麺が良いのでしょうか?」



響「う〜ん、ナポリタンなら2mm以上がベストだぞ!え〜と事務所にあるので一番太いのは…………

ディ・◯ェコのスパゲッティ1.9mmか。うん、まぁ今回はこれで作るさ!

ああディ・◯ェコの麺でナポリタンを作る場合はヴェルミチェッリっていう2.1mmのがオススメだぞ」

貴音「ゔぇるみちぇっり……ですか?」



響「うん。今では1.2mm未満の麺の事をヴェルミチェッリとかバーミセリーって言うけど、

昔はスパゲッティくらいの太さの麺の事をヴェルミチェッリって言ってたんだ。

スパゲッティって名前が出来る前のことだぞ。

ディ・◯ェコは多分それを採用して、2.1mmをヴェルミチェッリにしてるんだろうな」



貴音「はぁ、分かったような分からないような」



響「まあこのへんは覚えなくてもいいさ。ナポリタンにはなるべく太い麺を使うって覚えとけば。

えっと、あと鍋はパスタ鍋や寸胴を使ったほうがいいんだけど…………ここにはないみたいだな。

仕方が無いから普通の鍋で茹でるか。ああ、水はなるべく多く入れる。なみなみね!」



貴音「このくらいですか?」



響「うん、完璧さ。強火にかけてここに塩を…………バサッと!」



貴音「……なっ!?」



響「うん?どうしたんだ貴音?」



貴音「ひ、響……今塩を一つかみ以上入れましたが……」



響「うん入れたぞ」



貴音「こ……ここ」



響「こ?……こがどうしたさ?」



貴音「殺す気ですか!」

響「は!?」



貴音「響はわたくしを塩分過多で殺そうというのですか!な、なんと恐ろしい!」



響「ち、違うぞ!これくらい入れるのが普通なんさ!」



貴音「何を世迷い言を!」



響「塩はこれくらい入れないとちゃんと味がつかないの!本場でもやってるぞ!」



貴音「ほ、本場!?……それは、それはなぽりでも……ですか?」



響「だから日…………な、ナポリでも……だぞ」



貴音「…………なぽりでも」



響「…………うん」



貴音「…………」



響「…………」



貴音「…………分かりました。響を信じます」



響「あ、ありがとう」



貴音「期待しています」



響「ど、どうも…………えっと沸騰したら麺を袋に書かれた時間より……に、2〜3分長く茹でるぞ」



貴音「2〜3分長く……ですね」



響「う、うん……」



〜15分経過〜



響「茹でたらお湯を切って、ボールに移し、オリーブオイルをかける」



貴音「…………」



響「で、ラップをして後は5〜6時間位――」



貴音「…………」



響「冷蔵庫で置いとく!」



貴音「うぇい!」



響「痛って!?何で!?」



貴音「それはこちらの台詞です!何をしようというのですか響!麺はこしが命です。その麺を何時間も放置する?

なんせんす。在り得ません!正気ですかこの糞戯けが!」



響「五月蝿い!普通こうするんだ!」



貴音「信じません!信じませんよ響!!」



響「何でもイイからそうするの!!」



貴音「信じません!!!」



響「ウガー!!!!!」

〜6時間後〜



貴音「響を信じて遂に……6時間が経ちましたね」



響「……そうだね」



貴音「…………もうすぐ夕餉の時刻ですね」



響「うん」



貴音「これに合わせたのですか響?」



響「うん、まあ」



貴音「ふふっ、やりますね響。響はあいどるではなく料理人になったほうが良いのではありませんか?」



響「……自分、アイドルがいいな」



貴音「……そうですか、それは……残念です」



響「うん……」



貴音「では……最後まで頑張りましょう響」



響「……作るのは自分だけどな」

〜3分後〜



貴音「細切り……出来ましたか響?」



響「ほんとに手伝わないんだね貴音」



貴音「ふふっ、料理人の仕事を取ってはいけませんからね」



響「そっか。でも、自分アイドルなんだけどな」



貴音「それは些細な事です響。早速続きを」



響「うん。もう、怒る気にもならないや……えっとフライパンに油を入れて、強火で熱するぞ」



貴音「…………」



響「温まったらソーセージ、玉ねぎ、ピーマンの細切りを入れ炒める…………それから火が通ったらケチャップを加えるんだ」



貴音「…………」



響「ケチャップがプツプツしてきたら麺を入れて軽く炒めて…………もう一回ケチャップを入れる」



貴音「…………」



響「んで、味付けに黒胡椒とカイエンヌペッパー……は無いから代わりに一味唐辛子を少々」



貴音「…………」



響「それから砂糖を……」



貴音「がってむ!」

響「痛って!?……えっ、えっなんで!?」



貴音「今、響は間違いを犯しました」



響「……は?」



貴音「いいえ、分かっているのです。誰にでも間違いはあると――塩と砂糖を間違えたのですね。

ふふ、響はおっちょこちょいですね。塩はこちらですよ響」



響「いや、合ってるから!塩味もう付いてるし。砂糖入れるんだって!」



貴音「まだ、まだそのような妄言を!嘘を言ってはいけません!響、あなたが手にしているものをよく見るのです。

それは大匙すぷぅんです!それで、それで砂糖を入れたらどうなるか!…………麺類なのですよ?

お菓子ではないのです!砂糖をそんなに入れてしまっては最早なぽりたんなどとは……」



響「…………」



貴音「さあ、早くそれを元の場所へ戻すのです。今ならまだ間に合います」



響「…………」



貴音「元の場所へ戻すのです!」



響「…………」



貴音「さぁ早く――」



響「…………山盛り1杯半っと」

貴音「あー!あー!入れましたね今!入れましたね!何と――何と言う事を!

この愚か者が!崇高なる麺にそのような大量の砂糖など――ああ、何と、何と嘆かわしい!あなたはそれでも――」 



響「そして続いてカレー粉を」



貴音「すとっぷ!すとっぷです響!わたくしを無視して何を入れましたか!」



響「カレー粉だぞ」



貴音「かれぇ粉。かれぇ粉ですか。……かれぇ粉は何処の国の物ですか?」



響「……イギ」



貴音「『いんど』です!『いんど』なのですよ!なぽりでは無いのです!『いんど』なのです!」



響「……うん。それで?」



貴音「はぁ、言わねば分かりませんか」



響「うん」



貴音「仕方ありません。申しましょう。――響、なぽりたんにかれぇ粉を入れるとどうなりますか?」



響「……ほんのりスパイシーな風味が」

貴音「違います!なぽりたんにかれぇ粉を入れると『ぱきすたん』になるのです!」



響「何言ってるか本格的に分からないぞ」



貴音「いいですか響?なぽりたんにかれぇ粉を入れると『いんど』に近づきますね」



響「いやナポリタンは日本でカレー粉はイギリスだからむしろイタリアに近づくんじゃ……」



貴音「『いんど』に近づきますね」



響「…………」



貴音「…………」



響「…………うん。もうそれでいいや。で?」

貴音「はい。なぽりたんは『いんど』に近づきます。其処でまずは『とるくめにすたん』や『うずべきすたん』になります」



響「…………うん」



貴音「更にかれぇ粉を加えると『あふがにすたん』に」



響「…………うん」



貴音「そして最後には…………『ぱきすたん』に成るのです!」



響「そっか」



貴音「そうです!プロデューサーがそう申しておりました!」



響「…………」



貴音「…………」



響「…………」



貴音「…………」



〜3分後〜



響「……完成だぞ」



貴音「ぱきすたんが……ですね」



響「…………」



貴音「ぱきす――」



響「ナポリタン」



貴音「…………」



響「…………」



貴音「ぱき――」



響「ナポリタン」

貴音「…………」



響「…………」



貴音「ぱ――」



響「…………」



貴音「…………」



響「…………」



貴音「なぽり……たんです」



響「うん」



貴音「…………」



響「さあ、食べるんなら早くするさ」



貴音「…………」



響「…………」

貴音「…………行っ、行きます!」



響「うん……」



貴音「ズルルッ…………!?」



響「…………」



貴音「ズルッ!?…………ズルルルルッ!!!」



響「…………」



貴音「ズルルルルルルルルルルルッ!!!!!!」



響「…………」



貴音「ズルルルルルルルルルル!!!!!……ヴェッ!」



響「…………」



貴音「ヴェッ!ヴェッ!……プゥ……じゅるるん……はぁ、はぁ」



響「どうだ自分が作ったナポリタンは……」

貴音「はぁ、はぁ…………響、これは……『ぱきすたん』ではありません」



響「ああ……」



貴音「これは中東諸国ではない、まさしく地中海!これは――」



響「ああ、そうだ!そうだぞ!これが、これこそが――」



貴音・響「なぽりたん(ナポリタン)だ!!」



(了)

読んでくれてありがとう

初アイマスSSがこれかぁ・・・



SS一作目 美海「憑き物落としをして下さい」京極堂「――話を聞こう」





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