2013年11月05日
【R-18】モバP「君はフルスロットル」
>>132
最近だと、この二つ
書き方も内容もまるでちがいますけど
最近だと、この二つ
書き方も内容もまるでちがいますけど
モバP「雪美の日々」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1370784428/
モバP「七夕ではなく」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1373121372/
地の文であればこの二つです
工藤忍「ホワイトドロップ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1363729791/
栗原ネネ「いつか見た空の下で」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1369515151/
>>133
書き溜めが終わるのが
深夜になってしまうのでそのせいでしょうね
■君はフルスロットル その4
「やっぱり、ここのは美味しいね!」
目の前で、美世が美味しそうに牛丼を食べている
仕事の帰り、丁度夕飯時だったため
俺達はどこにでもあるようなチェーン店に来ていた
「よく食べるな……」
「だって、お腹すいてたんだもん!」
およそデートには似つかわしくない場所だ、
周りを見ると男女で来ているのは俺達しかいない
美世は食事に関して、美味しければそれで良いという考え方なので
二人でご飯を食べに行く時は、こういうチェーン店に行く事もよくある
美世は仕事の時はポニーテールにしていた髪をほどいて
女性にしては少し多いであろう大盛りを頬張っている
仕事が好評価を得られて肩の荷が下りたのか、終始ご機嫌だった
「それにしても、今日は盛り上がってたね!」
「確かに、雰囲気も良い感じだったし、成功だな」
美世の言うとおり、今日のイベントは盛況に終わった
プロデューサーとして己の仕事を全うしてきたという自負はある
しかし、こうしてイベントなんかが成功するのは
これまで彼女が頑張った行いの結果だと思う
そんな美世の努力が認められるのは、素直に嬉しかった
「……でも」
「ん?」
食べ終わったようで、箸を丼の上に置き
俺から目線を逸らしてため息をつく
口元にご飯粒がついていて、少し気になる
「他の子、可愛いよね。みんな、元気で人懐っこくて……」
「そんな事心配してたのか?」
美世が言うなよと言いそうになったが、慌てて別の言葉に切り替える
よくよく考えれば、彼女は初対面の相手にそこまで積極的では無いタイプだ
「そんな事ないよ」と言ってしまえばそれまでだが
それは彼女の期待している答えでは無いだろう
「あたしも、積極的に話せるようにした方が良いかな?」
「積極的にって……何かあるのか?」
「ううん、車に乗ってたなら少し緊張もほぐれるんだけど……」
前向きなのは良い事だが、明らかにその方向性を間違っている
でも美世らしい挨拶だなと、少し苦笑してしまった
「ね、Pさんもやっぱり積極的な方が良いよね?」
「……別に、今の美世のままで良いと思うけどな」
「今のままか……Pさんがそう言ってくれるなら、それで良いのかな……」
俺に対しても消極的だと思っていたようだ
これ以上、積極的になったらどんな事が起こるか想像もつかない
納得したように「うんうん」と一人で頷いている
悩み事が解決したようでなによりだ
もっとも悩み事と言うほどの物なのかはわからないが
美世が積極的にね……
時折、こういう事を言いだすのはお決まりみたいなものだ
アイドルになったのもそうだが、自分を変えたい願望があるのだろう
俺は美世の話を聞いていて、食べ遅れた牛丼を掻き込みながら考えていた
既に食べ終わった美世が、ずっとこっちを見ているので少々食べづらい
あっ、そう言えば……
ふと、一通のメールを思い出す
返事も早くしとかないといけないな、と思っていたが
本当は断ろうと思っていたので、返すのが遅れて逆に良かった
「なぁ、美世」
「ん? どうしたの、Pさん?」
話しかけられるとは思っていなかったのか
キラキラとした目でこっちを見てくる
そんな期待する話でも無いんだけど……
「……とりあえず、ご飯粒ついてるぞ」
「あっ!」と急な出来事に
顔を紅潮させる美世の口元のご飯粒を指ですくう
まだオロオロとしている彼女を無視して俺は話を進めた
「へぇー、おっきなパーティーなんだね!」
「まぁ、あいつのプロダクションはでかいからなぁ」
あれから数日が経ち
日が落ち始め、辺りが暗くなってきた頃
俺達は遠目からでも視界に収まりきらないビルの前に立っていた
「場所はここで合ってるな」
横から覗き込んでくる美世と一緒に
プリントアウトしてきた地図の目的地と
現在地が合っている事を確認する
以前、俺宛に送られてきた一通のメール
それは、友人のプロデューサーからのパーティーへの招待状だった
何でも、プロダクションのランクが上がったらしい
本来ならうちみたいな貧乏プロダクションでは縁の無い話だ
「でも、本当にあたしたちだけ良いの?」
「あんまり大勢で詰めかけても邪魔になるだけだからな」
俺と美世の二人でこのパーティーに参加するように返信しておいた
俺もそうだが、美世もあいつの事は知っている
もっとも、美世は接点が余りないので最初は行くことをためらっていたけど
それに、こんな盛大なパーティーなら、著名な人も大勢来ているだろう
なら、この場は楽しむと言うよりは仕事という意味合いの方が強い
こんな場に慣れる事も美世にとってプラスになるだろう
そう思った俺は、美世と二人で参加することを決めた
「うぅ……だ、大丈夫かな。あたし、変じゃないよね?」
行くことが決まってから、美世はずっとこんな調子だ
手に持っている大きな袋と俺を交互に見つめている
美世の手にしている袋は、ちひろさんに用意してもらった物だ
中にはうちで使う事は無いであろう、水色のパーティードレスが入っている
美世にパーティー衣装なんて持ってないと言っていたので
ちひろさんに相談すると、色んな人を当たって見つけてくれた
たまにはこういう経験をしておくのも、悪くないだろう
「変じゃないさ。さ、とりあえず中に入ろうか」
「う、うん……」
いつもと変わらないスーツ姿なので気兼ねする事は無い俺と
キョロキョロと自信無さげに、俺の後ろにひっついている美世
今日一日はずっとこんな感じになりそうだな……
「……ふぅ」
口から白い煙を吐き、もやもやと漂うそれを眺める
美世が着替えをしている間、俺は一人喫煙所に来ていた
この仕事で煙草を吸うなどご法度だが、どうにも止められない
大仕事をする前はこっそり一服をして、気分を落ち着ける癖がついている
美世は別に良いと言っていたが、俺は彼女の前では吸わないようにしていた
そうなると一日一本吸えるか吸えないかの頻度になってしまうので
こうやってどこかの喫煙所で一服するのは久々だ
外に喫煙所があって助かった、これなら強烈に匂いが付く事もないだろう
まぁ、吸って無い人からしたらあっさりと分かってしまうんだけど
「……そろそろ戻るか」
すっかり短くなった煙草を灰皿でもみ消し、吸い殻を中に入れる
周りを見ると、もうすぐパーティーが始まるらしく
のんびり煙草を吸っていたのは俺だけだったようだ
「……ん?」
不意に、誰かに見られているのに気付く
ボーっとしていて気が付かなかったが
さっきからずっとこっちを見ていたようだ
「…………」
夜の闇の中、大きなビル特有の強烈なライトの光を受けて
キラキラと光る見慣れたポニーテール
控えめ……しかし、しっかりと彼女を引きたてているメイク
色白で透き通るような肩を露出させながら
胸や腰回りのラインが遠目でもハッキリとわかり
まるで、スタイルの良い彼女のためだけに作られたような水色のドレス
胸元には俺が昔あげたネックレスを揺らしながら
じっとこちらを見つめていた
「……ど、どうしたの? やっぱり変かな!?」
「い、いや……」
いつの間にか言葉を失い、見つめてしまっていたらしい
頬を桜色に染めて、いつものように俺に問いかけてくる
毎日見ていたはずなのに、こんなにも惹きつけられるとは思っていなかった
パーティードレスを着た女性は何度も見てきたはずなのに
彼女の姿を見た途端、普段のそれとは違う感覚に戸惑いを覚える
恋人の変化に戸惑うなんて、ベタベタな反応を自分でするとは意外だ
心臓の鼓動が激しくなっているのを感じる
何も言わない俺の事を気にしているのか
さっきから彼女はこの沈黙が恥ずかしく感じているようで
どうしたら良いのかわからず、モジモジとしている
「あ、あの……Pさん?」
「……良く似合っているよ美世」
やっとの事で、一言だけ。それでも素直な感想を絞り出す
それを聞いた美世は、顔を真っ赤にさせながら
それでも嬉しそうに、はにかんで「うん」と短く答えた
参加の案内状を受付に渡して、煌びやかな廊下の中を二人で歩く
進むにつれて、会場に向かう他の参加者達も見え始めた
その姿はセレブと言った感じだろうか……
言葉の意味をちゃんと知っているわけではないが、一言で表すならそうだろう
いかにも金持ちそうな男性や、貴婦人のような女性
プロダクションのパーティーと言えば、業界人ばかりかと思っていたが
こういう人達との繋がりもあるものらしい
「なんか、俺達の方が逆に目立ちそうだな……」
おそらく、ここに呼ばれている人達はコネクションがあるのだろう
廊下で談笑をしている人達もちらほらといる
俺達はこのプロダクションのプロデューサーと知り合いなだけだ
つまり、他に知人が全くいないパーティーになっている
「大丈夫だよ、Pさん!」
いきなり少し大きめの声を出して、美世が俺の腕に身体を預けてくる
ムニュリと薄手の服にしか守られていない胸の感触がダイレクトに伝わってくる
腕に感じた柔らかな美世の感触にドキリとし、俺は慌てて問いただす
「な、何してんだよ!?」
「えっ!? エスコートだけど……」
「そんな抱きつくみたいなエスコートがあるか!!」
「そうなの!? 映画とかでこんな風にしてなかったっけ?」
美世の曖昧な記憶では男性の腕に抱きついて女性が歩いているらしい
もちろんエスコートとはそういうものではない、腕に手を預ける程度で良いのだ
こんな風に歩いていたら「私達は付き合っています」とアピールしながら歩いてるのと変わらない
「そもそも、無理にしなくても良いだろ……」
「あっ、言われてみれば組んでる人あんまりいないね……」
「俺達もいつも通り普通にしてれば良いんだよ」
「ふふっ、そうだね。じゃあ、Pさん。今日はあたしとずっと一緒に居てね?」
「えっ、ずっと一緒にって……何かあるのか?」
「ん? あたしのことはPさんが引っ張ってくれるって信じてるから!」
「……なるほどね、わかったよ」
「一人じゃ、きっとこんな所にいられないから……原田美世をよろしく、Pさん!」
すっかりといつもの調子に戻った美世が悪戯っ子のように笑う
俺がいる事で美世は緊張する事なく振る舞えるようだ
とはいえ、俺自身も美世がそばに居てくれる事で余計な緊張はせずに済みそうだった
「皆様、本日は我がプロダクションのパーティーにお集まりいただき……」
形式的な挨拶と共にプログラムが淡々と紹介される
お偉いさんの挨拶に所属アイドル達によるスペシャルライブ
立食形式でプログラムの進行中も好きな料理を摘んで良いらしいが
俺は周りの目を気にして食事は控えていた
こういう所はどこで誰に見られているか分かったもんじゃない
そういう堅苦しい空気が嫌だったのが最初に断ろうと思ってた理由だ
「ヒールってグリップが効かなくて歩きにくいね……」
「そういや美世がハイヒールを履いてるのは初めて見たな」
「うん、あたしも初めて履くから。みんな電車で来てるのかな? クルマの運転しづらいよね……」
「男が運転するかタクシーだろ。女の人は運転しないだろうからな」
「そっか、それもそうだよね」
隣では皿にいくつかの料理を乗せて、美世がモグモグと食べている
料理の種類は豊富でチラリと見ると、普段はお目にかかれないような料理が並んでいる
美世に取ってこさせてこっそり食べようかと考えたが
今日は歩きにくいとぼやいていたので止めた
「でも、あたしだけ食べてて良いの? Pさんも食べれば良いのに」
「俺はかまわないよ、許可は貰っているし好きなだけ食べると良い」
「ふーん……ね、挨拶はもうしなくて良いの?」
「あぁ、知り合いにはもう済ませてあるからな」
始まる前は意気込んで見知った顔に挨拶しておこうと
美世と会場内を一通り回ってみたが、それ程知っている人はいなかった
10人程度に軽く会釈をして、もう今日の仕事は終わったようなものだ
他のプロダクションのパーティーで自分のとこの宣伝をするわけにもいかない
基本的には大人しくしておいて適当に顔を覚えてもらえればそれで良い
「そっか、ならPさんはあたしと二人で話でもしとこっか!」
「そうすることにしておくよ」
最初は美世が積極的に云々で悩んでいた事の参考になるかと思ったが取り越し苦労だったようだ
挨拶の時も臆することなく話していたし、適度な距離感を持っていた
言っていた通り人見知りするかもしれないけど、順応性はかなり高いのだろう
「あら? 珍しいわね、こんな所に来るなんて……」
美世とあれこれ言い合っていると、後ろからある人に声をかけられる
振り返るとこのプロダクションの中でも数少ない俺の知人が立っていた
「お久しぶりです、礼子さん。今日はライブには出ないんですか?」
「オトナ組はライブじゃなくてお客様のお相手担当なのよ」
全身から妖艶な雰囲気を放ち、見る者を釘づけにする魅力
胸元がしっかりと見えるドレスはグラマラスなこの人が着ると何とも危険だ
これでアイドルというのだから驚きだ。女優と言われても信じてしまうだろう
「……Pさん、この人は?」
「高橋礼子さんだよ、テレビとかで見た事あるだろう?」
小声で美世が俺に聞いてくる。そう言えば美世は初対面だったのを忘れていた
俺自体は仕事で何度かあった事はあるので面識はあった
近寄りがたい雰囲気はあるが、話してみると気さくで良い人だ
度々投げかけられる誘惑じみた発言さえなければだが……
「そっちの子はあなたの所のアイドルなの?」
「えぇ、そうですね。礼子さんは初めて会うと思います」
「は、原田美世です! よ、宜しくお願いしますっ!!」
「ふふっ、高橋礼子よ。宜しく……」
彼女の作りだす独特の空気に飲まれてか、美世はこれまでにないくらい緊張していた
無理もないだろう、俺も初めてこの人と話した時はこんな感じだった
あいつはどうやってこの人をアイドルにスカウトしたんだろうといつも思う
俺はカチコチに固まっている美世の代わりに話を進める事にした
「今日はまた大胆な衣装なんですね……」
「ふふ、見せてるのよ……わざと」
「あんまりやりすぎると言い寄られるんじゃないんですか?」
「あなたが誘ってくれるなら私はかまわないわよ?」
「はぁ……それができる勇気があるなら良いんですけどね」
「そんなにココが見たいなら……あ・と・で・ね」
そう言いながら肩にかかっている紐を少しずらす仕草をする
いつもながらこの人の俺をからかう様は大胆だ
最近はかわせるようになってきたが昔はドギマギさせられたものだ
「……Pさん?」
しかし、このやり取りを快く思っていなかったのが約一名いた。美世だ
初めて見るやり取りに冗談で言っているのが分かっていないんだろう
ジト目と言うやつだろうか、俺の事を座った目で睨みつけてはスーツの裾を掴んでいる
「美世、これは礼子さんの冗談だから」
「ふふっ、美世ちゃんには少し早かったかしら?」
「……どういう意味ですか?」
珍しく礼子さんが火に油を注ぐ、同じように冗談だと言ってくれると思っていた
今の美世を刺激するとどうなるかは一目瞭然のはずなのに
「Pくん、ちゃんと今夜の予定は空けてあるわよね?」
「いや、そんな話聞いて無いですけど……」
「この後は……オトナの時間、ね?」
スッと、唇にあてた指先を俺の胸に当てる
何て事は無い動作だが、この人がやるだけでその一つ一つが厭らしい
この後に何をするかが誰が見ても理解できる程だ
「しませんよ。礼子さん、今日はやけに絡んできますね……」
「あら? そうかしら?」
胸にあてられた指がゆっくりと滑っていく
かすかな刺激に俺の身体はビクリと反応してしまう
言葉ではハッキリと拒絶を示すが、身体は固まって動けなかった
「……それ以上は止めてくれませんか?」
その言葉と共に、俺の横から伸びた手が礼子さんの腕を掴む
華やかなドレスに身を包ませながらも有無を言わせない瞳
久々に見るけど本気で怒っている美世がそこにいた
「冗談なのはわかってますけど、あんまり気分が良くないんです」
「……ちょっと、痛いわね。力入れすぎじゃないかしら?」
「……ごめんなさい、握力は強い方なんで」
さっきまで和やかだった場が重苦しい雰囲気に変わる
ステージではアイドル達が歌って会場を盛り上げている
にも関わらず、ここだけ別空間のように息苦しい
3人の中で唯一の男の俺が、一人だけゴクリと唾を飲み込んでいた
「ふぅ……こんなに敵意を剥き出しにされるなんてね」
「……す、すいません! 礼子さん! 美世、手を離すんだ!」
「う、うん……」
礼子さんのため息一つでハッと我に返り、慌てて美世をたしなめる
美世は少し戸惑いながらも掴んでいた手を離してくれた
「ふふっ、良いのよ。ごめんなさいね、少しからかいすぎたわ」
「い、いえっ、こちらこそ済みません」
どんな理由があったとしても手を出してしまったのは良くない
握られた場所が少し赤くなった腕を見て、俺は何度も礼子さんに頭を下げていた
その横でまだ怒りが収まらない美世が礼子さんを睨みつけてけしかける
「なんなんですか、なんでPさんにこんな事するんですか?」
「彼が魅力的だから、それじゃダメかしら」
「とてもそんな風に見えないんですけど」
「……一つ、聞いても良いかしら? なんでそこまで彼にこだわるの?」
「それは……」
「もしかして、あなた達、付き合ってたりなんかしないわよね?」
「!?」
誘導尋問というやつだろうか、初めからそれを確かめるためにこんな事をしたんだろう
気付かなかった俺もそうだが美世はまんまと乗せられてしまったようだ
こうなると形勢は完全に逆転し、美世もバツが悪そうに視線を逸らしてしまった
「Pくんはどうなの? 付き合ってるのかしら?」
「……えぇ、そうですね。美世とは付き合ってます」
「P、Pさん!?」
俺は少し考えた後に迷う事なく答えた。ここまで追い詰められたら隠しても無駄だろう
色んな人を見てきた礼子さんの目を欺くなんて端から無理だったのかもしれない
特にそれが色恋沙汰なら尚更だろう。俺はこのまま賭けに出る事にした
遅かれ早かれこういう事態が来る事は分かっていた
それでも諦めるわけにはいかない。何とかこの場を凌がなければ
一言で今まで隠し通してきた事が全て崩れ去る状況に心臓の鼓動が早まる
その事を理解しているのか、美世は黙って俺のスーツの袖を掴んでいた
「アイドルとプロデューサーがそういう関係になるなんて……イケない人ね」
「ですね、自分でもそう思う時があります」
「で、どうするつもりなの? 私にはバレてしまったけど?」
「……厚かましいですけど、秘密にしておいて貰って良いですか?」
礼子さんの瞳が俺を見据える。俺も負けじと礼子さんの視線に合わせる
それがどれくらい続いたんだろうか? ほんの数秒の出来事だけど凄く長く感じた
すると突然、礼子さんがクスクスと笑い始めた
「かまわないわよ、幸せそうな二人に水を差すなんてできないわ」
「……ありがとうございます」
「別に感謝される事はしてないけど、それにしても美世ちゃんは少し我慢を覚えた方が良いわよ」
「そうですね……気をつけるように言っておきます」
「ふふっ、さて、邪魔者は去ろうかしら……」
ヒラヒラと軽く手を振りながら礼子さんは去っていった
去り際に「ごめんなさいね」と美世に言っていたが返事は返ってこない
それもそうだ、美世は目の前のやり取りについていけてなかったのだから
「……あ、あのPさん。大丈夫なの?」
「あの人なら大丈夫だよ、信用できる」
「そっか……ごめんね、あたし、今度会った時にちゃんと謝っておくね」
「その方が良いだろうな」
美世は叱られた子供のようにおずおずと俺に聞いてくる
今回の事態は美世が手を出さなければ起きなかった
怒られると思っていたか、さっきまでの勢いは完全に消えてしまっている
「とにかく、相手が礼子さんで助かったよ」
危ない所だったが見る人が見ればバレバレだと、礼子さんなりの警告だったんだろう
少し油断し始めていた俺達にとっては良い緊張感を与えてくれた
「で、でもPさん……」
「もうあんまり気にするな、俺からも礼子さんには謝っとくから。それよりせっかく綺麗になったのに勿体無いぞ?」
「……き、綺麗って……うんっ、そうだね!」
吹っ切れたかのように、美世にも元気が戻ってきたようだ
どっかに感情のシフトレバーでも付いてるんじゃないかと思うくらい切り替えが早い
そんな事言ったら怒られるだろうから言わないけど……
「ふふっ、Pさん!」
「どうかしたのか?」
「スリップしそうになったとき、支えてくれるのって、うれしいなっ!」
「これからもずっとあたしと並走してね、Pさん!」
そう言いながら、俺に腕に身体を預けてくる
今日二度目の美世なりのエスコートして欲しい合図なんだろうけど
さっき言われたばっかりなのに、気をつけて欲しいもんだ
ま、今なら問題は無いだろうだけどな……
いつの間にか、ライブもクライマックスを迎えていた
真っ暗になった俺達の場所は誰からも見えないだろう
少しの間だけなら大丈夫だと、俺は何も言わないでいた
ネクタイを外し、上着をハンガーにかけて一息つく
長かったパーティーも終わりを迎え、俺は家に帰ってきていた
「凄いパーティーだったね!」
俺の後ろではまだ興奮が冷めていないのか、美世がはしゃいでいる
帰る時に何も言わず、真っ直ぐに俺の家に向かったらそのままついてきた
今更ながら泊まる気が満々だったんだろうと呆気にとられる
「今日は帰らなくて良いのか?」
「うん、明日はあたしもPさんもオフじゃない」
明日は急ぎの仕事もないため俺も休みをもらっていた
パーティーで疲れてしまうだろうと思っていたが予想は当たっていたようだ
礼子さんの一件を思い出すと、ドッと疲れを感じてしまい俺はソファーに腰を下ろした
大きなプロダクションではないが、社内でもそれなりの立場があって、収入も悪くない
何より俺はこの仕事が気に入っているのもある
それが一瞬で崩れ去るという恐怖は、考えるだけでも気疲れしてしまう
「あっ、これ明後日にちひろさんに返さないといけないんだよね」
メイクを落とし、いつものラフな格好に着替えた美世が荷物を片づけている
こうして見るとやっぱりいつも通り何も変わっていない
それでも、あの時に受けた衝撃は今でもハッキリと頭の中に焼き付いている
女は変わるものとは良く言ったものだ。これで俺は彼女に二回も一目惚れした事になる
「ん? どうしたの、あたしの顔に何かついてる?」
視線に気がついたのか不思議そうな顔でこちらを振り返ってくる
あれだけの緊張感の中、ハッキリと言い返せたのは美世だったからなんだなと
特に面白い事があったわけじゃないけど何だかおかしくなって笑ってしまった
「えっ!? な、何で笑うの?」
「ははっ……いや、別に何にも無いよ」
「もう! そんなこと言われても、笑われたら気になるじゃない!」
「なぁ、美世……」
「どうかしたの?」
「今からしようか」
「……えっ?」
ふと、自然に自分の口から出たセリフに驚く。そんな事は全く考えていなかったからだ
しかし、いざ言ってしまうと美世の事が愛おしくなり。徐々に気持ちが高ぶってくる
美世は少し驚いた後に、意味を理解したのか顔が茹でダコのように赤く染まっていき
そして、俺の視界が一瞬にして暗くなり顔に柔らかい衝撃が走った
「な、な、なに言ってるの!?」
美世が照れ隠しに投げたクッションが顔面を直撃したらしい
そう言えば今まで美世にしようかと言われた事はあるが俺からは言った事が無い
いつもそういう雰囲気になってしまったらする、といった感じだった
「そう言うのって……ほら、もうちょっとムードとかあるじゃない……」
帰宅直後にセックスしようかと言われては、美世の言うとおりムードもへったくれもない
我ながら美世に対しての言葉の選ばなさに呆れてしまう
気を許しているとは言え流石にこれはいきなりすぎたようだ
「……悪かった、今のは無しにしてくれ」
「そ、そうなの……?」
「あぁ、俺もよく分からないけど気づいたら言ってたんだよ」
「なんなのそれ……」
理解できないといいたげな顔で見られるが俺も理解できていない
本心なんだろうけど美世がその気じゃないなら無理にする必要もないだろう
頭を冷やそうとして立ちあがろうとしたその時、手をグイッと掴まれる
「……する」
「……ホントに?」
真っ赤な顔をして目を合わせようとせず、それでも小さくコクリと頷く
その仕草がたまらなく愛おしく感じ、気が付けば彼女を抱きしめていた
明りを豆電球のみにして、薄暗いオレンジ色に染まる室内
俺は早々に来ていた服を脱ぎ捨てて下着一枚になっていた
こうして流れをに身を任せずに一からセックスをするのは今までなかった
互いに初めての時のような気持ちになり何だか変な感じだ
美世がゆっくりと自分の服を脱いでいくその姿は何だか厭らしい
そして、今日二度目の暗闇と顔面への柔らかい衝撃を感じる
「そ、そんなにジロジロ見ないでよ! 恥ずかしいじゃない!!」
投げつけられたクッションを手元に置いて、明後日の方向を見る
自分で脱ぐと言う行為に羞恥心を感じているのだろうか
いつものような勢いは全く感じられず動きもどこかぎこちない
付き合い始めてから美世と身体を重ねた回数はそれほど多くなかった
互いに仕事もあるし、別にしなくても満足している部分もあったからだ
それ故にセックスを意識させる行為に慣れない部分もあった
「ん、脱いだよ……」
下着姿の美世がドサリとベッドの上に仰向けに寝転がる
緊張しているのか、何もせずにそのままジッとこちらを見つめている
今までじっくりと見る機会がなかったが、美世のスタイルはかなり良い
スラリと長い手足に、着やせするのかステージ衣装の時は目立たないが、胸も大きい方だ
普段からよく動いている事もあって、全体的に引き締まった身体はメリハリがついていて
流線形のボディというのがピッタリな表現だろう
「……どうかしたの?」
「いや、美世は何もしないのかなって……」
「あたしだって、たまに思い切り優しくされたいな……」
「だって、一応女の子だし……ねっ! Pさん……!」
そう言いながら頬を上気させてはにかんでいる
その姿に努めて冷静になろうと思っていた決意は跡形もなく消え去り
気が付けば俺は彼女の上に覆いかぶさっていた
鼻先が触れ合う程に顔の距離が近づく、美世が頷くのを確認すると俺は唇を重ねた
密着させた唇の隙間から美世の口内へと舌を侵入させる
「んっ……ちゅっ……んんっ!」
ディープキスをするのは初めてではないのだけど
先程の美世の言葉を思い出し、いつもよりゆっくりと美世の舌を撫でるように滑らせていく
美世は反射的に俺の肩を掴んでその動きに戸惑いを示すが
考えている事が伝わったのか徐々にこちらの舌の動きに合わせるように絡ませてくる
「ちゅっ……んっ、Pさん……ちゅぷっ……」
彼女の求める、労わるような優しいキスにはなっているだろうか?
免疫の無い美世にとっては自分ももっと動くべきなのか判断に迷っている感じだ
美世も舌を絡ませてはいるが、チロチロと舌先で軽く擽る程度のものなので
全体的な主導権は俺の方にあるみたいだ
あのドレス姿の美世を今は好き放題できているという事実が
脳裏にちらついては燻り始める情欲を必死に抑えてキスに集中する
唾液に塗れた粘膜が幾度となく交差し、美世の吐息が中に入ってくる
くぐもった声ですら心地よく感じ、じわじわと身体が疼き始める
「ちゅぷっ……美世……はぁ……ちゅるっ……」
美世は頬を紅潮させ、額にうっすらと汗を滲ませている
腕の中で四肢を小刻みに震わせてはキスの熱に当てられたのか
目を細めてせがむ様に口内を無防備にしている
今まで何度もしてきたはずのキスなのに、少しペースを変えただけで
互いの理性が焼き切れたかのように抑えていた衝動が止められない
気が付けば、美世の口の端から溢れた唾液が彼女の顔を伝っていた
またいつでもキスができるように鼻先が触れ合う距離は保ったまま
唇を離すと同時に二人分の唾液が卑猥な糸を引く
「今日はなんか変な感じだね……」
「それは俺も思ってたな」
互いの荒い息を感じて、同じ意見だった事に二人でクスリと笑い合う
美世のために気を使っていた事は俺に対しても効果があったようで
キス一つでこんなに違うものなのかと驚いていた
不意に、美世が俺の手をとり自分の胸に押し当ててくる
下着の上からでもハッキリとその膨らみの弾力が手に伝わってくる
「どうしたんだよ、急に……」
「あたしはよくわからないけど……男の人って発散しないと悶々するんでしょ?」
「そりゃするけど、別に溜まってるわけじゃないんだけどな」
「どうだか……あたしとしては自分で払いのけて欲しかったんだけどね」
要するに、このまま性欲を溜めこんでいたら
礼子さんの時みたいに流されそうになりかねない
ならあたしの身体を使って発散させれば良い、と言う事らしい
流されていたわけじゃないんだけどな……
普段はそんな欠片も出さないが、意外に嫉妬深いところもあるようだ
その解決策に自分の身体を差し出す所がなんともいじらしい
当の本人は胸を触らせる大胆な行動に照れながら
口を膨らませてプイッと拗ねる様に俺と目を合わせようとしない
年下にこんなに気を使われるているのが情けないと思う反面
手の平に感じる美世の柔らかな感触と微かな鼓動に
早々に興奮し始めている自分がいた
これじゃあ心配されるのも無理ないか……
そんな自分でも、ちゃんと美世だけを見ているとアピールするように
優しく胸に触れている指を動かしていく
動き始めた俺に安心したのか、美世も逸らしていた顔を元に戻してくれた
「んっ……」
力を入れすぎないようにと、ぎこちない手つきで優しく揉みほぐす
指先に合わせて胸の形が変わっていき、その度に美世は唇を震わせ呻き声を漏らす
胸を揉むというのは意識してやると恥ずかしくて仕方がない
美世は特に気にした様子もなくうっとりとこちらを見つめている
俺は胸を両手で揉み続ける。身体は疼いて仕方なかったが冷静さを失わないようにしていた
微かに身をよじらせる仕草が艶めかしく、気を抜くと一気にもっていかれそうだからだ
その気持ちを誤魔化すように俺は美世の下着に手をかけた
「あっ、やっぱり脱がされるのも恥ずかしいね……」
「どっちもそんな変わらないだろ……」
「そ、そうだけど……」
気の抜けたやり取りの中で露わになった美世の胸は
ほんのりと上気していて高揚しているのが窺える
「あんまりマジマジと見られると恥ずかしいんだけど……」
普段の生活からは想像できない程にきめ細やかで透き通るような肌に目が離せない
そんな視線から逃れるように胸を隠す仕草も、逆に興奮を刺激するだけだった
そっと、美世の腕を掴み隠している胸を出すようにさせる
少し抵抗されるかと思ったけどそんなことはなく、あっさりと両手はどけられた
「うぅ……んっ…あうっ!」
そのまま片方を口に含み舌先で丹念に舐めまわし、もう一方は手で揉み続ける
同じくらい汗をかいたはずなのに、女の子特有の石鹸の様な香りが鼻腔を擽る
大して変わらない行動をしていて、何故こうも良い匂いがするのだろうか?
「……なぁ、こういうのって気持ち良いのか?」
「そ、そんな事……あんっ! 聞かないでよ……!」
バカみたいな事を聞いてしまったが、困惑しながらもちゃんと答えるのが美世らしい
しかし、このまま胸ばっかり攻めているのも芸がないと思い
俺は徐々に空いている手を下腹部の方にずらしていく
そして、美世の布地に指を掛けてずり下げる
「んっ……Pさん……!」
俺も自分のトランクスを脱ぎ捨て、互いに一糸纏わぬ姿になると
再び抱き合って身体を密着させると、肌の温もりと同時に美世の鼓動が伝わってくる
彼女からも背中に腕を回してその柔らかな身体を強く押し付けてくる
美世は肌を密着させるのが好きなようで、抱き合いながら愛撫する事がほとんどだ
正直動きづらいのだけど、幸せそうな美世の表情を見ていると「まぁ、良いか」と思える
激しくする事は無くても、この瞬間に感じる彼女の体温や匂いは俺も大好きだった
他の誰でも得られないであろうこの穏やかな感覚が、美世が特別なんだと強く意識させられる
「Pさん……ゆ、指……くぅっ!」
陰裂に指を這わせると、ピクリと肩を震わせか細い声を漏らして身をよじる
その度に柔肌を強く擦りつけられては、さらに密着感が増していく
粘膜のうっすらとした湿り気と共に、普段は触られる事の無い場所への刺激に震えている
「痛かったらちゃんと言うようにな……」
「んっ……大丈夫だから、好きなようにして良いよ」
毎度毎度の献身的な言葉に胸が熱くなる
こうして勢いに任せないセックスに、初めての様な感覚を覚えているのか
一挙一動が美世にとって負担になっていないか気になってしまっている
そんな俺を安心させるように、投げかける質問には嬉しそうに答えてくれた
そんな彼女を傷つけないように心がけ、中央の溝に這わせた中指に力を込めていく
密着しているせいか美世の吐息の全てが直に感じられる
その感触が心地良くなっていき、俺は絶え間なく入口を刺激し続けていた
グニグニと少し押されるだけの微弱な刺激に
美世はモジモジと内股を擦り合わせては、粘膜を弄られる度に切ない声をこぼす
ゆっくりと、でも確実にその場所から潤みを帯びていくのがハッキリと分かる
「き、今日はなんでそんな……きゃうっ!?」
「さぁ、なんでだろうな? でも、美世も喜んでるみたいだし」
「は、恥ずかしい事言わな……んんっ!?」
照れ隠しの言葉を遮るように、中指を美世の中に侵入させていく
第一関節が入ったくらいで指の腹を撫で擦っていくと
その度に新たな蜜が分泌されるかのようにクチュクチュと卑猥な音が鳴り響く
優しく愛撫されている感覚を身体が感じ取っているのか
滲み続ける愛液に美世は困ったように視線を逸らしている
何もしなければなすがままされてしまうのに、そんな反応の一つ一つが可愛らしく思える
中指一本でも締め付けを感じる膣内に少しづつ指を突きいれていく
いつもこの中に自分のモノを捻じ込んでいるのが大丈夫だろうかと心配になる
「うぅ……あんっ! ……んっ……」
指の根元まで入った所で軽く動かし続けると、美世の声も次第に大きくなってくる
何度か口づけを交わしながら、乱暴な動きにならないように意識して指を這わせる
その動きにリンクするように身体に巻き付いた腕に力が入り、絡みつく舌が震えていた
「……はぁ……はぁ……Pさん、ち、ちょっとまって……」
急に美世が中止を懇願するように、蕩けた表情でこちらに語りかける
その様子は苦痛とは違うまた別の何かを堪えているような感じだ
「悪い……痛かったのか?」
「ううん、そうじゃなくて……ゆ、指が……んっ……」
今は全く動かしていないのに、その微かな指の震えにすら反応している
いつもより敏感になって絶頂を迎えそうなのだろうか?
それならば止める必要もないだろうと、俺は再び指を動かし始めた
「あうっ……だ、駄目っ!? P、Pさん……そ、それ以上したら……くうっ!?」
急に動き出した指に内臓を抉られたかのように美世が悲鳴を上げる
少し動かしただけで、すぐに身体をビクビクと震わせてイってしまったようだ
俺の指がグイグイと何度も締め付けられる
その瞬間、生温かい水の様なものが美世の中から飛沫をあげて噴き出した
それはまるで漏らしているかのようだったが、断続的に水滴が飛び散る様子は少し違うようだ
何度も何度も美世の入口から透明な液体が噴き出し、シーツにシミを作っていく
初めて見た光景に少し驚いたが、性の知識として俺はこれを聞いた事がある
これが「潮を吹く」ってことなんだろう、初めて見たな……
呆気にとられてそんな事を考えている間も、美世は絶頂に身体を震わせていた
「……はぁ……はぁ……」
少し時間がたっても絶頂の余韻に荒い息が収まりきらない美世が、俺の胸の中で小さくなっている
先程の潮のせいで俺の手や、美世の太股、ベッドのシーツはぐっしょり濡れている
愛液とは違い水のようなものなので、それほどベタつく事はなかった
「え、えっと……そんなに感じてたのか……?」
聞こえているのか分からないが、微かに開いている目で俺の事を見つめている美世に
自分で愛撫しておきながらなんとも情けない質問を投げかけてしまう
その後、横顔に柔らかい衝撃が走る。この感触は今日3度目のアレだろう
「も、もう! だから止めてって言ったじゃない!?」
美世が自由な手で掴んでいたクッションが
ボスボスと見た事を頭の中から叩きださせるような勢いで何度も俺を叩く
全然痛くないのだが、顔を真っ赤にさせて慌てる美世は微笑ましい
「わ、わかったから叩くな!」
「うぅ……こんなの見られるのは流石にあたしも……」
腕が動かないように抱き寄せると、美世はあっさりと大人しくなった
それでも潮を吹くのを見られたのが凄く恥ずかしいようで
胸板に顔を密着させて、俺とは目が合わないようにしている
「……まぁ、こんな姿を見られるのも特権って事だな」
「……んっ……Pさん……」
顔を強引に持ち上げて唇を重ねる
そのまま舌を美世の唇に這わせると安心したように目を細める
どうやらさっきの潮吹きで嫌われると思っていたららしい
相変わらず車のように真っ直ぐな考え方は、俺の心をつかんで離してくれそうにない
「……じゃあ、入れるぞ?」
「んっ……わかった」
落ち着きを取り戻した俺達は、中断していた行為を再開する
美世の脚をゆっくりと開き、その中心に向かって狙いを定める
亀頭の先に美世の陰裂が触れるとその熱さに全身がゾクリと震えた
美世がコクリと合図をしたのを確認し、ゆっくりと腰を前に美世の膣内へと入っていく
あれから両手で数える程しか身体を重ねていない美世の膣内は少しきつくを感じる
それでも、ゆっくりとした愛撫で蕩け切った中は徐々に奥へと俺を誘う
「……うぅ……んんっ……P、Pさん……入って……!」
うわ言の様に呟く美世に覆いかぶさり、抱きしめながら少しづつ潜り込ませていく
美世もすがりつくように腕を背中に回してくる
密着感が増し、美世の吐息が耳元にハッキリと聞こえてくる
これだけくっついていると上手く動けないものの
瞼を閉じながら安心しきった声を漏らす美世の姿はとても愛おしく感じた
その愛情を表現するかのように、俺は緩やかに腰を揺らし始めた
「んっ! ……あぁっ! ……中で……!」
すっかりと敏感になってしまった膣内を刺激され、美世の艶声が響き渡る
密着してる美世の胸の柔らかさと程良い弾力に、興奮は際限無く増加して行き
全身で美世を感じながら俺はゆっくりと腰をグラインドさせる
「あうっ! ……P、Pさん、気持ち良い?」
俺の欲望を発散されるために挿入されているにもかかわらず
健気にも俺の事を気にしている美世の言葉に、抱きしめる腕に力が籠る
俺は彼女の滑らかな肌の感触と肉棒を締め付ける圧迫感に
ジリジリと思考を焼かれてしまい「あぁ」と短く返すのが精一杯だった
美世は自ら動かずじっとしているが、その中は俺のモノを放さないようにピッタリと吸いついてくる
少し動くだけでも全体が刺激される快感はとてつもないものだった
徐々に分泌される愛液の量も増していき、結合部がグチュグチュと音を立てる
美世の表情や声色が熱を帯びていく度に俺の欲望も肥大化していった
「ひうっ!? あっ……あぁっ! ……ね、ねぇ……Pさん?」
「……はぁ……どうしたんだ?」
「んっ……もっと、動いて……大丈夫だから」
「…………」
「あたしは……んくっ! ……Pさんの……せ、専用車だから……あうっ!?」
その言葉に燻っていた劣情が一気に燃え上がる
優しくして欲しいと言う美世の言葉を頭に留め
速度はそのままで、腰の動かす幅を大きく
根元まで押しつけるようにして、亀頭を美世の奥深くまで届かせる
「ひっ……あぁ……お、奥に当たって……!」
奥を叩く度に中が勢いよく収縮して締め上げてくる
全体を圧迫する力加減が快感神経を刺激しては
纏わりつくような美世の膣内に、急速に熱が下腹部にこみあげてくる
先程から1ミリの隙間もない程に密着していた美世の肌は火照り始め
うっすらと滲み始めた汗が、わずかに残った隙間を埋めていく
立ちこめる美世の匂いを吸い込むと、美世は恥ずかしげに腰をくねらせる
不意に、横にあった美世の顔が俺の正面に移動してきたかと思えば、唇を塞がれる
俺はそれに答えるように、互いの名を呼びながら唾液を口内で行き来させる
結合部は止めどなく溢れる愛液と、何度も奥深くまで突きいれられる腰に白く泡立っていた
「あむっ……んちゅっ……Pさん……だ、大好き……!」
美世が嬉しそうに呟くと、膣内の締め付けはより一層強くなり、射精を促される
唇が触れる程度の啄ばむような口づけを繰り返しては
上と下で繋がっている事に、二人で興奮を募らせていく
汗に濡れた頬に髪の毛が張りつかせ、喘ぐ姿は艶めかしくて
限界に近い快感に連動するように、美世の身体の震えが大きくなっていく
蕩けるように熱くなった膣内は、挿入しているだけでも射精してしまいそうだった
「はぁ……はぁ……美世、そろそろ……!」
「んっ……あ、あたしも……!」
限界に近い射精感を訴えると、美世も頷きながら絶頂を訴えかけてくる
そして全力で俺にしがみつき、勢い余って立てられた爪が背中に食い込んできた
鋭い痛みに一瞬ビクリとしまったが、今の美世を安心させられるなら安いものだ
俺は痛みを誤魔化すように、強く抱きしめてはそのまま膣奥を責め続けた
「ひあっ!? P、Pさん……だ、だめっ! そんなにされたら……んんっ!!」
美世は切羽詰まった悲鳴と同時に身体を弓なりに反らせ
その瞬間に、膣内がこれまでにない程にきつく全体を締め上げてくる
強烈な締め付けに俺は限界を迎えるのを感じ、美世の中から引き抜こうとしたが
いつの間にか絡められていた美世の脚が腰を引く事を許さなかった
「み、美世……離せっ!」
「だ、大丈夫……だから!」
振りほどこうとしたが美世の脚はガッシリと組みつき離れそうにない
スローモーションのように映る美世の顔はとても穏やかな顔をしている
その顔見てしまった俺は、前か後ろかを一瞬考えた後に迷うことなく腰を深く美世の中に突き入れた
「あっ……あぁぁ……Pさんのが全部……入って……」
根元まで埋没させた肉棒をさらに強く押し付け
ビクビクと脈打っては、美世の中へと精液を注ぎ込んでいく
それは2回や3回じゃ収まる事なく
何度も何度も身体に残っている全ての精液を絞り出すように
美世は大量注ぎ込まれる精液に肌を粟立たせ、全身を震わせる
先程絶頂を迎えたばかりの膣内は収縮を繰り返し
締め付けては最後の一滴まで絞り出すように擦りつけていた
「はぁ……はぁ……美世」
「んっ……Pさん……」
額に滲んだ汗をぬぐう事もせずに、美世の頬を撫でる
すると彼女も嬉しそうにはにかんで、甘えるように頬を擦り寄せてきた
俺達はしばらく繋がったまま、そんな甘い時間を過ごしていた
「やっぱり、ここのは美味しいね!」
この言葉を最近聞いたようなデジャヴを感じる
目の前では口いっぱいに牛丼を頬張る美世がいる
飯時を逃してしまったせいか俺達しかいない店内で
俺は呆れたように頬杖をつきながらその姿を眺めていた
「本当にここで良かったのか……?」
「ん? Pさんも好きじゃなかった?」
嫌いではないけど、およそデートには似つかわしくない場所だ
まぁ、仕事帰りなのでデートってわけじゃないけど……
「…………」
お腹が空いていたのか目の前のご飯を嬉しそうに食べる美世を見る
普段はあまり見せない姿だが、本当はこうやって美味しい物を食べるのが好きなのだろう
ドレス姿の美世、怒る美世に献身的な美世
ここ数日で色んな姿を見てしまったせいか、そのギャップに驚きを隠せない
とは言っても、そこが可愛いところなんだけど
「ね、今度のモーターショーの仕事ってあたしは出れるかな?」
「あぁ、多分大丈夫だと思うよ。先方にはもう話してあるしな」
「ふふっ、やった! 頑張ろうね、Pさん!」
とるのにそんなに苦労したわけじゃないのにはちきれんばかりの笑顔で喜んでくれる
こうやって真っ直ぐに嬉しい気持ちを表現してくれたり
少し姿を変えただけで見違えるほど綺麗になったり
俺が誰かに誘惑されたら本気で怒ったりと
どうにも俺の専用車に飽きる要素は無さそうだ……
「どうしたの、今日のPさんはなんか変だね?」
「別に、いつもと変わらないけどな」
「そっかな、あたしにはちょっと元気なさそうに見えたんだけど……」
「まぁ、さっきから気になってる事はあるけどな」
「なに? なにか心配事でもあるの?」
「……ご飯粒、またついてるぞ」
寝ます、とりあえずここまで
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1370784428/
モバP「七夕ではなく」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1373121372/
地の文であればこの二つです
工藤忍「ホワイトドロップ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1363729791/
栗原ネネ「いつか見た空の下で」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1369515151/
>>133
書き溜めが終わるのが
深夜になってしまうのでそのせいでしょうね
■君はフルスロットル その4
「やっぱり、ここのは美味しいね!」
目の前で、美世が美味しそうに牛丼を食べている
仕事の帰り、丁度夕飯時だったため
俺達はどこにでもあるようなチェーン店に来ていた
「よく食べるな……」
「だって、お腹すいてたんだもん!」
およそデートには似つかわしくない場所だ、
周りを見ると男女で来ているのは俺達しかいない
美世は食事に関して、美味しければそれで良いという考え方なので
二人でご飯を食べに行く時は、こういうチェーン店に行く事もよくある
美世は仕事の時はポニーテールにしていた髪をほどいて
女性にしては少し多いであろう大盛りを頬張っている
仕事が好評価を得られて肩の荷が下りたのか、終始ご機嫌だった
「それにしても、今日は盛り上がってたね!」
「確かに、雰囲気も良い感じだったし、成功だな」
美世の言うとおり、今日のイベントは盛況に終わった
プロデューサーとして己の仕事を全うしてきたという自負はある
しかし、こうしてイベントなんかが成功するのは
これまで彼女が頑張った行いの結果だと思う
そんな美世の努力が認められるのは、素直に嬉しかった
「……でも」
「ん?」
食べ終わったようで、箸を丼の上に置き
俺から目線を逸らしてため息をつく
口元にご飯粒がついていて、少し気になる
「他の子、可愛いよね。みんな、元気で人懐っこくて……」
「そんな事心配してたのか?」
美世が言うなよと言いそうになったが、慌てて別の言葉に切り替える
よくよく考えれば、彼女は初対面の相手にそこまで積極的では無いタイプだ
「そんな事ないよ」と言ってしまえばそれまでだが
それは彼女の期待している答えでは無いだろう
「あたしも、積極的に話せるようにした方が良いかな?」
「積極的にって……何かあるのか?」
「ううん、車に乗ってたなら少し緊張もほぐれるんだけど……」
前向きなのは良い事だが、明らかにその方向性を間違っている
でも美世らしい挨拶だなと、少し苦笑してしまった
「ね、Pさんもやっぱり積極的な方が良いよね?」
「……別に、今の美世のままで良いと思うけどな」
「今のままか……Pさんがそう言ってくれるなら、それで良いのかな……」
俺に対しても消極的だと思っていたようだ
これ以上、積極的になったらどんな事が起こるか想像もつかない
納得したように「うんうん」と一人で頷いている
悩み事が解決したようでなによりだ
もっとも悩み事と言うほどの物なのかはわからないが
美世が積極的にね……
時折、こういう事を言いだすのはお決まりみたいなものだ
アイドルになったのもそうだが、自分を変えたい願望があるのだろう
俺は美世の話を聞いていて、食べ遅れた牛丼を掻き込みながら考えていた
既に食べ終わった美世が、ずっとこっちを見ているので少々食べづらい
あっ、そう言えば……
ふと、一通のメールを思い出す
返事も早くしとかないといけないな、と思っていたが
本当は断ろうと思っていたので、返すのが遅れて逆に良かった
「なぁ、美世」
「ん? どうしたの、Pさん?」
話しかけられるとは思っていなかったのか
キラキラとした目でこっちを見てくる
そんな期待する話でも無いんだけど……
「……とりあえず、ご飯粒ついてるぞ」
「あっ!」と急な出来事に
顔を紅潮させる美世の口元のご飯粒を指ですくう
まだオロオロとしている彼女を無視して俺は話を進めた
「へぇー、おっきなパーティーなんだね!」
「まぁ、あいつのプロダクションはでかいからなぁ」
あれから数日が経ち
日が落ち始め、辺りが暗くなってきた頃
俺達は遠目からでも視界に収まりきらないビルの前に立っていた
「場所はここで合ってるな」
横から覗き込んでくる美世と一緒に
プリントアウトしてきた地図の目的地と
現在地が合っている事を確認する
以前、俺宛に送られてきた一通のメール
それは、友人のプロデューサーからのパーティーへの招待状だった
何でも、プロダクションのランクが上がったらしい
本来ならうちみたいな貧乏プロダクションでは縁の無い話だ
「でも、本当にあたしたちだけ良いの?」
「あんまり大勢で詰めかけても邪魔になるだけだからな」
俺と美世の二人でこのパーティーに参加するように返信しておいた
俺もそうだが、美世もあいつの事は知っている
もっとも、美世は接点が余りないので最初は行くことをためらっていたけど
それに、こんな盛大なパーティーなら、著名な人も大勢来ているだろう
なら、この場は楽しむと言うよりは仕事という意味合いの方が強い
こんな場に慣れる事も美世にとってプラスになるだろう
そう思った俺は、美世と二人で参加することを決めた
「うぅ……だ、大丈夫かな。あたし、変じゃないよね?」
行くことが決まってから、美世はずっとこんな調子だ
手に持っている大きな袋と俺を交互に見つめている
美世の手にしている袋は、ちひろさんに用意してもらった物だ
中にはうちで使う事は無いであろう、水色のパーティードレスが入っている
美世にパーティー衣装なんて持ってないと言っていたので
ちひろさんに相談すると、色んな人を当たって見つけてくれた
たまにはこういう経験をしておくのも、悪くないだろう
「変じゃないさ。さ、とりあえず中に入ろうか」
「う、うん……」
いつもと変わらないスーツ姿なので気兼ねする事は無い俺と
キョロキョロと自信無さげに、俺の後ろにひっついている美世
今日一日はずっとこんな感じになりそうだな……
「……ふぅ」
口から白い煙を吐き、もやもやと漂うそれを眺める
美世が着替えをしている間、俺は一人喫煙所に来ていた
この仕事で煙草を吸うなどご法度だが、どうにも止められない
大仕事をする前はこっそり一服をして、気分を落ち着ける癖がついている
美世は別に良いと言っていたが、俺は彼女の前では吸わないようにしていた
そうなると一日一本吸えるか吸えないかの頻度になってしまうので
こうやってどこかの喫煙所で一服するのは久々だ
外に喫煙所があって助かった、これなら強烈に匂いが付く事もないだろう
まぁ、吸って無い人からしたらあっさりと分かってしまうんだけど
「……そろそろ戻るか」
すっかり短くなった煙草を灰皿でもみ消し、吸い殻を中に入れる
周りを見ると、もうすぐパーティーが始まるらしく
のんびり煙草を吸っていたのは俺だけだったようだ
「……ん?」
不意に、誰かに見られているのに気付く
ボーっとしていて気が付かなかったが
さっきからずっとこっちを見ていたようだ
「…………」
夜の闇の中、大きなビル特有の強烈なライトの光を受けて
キラキラと光る見慣れたポニーテール
控えめ……しかし、しっかりと彼女を引きたてているメイク
色白で透き通るような肩を露出させながら
胸や腰回りのラインが遠目でもハッキリとわかり
まるで、スタイルの良い彼女のためだけに作られたような水色のドレス
胸元には俺が昔あげたネックレスを揺らしながら
じっとこちらを見つめていた
「……ど、どうしたの? やっぱり変かな!?」
「い、いや……」
いつの間にか言葉を失い、見つめてしまっていたらしい
頬を桜色に染めて、いつものように俺に問いかけてくる
毎日見ていたはずなのに、こんなにも惹きつけられるとは思っていなかった
パーティードレスを着た女性は何度も見てきたはずなのに
彼女の姿を見た途端、普段のそれとは違う感覚に戸惑いを覚える
恋人の変化に戸惑うなんて、ベタベタな反応を自分でするとは意外だ
心臓の鼓動が激しくなっているのを感じる
何も言わない俺の事を気にしているのか
さっきから彼女はこの沈黙が恥ずかしく感じているようで
どうしたら良いのかわからず、モジモジとしている
「あ、あの……Pさん?」
「……良く似合っているよ美世」
やっとの事で、一言だけ。それでも素直な感想を絞り出す
それを聞いた美世は、顔を真っ赤にさせながら
それでも嬉しそうに、はにかんで「うん」と短く答えた
参加の案内状を受付に渡して、煌びやかな廊下の中を二人で歩く
進むにつれて、会場に向かう他の参加者達も見え始めた
その姿はセレブと言った感じだろうか……
言葉の意味をちゃんと知っているわけではないが、一言で表すならそうだろう
いかにも金持ちそうな男性や、貴婦人のような女性
プロダクションのパーティーと言えば、業界人ばかりかと思っていたが
こういう人達との繋がりもあるものらしい
「なんか、俺達の方が逆に目立ちそうだな……」
おそらく、ここに呼ばれている人達はコネクションがあるのだろう
廊下で談笑をしている人達もちらほらといる
俺達はこのプロダクションのプロデューサーと知り合いなだけだ
つまり、他に知人が全くいないパーティーになっている
「大丈夫だよ、Pさん!」
いきなり少し大きめの声を出して、美世が俺の腕に身体を預けてくる
ムニュリと薄手の服にしか守られていない胸の感触がダイレクトに伝わってくる
腕に感じた柔らかな美世の感触にドキリとし、俺は慌てて問いただす
「な、何してんだよ!?」
「えっ!? エスコートだけど……」
「そんな抱きつくみたいなエスコートがあるか!!」
「そうなの!? 映画とかでこんな風にしてなかったっけ?」
美世の曖昧な記憶では男性の腕に抱きついて女性が歩いているらしい
もちろんエスコートとはそういうものではない、腕に手を預ける程度で良いのだ
こんな風に歩いていたら「私達は付き合っています」とアピールしながら歩いてるのと変わらない
「そもそも、無理にしなくても良いだろ……」
「あっ、言われてみれば組んでる人あんまりいないね……」
「俺達もいつも通り普通にしてれば良いんだよ」
「ふふっ、そうだね。じゃあ、Pさん。今日はあたしとずっと一緒に居てね?」
「えっ、ずっと一緒にって……何かあるのか?」
「ん? あたしのことはPさんが引っ張ってくれるって信じてるから!」
「……なるほどね、わかったよ」
「一人じゃ、きっとこんな所にいられないから……原田美世をよろしく、Pさん!」
すっかりといつもの調子に戻った美世が悪戯っ子のように笑う
俺がいる事で美世は緊張する事なく振る舞えるようだ
とはいえ、俺自身も美世がそばに居てくれる事で余計な緊張はせずに済みそうだった
「皆様、本日は我がプロダクションのパーティーにお集まりいただき……」
形式的な挨拶と共にプログラムが淡々と紹介される
お偉いさんの挨拶に所属アイドル達によるスペシャルライブ
立食形式でプログラムの進行中も好きな料理を摘んで良いらしいが
俺は周りの目を気にして食事は控えていた
こういう所はどこで誰に見られているか分かったもんじゃない
そういう堅苦しい空気が嫌だったのが最初に断ろうと思ってた理由だ
「ヒールってグリップが効かなくて歩きにくいね……」
「そういや美世がハイヒールを履いてるのは初めて見たな」
「うん、あたしも初めて履くから。みんな電車で来てるのかな? クルマの運転しづらいよね……」
「男が運転するかタクシーだろ。女の人は運転しないだろうからな」
「そっか、それもそうだよね」
隣では皿にいくつかの料理を乗せて、美世がモグモグと食べている
料理の種類は豊富でチラリと見ると、普段はお目にかかれないような料理が並んでいる
美世に取ってこさせてこっそり食べようかと考えたが
今日は歩きにくいとぼやいていたので止めた
「でも、あたしだけ食べてて良いの? Pさんも食べれば良いのに」
「俺はかまわないよ、許可は貰っているし好きなだけ食べると良い」
「ふーん……ね、挨拶はもうしなくて良いの?」
「あぁ、知り合いにはもう済ませてあるからな」
始まる前は意気込んで見知った顔に挨拶しておこうと
美世と会場内を一通り回ってみたが、それ程知っている人はいなかった
10人程度に軽く会釈をして、もう今日の仕事は終わったようなものだ
他のプロダクションのパーティーで自分のとこの宣伝をするわけにもいかない
基本的には大人しくしておいて適当に顔を覚えてもらえればそれで良い
「そっか、ならPさんはあたしと二人で話でもしとこっか!」
「そうすることにしておくよ」
最初は美世が積極的に云々で悩んでいた事の参考になるかと思ったが取り越し苦労だったようだ
挨拶の時も臆することなく話していたし、適度な距離感を持っていた
言っていた通り人見知りするかもしれないけど、順応性はかなり高いのだろう
「あら? 珍しいわね、こんな所に来るなんて……」
美世とあれこれ言い合っていると、後ろからある人に声をかけられる
振り返るとこのプロダクションの中でも数少ない俺の知人が立っていた
「お久しぶりです、礼子さん。今日はライブには出ないんですか?」
「オトナ組はライブじゃなくてお客様のお相手担当なのよ」
全身から妖艶な雰囲気を放ち、見る者を釘づけにする魅力
胸元がしっかりと見えるドレスはグラマラスなこの人が着ると何とも危険だ
これでアイドルというのだから驚きだ。女優と言われても信じてしまうだろう
「……Pさん、この人は?」
「高橋礼子さんだよ、テレビとかで見た事あるだろう?」
小声で美世が俺に聞いてくる。そう言えば美世は初対面だったのを忘れていた
俺自体は仕事で何度かあった事はあるので面識はあった
近寄りがたい雰囲気はあるが、話してみると気さくで良い人だ
度々投げかけられる誘惑じみた発言さえなければだが……
「そっちの子はあなたの所のアイドルなの?」
「えぇ、そうですね。礼子さんは初めて会うと思います」
「は、原田美世です! よ、宜しくお願いしますっ!!」
「ふふっ、高橋礼子よ。宜しく……」
彼女の作りだす独特の空気に飲まれてか、美世はこれまでにないくらい緊張していた
無理もないだろう、俺も初めてこの人と話した時はこんな感じだった
あいつはどうやってこの人をアイドルにスカウトしたんだろうといつも思う
俺はカチコチに固まっている美世の代わりに話を進める事にした
「今日はまた大胆な衣装なんですね……」
「ふふ、見せてるのよ……わざと」
「あんまりやりすぎると言い寄られるんじゃないんですか?」
「あなたが誘ってくれるなら私はかまわないわよ?」
「はぁ……それができる勇気があるなら良いんですけどね」
「そんなにココが見たいなら……あ・と・で・ね」
そう言いながら肩にかかっている紐を少しずらす仕草をする
いつもながらこの人の俺をからかう様は大胆だ
最近はかわせるようになってきたが昔はドギマギさせられたものだ
「……Pさん?」
しかし、このやり取りを快く思っていなかったのが約一名いた。美世だ
初めて見るやり取りに冗談で言っているのが分かっていないんだろう
ジト目と言うやつだろうか、俺の事を座った目で睨みつけてはスーツの裾を掴んでいる
「美世、これは礼子さんの冗談だから」
「ふふっ、美世ちゃんには少し早かったかしら?」
「……どういう意味ですか?」
珍しく礼子さんが火に油を注ぐ、同じように冗談だと言ってくれると思っていた
今の美世を刺激するとどうなるかは一目瞭然のはずなのに
「Pくん、ちゃんと今夜の予定は空けてあるわよね?」
「いや、そんな話聞いて無いですけど……」
「この後は……オトナの時間、ね?」
スッと、唇にあてた指先を俺の胸に当てる
何て事は無い動作だが、この人がやるだけでその一つ一つが厭らしい
この後に何をするかが誰が見ても理解できる程だ
「しませんよ。礼子さん、今日はやけに絡んできますね……」
「あら? そうかしら?」
胸にあてられた指がゆっくりと滑っていく
かすかな刺激に俺の身体はビクリと反応してしまう
言葉ではハッキリと拒絶を示すが、身体は固まって動けなかった
「……それ以上は止めてくれませんか?」
その言葉と共に、俺の横から伸びた手が礼子さんの腕を掴む
華やかなドレスに身を包ませながらも有無を言わせない瞳
久々に見るけど本気で怒っている美世がそこにいた
「冗談なのはわかってますけど、あんまり気分が良くないんです」
「……ちょっと、痛いわね。力入れすぎじゃないかしら?」
「……ごめんなさい、握力は強い方なんで」
さっきまで和やかだった場が重苦しい雰囲気に変わる
ステージではアイドル達が歌って会場を盛り上げている
にも関わらず、ここだけ別空間のように息苦しい
3人の中で唯一の男の俺が、一人だけゴクリと唾を飲み込んでいた
「ふぅ……こんなに敵意を剥き出しにされるなんてね」
「……す、すいません! 礼子さん! 美世、手を離すんだ!」
「う、うん……」
礼子さんのため息一つでハッと我に返り、慌てて美世をたしなめる
美世は少し戸惑いながらも掴んでいた手を離してくれた
「ふふっ、良いのよ。ごめんなさいね、少しからかいすぎたわ」
「い、いえっ、こちらこそ済みません」
どんな理由があったとしても手を出してしまったのは良くない
握られた場所が少し赤くなった腕を見て、俺は何度も礼子さんに頭を下げていた
その横でまだ怒りが収まらない美世が礼子さんを睨みつけてけしかける
「なんなんですか、なんでPさんにこんな事するんですか?」
「彼が魅力的だから、それじゃダメかしら」
「とてもそんな風に見えないんですけど」
「……一つ、聞いても良いかしら? なんでそこまで彼にこだわるの?」
「それは……」
「もしかして、あなた達、付き合ってたりなんかしないわよね?」
「!?」
誘導尋問というやつだろうか、初めからそれを確かめるためにこんな事をしたんだろう
気付かなかった俺もそうだが美世はまんまと乗せられてしまったようだ
こうなると形勢は完全に逆転し、美世もバツが悪そうに視線を逸らしてしまった
「Pくんはどうなの? 付き合ってるのかしら?」
「……えぇ、そうですね。美世とは付き合ってます」
「P、Pさん!?」
俺は少し考えた後に迷う事なく答えた。ここまで追い詰められたら隠しても無駄だろう
色んな人を見てきた礼子さんの目を欺くなんて端から無理だったのかもしれない
特にそれが色恋沙汰なら尚更だろう。俺はこのまま賭けに出る事にした
遅かれ早かれこういう事態が来る事は分かっていた
それでも諦めるわけにはいかない。何とかこの場を凌がなければ
一言で今まで隠し通してきた事が全て崩れ去る状況に心臓の鼓動が早まる
その事を理解しているのか、美世は黙って俺のスーツの袖を掴んでいた
「アイドルとプロデューサーがそういう関係になるなんて……イケない人ね」
「ですね、自分でもそう思う時があります」
「で、どうするつもりなの? 私にはバレてしまったけど?」
「……厚かましいですけど、秘密にしておいて貰って良いですか?」
礼子さんの瞳が俺を見据える。俺も負けじと礼子さんの視線に合わせる
それがどれくらい続いたんだろうか? ほんの数秒の出来事だけど凄く長く感じた
すると突然、礼子さんがクスクスと笑い始めた
「かまわないわよ、幸せそうな二人に水を差すなんてできないわ」
「……ありがとうございます」
「別に感謝される事はしてないけど、それにしても美世ちゃんは少し我慢を覚えた方が良いわよ」
「そうですね……気をつけるように言っておきます」
「ふふっ、さて、邪魔者は去ろうかしら……」
ヒラヒラと軽く手を振りながら礼子さんは去っていった
去り際に「ごめんなさいね」と美世に言っていたが返事は返ってこない
それもそうだ、美世は目の前のやり取りについていけてなかったのだから
「……あ、あのPさん。大丈夫なの?」
「あの人なら大丈夫だよ、信用できる」
「そっか……ごめんね、あたし、今度会った時にちゃんと謝っておくね」
「その方が良いだろうな」
美世は叱られた子供のようにおずおずと俺に聞いてくる
今回の事態は美世が手を出さなければ起きなかった
怒られると思っていたか、さっきまでの勢いは完全に消えてしまっている
「とにかく、相手が礼子さんで助かったよ」
危ない所だったが見る人が見ればバレバレだと、礼子さんなりの警告だったんだろう
少し油断し始めていた俺達にとっては良い緊張感を与えてくれた
「で、でもPさん……」
「もうあんまり気にするな、俺からも礼子さんには謝っとくから。それよりせっかく綺麗になったのに勿体無いぞ?」
「……き、綺麗って……うんっ、そうだね!」
吹っ切れたかのように、美世にも元気が戻ってきたようだ
どっかに感情のシフトレバーでも付いてるんじゃないかと思うくらい切り替えが早い
そんな事言ったら怒られるだろうから言わないけど……
「ふふっ、Pさん!」
「どうかしたのか?」
「スリップしそうになったとき、支えてくれるのって、うれしいなっ!」
「これからもずっとあたしと並走してね、Pさん!」
そう言いながら、俺に腕に身体を預けてくる
今日二度目の美世なりのエスコートして欲しい合図なんだろうけど
さっき言われたばっかりなのに、気をつけて欲しいもんだ
ま、今なら問題は無いだろうだけどな……
いつの間にか、ライブもクライマックスを迎えていた
真っ暗になった俺達の場所は誰からも見えないだろう
少しの間だけなら大丈夫だと、俺は何も言わないでいた
ネクタイを外し、上着をハンガーにかけて一息つく
長かったパーティーも終わりを迎え、俺は家に帰ってきていた
「凄いパーティーだったね!」
俺の後ろではまだ興奮が冷めていないのか、美世がはしゃいでいる
帰る時に何も言わず、真っ直ぐに俺の家に向かったらそのままついてきた
今更ながら泊まる気が満々だったんだろうと呆気にとられる
「今日は帰らなくて良いのか?」
「うん、明日はあたしもPさんもオフじゃない」
明日は急ぎの仕事もないため俺も休みをもらっていた
パーティーで疲れてしまうだろうと思っていたが予想は当たっていたようだ
礼子さんの一件を思い出すと、ドッと疲れを感じてしまい俺はソファーに腰を下ろした
大きなプロダクションではないが、社内でもそれなりの立場があって、収入も悪くない
何より俺はこの仕事が気に入っているのもある
それが一瞬で崩れ去るという恐怖は、考えるだけでも気疲れしてしまう
「あっ、これ明後日にちひろさんに返さないといけないんだよね」
メイクを落とし、いつものラフな格好に着替えた美世が荷物を片づけている
こうして見るとやっぱりいつも通り何も変わっていない
それでも、あの時に受けた衝撃は今でもハッキリと頭の中に焼き付いている
女は変わるものとは良く言ったものだ。これで俺は彼女に二回も一目惚れした事になる
「ん? どうしたの、あたしの顔に何かついてる?」
視線に気がついたのか不思議そうな顔でこちらを振り返ってくる
あれだけの緊張感の中、ハッキリと言い返せたのは美世だったからなんだなと
特に面白い事があったわけじゃないけど何だかおかしくなって笑ってしまった
「えっ!? な、何で笑うの?」
「ははっ……いや、別に何にも無いよ」
「もう! そんなこと言われても、笑われたら気になるじゃない!」
「なぁ、美世……」
「どうかしたの?」
「今からしようか」
「……えっ?」
ふと、自然に自分の口から出たセリフに驚く。そんな事は全く考えていなかったからだ
しかし、いざ言ってしまうと美世の事が愛おしくなり。徐々に気持ちが高ぶってくる
美世は少し驚いた後に、意味を理解したのか顔が茹でダコのように赤く染まっていき
そして、俺の視界が一瞬にして暗くなり顔に柔らかい衝撃が走った
「な、な、なに言ってるの!?」
美世が照れ隠しに投げたクッションが顔面を直撃したらしい
そう言えば今まで美世にしようかと言われた事はあるが俺からは言った事が無い
いつもそういう雰囲気になってしまったらする、といった感じだった
「そう言うのって……ほら、もうちょっとムードとかあるじゃない……」
帰宅直後にセックスしようかと言われては、美世の言うとおりムードもへったくれもない
我ながら美世に対しての言葉の選ばなさに呆れてしまう
気を許しているとは言え流石にこれはいきなりすぎたようだ
「……悪かった、今のは無しにしてくれ」
「そ、そうなの……?」
「あぁ、俺もよく分からないけど気づいたら言ってたんだよ」
「なんなのそれ……」
理解できないといいたげな顔で見られるが俺も理解できていない
本心なんだろうけど美世がその気じゃないなら無理にする必要もないだろう
頭を冷やそうとして立ちあがろうとしたその時、手をグイッと掴まれる
「……する」
「……ホントに?」
真っ赤な顔をして目を合わせようとせず、それでも小さくコクリと頷く
その仕草がたまらなく愛おしく感じ、気が付けば彼女を抱きしめていた
明りを豆電球のみにして、薄暗いオレンジ色に染まる室内
俺は早々に来ていた服を脱ぎ捨てて下着一枚になっていた
こうして流れをに身を任せずに一からセックスをするのは今までなかった
互いに初めての時のような気持ちになり何だか変な感じだ
美世がゆっくりと自分の服を脱いでいくその姿は何だか厭らしい
そして、今日二度目の暗闇と顔面への柔らかい衝撃を感じる
「そ、そんなにジロジロ見ないでよ! 恥ずかしいじゃない!!」
投げつけられたクッションを手元に置いて、明後日の方向を見る
自分で脱ぐと言う行為に羞恥心を感じているのだろうか
いつものような勢いは全く感じられず動きもどこかぎこちない
付き合い始めてから美世と身体を重ねた回数はそれほど多くなかった
互いに仕事もあるし、別にしなくても満足している部分もあったからだ
それ故にセックスを意識させる行為に慣れない部分もあった
「ん、脱いだよ……」
下着姿の美世がドサリとベッドの上に仰向けに寝転がる
緊張しているのか、何もせずにそのままジッとこちらを見つめている
今までじっくりと見る機会がなかったが、美世のスタイルはかなり良い
スラリと長い手足に、着やせするのかステージ衣装の時は目立たないが、胸も大きい方だ
普段からよく動いている事もあって、全体的に引き締まった身体はメリハリがついていて
流線形のボディというのがピッタリな表現だろう
「……どうかしたの?」
「いや、美世は何もしないのかなって……」
「あたしだって、たまに思い切り優しくされたいな……」
「だって、一応女の子だし……ねっ! Pさん……!」
そう言いながら頬を上気させてはにかんでいる
その姿に努めて冷静になろうと思っていた決意は跡形もなく消え去り
気が付けば俺は彼女の上に覆いかぶさっていた
鼻先が触れ合う程に顔の距離が近づく、美世が頷くのを確認すると俺は唇を重ねた
密着させた唇の隙間から美世の口内へと舌を侵入させる
「んっ……ちゅっ……んんっ!」
ディープキスをするのは初めてではないのだけど
先程の美世の言葉を思い出し、いつもよりゆっくりと美世の舌を撫でるように滑らせていく
美世は反射的に俺の肩を掴んでその動きに戸惑いを示すが
考えている事が伝わったのか徐々にこちらの舌の動きに合わせるように絡ませてくる
「ちゅっ……んっ、Pさん……ちゅぷっ……」
彼女の求める、労わるような優しいキスにはなっているだろうか?
免疫の無い美世にとっては自分ももっと動くべきなのか判断に迷っている感じだ
美世も舌を絡ませてはいるが、チロチロと舌先で軽く擽る程度のものなので
全体的な主導権は俺の方にあるみたいだ
あのドレス姿の美世を今は好き放題できているという事実が
脳裏にちらついては燻り始める情欲を必死に抑えてキスに集中する
唾液に塗れた粘膜が幾度となく交差し、美世の吐息が中に入ってくる
くぐもった声ですら心地よく感じ、じわじわと身体が疼き始める
「ちゅぷっ……美世……はぁ……ちゅるっ……」
美世は頬を紅潮させ、額にうっすらと汗を滲ませている
腕の中で四肢を小刻みに震わせてはキスの熱に当てられたのか
目を細めてせがむ様に口内を無防備にしている
今まで何度もしてきたはずのキスなのに、少しペースを変えただけで
互いの理性が焼き切れたかのように抑えていた衝動が止められない
気が付けば、美世の口の端から溢れた唾液が彼女の顔を伝っていた
またいつでもキスができるように鼻先が触れ合う距離は保ったまま
唇を離すと同時に二人分の唾液が卑猥な糸を引く
「今日はなんか変な感じだね……」
「それは俺も思ってたな」
互いの荒い息を感じて、同じ意見だった事に二人でクスリと笑い合う
美世のために気を使っていた事は俺に対しても効果があったようで
キス一つでこんなに違うものなのかと驚いていた
不意に、美世が俺の手をとり自分の胸に押し当ててくる
下着の上からでもハッキリとその膨らみの弾力が手に伝わってくる
「どうしたんだよ、急に……」
「あたしはよくわからないけど……男の人って発散しないと悶々するんでしょ?」
「そりゃするけど、別に溜まってるわけじゃないんだけどな」
「どうだか……あたしとしては自分で払いのけて欲しかったんだけどね」
要するに、このまま性欲を溜めこんでいたら
礼子さんの時みたいに流されそうになりかねない
ならあたしの身体を使って発散させれば良い、と言う事らしい
流されていたわけじゃないんだけどな……
普段はそんな欠片も出さないが、意外に嫉妬深いところもあるようだ
その解決策に自分の身体を差し出す所がなんともいじらしい
当の本人は胸を触らせる大胆な行動に照れながら
口を膨らませてプイッと拗ねる様に俺と目を合わせようとしない
年下にこんなに気を使われるているのが情けないと思う反面
手の平に感じる美世の柔らかな感触と微かな鼓動に
早々に興奮し始めている自分がいた
これじゃあ心配されるのも無理ないか……
そんな自分でも、ちゃんと美世だけを見ているとアピールするように
優しく胸に触れている指を動かしていく
動き始めた俺に安心したのか、美世も逸らしていた顔を元に戻してくれた
「んっ……」
力を入れすぎないようにと、ぎこちない手つきで優しく揉みほぐす
指先に合わせて胸の形が変わっていき、その度に美世は唇を震わせ呻き声を漏らす
胸を揉むというのは意識してやると恥ずかしくて仕方がない
美世は特に気にした様子もなくうっとりとこちらを見つめている
俺は胸を両手で揉み続ける。身体は疼いて仕方なかったが冷静さを失わないようにしていた
微かに身をよじらせる仕草が艶めかしく、気を抜くと一気にもっていかれそうだからだ
その気持ちを誤魔化すように俺は美世の下着に手をかけた
「あっ、やっぱり脱がされるのも恥ずかしいね……」
「どっちもそんな変わらないだろ……」
「そ、そうだけど……」
気の抜けたやり取りの中で露わになった美世の胸は
ほんのりと上気していて高揚しているのが窺える
「あんまりマジマジと見られると恥ずかしいんだけど……」
普段の生活からは想像できない程にきめ細やかで透き通るような肌に目が離せない
そんな視線から逃れるように胸を隠す仕草も、逆に興奮を刺激するだけだった
そっと、美世の腕を掴み隠している胸を出すようにさせる
少し抵抗されるかと思ったけどそんなことはなく、あっさりと両手はどけられた
「うぅ……んっ…あうっ!」
そのまま片方を口に含み舌先で丹念に舐めまわし、もう一方は手で揉み続ける
同じくらい汗をかいたはずなのに、女の子特有の石鹸の様な香りが鼻腔を擽る
大して変わらない行動をしていて、何故こうも良い匂いがするのだろうか?
「……なぁ、こういうのって気持ち良いのか?」
「そ、そんな事……あんっ! 聞かないでよ……!」
バカみたいな事を聞いてしまったが、困惑しながらもちゃんと答えるのが美世らしい
しかし、このまま胸ばっかり攻めているのも芸がないと思い
俺は徐々に空いている手を下腹部の方にずらしていく
そして、美世の布地に指を掛けてずり下げる
「んっ……Pさん……!」
俺も自分のトランクスを脱ぎ捨て、互いに一糸纏わぬ姿になると
再び抱き合って身体を密着させると、肌の温もりと同時に美世の鼓動が伝わってくる
彼女からも背中に腕を回してその柔らかな身体を強く押し付けてくる
美世は肌を密着させるのが好きなようで、抱き合いながら愛撫する事がほとんどだ
正直動きづらいのだけど、幸せそうな美世の表情を見ていると「まぁ、良いか」と思える
激しくする事は無くても、この瞬間に感じる彼女の体温や匂いは俺も大好きだった
他の誰でも得られないであろうこの穏やかな感覚が、美世が特別なんだと強く意識させられる
「Pさん……ゆ、指……くぅっ!」
陰裂に指を這わせると、ピクリと肩を震わせか細い声を漏らして身をよじる
その度に柔肌を強く擦りつけられては、さらに密着感が増していく
粘膜のうっすらとした湿り気と共に、普段は触られる事の無い場所への刺激に震えている
「痛かったらちゃんと言うようにな……」
「んっ……大丈夫だから、好きなようにして良いよ」
毎度毎度の献身的な言葉に胸が熱くなる
こうして勢いに任せないセックスに、初めての様な感覚を覚えているのか
一挙一動が美世にとって負担になっていないか気になってしまっている
そんな俺を安心させるように、投げかける質問には嬉しそうに答えてくれた
そんな彼女を傷つけないように心がけ、中央の溝に這わせた中指に力を込めていく
密着しているせいか美世の吐息の全てが直に感じられる
その感触が心地良くなっていき、俺は絶え間なく入口を刺激し続けていた
グニグニと少し押されるだけの微弱な刺激に
美世はモジモジと内股を擦り合わせては、粘膜を弄られる度に切ない声をこぼす
ゆっくりと、でも確実にその場所から潤みを帯びていくのがハッキリと分かる
「き、今日はなんでそんな……きゃうっ!?」
「さぁ、なんでだろうな? でも、美世も喜んでるみたいだし」
「は、恥ずかしい事言わな……んんっ!?」
照れ隠しの言葉を遮るように、中指を美世の中に侵入させていく
第一関節が入ったくらいで指の腹を撫で擦っていくと
その度に新たな蜜が分泌されるかのようにクチュクチュと卑猥な音が鳴り響く
優しく愛撫されている感覚を身体が感じ取っているのか
滲み続ける愛液に美世は困ったように視線を逸らしている
何もしなければなすがままされてしまうのに、そんな反応の一つ一つが可愛らしく思える
中指一本でも締め付けを感じる膣内に少しづつ指を突きいれていく
いつもこの中に自分のモノを捻じ込んでいるのが大丈夫だろうかと心配になる
「うぅ……あんっ! ……んっ……」
指の根元まで入った所で軽く動かし続けると、美世の声も次第に大きくなってくる
何度か口づけを交わしながら、乱暴な動きにならないように意識して指を這わせる
その動きにリンクするように身体に巻き付いた腕に力が入り、絡みつく舌が震えていた
「……はぁ……はぁ……Pさん、ち、ちょっとまって……」
急に美世が中止を懇願するように、蕩けた表情でこちらに語りかける
その様子は苦痛とは違うまた別の何かを堪えているような感じだ
「悪い……痛かったのか?」
「ううん、そうじゃなくて……ゆ、指が……んっ……」
今は全く動かしていないのに、その微かな指の震えにすら反応している
いつもより敏感になって絶頂を迎えそうなのだろうか?
それならば止める必要もないだろうと、俺は再び指を動かし始めた
「あうっ……だ、駄目っ!? P、Pさん……そ、それ以上したら……くうっ!?」
急に動き出した指に内臓を抉られたかのように美世が悲鳴を上げる
少し動かしただけで、すぐに身体をビクビクと震わせてイってしまったようだ
俺の指がグイグイと何度も締め付けられる
その瞬間、生温かい水の様なものが美世の中から飛沫をあげて噴き出した
それはまるで漏らしているかのようだったが、断続的に水滴が飛び散る様子は少し違うようだ
何度も何度も美世の入口から透明な液体が噴き出し、シーツにシミを作っていく
初めて見た光景に少し驚いたが、性の知識として俺はこれを聞いた事がある
これが「潮を吹く」ってことなんだろう、初めて見たな……
呆気にとられてそんな事を考えている間も、美世は絶頂に身体を震わせていた
「……はぁ……はぁ……」
少し時間がたっても絶頂の余韻に荒い息が収まりきらない美世が、俺の胸の中で小さくなっている
先程の潮のせいで俺の手や、美世の太股、ベッドのシーツはぐっしょり濡れている
愛液とは違い水のようなものなので、それほどベタつく事はなかった
「え、えっと……そんなに感じてたのか……?」
聞こえているのか分からないが、微かに開いている目で俺の事を見つめている美世に
自分で愛撫しておきながらなんとも情けない質問を投げかけてしまう
その後、横顔に柔らかい衝撃が走る。この感触は今日3度目のアレだろう
「も、もう! だから止めてって言ったじゃない!?」
美世が自由な手で掴んでいたクッションが
ボスボスと見た事を頭の中から叩きださせるような勢いで何度も俺を叩く
全然痛くないのだが、顔を真っ赤にさせて慌てる美世は微笑ましい
「わ、わかったから叩くな!」
「うぅ……こんなの見られるのは流石にあたしも……」
腕が動かないように抱き寄せると、美世はあっさりと大人しくなった
それでも潮を吹くのを見られたのが凄く恥ずかしいようで
胸板に顔を密着させて、俺とは目が合わないようにしている
「……まぁ、こんな姿を見られるのも特権って事だな」
「……んっ……Pさん……」
顔を強引に持ち上げて唇を重ねる
そのまま舌を美世の唇に這わせると安心したように目を細める
どうやらさっきの潮吹きで嫌われると思っていたららしい
相変わらず車のように真っ直ぐな考え方は、俺の心をつかんで離してくれそうにない
「……じゃあ、入れるぞ?」
「んっ……わかった」
落ち着きを取り戻した俺達は、中断していた行為を再開する
美世の脚をゆっくりと開き、その中心に向かって狙いを定める
亀頭の先に美世の陰裂が触れるとその熱さに全身がゾクリと震えた
美世がコクリと合図をしたのを確認し、ゆっくりと腰を前に美世の膣内へと入っていく
あれから両手で数える程しか身体を重ねていない美世の膣内は少しきつくを感じる
それでも、ゆっくりとした愛撫で蕩け切った中は徐々に奥へと俺を誘う
「……うぅ……んんっ……P、Pさん……入って……!」
うわ言の様に呟く美世に覆いかぶさり、抱きしめながら少しづつ潜り込ませていく
美世もすがりつくように腕を背中に回してくる
密着感が増し、美世の吐息が耳元にハッキリと聞こえてくる
これだけくっついていると上手く動けないものの
瞼を閉じながら安心しきった声を漏らす美世の姿はとても愛おしく感じた
その愛情を表現するかのように、俺は緩やかに腰を揺らし始めた
「んっ! ……あぁっ! ……中で……!」
すっかりと敏感になってしまった膣内を刺激され、美世の艶声が響き渡る
密着してる美世の胸の柔らかさと程良い弾力に、興奮は際限無く増加して行き
全身で美世を感じながら俺はゆっくりと腰をグラインドさせる
「あうっ! ……P、Pさん、気持ち良い?」
俺の欲望を発散されるために挿入されているにもかかわらず
健気にも俺の事を気にしている美世の言葉に、抱きしめる腕に力が籠る
俺は彼女の滑らかな肌の感触と肉棒を締め付ける圧迫感に
ジリジリと思考を焼かれてしまい「あぁ」と短く返すのが精一杯だった
美世は自ら動かずじっとしているが、その中は俺のモノを放さないようにピッタリと吸いついてくる
少し動くだけでも全体が刺激される快感はとてつもないものだった
徐々に分泌される愛液の量も増していき、結合部がグチュグチュと音を立てる
美世の表情や声色が熱を帯びていく度に俺の欲望も肥大化していった
「ひうっ!? あっ……あぁっ! ……ね、ねぇ……Pさん?」
「……はぁ……どうしたんだ?」
「んっ……もっと、動いて……大丈夫だから」
「…………」
「あたしは……んくっ! ……Pさんの……せ、専用車だから……あうっ!?」
その言葉に燻っていた劣情が一気に燃え上がる
優しくして欲しいと言う美世の言葉を頭に留め
速度はそのままで、腰の動かす幅を大きく
根元まで押しつけるようにして、亀頭を美世の奥深くまで届かせる
「ひっ……あぁ……お、奥に当たって……!」
奥を叩く度に中が勢いよく収縮して締め上げてくる
全体を圧迫する力加減が快感神経を刺激しては
纏わりつくような美世の膣内に、急速に熱が下腹部にこみあげてくる
先程から1ミリの隙間もない程に密着していた美世の肌は火照り始め
うっすらと滲み始めた汗が、わずかに残った隙間を埋めていく
立ちこめる美世の匂いを吸い込むと、美世は恥ずかしげに腰をくねらせる
不意に、横にあった美世の顔が俺の正面に移動してきたかと思えば、唇を塞がれる
俺はそれに答えるように、互いの名を呼びながら唾液を口内で行き来させる
結合部は止めどなく溢れる愛液と、何度も奥深くまで突きいれられる腰に白く泡立っていた
「あむっ……んちゅっ……Pさん……だ、大好き……!」
美世が嬉しそうに呟くと、膣内の締め付けはより一層強くなり、射精を促される
唇が触れる程度の啄ばむような口づけを繰り返しては
上と下で繋がっている事に、二人で興奮を募らせていく
汗に濡れた頬に髪の毛が張りつかせ、喘ぐ姿は艶めかしくて
限界に近い快感に連動するように、美世の身体の震えが大きくなっていく
蕩けるように熱くなった膣内は、挿入しているだけでも射精してしまいそうだった
「はぁ……はぁ……美世、そろそろ……!」
「んっ……あ、あたしも……!」
限界に近い射精感を訴えると、美世も頷きながら絶頂を訴えかけてくる
そして全力で俺にしがみつき、勢い余って立てられた爪が背中に食い込んできた
鋭い痛みに一瞬ビクリとしまったが、今の美世を安心させられるなら安いものだ
俺は痛みを誤魔化すように、強く抱きしめてはそのまま膣奥を責め続けた
「ひあっ!? P、Pさん……だ、だめっ! そんなにされたら……んんっ!!」
美世は切羽詰まった悲鳴と同時に身体を弓なりに反らせ
その瞬間に、膣内がこれまでにない程にきつく全体を締め上げてくる
強烈な締め付けに俺は限界を迎えるのを感じ、美世の中から引き抜こうとしたが
いつの間にか絡められていた美世の脚が腰を引く事を許さなかった
「み、美世……離せっ!」
「だ、大丈夫……だから!」
振りほどこうとしたが美世の脚はガッシリと組みつき離れそうにない
スローモーションのように映る美世の顔はとても穏やかな顔をしている
その顔見てしまった俺は、前か後ろかを一瞬考えた後に迷うことなく腰を深く美世の中に突き入れた
「あっ……あぁぁ……Pさんのが全部……入って……」
根元まで埋没させた肉棒をさらに強く押し付け
ビクビクと脈打っては、美世の中へと精液を注ぎ込んでいく
それは2回や3回じゃ収まる事なく
何度も何度も身体に残っている全ての精液を絞り出すように
美世は大量注ぎ込まれる精液に肌を粟立たせ、全身を震わせる
先程絶頂を迎えたばかりの膣内は収縮を繰り返し
締め付けては最後の一滴まで絞り出すように擦りつけていた
「はぁ……はぁ……美世」
「んっ……Pさん……」
額に滲んだ汗をぬぐう事もせずに、美世の頬を撫でる
すると彼女も嬉しそうにはにかんで、甘えるように頬を擦り寄せてきた
俺達はしばらく繋がったまま、そんな甘い時間を過ごしていた
「やっぱり、ここのは美味しいね!」
この言葉を最近聞いたようなデジャヴを感じる
目の前では口いっぱいに牛丼を頬張る美世がいる
飯時を逃してしまったせいか俺達しかいない店内で
俺は呆れたように頬杖をつきながらその姿を眺めていた
「本当にここで良かったのか……?」
「ん? Pさんも好きじゃなかった?」
嫌いではないけど、およそデートには似つかわしくない場所だ
まぁ、仕事帰りなのでデートってわけじゃないけど……
「…………」
お腹が空いていたのか目の前のご飯を嬉しそうに食べる美世を見る
普段はあまり見せない姿だが、本当はこうやって美味しい物を食べるのが好きなのだろう
ドレス姿の美世、怒る美世に献身的な美世
ここ数日で色んな姿を見てしまったせいか、そのギャップに驚きを隠せない
とは言っても、そこが可愛いところなんだけど
「ね、今度のモーターショーの仕事ってあたしは出れるかな?」
「あぁ、多分大丈夫だと思うよ。先方にはもう話してあるしな」
「ふふっ、やった! 頑張ろうね、Pさん!」
とるのにそんなに苦労したわけじゃないのにはちきれんばかりの笑顔で喜んでくれる
こうやって真っ直ぐに嬉しい気持ちを表現してくれたり
少し姿を変えただけで見違えるほど綺麗になったり
俺が誰かに誘惑されたら本気で怒ったりと
どうにも俺の専用車に飽きる要素は無さそうだ……
「どうしたの、今日のPさんはなんか変だね?」
「別に、いつもと変わらないけどな」
「そっかな、あたしにはちょっと元気なさそうに見えたんだけど……」
「まぁ、さっきから気になってる事はあるけどな」
「なに? なにか心配事でもあるの?」
「……ご飯粒、またついてるぞ」
寝ます、とりあえずここまで
15:48│モバマス