2013年11月05日
小梅「白坂小梅のラジオ百物語」Season4
第三十九夜 妖精の輪
幸子「142’sの!」
小梅「ら、ラジオ……」
輝子「百物語だぜーっ! フハハハハー!!」
輿水幸子(14)
http://uploda.cc/img/img521b89968b12a.jpg
白坂小梅(13)
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星輝子(15)
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SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1381326554
幸子「輝子さん、音割れしない程度にってスタッフさんが」
輝子「あ、はい。すいません」
小梅「え、えっと、白坂小梅のラジオ百物語……今日は、二人に来てもらって、さ、三人でお送りします」
幸子「改めまして、こんばんは。輿水幸子です」
輝子「こ、こんばんは。フヒッ……星輝子、だよ」
幸子「いつもは、小梅さんと、鷹富士茄子さん、白菊ほたるさんの三人なんですよね?」
小梅「うん。そう」
幸子「番組的には、茄子さんっていう大人が一人いるから、まとめやすそうですね」
小梅「そう……かも。茄子さんにはお世話になってる……」
幸子「まあ、今日はこのボクにその役目が期待されているんでしょうけど。もちろん、しっかりと果たしてみせますよ。ボクはカワイイですから!」
輝子「う、うん。幸子は……カワイイ」
小梅「うん。さっちゃんはカワイイよ」
幸子「当然です! さて、今日からこのラジオは第四シーズンの開始と言うことでしたね」
輝子「……そんな……おめでたい時に、私たちがゲストで……いいのかな?」
小梅「偶数シーズンの初回は……私の仲良しの人に来てもらってるから……」
幸子「メインパーソナリティの小梅さんがやりやすいようにするのが一番ですからね! ボクたちはユニット活動もしてるから話しやすいでしょう」
輝子「……そっか、なるほど」
幸子「それでは、進めていきましょうか。第三シーズンの感想なども来ているようですが、それは後回しとしまして……」
小梅「うん……。まずは、メインコーナーの……アイドル百物語から」
輝子「さ、幸子はもうやってるよね。こっくりさんの……やつ」
幸子「そうです。ボクの体験談でしたね」
小梅「かっこよかったって……リスナーの人からも、好評……だった」
幸子「それはうれしいですね。まあ、あんな経験、しないにこしたことはないと思いますけど」
輝子「だから……きょ、今日は私の……親友の話」
小梅「やっぱり……キノコにまつわるお話?」
輝子「そう……。妖精の輪の、お話」
幸子「あ。あれって、キノコ関連だったんですか?」
輝子「そうだよ。まず菌糸が……」
小梅「あ、そ、その話は、ちゃんとコーナーに入ってから……」
輝子「あ……そうだった」
幸子「ふむ。では、早速輝子さんのお話を聞くとしましょうか。アイドル百物語。本日は星輝子さんのお話です」
小梅「どうぞ……お聞きください」
輝子「……うん。フヒヒ」
○一言質問
小梅「急に自分がキノコ人間になってたら……どうする?」
輝子「トモダチと同化……。きっと、楽しいね……フフ」
えっと、星輝子です……。
え?
もう自己紹介はいい?
あ、うん。
あの……。
ええと、このお仕事……アイドルをやってると、いろんなお仕事をすることになる。
……昔は想像しなかったようなことも。
幸子のはちょっと別な気もするけど。
うん。
私はトモダチ……キノコのことが好きって業界で話題になってるらしくて……。
クイズ番組とか、キノコ関連の話題だと呼ばれることが……多い。
その中で……大学でキノコの研究をしている先生の取材とかも……したりする。
これは、そのときに聞いたお話、だよ。
ここでさっきの話に戻るけど……。
妖精の輪っていう現象が、あるんだ。
輪っかの形に植物が枯れたり、逆に……輪の部分だけすごい成長したりする。
これを昔の人は妖精が踊り狂った後だって言ってたみたい。
実際には……キノコの菌糸がある一ヶ所から地下で伸びていくのが原因。
菌糸の先端の部分が栄養を吸い取って植物を枯らしたり、逆に植物の栄養になる物質を出して、にょきにょき生やしちゃったりする。
これが菌輪っていう現象。
他にも世界のある地域では、土の中の虫が同じような役割を果たして、できあがることもあるんだって。
でも、今日は菌輪の話。
その研究室では菌輪を作る種類のキノコを研究してたんだけど……。
ある学生さんの地元で、よく見られるってことで、調査しに行ったんだ。
学生さんによると、山に入ると立派な妖精の輪がいくつも見られるんだって。
ただ、地元では、それは……なんとなく避けられてるような感じがあった。
まあ……森の中で、いっぱい下生えも生えてるところに、急に丸く草が枯れてたら、びっくりするよね。
うん、私もびっくりする。
地元では、それは忌み地って呼ばれてて、特に子供は近づかないようにって言われてたらしいよ。
神隠しにあうかもしれないからって。
西洋の妖精も……人をさらったりするらしいから、似たような言い伝え……かも?
実際、その山のある村に着くと、先生は、村の人たちから言われたらしいんだ。
忌み地をいじるのは構わないけど、絶対にその中に体の全部を入れちゃいけないって。
先生は不思議に思って、体の一部ならいいんですか、と聞いてみた。
そうしたら、腕を入れるくらいは大丈夫だって。
ただ、体の全部じゃなくても、出来れば頭は入れない方がいいだろうな、と言ってる人もいたみたい。
いろいろな風習があるものだなと思ったって。
でも、そういう……地方の言い伝えに口を出すのは先生の分野とは違うから、村の人の言うことを尊重することにしたんだって。
その土地の菌輪はそこまで大きなものではないから、体を入れなくても土とかのサンプルは採れる。
それに、それよりも、周囲の状況を記録したりのほうが多いから。
そうして、調査が始まって……。
だいぶ記録やサンプルが集まったと同時に、ちょっと慣れてきて、気が抜けはじめた頃。
先生は、輪の中に頭をつっこみそうになった。
足が木の根っこにひっかかって、転びかけた拍子に、体が輪の中に入っちゃったんだね。
途端に、目の前が真っ暗になったんだって。
めまいとかそういう暗さじゃなく、急になにかに包まれたみたいな感覚。
それと同時に、とんでもない恐怖を感じて、先生は体をひねった。
どさっと地面に倒れたときは、輪の中から体は外れてて、同時に、目の前に元通りの風景が戻っていたって。
『後から考えてみたんですけどね、星さん』
先生は困ったような顔で笑いながら、私に言ったよ。
『あれは、巨大な猛獣かなにかの口の中に頭を突っ込んだような、そんな恐ろしさでしたよ』
って。
幸子「……体を全部入れてしまうとなにかに喰われる、ということでしょうか」
輝子「そ、そうなのかな。よく……わからないけど……」
小梅「妖精の宴に遭遇すると……人はあちらの世界に連れて行かれてしまう……とか、そういうお話はよくあるけど……」
幸子「どう連れて行かれるか、というのはよく考えたらあんまり思い描いたことがありませんでしたが……」
輝子「食べられちゃう……か。怖いね」
小梅「う、うん……。そういえば……なにかの取材だったのに、このお話、ここでしちゃって大丈夫だった?」
輝子「フヒッ、それは大丈夫……。この部分、没になったし……」
幸子「そりゃ、キノコの取材で、このお話はカットでしょうねぇ」
小梅「……面白いのに」
幸子「いやいや」
輝子「でも、もっと……面白い話も聞いたよ。キノコの中毒症状を、先生が自分で試してみた話とか……」
小梅「……危なくないの?」
輝子「生きてたから……たぶん、大丈夫? いわゆる毒キノコもおいしいらしいし……」
小梅「おいしいんだ……」
幸子「いやいやいや! 危ないですからね! 専門家だから出来ることですからね!」
小梅「な、なるほど」
輝子「幸子は賢い」
幸子「そこはかとなく脱力感を覚えるのですが、気のせいでしょうか!」
小梅「えっと、それはともかく、次のコーナーに……」
輝子「そうだね……。ええと、次は、マジックマッシュルーム……」
幸子「だけではなく! 幻覚にまつわるお話ですね。いいんですかね、これは……。まあ、どんなお話があるのかを……」
第三十九夜 終
さて、そんなわけで、第四シーズン開幕です。
この第四シーズンは三十九夜〜五十夜までの予定ですから、これが終わればちょうど折り返し地点となりますね。
今シーズンも二、三日に一本の割合で進めて行けたらと思っております。
それでは、今シーズンもおつきあいいただけると幸いです
まだ昼間ですが、今日はこれから投下させてもらいます。
第五十夜 歌声
ほたる「さて、今日もそろそろアイドル百物語のお時間ですが……」
茄子「このアイドル百物語も、本日で五十。百の物語の半分となります」
小梅「ようやく……折り返し」
茄子「そうですね。これまでと同じだけのお話がこれからもあると思うと、なかなかすさまじいものがありますね」
ほたる「内容が内容ですからね……。ほっとする話もあったりはしますが……」
小梅「みんな面白いけど……刺激は強いかも、ね」
茄子「そうですねー。心がざわつくものは多いですよね。まあ、だからこそ面白い部分もあるのでしょうけれど」
小梅「うん。……そうだと思う」
ほたる「普段聞く機会の……そうそうないお話もたくさんありましたしね」
小梅「うん。みんな、それなりの話を知ってると思うけど……。普通は話す場がないかも」
ほたる「それは……ありますね。きっと」
茄子「当人は不思議だと思っていても、人に話すほどだろうかと思うこともありますしね」
小梅「うん……。そういう話を掘り出せてたとしたら……嬉しいと思う」
茄子「ええ、本当に。さて、それで今回はどなたのお話に光を当てるのでしょうか」
小梅「今日は……五十番目だから……。ほたるちゃんに、お願いしてる」
ほたる「はい。今日は……これから私が話すことになります」
茄子「第一夜は私でしたものね」
小梅「うん」
茄子「そうなると、百物語、その最後はやはり……」
小梅「ふふ。それは言わないお約束……だよ」
茄子「ふふ。そうでした。さて、ほたるさんのお話ということであれば、その内容についてあらかじめ聞くより、実際に話に入ってもらう方が良いでしょう」
ほたる「は、はい。がんばります」
小梅「じゃあ……よろしく」
ほたる「はい。では、拙いところもあるでしょうが、どうぞ聞いてください」
ええと……。
では、始めます。
このラジオをお聞きのリスナーのみなさんなら既にわかっておられると思いますが……。
私は、怖い話を熱心に聞く、というタイプではありません。
学校で噂になっていたり、芸能界でも色々と漏れ聞くことはありますが、この番組に参加するまでは、あまり興味を持ちませんでした。
正直、その……怖いですし。
ただ、この番組を通じて、怖いだけではなく、様々なお話があるのだとわかってきました。
そして、これまで私が経験していたことの中にも、語る意味があるものもあるのだと、なんとなく思えるようになりました。
今日は、その一つをお話しします。
私にとっては印象深いお話です。
これは、私が今の事務所にお世話になる以前のこと……。
とあるテレビ番組のオーディションに合格し、アシスタント役をすることになったんです。
地方局のごく短い番組の、それもただ物を持って行くだけの仕事でしたが、放映されるお仕事に違いはありません。
私は喜んでお仕事に通いました。
ただ……ちょっとした役ですから、どうしても局にいる時間の大半は待ち時間になるんです。
メインのパーソナリティーさんたちの進行や、スタジオの都合……色々なものがあわさって来ますから。
その時間は言われればいつでも動けるように待機しているのが私の仕事なわけです。
でも……その……。
いまよりもずっと売れてないアイドルだった私としては、その時間も有効に使いたかったんです。
体の動きをチェックしたり、歌を練習したり……。
スタッフさんも、そのあたりはわかっているんです。
アイドルにしろ、芸人さんにしろ、駆け出しの時期は、皆そうですから……。
そのときのスタッフさんは、優しい人たちで、私が待ち時間に自主練をするのに、大道具倉庫を使うようにと言ってくれました。
もちろん、ちゃんと呼ぶ声が聞こえる場所で、という条件で。
私は喜んで倉庫で自主練をしていました。
呼ばれたらすぐ行かないといけませんから、倉庫の入り口近くで、出入りの人の邪魔にならないようにして。
そして、そこで練習するようになってからしばらくして。
気づいたことがありました。
歌声が聞こえてくるんです。
とっても小さな声で、私の耳にはその歌詞も定かではありませんでしたが、たしかに聞こえるんです。
何度も、何度も、同じメロディを繰り返すその歌が。
それも、私が練習しているときは、いつも。
その歌を聞く度、私はなんだか嬉しくなっていました。
きっと、倉庫の奥に私と同じように練習している人がいるんだと思ったからです。
私は待機の関係上、奥に行くことは出来ませんでした。
だから、実際にその人の姿を見ることもありませんでした。
けれど、同じような立場の人がいるというのは、どこか勇気づけられるものです。
そうして、倉庫の奥からはかすかな歌声が響き、倉庫の入り口では私が体を動かしたり、表情の練習をしたりしているという状況が続きました。
けれど、私が参加していた番組は、しばらくすると内容が変化して……。
私はそのタイミングで番組を外されました。
そのとき、私はようやくのようにスタッフさんに尋ねたんです。
倉庫の奥で練習されているのはどなたですかって。
でも、スタッフさんの答えは意外なものでした。
『あの倉庫に入ってるのは君くらいだよ。奥に入るのは係の者だけで、他は管理の関係で立ち入り禁止』
私は、入り口の……見えるところにいるから、特に許されていたのだ、とその人は説明してくれました。
では、あの歌声はいったいなんだったというのでしょう。
私が密かに励まされていたあの歌声は。
私はなんとか頼み込み、大道具の方と一緒に、奥へと入ってみました。
そのときは歌声はしていませんでしたが、記憶の中のあの声に向かって進んだんです。
そこには、パレットに乗せられた大道具や、様々な梱包物があるばかりで、人の気配どころか、最近誰かが立ち入った痕跡もありませんでした。
ただ……。
ぽつんと楽譜が置かれていました。
流通しているような立派なものではなく、五線紙に手書きで記したものを、まとめて綴じたもの。
そんなものが、そこにあったんです。
当時、私はどういうことなのかよくわかりませんでしたし、大道具さんは、なんでこんなものが放ってあるんだと憤っていました。
でも、いまになって思うんです。
もしかしたら、あの歌は……。
あのかすかな歌声は、その楽譜から漏れ出てきていたんじゃないかって……。
茄子「素敵なお話ですね」
ほたる「……ただの妄想かもしれませんけどね」
小梅「で、でも、聞こえたんだから……」
ほたる「私以外の人が……聞いていたなら、また違うんでしょうけど……」
茄子「いえ、きっと歌声は響いていたんでしょう。それが果たして楽譜そのものから発せられたものなのかはわかりませんが」
小梅「器物が変じて意思を持って動き出すお話は昔からあるし……ね。遺品やなにかに霊がつくことも……もちろんある」
茄子「ええ。ですから、妄想だなんて言わないでいいんですよ。それに、それじゃあ……つまらないじゃないですか」
ほたる「……ふふ。そうかもしれません」
小梅「……でも、なんにしても、ちゃんと聞いてみたかったね」
ほたる「そうですね。そこは惜しいことをしたと思います。……とても綺麗な声でしたから」
茄子「まあ、それくらいの位置取りのほうがいいのかもしれませんよ。あまり近づきすぎても……」
ほたる「……それはそうかもしれませんね。正体が知れたら、もう現れないなんてこともよく聞きますし」
小梅「そう……だね。引きずり込まれないくらいが……いい、かも」
茄子「そこに悪意がなかったとしても、我々とは違う存在に近づくだけで危ないというのはありえますからね」
ほたる「……なるほど。さて、私の話はこのあたりとして……。今回で第四シーズンも終わりですが、いかがでしたか小梅さん」
小梅「うん。ゲストさんも来てくれたし、たくさんお話聞けたし、このシーズンも……楽しかった」
茄子「ええ。次もぜひ楽しみましょう」
小梅「うん」
ほたる「それでは、第四シーズン終了および、第五シーズンに向けて、一言どうぞ」
小梅「たくさんお話を聞いて……みんなとたくさんの時間を過ごして。いっぱい怖くて、いっぱい楽しい。だから……次も、みんな、いっしょがいい……ね?」
茄子「はい、では、次回、第五シーズンにて再びお会いしましょう」
ほたる「それでは……また」
第五十夜 終
というわけで、今回にて第四シーズン終了となります。
いよいよ次から後半戦です。
第五シーズンについては、11月後半にスレ立て出来ればと思っております。
なんとか……はい。
それでは、ここまでおつきあいありがとうございました。
小梅「ら、ラジオ……」
輝子「百物語だぜーっ! フハハハハー!!」
輿水幸子(14)
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白坂小梅(13)
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星輝子(15)
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幸子「輝子さん、音割れしない程度にってスタッフさんが」
輝子「あ、はい。すいません」
小梅「え、えっと、白坂小梅のラジオ百物語……今日は、二人に来てもらって、さ、三人でお送りします」
幸子「改めまして、こんばんは。輿水幸子です」
輝子「こ、こんばんは。フヒッ……星輝子、だよ」
幸子「いつもは、小梅さんと、鷹富士茄子さん、白菊ほたるさんの三人なんですよね?」
小梅「うん。そう」
幸子「番組的には、茄子さんっていう大人が一人いるから、まとめやすそうですね」
小梅「そう……かも。茄子さんにはお世話になってる……」
幸子「まあ、今日はこのボクにその役目が期待されているんでしょうけど。もちろん、しっかりと果たしてみせますよ。ボクはカワイイですから!」
輝子「う、うん。幸子は……カワイイ」
小梅「うん。さっちゃんはカワイイよ」
幸子「当然です! さて、今日からこのラジオは第四シーズンの開始と言うことでしたね」
輝子「……そんな……おめでたい時に、私たちがゲストで……いいのかな?」
小梅「偶数シーズンの初回は……私の仲良しの人に来てもらってるから……」
幸子「メインパーソナリティの小梅さんがやりやすいようにするのが一番ですからね! ボクたちはユニット活動もしてるから話しやすいでしょう」
輝子「……そっか、なるほど」
幸子「それでは、進めていきましょうか。第三シーズンの感想なども来ているようですが、それは後回しとしまして……」
小梅「うん……。まずは、メインコーナーの……アイドル百物語から」
輝子「さ、幸子はもうやってるよね。こっくりさんの……やつ」
幸子「そうです。ボクの体験談でしたね」
小梅「かっこよかったって……リスナーの人からも、好評……だった」
幸子「それはうれしいですね。まあ、あんな経験、しないにこしたことはないと思いますけど」
輝子「だから……きょ、今日は私の……親友の話」
小梅「やっぱり……キノコにまつわるお話?」
輝子「そう……。妖精の輪の、お話」
幸子「あ。あれって、キノコ関連だったんですか?」
輝子「そうだよ。まず菌糸が……」
小梅「あ、そ、その話は、ちゃんとコーナーに入ってから……」
輝子「あ……そうだった」
幸子「ふむ。では、早速輝子さんのお話を聞くとしましょうか。アイドル百物語。本日は星輝子さんのお話です」
小梅「どうぞ……お聞きください」
輝子「……うん。フヒヒ」
○一言質問
小梅「急に自分がキノコ人間になってたら……どうする?」
輝子「トモダチと同化……。きっと、楽しいね……フフ」
えっと、星輝子です……。
え?
もう自己紹介はいい?
あ、うん。
あの……。
ええと、このお仕事……アイドルをやってると、いろんなお仕事をすることになる。
……昔は想像しなかったようなことも。
幸子のはちょっと別な気もするけど。
うん。
私はトモダチ……キノコのことが好きって業界で話題になってるらしくて……。
クイズ番組とか、キノコ関連の話題だと呼ばれることが……多い。
その中で……大学でキノコの研究をしている先生の取材とかも……したりする。
これは、そのときに聞いたお話、だよ。
ここでさっきの話に戻るけど……。
妖精の輪っていう現象が、あるんだ。
輪っかの形に植物が枯れたり、逆に……輪の部分だけすごい成長したりする。
これを昔の人は妖精が踊り狂った後だって言ってたみたい。
実際には……キノコの菌糸がある一ヶ所から地下で伸びていくのが原因。
菌糸の先端の部分が栄養を吸い取って植物を枯らしたり、逆に植物の栄養になる物質を出して、にょきにょき生やしちゃったりする。
これが菌輪っていう現象。
他にも世界のある地域では、土の中の虫が同じような役割を果たして、できあがることもあるんだって。
でも、今日は菌輪の話。
その研究室では菌輪を作る種類のキノコを研究してたんだけど……。
ある学生さんの地元で、よく見られるってことで、調査しに行ったんだ。
学生さんによると、山に入ると立派な妖精の輪がいくつも見られるんだって。
ただ、地元では、それは……なんとなく避けられてるような感じがあった。
まあ……森の中で、いっぱい下生えも生えてるところに、急に丸く草が枯れてたら、びっくりするよね。
うん、私もびっくりする。
地元では、それは忌み地って呼ばれてて、特に子供は近づかないようにって言われてたらしいよ。
神隠しにあうかもしれないからって。
西洋の妖精も……人をさらったりするらしいから、似たような言い伝え……かも?
実際、その山のある村に着くと、先生は、村の人たちから言われたらしいんだ。
忌み地をいじるのは構わないけど、絶対にその中に体の全部を入れちゃいけないって。
先生は不思議に思って、体の一部ならいいんですか、と聞いてみた。
そうしたら、腕を入れるくらいは大丈夫だって。
ただ、体の全部じゃなくても、出来れば頭は入れない方がいいだろうな、と言ってる人もいたみたい。
いろいろな風習があるものだなと思ったって。
でも、そういう……地方の言い伝えに口を出すのは先生の分野とは違うから、村の人の言うことを尊重することにしたんだって。
その土地の菌輪はそこまで大きなものではないから、体を入れなくても土とかのサンプルは採れる。
それに、それよりも、周囲の状況を記録したりのほうが多いから。
そうして、調査が始まって……。
だいぶ記録やサンプルが集まったと同時に、ちょっと慣れてきて、気が抜けはじめた頃。
先生は、輪の中に頭をつっこみそうになった。
足が木の根っこにひっかかって、転びかけた拍子に、体が輪の中に入っちゃったんだね。
途端に、目の前が真っ暗になったんだって。
めまいとかそういう暗さじゃなく、急になにかに包まれたみたいな感覚。
それと同時に、とんでもない恐怖を感じて、先生は体をひねった。
どさっと地面に倒れたときは、輪の中から体は外れてて、同時に、目の前に元通りの風景が戻っていたって。
『後から考えてみたんですけどね、星さん』
先生は困ったような顔で笑いながら、私に言ったよ。
『あれは、巨大な猛獣かなにかの口の中に頭を突っ込んだような、そんな恐ろしさでしたよ』
って。
幸子「……体を全部入れてしまうとなにかに喰われる、ということでしょうか」
輝子「そ、そうなのかな。よく……わからないけど……」
小梅「妖精の宴に遭遇すると……人はあちらの世界に連れて行かれてしまう……とか、そういうお話はよくあるけど……」
幸子「どう連れて行かれるか、というのはよく考えたらあんまり思い描いたことがありませんでしたが……」
輝子「食べられちゃう……か。怖いね」
小梅「う、うん……。そういえば……なにかの取材だったのに、このお話、ここでしちゃって大丈夫だった?」
輝子「フヒッ、それは大丈夫……。この部分、没になったし……」
幸子「そりゃ、キノコの取材で、このお話はカットでしょうねぇ」
小梅「……面白いのに」
幸子「いやいや」
輝子「でも、もっと……面白い話も聞いたよ。キノコの中毒症状を、先生が自分で試してみた話とか……」
小梅「……危なくないの?」
輝子「生きてたから……たぶん、大丈夫? いわゆる毒キノコもおいしいらしいし……」
小梅「おいしいんだ……」
幸子「いやいやいや! 危ないですからね! 専門家だから出来ることですからね!」
小梅「な、なるほど」
輝子「幸子は賢い」
幸子「そこはかとなく脱力感を覚えるのですが、気のせいでしょうか!」
小梅「えっと、それはともかく、次のコーナーに……」
輝子「そうだね……。ええと、次は、マジックマッシュルーム……」
幸子「だけではなく! 幻覚にまつわるお話ですね。いいんですかね、これは……。まあ、どんなお話があるのかを……」
第三十九夜 終
さて、そんなわけで、第四シーズン開幕です。
この第四シーズンは三十九夜〜五十夜までの予定ですから、これが終わればちょうど折り返し地点となりますね。
今シーズンも二、三日に一本の割合で進めて行けたらと思っております。
それでは、今シーズンもおつきあいいただけると幸いです
まだ昼間ですが、今日はこれから投下させてもらいます。
第五十夜 歌声
ほたる「さて、今日もそろそろアイドル百物語のお時間ですが……」
茄子「このアイドル百物語も、本日で五十。百の物語の半分となります」
小梅「ようやく……折り返し」
茄子「そうですね。これまでと同じだけのお話がこれからもあると思うと、なかなかすさまじいものがありますね」
ほたる「内容が内容ですからね……。ほっとする話もあったりはしますが……」
小梅「みんな面白いけど……刺激は強いかも、ね」
茄子「そうですねー。心がざわつくものは多いですよね。まあ、だからこそ面白い部分もあるのでしょうけれど」
小梅「うん。……そうだと思う」
ほたる「普段聞く機会の……そうそうないお話もたくさんありましたしね」
小梅「うん。みんな、それなりの話を知ってると思うけど……。普通は話す場がないかも」
ほたる「それは……ありますね。きっと」
茄子「当人は不思議だと思っていても、人に話すほどだろうかと思うこともありますしね」
小梅「うん……。そういう話を掘り出せてたとしたら……嬉しいと思う」
茄子「ええ、本当に。さて、それで今回はどなたのお話に光を当てるのでしょうか」
小梅「今日は……五十番目だから……。ほたるちゃんに、お願いしてる」
ほたる「はい。今日は……これから私が話すことになります」
茄子「第一夜は私でしたものね」
小梅「うん」
茄子「そうなると、百物語、その最後はやはり……」
小梅「ふふ。それは言わないお約束……だよ」
茄子「ふふ。そうでした。さて、ほたるさんのお話ということであれば、その内容についてあらかじめ聞くより、実際に話に入ってもらう方が良いでしょう」
ほたる「は、はい。がんばります」
小梅「じゃあ……よろしく」
ほたる「はい。では、拙いところもあるでしょうが、どうぞ聞いてください」
ええと……。
では、始めます。
このラジオをお聞きのリスナーのみなさんなら既にわかっておられると思いますが……。
私は、怖い話を熱心に聞く、というタイプではありません。
学校で噂になっていたり、芸能界でも色々と漏れ聞くことはありますが、この番組に参加するまでは、あまり興味を持ちませんでした。
正直、その……怖いですし。
ただ、この番組を通じて、怖いだけではなく、様々なお話があるのだとわかってきました。
そして、これまで私が経験していたことの中にも、語る意味があるものもあるのだと、なんとなく思えるようになりました。
今日は、その一つをお話しします。
私にとっては印象深いお話です。
これは、私が今の事務所にお世話になる以前のこと……。
とあるテレビ番組のオーディションに合格し、アシスタント役をすることになったんです。
地方局のごく短い番組の、それもただ物を持って行くだけの仕事でしたが、放映されるお仕事に違いはありません。
私は喜んでお仕事に通いました。
ただ……ちょっとした役ですから、どうしても局にいる時間の大半は待ち時間になるんです。
メインのパーソナリティーさんたちの進行や、スタジオの都合……色々なものがあわさって来ますから。
その時間は言われればいつでも動けるように待機しているのが私の仕事なわけです。
でも……その……。
いまよりもずっと売れてないアイドルだった私としては、その時間も有効に使いたかったんです。
体の動きをチェックしたり、歌を練習したり……。
スタッフさんも、そのあたりはわかっているんです。
アイドルにしろ、芸人さんにしろ、駆け出しの時期は、皆そうですから……。
そのときのスタッフさんは、優しい人たちで、私が待ち時間に自主練をするのに、大道具倉庫を使うようにと言ってくれました。
もちろん、ちゃんと呼ぶ声が聞こえる場所で、という条件で。
私は喜んで倉庫で自主練をしていました。
呼ばれたらすぐ行かないといけませんから、倉庫の入り口近くで、出入りの人の邪魔にならないようにして。
そして、そこで練習するようになってからしばらくして。
気づいたことがありました。
歌声が聞こえてくるんです。
とっても小さな声で、私の耳にはその歌詞も定かではありませんでしたが、たしかに聞こえるんです。
何度も、何度も、同じメロディを繰り返すその歌が。
それも、私が練習しているときは、いつも。
その歌を聞く度、私はなんだか嬉しくなっていました。
きっと、倉庫の奥に私と同じように練習している人がいるんだと思ったからです。
私は待機の関係上、奥に行くことは出来ませんでした。
だから、実際にその人の姿を見ることもありませんでした。
けれど、同じような立場の人がいるというのは、どこか勇気づけられるものです。
そうして、倉庫の奥からはかすかな歌声が響き、倉庫の入り口では私が体を動かしたり、表情の練習をしたりしているという状況が続きました。
けれど、私が参加していた番組は、しばらくすると内容が変化して……。
私はそのタイミングで番組を外されました。
そのとき、私はようやくのようにスタッフさんに尋ねたんです。
倉庫の奥で練習されているのはどなたですかって。
でも、スタッフさんの答えは意外なものでした。
『あの倉庫に入ってるのは君くらいだよ。奥に入るのは係の者だけで、他は管理の関係で立ち入り禁止』
私は、入り口の……見えるところにいるから、特に許されていたのだ、とその人は説明してくれました。
では、あの歌声はいったいなんだったというのでしょう。
私が密かに励まされていたあの歌声は。
私はなんとか頼み込み、大道具の方と一緒に、奥へと入ってみました。
そのときは歌声はしていませんでしたが、記憶の中のあの声に向かって進んだんです。
そこには、パレットに乗せられた大道具や、様々な梱包物があるばかりで、人の気配どころか、最近誰かが立ち入った痕跡もありませんでした。
ただ……。
ぽつんと楽譜が置かれていました。
流通しているような立派なものではなく、五線紙に手書きで記したものを、まとめて綴じたもの。
そんなものが、そこにあったんです。
当時、私はどういうことなのかよくわかりませんでしたし、大道具さんは、なんでこんなものが放ってあるんだと憤っていました。
でも、いまになって思うんです。
もしかしたら、あの歌は……。
あのかすかな歌声は、その楽譜から漏れ出てきていたんじゃないかって……。
茄子「素敵なお話ですね」
ほたる「……ただの妄想かもしれませんけどね」
小梅「で、でも、聞こえたんだから……」
ほたる「私以外の人が……聞いていたなら、また違うんでしょうけど……」
茄子「いえ、きっと歌声は響いていたんでしょう。それが果たして楽譜そのものから発せられたものなのかはわかりませんが」
小梅「器物が変じて意思を持って動き出すお話は昔からあるし……ね。遺品やなにかに霊がつくことも……もちろんある」
茄子「ええ。ですから、妄想だなんて言わないでいいんですよ。それに、それじゃあ……つまらないじゃないですか」
ほたる「……ふふ。そうかもしれません」
小梅「……でも、なんにしても、ちゃんと聞いてみたかったね」
ほたる「そうですね。そこは惜しいことをしたと思います。……とても綺麗な声でしたから」
茄子「まあ、それくらいの位置取りのほうがいいのかもしれませんよ。あまり近づきすぎても……」
ほたる「……それはそうかもしれませんね。正体が知れたら、もう現れないなんてこともよく聞きますし」
小梅「そう……だね。引きずり込まれないくらいが……いい、かも」
茄子「そこに悪意がなかったとしても、我々とは違う存在に近づくだけで危ないというのはありえますからね」
ほたる「……なるほど。さて、私の話はこのあたりとして……。今回で第四シーズンも終わりですが、いかがでしたか小梅さん」
小梅「うん。ゲストさんも来てくれたし、たくさんお話聞けたし、このシーズンも……楽しかった」
茄子「ええ。次もぜひ楽しみましょう」
小梅「うん」
ほたる「それでは、第四シーズン終了および、第五シーズンに向けて、一言どうぞ」
小梅「たくさんお話を聞いて……みんなとたくさんの時間を過ごして。いっぱい怖くて、いっぱい楽しい。だから……次も、みんな、いっしょがいい……ね?」
茄子「はい、では、次回、第五シーズンにて再びお会いしましょう」
ほたる「それでは……また」
第五十夜 終
というわけで、今回にて第四シーズン終了となります。
いよいよ次から後半戦です。
第五シーズンについては、11月後半にスレ立て出来ればと思っております。
なんとか……はい。
それでは、ここまでおつきあいありがとうございました。
22:14│白坂小梅