2014年07月02日
モバP「幸子はカワイイなぁ」 凛「……」
輿水幸子「おはようございます! 今日もカワイイボクが来ましたよ!」
モバP(以下P)「おお、おはよう幸子」
渋谷凛「……おはよう」
幸子「はい、おはようございます」
P「すまんが俺はこれから営業があるんだ、構ってやれなくて悪いな」
幸子「ボクを置いていくだなんてなってないですね。プロデューサーさんはボクがいないと駄目なのに……まぁ、良いですけど」
P「すまんな。頭でも撫でてやるから我慢してくれ」
幸子「フフン、仕方ないですね……ん?」
凛「……」
幸子「……、ええと」
凛「……」
幸子「……、凛さん。何かボクの顔についてますか?」
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凛「いや。別に。何でも」
幸子「その割にボクのことじっと見てませんでしたか?」
凛「別に」
幸子「……?」
幸子(気のせいだったんでしょうか)
P「じゃあ、俺はそろそろ行くな」
幸子「早く戻ってきてくださいね。ボクをほったらかしにしちゃ駄目なんですから」
P「分かってるよ」
凛「……」
幸子(行ってしまいました)
幸子(プロデューサーさんと話すために早めに来たのに、手持ち無沙汰になったじゃないですか、もう)
幸子(ちひろさんと凛さんしかいませんし、どうしましょうか)
幸子「……」
凛「……」
幸子「……」
凛「……」
幸子「……ええと」
凛「……」
幸子(……き、気まずい)
幸子(あまり凛さんって自分から話すタイプではないですし、共通の趣味なども特にあるわけでもなく)
幸子(お仕事も、別に一緒にはならないですし)
幸子(まぁ、ボクがカワイイという話題であれば誰であっても共通の認識になるといえば、そうなんですけれど……)
凛「……ねぇ」
幸子「あ、え、はい」
凛「突っ立ってないで、座ったら?」
幸子「あ、はい」
凛「……」
幸子(言われたとおり座りましたけど)
凛「……」
幸子(なんで一番遠い対極に座るんですか)
幸子(これじゃ話しかけづらいじゃないですか)
凛「……」
幸子(表情を見る限り、あまり機嫌が良さそうとは思えませんし、下手に話しかけないほうが良いのかも……)
凛「……ねぇ」
幸子「え、はい」
凛「一昨日、仕事終わり、プロデューサーと二人で帰ったでしょ」
幸子「えぇと……はい。それが何か?」
幸子(プロデューサーがボクの傍にいるのは当たり前ですからね)
凛「……」
幸子「え、っと」
凛「……何もなかった?」
幸子「?」
凛「……いや、良い。何もなかったのなら良い」
幸子「あ、凛さん。どこ行くんですか?」
凛「レッスンだよ」
幸子「じゃあ、ボクも行きます」
幸子(ちょっと早いですけど、一人でいてもつまらないですし)
凛「……」
幸子「ちょっと待ってくださいね。今準備してきますから」
凛「……間違えた」
幸子「え?」
凛「レッスンじゃなくて、仕事に行くんだった。じゃ」
幸子「え? え? ひ、一人で行くんですか?」
凛「すぐ近くだから。だから構わないで」
幸子「え、あっ……」
幸子(行ってしまいました)
幸子(何だったんでしょう)
幸子(何だか避けられているような……)
幸子(……)
幸子「いや、まさか」
幸子(そんなはずありません。避けられる理由なんてありませんし)
幸子(……)
幸子(まさか、そんな……)
別の日
幸子「おはようございます」
P「凛は駄目、と……」
幸子「凛さんがどうかしたんですか?」
P「あぁ、幸子。おはよう。いや、実はな。この間営業で貰ってきた仕事なんだがな」
P「幸子と凛にやってもらおうと思ったんだが、凛の方が学校行事と重なってるみたいでな」
幸子「そうなんですか」
幸子「……」
幸子(昨日のあれは……関係ないですよね)
P「代わりはまゆにやってもらうか」
佐久間まゆ「はぁい」
幸子「ひっ」
まゆ「うふ。そんなに驚かなくても良いじゃないですかぁ」
幸子「い、いきなり真後ろから現れたら驚きます!」
まゆ「うふ」
P「じゃあまゆ、悪いが今回もまた頼むな」
まゆ「Pさんの頼みなら、まゆ、なんでも従いますよ」
幸子(……また?)
幸子「……あの、まゆさん」
まゆ「なぁに?」
幸子「今、“また”、って言いましたよね」
まゆ「……それが、どうかしたかしら?」
幸子「いえ……。何だか、以前も代役をやった様な言い方だったので」
まゆ「……」
幸子「……」
まゆ「……うふ。それくらい、忙しい芸能界ではよくあることじゃないかしらぁ」
幸子「そう、ですよね」
まゆ「そうですよぉ」
幸子「……」
まゆ「まだ何か、気になるんですかぁ?」
幸子「いえ」
幸子(……気になる、こと)
幸子(ここ最近、まゆさんとの仕事が多いのは偶然なんでしょうか)
幸子(反対に、凛さんとの仕事がないのも偶然なんでしょうか)
別の日
幸子「おはようございます」
凛「……おはよう」
幸子「……はい」
凛「……」
幸子「……」
凛「……」
幸子「……あの」
凛「……何」
幸子「この間の学校行事って、なんだったんですか?」
凛「……」
幸子「……」
凛「……それは」
幸子「それは」
凛「……」
幸子「……言えないんですか?」
凛「別に、そういうわけじゃない」
幸子「じゃあ、なんだったんですか?」
凛「……別に」
幸子「教えてください」
凛「近いよ。離れて」
幸子「……すみません」
まゆ「凛ちゃん、何やってるんですかぁ?」
凛「……まゆ」
まゆ「あら、幸子ちゃんも。おはよう」
幸子「……おはようございます」
まゆ「Pさんが待ってますよぉ」
凛「今行く。ごめん幸子、急いでるから」
まゆ「ごめんなさいね、撮影があるんです」
幸子「……いえ。行ってらっしゃい」
幸子(やっぱりボクは、避けられてるんでしょうか)
別の日
P「あれ、幸子、髪留め変えたのか?」
幸子「ええ、カワイイですよね」
P「悪くないじゃないか」
幸子「もっとはっきり褒めてください」
P「いつもカワイイって褒めてるじゃないか」
幸子「もっとカワイイって言って下さい、プロデューサーさんならそれくらい分かってほしかったです」
P「凄いカワイイ、思わず手が勝手に頭を撫でてしまうくらいにカワイイ」
幸子「まぁ、良いでしょう。プロデューサーさんにしては悪くない褒め方ですね。じゃあ撫でてください」
P「はいはい」
幸子(まぁ、髪留めを変えたのは、ちょっとした気分転換なんですけれど)
凛「……」
幸子(凛さんがこちらを見ています……じっと見ています)
幸子(怖いです)
まゆ「……」
幸子(まゆさんも見ていました……)
まゆ「……うふ」
幸子(笑っているはずなのに、何故だか怖いです)
P「そうだ、幸子。新しい仕事、持ってきたぞ」
幸子「そうですか。カワイイボクにふさわしい仕事なんですよね?」
P「それはもう、勿論」
幸子「……」
P「なんだいその疑いのまなざしは」
幸子「……そう言って、スカイダイビングやらせたのは誰でしたっけ」
P「誰だったかなぁ」
幸子「とぼけないで下さい! 遊園地だって水で濡れましたし……」
P「水バシャーンの奴か。いやぁ、アレはすごかった」
幸子「凄かったですし、酷かったですよ! なんでちゃっかり自分だけレインコートを買ってるんですか!」
P「てへ」
凛「プロデューサー……はぁ、全く」
まゆ「……」
幸子(た、溜息……)
P「ん。そろそろレッスンの時間じゃないか?」
幸子「あ、はい。行って来ます」
P「凛にまゆ、二人も行って来たらどうだ?」
まゆ「はぁい」
凛「……私は」
凛「……」
幸子「……」
幸子(今、ボクの事見ましたよね……)
まゆ「凛ちゃん」
凛「……分かったよ。まゆがいるなら、まぁ」
幸子「……」
レッスン場
トレーナー「はい、レッスン終わり」
三人「ありがとうございました」
幸子(はぁ、疲れた。汗拭いて、何か飲もう)
P「お疲れ、丁度終わったか」
幸子「プロデューサーさん。どうしたんですか? カワイイボクに会いに来たんですか?」
P「まぁそんなところかな。ほれ飲み物」
幸子「あ、ありがとうございます」
P「凛とまゆも、ほれ」
凛「ありがとう」
まゆ「ありがとうございます」
P「どうだ、調子は?」
幸子「いつも通り、カワイイですよ」
P「それは知ってる」
凛「……」
まゆ「……」
幸子(……また、二人が見てます)
凛「……私、先に帰る。お疲れ」
幸子「えっ」
P「もう帰るのか」
凛「うん。ちょっと用事があるから」
P「そうか。気をつけて帰れよ」
凛「まゆ、行こう」
まゆ「……そうですねぇ」
P「変な二人だな」
幸子「……」
P「幸子?」
幸子「すみません、ボクもちょっと出かけます!」
P「え? お、おう……」
幸子(多分更衣室に二人とも……)
幸子(……、声がします。二人の声ですね)
幸子(凛さんに何故避けられているのか、知りたいです)
幸子(ばれないように、と……)
まゆ「凛ちゃん。ちょっとあれは露骨だったんじゃありませんかぁ」
凛「……」
まゆ「ただでさえここ最近、幸子ちゃん怪しんでるんですから」
凛「えっ、それ、本当?」
まゆ「この間、一緒の仕事断ったじゃないですかぁ。あの辺りから、幸子ちゃん、凛ちゃんのこと見てますよ」
凛「幸子が? 私を? ……はぁ。参ったな」
幸子「……」
幸子(……、やっぱり、学校行事というのは、嘘だったんですね)
幸子(なんでそんな嘘なんかついてまで、ボクと一緒の仕事を断るんですか)
幸子(そんなにボクの事、嫌ってるんですか)
──ガタッ
凛「っ。誰かいるの?」
幸子(あっ、しまった)
まゆ「まさか……幸子ちゃん?」
凛「え……まさかそんな」
幸子(ど、どうしましょう。逃げないと)
凛「こっちの方から……あ」
幸子「あ」
まゆ「あら……」
凛「……」
幸子「……」
凛「……」
幸子「……え、と」
凛「……どこから」
幸子「え?」
凛「どこから聞いてたの?」
幸子「え、あ」
凛「ねぇ。聞いてたんでしょ、私たちの話」
まゆ「凛ちゃん、落ち着いて」
凛「私は落ち着いてる」
幸子「あ、その」
まゆ「全くそんな風には見えませんよぉ」
凛「落ち着いてるって言ってるでしょ。ねぇ幸子、答えて」
幸子「……、……。ごめん、なさい」
凛「……あ」
まゆ「……あ」
幸子「ボ、ボク、そんなつもり、なくて、だって、凛さん、が」
凛「さ、幸子。泣かないでよ」
まゆ「泣かせたのは凛ちゃんですよ」
凛「分かってるけど……!」
幸子「なんで、ボクの、こと、避けるん、ですか」
凛「避けてたわけじゃ……いや、避けてたかもしれないけど」
幸子「お仕事、断ったり、したじゃない、ですかぁ」
凛「う……」
幸子「嫌いなら、嫌い、って、はっきり言ってください!」
まゆ「ばっちり聞かれていましたねぇ」
凛「まゆ……」
まゆ「駄目ですよぉ。こうなったら、ちゃぁんと自分の口で言ってあげないと」
凛「……、……」
幸子「ひっく、ぐす」
凛「んむぅ……」
凛「……、分かった。言うよ」
凛「えぇと。私は幸子の事嫌ってなんかないよ」
幸子「だって」
凛「その逆と言うか……なんと言うか……」
まゆ「分かるように言ってあげないと」
凛「分かってる、分かってるよ、もう」
凛「あー、えぇと。ほら、幸子って、良く自分の事カワイイって言うじゃん」
幸子「それが、鬱陶しかった、んですか」
まゆ「はい鼻かんで幸子ちゃん」
幸子「ん……」
凛「違う違う。その通りだなって」
幸子「ちーん……んぇ?」
凛「だから。幸子の言う通りなんだって」
幸子「……」
凛「幸子が、可愛すぎるの!」
幸子「……」
幸子「……え?」
幸子「じゃあ、ボクが事務所でプロデューサーさんに撫でられている時に睨んでいたのは」
凛「睨んでたんじゃないよ。撫でられてる幸子カワイイなぁって思ってただけだよ」
幸子「じゃあ、ボクの対極に離れて座ったのは」
凛「正面は近いから、ちょっと恥ずかしくてさ……」
幸子「じゃあ、ボクとプロデューサーさんが二人で帰ったことを聞いてきたのは」
凛「幸子カワイイから、プロデューサーが何かしないか不安で」
幸子「……、じゃあ、一緒のお仕事を断ったのは」
凛「……本当にごめん。二人きりって考えると、緊張で台本どころじゃなくて」
幸子「えぇ……」
凛「いや、本当にごめん」
幸子「いえ、理由が分かったので良いですけど……」
幸子(良いんでしょうか。いや、まぁ、なんかもう良い様な気がしてきました)
幸子「あれ、じゃあ、レッスンの時にボクをじっと見てたのも」
凛「頑張る幸子カワイイ」
幸子「……はい」
凛「髪留め似合ってるよ」
幸子「開き直ってません?」
凛「そうするしかないでしょ」
まゆ「凛ちゃん、誤解受けやすいから」
幸子「本当ですよ。クールすぎるのも考え物です」
凛「……いや、そんな」
まゆ「褒めたわけじゃないと思いますよぉ」
凛「え、そうなの」
幸子「どっちでもいいですもう」
凛「幸子に褒められたよ」
まゆ「良かったですねぇ」
幸子「……はぁ。なんだかほっとして、一気に疲れが出ました」
まゆ「精神的に張り詰めていましたからねぇ」
凛「反省してます」
まゆ「着替えたら、ご飯でも食べに行きましょうか」
幸子「ボクは構いませんよ」
凛「うん、悪くないかな」
幸子(良かった……ボクの勘違いで)
凛「……そういえば、さっき気付いたんだけど」
まゆ「?」
幸子「?」
凛「鼻をかんでる幸子もカワイイと思う」
幸子「……」
まゆ「……」
凛「あれっ、駄目かな」
幸子「いや、駄目と言うか……」
まゆ「いいんじゃないですか……」
凛「二人してそんな反応しないで!」
体調不良で死にそう。
個人的には別に百合と言う意識では書いていません
>>32
これでいいでしょうか?
ファミレス
凛「……座席か」
幸子(何か考え込んでますね……)
まゆ「大した事考えてませんよ、あの顔は」
幸子「えっ」
まゆ「大方、幸子ちゃんの隣に座るべきかどうかとか、そんな事です」
幸子「まぁ、三人ですから、一対二になるしかないんですれけど」
まゆ「でも凛ちゃんは、面と向かって隣に座ろうって言えない性格ですから」
幸子「確かに……」
幸子(もしいえていたら、事務所であんな感じになっていませんし)
まゆ「なので、まゆが幸子ちゃんの隣に座りますね」
凛「えっ」
まゆ「じゃあ凛ちゃんが座りますか?」
凛「……いや、それは……」
幸子(今は事情が分かっているから落ち着いていられますけど、傍から見たらやっぱりこれ、ボクが嫌われているように見えるんじゃ……)
凛「いっそ幸子を真ん中にして、三人で座る、とか」
まゆ「名案を思いついたみたいな顔しないで下さい」
幸子(表情の違いが良く分からない……)
まゆ「ファミレスで、三人が同じ座席に座っているところ見たことありますか?」
凛「無いね」
幸子「自分で言って自分で堂々と否定しないで下さいよ」
まゆ「というか、それが出来るなら、幸子ちゃんと二人で座れるでしょう」
凛「あっ」
幸子「自分で言って自分で驚かないで下さいよ」
幸子(結局、ボクが一人で座ることになりました)
凛「ふーん。初めて来るけど、まぁ、悪くないかな」
幸子「以前プロデューサーさんに連れて行ってもらった事があるんです。中々美味しいですよ」
凛「……プロデューサーが、ねぇ」
まゆ「Pさんが、ですかぁ」
幸子(ひぃ)
凛「それは二人で?」
幸子「は、はい」
凛「ふーん」
まゆ「へぇ……」
凛「……」
まゆ「……」
幸子(ひぃ)
幸子(まゆさんは、普段からプロデューサーさん一番を公言していますから、分かりますけど)
幸子(凛さんの反応は何なんでしょう)
幸子(……、もしや、凛さんもプロデューサーさんを?)
幸子(……)
幸子(……ありえ、る、んでしょうか)
幸子(傍から見ていると、恋愛感情と言うより、信頼とかそういう類のものだと思っていたんですけれど)
幸子(ボクの思い違いで、実は凛さんもまゆさんと同じで、プロデューサーさんを大事に思っているとか?)
幸子(だとしたら、ボクに対する先ほどまでの言葉は建前で、本音はやっぱりプロデューサーさんと仲の良いボクへの牽制……?)
幸子(なんだか良く分からなくなってきました)
凛「何か凄い考え込んでる」
まゆ「そうですねぇ」
凛「可愛い」
まゆ「そうですねぇ」
まゆ「まぁ、幸子ちゃんが何を考えているかは大体分かりますけど」
凛「私も」
まゆ「……本当ですか?」
凛「当たり前でしょ。幸子だよ?」
まゆ「……じゃあ言ってみてください」
凛「デザートを何にしようか悩んでるって顔だね。チーズケーキかショートケーキかって所かな」
まゆ「多分的外れだと思いますけど」
凛「私としては、ブルーベリーのシャーベットなんかいいと思うんだけどな」
まゆ「聞いて」
凛「それより、ブルーベリーって、ブルーって言う割にはブルーじゃないと思わない? ブルーと名乗るからには、もっと蒼くなるべき」
まゆ「ねぇ聞いて。いや黙って」
幸子「何の話ですか?」
凛「ブルーベリーの色素詐欺の」
まゆ「いえ何でも。何を頼むか決まりましたか?」
幸子「あ、えぇと、そうですね……」
凛「ちょっとまゆ」
まゆ「はい凛ちゃんも早く選んでくださいね」
凛「むむ……」
まゆ「ところで幸子ちゃん」
幸子「はい?」
まゆ「その、Pさんと二人でお食事したのは、先週の今日じゃありませんか?」
幸子「何故それを」
まゆ「うふ」
幸子(……聞いても薮蛇になりそうですからやめましょう)
幸子(別に怖いわけじゃないですよ、本当です)
幸子(……怖い)
凛「ドリンクバーにブルーハワイがある。やった」
まゆ「全員決まりましたかぁ?」
幸子「はい」
凛「私も決まったよ」
まゆ「じゃあ店員さんを呼びますね」
店員「ご注文お伺いいたします」
幸子「えぇと。明太子のスパゲティをサラダセットで、デザートは豆乳のムースケーキでお願いします」
凛「くっ……」
凛(読みが外れた)
まゆ「声に出てますよ」
幸子「?」
凛「なんでもないよ。私は、鮭と帆立のバター焼き定食、それとドリンクバー」
まゆ「ブルーベリーは頼まないんですか?」
凛「ブルーベリーはブルーじゃないからね」
幸子「いやちょっと意味がわからないです」
まゆ「私は、そうですねぇ……」
まゆ「国産牛と鶏肉のミックスグリル、ご飯は少なめでお願いします」
幸子(……)
店員「かしこまりました。ご注文は以上でよろしいですか?」
まゆ「はぁい」
店員「少々お待ちくださいませ」
凛「まゆにしては、珍しい注文だね」
まゆ「そうですかぁ?」
凛「あんまりそういう濃いメニューを頼むイメージが無いから」
まゆ「えぇ。まゆもそう思います」
凛「じゃあなんで?」
まゆ「まぁ、色々とです」
凛「……?」
幸子(……)
幸子(……いや、うん)
幸子(ただの偶然ですよね)
幸子(まゆさんが頼んだ料理が、前回プロデューサーさんが頼んだ料理と一緒なんて、そんなの)
幸子(ただの偶然ですよね)
幸子(だってまゆさんはボクとプロデューサーさんが二人でここに来ていたことを知らなかったんですから)
幸子(だからあの時プロデューサーさんが何を頼んだかなんてこと、分かるはずが……)
幸子「……」
まゆ「……」
幸子「……」
まゆ「……うふ」
幸子「」
幸子(あ、これ分かってて頼んだやつだ)
凛「ドリンクバー行って来る」
まゆ「いってらっしゃい」
幸子「いってらっしゃい」
凛「……」
幸子「……? 凛さん? どうしたんですか?」
凛「幸子」
幸子「あ、はい」
凛「もう一回、“行ってらっしゃい”って」
まゆ「さっさと行ってきてください」
幸子「……」
まゆ「……」
幸子「……」
まゆ「……」
幸子「……」
まゆ「……」
幸子(いや、気まずい!)
幸子(なんだったら凛さんのときより気まずい!)
幸子(凛さんと違って、表情こそ穏やかですけれど、本心がまるで分からないと言う点では、凛さんと変わりませんし)
幸子(それに、プロデューサーさんとの事を考えると、下手に踏み込まない方が良いのかもしれません)
幸子(凛さんが戻ってくるまで、少しの辛抱でしょうから……)
まゆ「ねぇ、幸子ちゃん」
幸子「はい!」
まゆ「そんな驚かないで下さい。ところで、幸子ちゃんは、随分Pさんと仲が良いんですねぇ」
幸子(あぁ、逃れられない!)
一方ドリンクバー
凛「……」
凛(二人がどんな会話をしているのか気になる)
凛(私を置いて盛り上がってたらどうしよう)
凛(一刻も早く戻りたい)
凛(……なのに)
子供1「オレンジとグレープとブルーハワイかー。どれにしよう」
子供2「かがくの ちからって すげー」
子供3「ふわぁー……」
凛(子供がいてドリンクをくめない……!)
凛(しかも、私と同じシャーベット狙い)
子供1「全部まぜようぜ全部」
子供2「やるやるー」
子供3「おいしくー……なるのー……?」
凛(これ、傍から見たら、私も子供たちと一緒に見られるのかな)
凛(それはちょっと……さすがに恥ずかしいな)
凛(……)
凛(……)
凛(……コーヒー飲も)
凛「ごめん、遅くなった」
まゆ「あら、コーヒーにしたんですか」
凛「……うん、まぁね」
まゆ「周りの目が気になったんですかぁ?」
凛「別に……それより、何話してたの」
まゆ「うふ。内緒です。ねぇ?」
幸子「え、えぇと」
凛「……」
幸子「に、睨まないで下さい」
凛「あ、いや、そんなつもりじゃ」
まゆ「うふ。これはね、睨んでるんじゃなくて、仲間はずれが寂し」
凛「そんな事ない、全然そんな事ない」
幸子「あ、はい……」
凛「まぁ、まゆに限って、変な事言ったりはしてないと思うけど」
凛「もし酷い事言われたらいつでも相談するんだよ」
幸子「あ、はい」
まゆ(そこで“自分に”って言えないあたりがまた、なんとも奥手と言うか何と言うか)
凛「……そういうわけだから、さっき何話してたのかを」
まゆ「台無しです」
凛「いや、うん。やっぱり少し気になると言うか」
まゆ「お仕事の話ですよ。ねぇ?」
幸子「はい! そうです!」
凛「まゆ」
まゆ「ドスを利かすのは本当に止めて、本当に怖い」
店員「お待たせしました」
凛「どうも」
幸子「それじゃあ、頂きます」
まゆ「……」
凛「……まゆ? どうしたの?」
幸子「?」
まゆ「いえ、気にしないで下さい」
まゆ(あー……これ、あー……)
まゆ「……フー……フー……」
まゆ(熱っつぅ……!)
まゆ(しまったぁ……! 自分が猫舌なの忘れてましたぁ……!)
幸子(熱そう)
凛(パスタを食べる幸子可愛い)
幸子(まぁ、鉄板で焼かれたばっかりのお肉ですから、それが普通なんですよね)
幸子(プロデューサーさんは、そこまで猫舌ではないみたいだったので、忘れてましたけど)
幸子(というより、プロデューサーさんの場合、どんな料理にもドリンクをかけるのだけは止めて欲しいですね……)
幸子(さすがにエナ茶漬けはボクもドン引きです)
幸子(幾ら言っても、栄養があるの一点張りで、聞いてくれないんですよね……)
まゆ「……フー……アー……」
幸子(っていうか、まゆさん本当泣きそうなんですけど)
幸子(猫舌からしたら地獄のようなものなんでしょうね……)
まゆ(お水……お水……)
幸子「あ、ボクが酌みますよ」
まゆ「あ、ありがとう」
凛「……」
幸子「その手があったかみたいな顔しないで下さい」
幸子「そんなに熱いですか?」
まゆ「熱くないですよ」
幸子「えっ」
まゆ「熱くないです」
幸子「……」
まゆ「……」
幸子「……熱く」
まゆ「ないです」
幸子「そうですか」
まゆ「はい」
幸子「……」
まゆ「……」
幸子「……お水、お替りいりますか?」
まゆ「……はい」
まゆ(ようやく食べられる温度になりましたね)
まゆ(……二人とも、もう食べ終わりそうなんですけどね)
まゆ(そして熱さという問題が解決して、また新たな問題に直面しました)
まゆ(それは……)
まゆ(多くて、食べきれないという事……!)
まゆ(元々自分が食べる方じゃない上に、お水三杯も飲んだせいで、もう入りません)
まゆ(ご飯少な目なんて気休め程度にもなりませんでしたぁ……!)
凛「なんで頼んだのさ」
まゆ「言わないで下さい……うぅ」
幸子「少し食休みしたら、出ましょうか」
凛(結局私、ブルーハワイ食べてない)
外
まゆ「お腹一杯です……」
凛「みたいだね」
幸子「少し歩きましょうか」
凛「二人はこれからどうする?」
まゆ「まゆは寮に戻ります」
幸子「そうですね……。ボクも、事務所によって、寮に帰ることにします」
凛「そう」
幸子「凛さんは?」
凛「ん……。私も、家に戻ろうかな」
幸子「そうですか」
凛「まゆの事、頼んで良い?」
幸子「えぇ」
凛「じゃあ、お願い」
凛「……それと。また、今度、食べに行こう」
幸子「えぇ、良いですよ。ボクはカワイイですからね」
凛「……」
まゆ「幸子ちゃん」
幸子「あ、えぇと。なんとなく分かりますよ」
幸子「喜んでくれてるんですよね?」
凛「……」
まゆ「……」
幸子(え、ま、まさか違った……?)
まゆ「いいえぇ、合ってますよ。図星を刺されて恥ずかしがってるんです」
凛「ちょっと、まゆ」
まゆ「間違ってますか?」
凛「……、……。合ってるから困ってるんだよ」
まゆ「ふふ」
夜
まゆ「やっとお腹も落ち着いてきました……」
Prrr...
まゆ「……あら、凛ちゃんから」
まゆ「もしもし」
凛「もしもし、まゆ? 今大丈夫?」
まゆ「えぇ、どうぞ」
凛「あー……」
凛「……、……。今日は、ありがと」
まゆ「まゆは何もしてませんよ」
凛「そんな事ない。二人だったら、多分殆んど会話なかったと思う」
まゆ「でしょうねぇ」
まゆ(二人だけだったら、そもそも、誤解が解けていないでしょうから……食事自体行っていなかったでしょうし)
凛「……それだけ」
まゆ「そうですかぁ」
まゆ「本当にそれだけですかぁ?」
凛「って言うと?」
まゆ「何だか、他にも何かいいたさそうだったので」
凛「……、……」
まゆ「まゆでよかったら聞きますよぉ」
凛「……、じゃあ、少しだけ」
まゆ「えぇ、どうぞ。明日仕事なので、あんまり長くh」
凛「今日の幸子、可愛かったよね」
凛「あぁ、いや、今日のっていうか、今日も、なんだけどさ」
凛「幸子って食べ方も丁寧なんだよね。やっぱり結構良い所のお嬢様なのかな」
凛「桃華ほどではないにせよ、なんとなくそんな感じはするよね。普段の言葉遣いとかもそうだし」
凛「幸子が食べてるの見て、思わず夜は私もパスタにしちゃったよ」
凛「悪くなかったけど、ただ、自分が食べるとちょっと違うんだよね。なんだろうね」
凛「幸子が左利きだからかな。関係ないね、うん」
まゆ「」
凛「そういえば、次のライブ、幸子と一緒になったんだ」
凛「丁度タイミングよくプロデューサーに持ちかけられてね」
凛「前は断って幸子とプロデューサーに悪いことしちゃったから、挽回出来てよかったよ」
凛「いや、挽回はこれからかな。上手くライブを終わらせて始めて挽回って言えるよね」
凛「だからレッスンもしないと」
凛「正直緊張するよ」
凛「まゆ? 聞いてる?」
まゆ「えぇ、聞いてますよ……」
凛「そう。じゃあ続けるね」
まゆ「ちょ、ちょっと待ってください」
凛「なに?」
まゆ「いえ、まゆ明日早いので……」
凛「そうなんだ」
まゆ「えぇ」
凛「それで、続きだけど」
まゆ(続けるのかよ)
翌日
まゆ「おはよう、ございます」
P「随分眠そうだな」
まゆ「大丈夫です……」
まゆ(あのあと結局数時間話を聞く羽目になりました)
P「二十分後に出発だけど大丈夫か?」
まゆ「はぁい」
P「何か飲まなくて平気か?」
まゆ「はぁい」
P「瞼が下がってるけど大丈夫か?」
まゆ「それは元からです」
P「すいません」
幸子「おはようございます!」
P「おぉ、幸子。おはよう」
幸子「はい、おはようございます」
幸子「何だか、凄い眠そうですね……大丈夫ですか?」
まゆ「えぇ、平気ですよ」
幸子「何か飲み物淹れましょうか?」
まゆ「そのやり取りはもうやったから、まゆの目から離れてね」
幸子「あ、はい」
幸子「……っと。凛さんからメールだ」
まゆ(あら、いつの間に交換したんですね)
幸子「……」
まゆ「どうしたんですかぁ?」
幸子「いえ、別に」
まゆ「見ても良いですか?」
幸子「どうぞ」
凛『おはよう』
まゆ(えっ)
幸子「これ、なんて返すべきなんでしょうね……」
まゆ(もっと他になかったのかしら)
幸子「もしかしたら、途中で送信してしまったのかもしれませんね」
まゆ(多分それで全文だと思う)
まゆ(奥手ねぇ)
幸子「……、それとも、照れてるんでしょうか」
まゆ「凛ちゃんのことだから、多分そうですねぇ。分かるようになったんですか?」
幸子「いえ、正直、全然」
幸子「あんまり表情変わりませんし、声低いですし、背高いですし」
幸子「でも、ボクの様なカワイイ相手にメールを送るんですから、照れるのも仕方ありませんね」
まゆ(だいたいあってる)
P「今朝飯食べるから、ちょっと待っててくれ」
まゆ「はぁい」
P「ご飯良し、エナ茶良し。さて──」
幸子「プロデューサーさん! それはもうやめてくださいって言いましたよね!」
P「えー」
幸子「えーじゃありませんよ。そんな不健康そのものな食事、見てるほうも嫌ですよ」
P「じゃあふりかけご飯にするか」
幸子「……おかか?」
P「スタドリを乾燥させたものだけど?」
幸子「却下ですよ! 今日びモルモットだってもっとマトモな食事してますよ」
まゆ(明日はお弁当を作りましょう)
P「幸子は細かいなぁ。じゃあこれでいいか」
幸子「CPブレッド……うーん……まぁ、それなら」
P「あ、杏の奴、俺のTPキャンディー持ってきやがったな……全く」
幸子「本当に体壊しますよ」
P「幸子は心配性だなぁ」
幸子「プロデューサーさんがだらしなさすぎるんです。もし倒れたら誰がボクのプロデュースをするんですか」
幸子「ボクのために、ちゃんと体調管理してください」
P「幸子はカワイイなぁ」
幸子「当たり前です!」
おわり