2013年11月06日
P「律子。お前もアイドル、やるんだよ」
P「……」
P「…………」
P「…………」
俺がやっていることが、良い事か悪い事か
未来が誰にもわからないように
俺の起こした行動が、
結果として『良い事』になるのか、それとも『悪い事』になるのか
それは結局のところ、誰にもわからない
……誰にもわからないからこそ、
俺は俺の思う、『良い未来』のために
そして自分の考えだけでなく、彼女たちの希望と輝かしい将来のために
彼女達がもっとも輝く舞台を用意出来るように
彼女たちを導いてやらなければならない
それが『プロデューサー』という仕事なんだ……と、思っている
P「……」
P「律子……」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1377437490
春香「プロデューサーさん、正統派ですよ、正統派!」
http://logsoku.com/thread/hayabusa.2ch.net/news4vip/1331564584/
真美「真美は、どんなアイドルになればいいの〜?」
http://logsoku.com/thread/hayabusa.2ch.net/news4vip/1331902325/
真「AKB48……ですか?」
http://logsoku.com/thread/hayabusa.2ch.net/news4vip/1332504358
P「なあ伊織……アイドルを、『踏み台』にしてみるつもりはないか?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1376060573/
―――
ガチャ!
亜美「うぃ〜! おっはよー、兄ちゃん!」
P「おはよう、亜美」
亜美「で、朝からどうしたのさ兄ちゃん?」
P「お前に話があったんだ。まあこっち来て」
亜美「真美と一緒じゃなくて亜美だけに……何のお話なのかな〜?」ズイッ
P「近い! ソファあるでしょ、座って!」
亜美「……んっふっふ〜、兄ちゃん亜美のミリョクにメロメロ〜?」
亜美「まいいや、はいはい」ストン
P「……えー、で亜美……今すぐってわけじゃないんだけど……」
P「亜美の芸能界デビューのプロデュース案、俺から発表してみてもいいかな」
亜美「あ、へぇ〜、今日呼ばれたのって……」
亜美「……え!?」
亜美「ぷ、プロデュースぅ!?」
亜美「うえぇ!? ……ま、マジでぇ!?」
P「マジで」
亜美「うっひゃ〜……」
亜美「あ、亜美たちも遂に『げーのー人』の仲間入りだよぉ……」
亜美「どんなアイドル、何するの兄ちゃん!?」
P「……」
P「最初にな、一つ聞いておかなきゃいけないことがあるんだ」
亜美「なーにぃ?」
P「真美と一緒がいいか?」
亜美「はぁ? ……そ、そりゃもちろんそうっしょ」
P「ま、だろうな……」
亜美「……兄ちゃん?」
亜美「え、もしかして……」
P「あー大丈夫大丈夫、そんな顔するなよ」
P「最初から、亜美は真美と一緒に、双子のアイドルで活動してもらうつもりだよ」
亜美「……」
亜美「……そっか」
亜美「なぁーんだ……変なこと聞くから勘違いしそうになっちゃったじゃん」
P(……? なんか反応がおかしいな)
P(一緒での活動じゃないかも、なんて不安がるわりには……)
P(…………俺の気のせいか)
P「ああそうそう、それでただ、事務所入って最初の頃はさ、
『かわりばんこに一人のアイドルとして活動したい』
P「みたいなこと言ってただろ」
亜美「あーうん。言ってたね」
亜美「疲れちゃいそうだから、たまに入れ替わってどっちかは休憩、ってカンジのこと考えてたよ」
P「なんで二人一緒に、って考えに変わったんだ?」
亜美「えっと、ねえ……」
亜美「事務所入ったときに、デビューするときの名前、亜美ってことでいいよねって話してたんだけど…」
『なんかさ最近……自分も『双海真美』って名前で、アイドルやりたくなったんだ』
『かわりばんこに、じゃなくて…亜美と一緒に、歌ったり踊ったりさ。…どうかな?』
亜美「って真美が言ってきて」
亜美「って真美が言ってきて」
亜美「なんかそれ聞いたらさ、亜美も何でか嬉しくなっちゃってさぁ」
亜美「じゃあかわりばんこ辞めて、『亜美』と『真美』でやろっか……って話になったの」
P「へぇ〜」
亜美「一つ聞いておかなきゃ、ってそれのこと?」
P「あ、いや、今のはちょっとした確認のつもりだったんだ」
P「本当に聞いておかなきゃなのは、今から言うこと」
亜美「なにさなにさ〜」
P「亜美たちはどのくらいの期間、芸能界で活動するつもりがある? ……ってこと」
亜美「期間?」
P「芸能事務所に入ってきてくれたわけだから、芸能人として活動をしてもらう」
P「で、俺はプロデューサーだから、亜美たちのことと会社のことを両方考えなきゃいけない」
P「亜美や真美の意見を聞きながら、それに合うような、更に『売れっ子』になりそうな道を提案する」
P「うちの事務所ってどうしても貧乏だしさ、結果が出るようなアイドルになって欲しいから」
亜美「ふんふん」
P「亜美たちが『飽きたら辞めるよ』ってくらいのスタンスなら、短期間で売れっ子になれそうなプランを」
P「『ちょっとは長いことやってたいなぁ』と思ってくれてるなら、じっくりと活動できそうなプランを」
P「そんな風に、二人の希望に合わせて提案させてもらいたい」
亜美「ほぉーう……中々有能そうですなぁ」
P「……で、どのくらい活動したいのか、は、二人の間で話し合ったりしていたか?」
亜美「……兄ちゃーん、もしもしてなかったらさーぁ、ここで亜美だけで決めちゃうことになるんでないの?」
P「そうなっちゃまずい……よな」
P「そっか。まだしてないんなら、真美も呼んで、やっぱり二人一緒に話すことにするか」
亜美「……ふっふっふっふ」
亜美「実はぁ……しちゃってるんだよね〜」
P「……あれ、そうなの?」
亜美「ホントホントぉ。二人でレッスンしながらさ、けっこーそういうこと話してるんだよ」
亜美「これもそーだね、最初は
『パーッとみんなの注目かき集めて、売れっ子になった途端に衝撃の引退!』
亜美「で、兄ちゃんとかファンの皆とか驚かせてやろーかなってカンジだったんだけど」
亜美「なんか亜美たちが思ってるより楽しそうだから、やれるとこまでやってみようかなって」
亜美「そんなこと話してましたー!」
P「そっか〜、へぇー……」
P「……お前たちもその歳で、色々考えてるんだなぁ」
亜美「そりゃそうっしょー。だってこの双海亜美様ですから」
P「へいへい」
亜美「…軽い、反応が軽いよ兄ちゃん!」
P「ふふ……悪い悪い」
亜美「まったくもぉ〜」
P「……とりあえずわかった。少しは長い期間、活動するつもりってことで、いいんだな?」
亜美「うん! ……あ、でもでも、亜美たちってすぐに売れっ子になっても、多分……」
亜美「……」
亜美「…………」
亜美「………………おぉ?」
P「な、なんだどうした? 急に考え込みやがって」
亜美「……」
亜美「……そっかぁ……」
亜美「……ふーん…………」
亜美「なるほど、ねぇ……」
P「な、何だよ、怖いよ亜美」
亜美「へぇ〜……」
P「ぶ、ブツブツ言うなよ。何か気付いたんなら教えてくれよ」
亜美「いやぁ……兄ちゃんさーぁ……」
亜美「ひょっとして……ホントなら、亜美たちを別々に活動させたいんじゃないの?」
P「!?」
P「え、いや……え!?」
P「え、何で? 何でそう思ったの?」
亜美「……だからさ、亜美たちって二人でよく話してるんだよ」
亜美「げーのー界入ったらどうなるのかな、とか、そういうことも」
亜美「でさぁ、亜美たちってこーんなに可愛くて、しかも双子で珍しいじゃん?」
亜美「学校でも人気者だしぃ、げーのー界でもすーぐに人気者になれちゃうと思うんだよね〜」
P「お、おぅ……」
亜美「でもさ、なーんか……危ないんじゃないかって」
亜美「そーゆーこと真美と話してたんだよぉ〜」
P「危ないって?」
亜美「兄ちゃんが前に、そん時は真美いなかったから亜美にだけだったけど……言ってくれたよね?」
亜美「『マナカナ』って、双子の芸能人の先輩がいるって」
P「言ったな。小鳥さんと社長が
『この歳で双子のアイドルなんて……マナカナの再来みたいですよね』
『うむ。話題性だけ見ても、亜美くん真美くんは事務所トップクラスの注目人物だろうな』
P「って話してるの聞いてて、亜美はマナカナを知らなかったみたいだから、説明もしたな」
亜美「そん時の話だとさ、マナカナって人たちは、双子のアイドルで有名だったんだよね」
P「ああ。他にも同じようなタレントはいたけど、『双子』って部分でこれだけ有名なのは……」
P「あとは、『ザ・たっち』くらいのもんかな。あっちは芸人だけど」
P(おすぎピーコとか、他もいるけど、まあある程度若い人に絞ればその二組だろう)
亜美「うん、ザ・たっちは亜美も知ってる〜」
亜美「真美と一緒に『ゆ〜たいりだつ〜』ってよくやるし」
P「それがどうかしたのか?」
亜美「ああ、でさぁ、双子で凄かった、双子で凄かったってみんな言ってたけどぉ」
亜美「なんか、亜美たちで言うならさ、『双海亜美がどうだった』って、みんなあんま言わないよね」
亜美「みーんな、二人一組での話しかしてくんないんだもん」
P「!? そ、そう…だな……」
亜美「真美にはマナカナって人たちのことは言ってないけど、それとなく話はしてるんだ」
『真美が自分もアイドルになりたいって言ってくれたから、二人で活動する気持ちになった』
『でも、だったら……二人で一人前、じゃなくて、亜美と真美…それぞれが一人前になれるようにしたいよね』
『よく間違われて、それはそれで面白いけど……みーんなに亜美と真美の違い、覚えてもらいたいよね』
亜美「……ってさ」
亜美「ま、亜美が言うまでもなくぅ? 真美もそのつもりだったみたいだけどぉ?」
P「…………」
P「おま、お前たち……本当に凄いな……」
P「もうそんなことまで……話し合ってたのか……」
P「……俺、要らないんじゃないか?」
亜美「ふっふ、そりゃあこの双海亜美様ですから!」
P「……いや、今回に限っては本当に脱帽だよ。……流石の亜美様だな」
亜美「へっへ〜♪ 亜美たちが本気でとりくめば、ざっとこんなもんよ」
P「……まだ取り組んではないだろ。それでもそこまで先のことを見越せるのは凄まじいけど」
亜美「あ、そっか。アイドルで活動はこれからすんだっけか」
P「……で、つまり…亜美たちは、何を危ないと思ってるんだ?」
P「もう大体は理解したけど、亜美の口から教えてくれ」
亜美「うんうん。亜美たち、双子でパーッと売れっ子になっちゃえそうだけど……」
亜美「それだと、みんな亜美と真美のこと、一人前だって思ってくれないんじゃないかなってね」
P「……ふむ」
亜美「『亜美と真美』の二人一組で、やっと覚えてもらえるんじゃないかって……それは何かヤだからさぁ」
P「そっか」
亜美「うん、そーなの。それが危ないんじゃないかって」
亜美「……でもさぁ、それがヤだからって別々に活動するもヤだしぃ」
P「真美とは、そこまで話はしてないのか?」
亜美「うん。真美には『二人一緒でも、二人の違いをわかってもらいたいね』ってとこまでしか話してないんだ」
亜美「だからさ、なんかエラソーなこと言っといてアレなんだけど……」
亜美「どうするかって具体的なとこまでは、なーんも考えてないんだよね」
亜美「真美にはちゃんと言ってないからモチのロンでなんだけど、亜美の方もね」
P「……」
P「どうするか決めてない、けど、別々の活動はしたくない」
亜美「うん」
P「かと言って双子として活動すると、自分たちをちゃんと覚えてもらえなそうで、それはイヤ」
亜美「……うん」
P「……」
P「いやぁ……凄いよ、亜美」
亜美「へ? 何が?」
P「俺が亜美に言おうと思ってたこと、全部言われちゃったよ」
律子「アシスタント……」
P「バラエティ番組とかで、MCの横にいる人な」
律子「……成程」
P「アイドルとしての活動で知名度が上がれば、そこからバラエティ番組への進出はラクな方だ」
P「そこでひな壇に座りトークする、リアクションをする、レポーターをやる、ゲームをする」
P「仕事は番組によって色々あるんだが、律子には小さな番組でもいいから、アシスタント役を経験して欲しい」
P「理想の最終形としては、それこそ司会業にも挑戦してもらったり」
P「アシスタントを推す理由はわかるか?」
律子「……」
律子「まあ……今までの話から考えれば、容易に」
律子「お茶の間に、名前と個性を多くの手段で伝えられるから、アイドル活動とバラエティ番組は切り離せない存在ですよね」
律子「そんなバラエティ番組での経験を積むこと自体が、既に糧になるはずですし」
P「うん」
律子「何よりアシスタントは、演者や番組を回して、司会者のサポートをする、対応力の必要な役割です」
律子「単に自分が目立てば良い、という訳ではなく、それぞれの演者の個性を把握したり、司会者との相性を考えたり」
律子「それって他人をプロデュースすることに近い……って私が思いましたけど、多分プロデューサーもそう思ったから、推してるんでしょうね」
律子「……まあ、そういうのを考えない、置物みたいなアシスタントも結構いますけど」
P「……じゃあ、そうじゃないアシスタントって言ったら、例えば誰が思い浮かぶ?」
律子「アシスタントとして、するべき仕事をしている人……ってことですよね……」
律子「……」
律子「……無難ではありますけど、例えばテレビ局の『女子アナ』なんかそうじゃないですか?」
律子「アナウンサーって職業柄、速報性のあるニュース番組に出ることもあるからこそなんでしょうけど」
律子「司会者との連携だったり、出演者への話題の振り方だったり、進行のスムーズさだったり」
律子「そういう所は、アシスタントとしての仕事をきっちりこなしていると思いますね」
P「……うむ。良いとこを突いたな」
P「アシスタントを推した理由は、律子が言ったようなことほぼそのまんまだ」
P「そして律子が挙げてくれた、女子アナのような対応力を持ったアシスタントになってもらいたい」
P「……それに付け足すとしたら、アシスタントという立場上、色々な芸能人やスタッフとの交流が多くなる」
律子「……それで?」
P「わかんないか?」
律子「? 何がですか?」
P「プロデューサーってのは、人との繋がりやコネが大事なんだ」
P「俺も社長を通じて色んな人に会ってきたけど、もし律子がアシスタントとして番組に出演したら……」
P「司会者やゲストの大物芸能人、現場のスタッフ……俺が会えない多くの有力な人と会うことが出来るようになる」
律子「……! そ、そうか……」
P「権威のある人に媚を売れ……ってんじゃないぞ」
P「年上の人、目上の人には敬意を払いつつ、そうでなくても共演者やスタッフは訳隔てなく接するべきだ」
P「そういう行動は人間的に考えてもそうすべきだし、嫌らしく打算的に考えた場合だってそう」
律子「? もちろんそんなことする気は無いですけど、どういう意味ですか?」
P「下っ端のADが、出世して人気ディレクターになったりってこともあるからだよ」
P「実際、元おニャン子の『国生さゆり』は、アイドル時代にスタッフにキツく当たっていたらしい」
P「……で、月日が経って、昔現場で当たっていたスタッフが出世して」
P「当時のことがあったせいで、一時期は番組に出演させてもらえず、業界内で干されかけていたんだ」
P「彼女はその経験をよく話すし、それを反省してか若いアイドルたちによく、スタッフを大事に、と注意するらしい」
律子「……言いたいことはわかりますけど、その件は、彼女の自業自得でしょう」
P「そりゃそうだけど……打算的に見てもスタッフや共演者とは良い関係を築くべきってことだ」
律子「……しかし、そこは全く気付きませんでしたね。流石はプロデューサー殿」
P「いやま、大物芸能人やスタッフに会ったからって、全員と友好になれるかはわからんけど」
P「そういった人たちと、プロデューサーとして活動する前から交流を持てる」
P「いざアイドルからプロデューサーに転向、となったとき、そのアドバンテージは計り知れないものがあるな」
律子「はい、理解できました」
P「アシスタントが出来そうな番組の仕事も取ってきていいか?」
律子「ええ、もちろん」
律子「人を動かす、その人の個性を見つける、どう番組に反映させるか考える」
律子「芸能活動しながらプロデューサーのような経験ができるんですから、願ったり叶ったりじゃないですか」
P「……そう言ってもらえるなら有難い」
律子「……で、二つ目って何ですか?」
P「覚えてたか」
律子「もちろんですよ」
律子「ただ私からしたら……アイドルとアシスタントの両立だけでも十分だと思いますけどね」
律子「これ以上、何の付加価値を見つける必要があるのか、興味があります」
律子「私が芸能界で向いてそうな役割ってことですか? それとも、プロデュース業に応用できる役割ってことですか?」
P「そうだなぁ……」
P「どっちも、ってとこかな」
律子「ふふ……じゃあ早く教えてくださいよ」
P「ああ。律子……アイドル、アシスタント」
P「そしてお前のもう一つの仕事は……『ラジオパーソナリティ』だ」
今日はここまで
キリのいいとこまで
律子「ラジオ……パーソナリティ……」
律子「……」
P「……そのまんまだな、ラジオの番組のMCとして活動する人」
P「小さくてもいいから、長く続けられるようなラジオ番組を一つ持っておきたいな」
P「ラジオはテレビ以上に、『話術』が何よりも重要視される世界だから」
律子「……そう、でしょうね」
P「ラジオパーソナリティをして欲しい理由はわかるか?」
律子「ええ。さっきのアシスタントと、恐らくは本質的には似たようなことかと」
律子「リスナーを惹き付ける話術と、会話を途切れさせない対応力」
律子「どっちとも芸能活動でも、人を導く立場でも必要になるものですね」
P「ああ。将来を見越すだけでなく、芸能人として腕を磨くのにも、うってつけの場所だ」
律子「……それに……ラジオは芸能活動の基本でもあり、独自の文化とファン層を築いている一大メディア」
律子「だから場合によっては、テレビでの活動に左右されない、全く別の『基盤』にもなりえる」
P「そうそう、それも理由の一つ」
律子「ええ、ですから無視することは絶対に出来ない存在……ですけど……」
P「……だけど?」
律子「それでも……ラジオパーソナリティは……盲点でした」
P「盲点?」
律子「はい。……確かに活動内容や、私の伸ばすべき適正なんかを考えると、妥当かとも思います」
律子「でも……そう、一大メディアなんて言っておいて……私、ラジオ番組のことを全く考えていなかった」
P「って言うと?」
律子「……もしも今回のようなことが起こらずに、私がプロデューサーとして活動していたとしたら……」
律子「そうしたら恐らくは、どこかで伊織たちの出るであろう、ラジオの企画も考えていたかもしれません」
P「……いいじゃないか、それならそれで」
律子「……いえ、違うんです」
律子「……」
律子「結局の所……私は今になって初めて『ラジオで自分の番組を持つ』っていう選択肢に気付きました」
律子「ルックスに自信が無い、歌も上手くない、なんて自分で言っておいて……」
『じゃあ仮に、顔を出さなくても芸能活動が出来る場所はないか』
『喋りはまだ得意な方だけど、それをアイドル活動にどう活かすか』
律子「……私のことなのに、それを考えることもしないで、アイドル=テレビってことしか頭に無くて」
律子「うん……もちろん、気付いたらラジオパーソナリティを目指してたか……って言われたら違うかもしれませんけど」
律子「でも、今のこの場で、私自身がそれに気付けた……それが、何よりも嬉しくって悔しいです」
P「律子……」
律子「ふぅ……伊織へのプラン、やっぱり納得はしてません。してませんけど……」
律子「……私が未熟で、まだまだするべきことがたくさんある」
律子「と言うより、あなたを超えるプロデューサーになれるように、私にはするべきことがある」
律子「……それを心から、実感しました」
律子「だから……」
律子「私はプロデューサーの考えに、乗ってみたいです」
P「……!」
P「り、律子……」
P「……ってことは……まず基本は、個性派の『メガネアイドル』として活動だ」
律子「ええ、そしてテレビ番組はバラエティを中心に」
P「お、おぉ、そうそう」
律子「初めっからイヤだなんて言ってませんけど、グラビア活動もいいですよ」
律子「メディアへの露出を増やすのは、アイドルを売り出すのに必要なことですからね」
律子「……で、そうですね。最終的にはアシスタントやMCになれるように、テレビ番組、業界の立ち回りを覚える」
P「……それと……」
律子「はい……ラジオパーソナリティとして、自分の番組を持つ」
律子「ある意味ではテレビ以上の修行の場として。あとそれとは別に、自分のもう一つの活動の場として」
P「……ってことで、いいのか?」
律子「ふふっ、当たり前ですよ」
律子「まだまだ勉強不足ですからね、私」
律子「やるからには……全力で、行かせてもらいますよ」
P「そう、か……そうかそうか……」
律子「……しっかし、よくそんなにポンポン思いつきますね〜」
律子「ま……自分に合ってる気がする、なんとなくその活動で、活躍している姿が思い浮かぶ」
律子「そういうプランだから、三人ともプロデューサーの考えに乗ったんでしょうけどね」
律子「……もう春香とか響とか、ひょっとして全員分のプラン、あったりするんですか?」
P「……ん? あ、あぁ、一応考えてはいた、けど……」
律子「?」
P「律子のグループのプランを見て、学ぶべき所がいくつもあった」
P「グループでのバランスの取り方、相乗効果」
P「ソロでの売り出し方しか考えてなかった俺からすれば、目の醒めるようなことだらけだったよ」
P「アイドルグループでの案を、新たに考えてみる必要があるかもしれないな」
律子「……ふふっ、今回のあずささんたちのグループはしょうがないですけど……」
律子「全員プロデューサーに任せたりは、させませんよ?」
P「……」
律子「ちゃんと、私がプロデュースできるように……残して、って言っていいのかしら」
律子「まぁいいわ……新人の娘でも何でも、プロデューサーが片っ端からデビューさせたりはしないでくださいよ?」
P「…………」
P「律子」
律子「はい?」
P「……これから話すことが、俺から律子にして欲しい、最後のことだ」
律子「……?」
律子「何ですか、改まって」
P「事務所のメンバー、一番最初に入ったのが、律子とあずささんだったな」
律子「そうですね」
P「で、その後に他のメンバーが次々入ってくれて……」
P「最後に入ったのが、亜美真美だった」
律子「……ええ、そうですけど」
P「……律子よ」
律子「はい?」
P「お前が芸能界で活動して、自分の中でその活動が『成功』だと確信できるようになった時……」
P「お前に、あずささん、伊織、亜美のグループをプロデュースしてもらいたい」
律子「……」
律子「…………」
律子「は……はいぃ!?」
P「……お前に足りないのは確信できるだけの自信と、経験だ」
P「俺にだってアイドルの経験なんて無いが、一応は確信はあった」
P「あとは……みんなが夢持って活動にやる気出してもらえるようにするための……口先と情熱?」
律子「や……え、えぇ!?」
P「本人たちが、俺のプランに乗ってくれた。それは素直に嬉しいことだ」
P「でも律子、それは俺が確信と情熱と、あとは口先でもって、みんなを奮起させたからそうなったんだ」
P「俺があずささんに対して、グループよりもソロで行って欲しいという考えをぶつけたのと同じように……」
P「律子のプロデュースしたいという情熱で、俺のプランをへのやる気を上書きすることも出来るんじゃないのか?」
律子「!? な、そ……そんなこと……!」
P「……実はこれは、極めて論理的な話でもある」
P「言っても俺のプランは、まだ実践されていない。成功するかもしれないが、成功しているわけではない」
P「だけど少しみんなのデビューを遅らせる形にはなるが……」
P「実際に芸能界で『成功』した律子が、プロデューサーになれれば」
P「経験者、成功者を前に俺はきっと、そうなった時、律子ほどの説得力を持てていないかもしれない」
律子「……」
P「確信が無いから踏み切れない、経験があることでプロデュース業に応用できる」
P「それもそうだが、最後の最後で決め手になるのは、この人をプロデュースしたいという『情熱』」
律子「……情熱……」
P「俺自身は、実際にそれぞれをデビューさせるつもりで、本気でプランを考えて提示した」
P「そうでなきゃ、伊織なんかは絶対に納得してくれなかっただろうしな」
P「……まあ、三人には『選択を迫る』という形で、少し苦しい思いもさせるかもしれんけど……」
P「でも恐らく、律子のプランの本当の意図と、どうしてもこのグループでやりたいんだっていう熱意を伝えれば……」
P「きっと……俺のプランに対するやる気をも凌駕してくるはずだ」
律子「…………」
律子「……あなたって人は……本当に……」プルプル
律子「口八丁の夢物語……まさかここに来てそれが……」
P「あずささんがグループに埋もれる可能性があるって言うなら、俺が提示したようなソロでの女優業にも力を入れさせればいい」
P「伊織がそれでもコメンテーターに前向きなら、本人のやる気に任せるのもいいだろう」
P「亜美が真美と活動できなくなるかもしれないが、『派生ユニット』という形で双子で活動させてもいい」
P「グループだからって、俺の考えが全部却下されるわけじゃないしな……そういう形で、みんなのやる気を延長させてもいいんだ」
律子「……わ、私のプランを……潰すってつもりじゃあ……」
P「……違うな。芸能界で経験と自信を積んでもらいたかった」
P「だから、一先ずはプランという考えそのものを頭から消してもらおうと思った」
律子「そ、そんな……」
P「……俺は律子に、俺以上のプロデューサーになってもらいたい」
律子「!」
P「しっかりと考えられた理論とアイドルたちの観察力」
P「そこに加わる、芸能界で培った様々な能力」
P「そして最後に、俺の考えをそもそもから上書きできるほどの情熱」
P「全部が合わさったその時こそ、律子の考えたグループ活動は、最高に輝いてくれるはずなんだ」
律子「……だ……だから……」
律子「だからこんな……回りくどい……」
P「……そうだな。散々遠回りさせてすまなかった」
P「律子には俺と一緒の立場……プロデューサーになってもらいたい」
P「そして、俺の『夢物語』のようなプランを、一緒に考えても、それを超えるプランを考えてももらいたい」
律子「一緒に……ですか」
P「ああ」
P「事務所のみんなを笑顔にしたい、だからみんなを輝かせられるようなプランを作りたい」
P「……そしてどれだけ彼女たちを輝かせることができるか……勝負、してみたいじゃないか」
律子「勝負……」
P「どうだ?」
律子「……」
律子「…………フゥ」
律子「わかりましたよプロデューサー殿……」
律子「未来のプロデューサー、現アイドル研究生の私、『秋月律子』が……」
律子「そのプランにも、乗ってあげようじゃありませんか」
律子「私がさっさと芸能界で『成功』してみせて……」
律子「三人のグループも、あっという間に売れっ子にしてみせますからね!」
P「……ああ、望むところだ!」
律子編 おわり
P(……)
P(とりあえず……現状ですべきことは全てやった)
P(あずささん、伊織、亜美の三人には、デビューが遅れることを話しておかなきゃな)
P(あずささんがデビューの時期が更に遅くなるのは申し訳ないが……)
P(まあ、律子がデビューして、律子がその三人をデビューさせて)
P(その後、他のメンバーを、ってとこだから……問題ではない……だろうと思う)
P(まぁ後は、やる気だしてくれた伊織が、文句を言うかもしれないけど……)
P(……それも俺が何とかしなきゃな)
P(……)
P(……そう、だな……)
P(一番は……亜美……というか、真美か……)
P(……)
『もしも、律子のプロデュースするグループが予想以上の売れっ子になったら』
『それによって亜美が、真美と一緒の活動が出来ないくらい、忙しくなったら』
P(……)
P(うん……)
P(律子の活動と考えが全て上手く行って、その上で更にプロデュース業も……)
P(そんな奇跡のような誤算があった上で起こり得ることだが……)
P(……ふふっ、その時は……俺が全ての悪者になればいいだけか)
P(奇跡のような誤算を起こした、律子の実力)
P(俺がそれをサポートする形で、他のみんなを導いて行かなければならない)
P(きっと、そういうことなんだろう……)
律子「? プロデューサーどうかしましたか?」
P「ああ、いや何でもない」
P「……アイドルもプロデュースも、期待……してるぞ?」
律子「! ……ふ、任せてくださいよ。美希ほどじゃないですけど、本気出したら結構やりますよ」
P「……ああ!」
―――
社長「……それで、話というのは?」
P「ええ社長。……『竜宮小町』が、軌道に乗ってきたじゃないですか」
社長「そうだね。とても喜ばしいことだ」
社長「まあ、短期間で目覚しい活躍をしていた律子君が、急にプロデューサーに転向してしまったのは……」
社長「そういう道を目指していたのは知っていたが、あまりに突然で驚いてしまったな」
社長「……ただ、そのプロデュース業すらも自分のものにしてしまったからな、流石は律子君だな」
P「そうですね」
社長「……ふふふ。もしかして、私が君に促した『アドバイス』が効いたのかもな?」
P「どうですかね〜?」
社長「……あぁ、それで、それがどうかしたのかね?」
P「……それで社長、事務所の他のメンバーも、この機会にデビューさせてみませんか?」
社長「春香君たちもかね?」
P「ええ。ちゃんと、全員分のプランも考えてあるんです」
P「……二組ほど、グループでのプランも」
社長「ほほぅ……」
社長「確かにわが社も、この勢いに乗らない手はない、か……」
社長「……ひとまず、その全員分のプランとやらを聞かせてくれないかね?」
P「……はい!」
おわり
これで本当に終わり
長々くどくどと続けてしまいましたが、
最後まで見てくれた人がいたら本当にありがとうございました
あずささん編書いた最初の時点では
「まあパラレルワールドってことでいっかー」
とか思ってたんですけど、途中から
「あれ、これ上手くやれば繋げられるかな?」
と欲が出て、結果的に最初に繋がるような構成になりました
途中から軌道修正したから、
矛盾とかミスとかフツーにあるかもしんないけど
生暖かい目で見て、脳内変換してくれれば幸いです
リアルタイムで、読ませて頂きました。お疲れ様です。前シリーズから読ませてもらっています。本当によく考察されていて脱帽です。いつも驚いてしまいます。ですが、あとがきでもあるように、IFでもいいから竜宮組のソロがみたいと思ってしまいました。
特にあずささんは、グループよりもみたいと思ってしまいました。
続きです。
竜宮よりも大変で日を浴びるのは遅いと思いますが、その分一人でもできるという自信と実力はつきそうですし。
律子と竜宮への面目もたちましたが、今回でも書かれているように真美がどうしても不憫ですし、チャンスがまだまだある律子より、真美の望みがかなって欲しかった。
更に続きです。
竜宮の利点もよく分かりましたし、本編的にはこれが自然だと思いますが、今回はPの情熱、プランを選んで欲しかったです。3人には。一度乗ったのに乗り換えるわけだから、いろいろ複雑だったとは思いますが。Pが律子のプロデューサーとして大成してほしいと思って仕向けていたわけですが。
更に続きです。
真美、下手しら亜美と竜宮も潰しかねない件についても、Pだけじゃなく律子にも責任はあるわけで。そこの辺りもついて、あとがきで書かれていますが、失礼ながら「IFでもよかったんじゃないか」と正直思ってしまいました。
作者様、返信ありがとうございます。気づかすに書き込んでしまいました。
作者様の作品なんですから、読者の自分が願望を押し付けるのは良くないと分かっていますが、作者様のファンで、やはり自分で4人をプロデュースしたい気持ちが入り混じり止められませんでした。すみません。
>>102
返信ありがとうございます。イヤ、作者様のプランは自己満足でも理にかなった、納得させらるモノですよ。
自分は現実のアイドルは全然知らないので、作者様の様には考えられません
が、妄想したくはありますね。
あずささんのプランは、前にも書きましたが本当に素晴らしいと思いました。不安をなくすのではなく、自信つけさせるといった考えがプランから感じられました。アイドル年齢は決して若くないあずささんは、今からでも先のことを考えなくてはならないので、自信をつけて己を磨くにはソロの方がいいと想像しちゃいましたw。グループでもソロ活動はありますし自信はつくかもしれませんが、ソロのほうがつきそうです。
自分は4人は好きだけど、「竜宮小町」は様々な理由であまり好きじゃないので余計に火がついちゃいました。すみません。アイマス話す人も周りにいないので。
未来が誰にもわからないように
俺の起こした行動が、
結果として『良い事』になるのか、それとも『悪い事』になるのか
それは結局のところ、誰にもわからない
……誰にもわからないからこそ、
俺は俺の思う、『良い未来』のために
そして自分の考えだけでなく、彼女たちの希望と輝かしい将来のために
彼女達がもっとも輝く舞台を用意出来るように
彼女たちを導いてやらなければならない
それが『プロデューサー』という仕事なんだ……と、思っている
P「……」
P「律子……」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1377437490
春香「プロデューサーさん、正統派ですよ、正統派!」
http://logsoku.com/thread/hayabusa.2ch.net/news4vip/1331564584/
真美「真美は、どんなアイドルになればいいの〜?」
http://logsoku.com/thread/hayabusa.2ch.net/news4vip/1331902325/
真「AKB48……ですか?」
http://logsoku.com/thread/hayabusa.2ch.net/news4vip/1332504358
P「なあ伊織……アイドルを、『踏み台』にしてみるつもりはないか?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1376060573/
―――
ガチャ!
亜美「うぃ〜! おっはよー、兄ちゃん!」
P「おはよう、亜美」
亜美「で、朝からどうしたのさ兄ちゃん?」
P「お前に話があったんだ。まあこっち来て」
亜美「真美と一緒じゃなくて亜美だけに……何のお話なのかな〜?」ズイッ
P「近い! ソファあるでしょ、座って!」
亜美「……んっふっふ〜、兄ちゃん亜美のミリョクにメロメロ〜?」
亜美「まいいや、はいはい」ストン
P「……えー、で亜美……今すぐってわけじゃないんだけど……」
P「亜美の芸能界デビューのプロデュース案、俺から発表してみてもいいかな」
亜美「あ、へぇ〜、今日呼ばれたのって……」
亜美「……え!?」
亜美「ぷ、プロデュースぅ!?」
亜美「うえぇ!? ……ま、マジでぇ!?」
P「マジで」
亜美「うっひゃ〜……」
亜美「あ、亜美たちも遂に『げーのー人』の仲間入りだよぉ……」
亜美「どんなアイドル、何するの兄ちゃん!?」
P「……」
P「最初にな、一つ聞いておかなきゃいけないことがあるんだ」
亜美「なーにぃ?」
P「真美と一緒がいいか?」
亜美「はぁ? ……そ、そりゃもちろんそうっしょ」
P「ま、だろうな……」
亜美「……兄ちゃん?」
亜美「え、もしかして……」
P「あー大丈夫大丈夫、そんな顔するなよ」
P「最初から、亜美は真美と一緒に、双子のアイドルで活動してもらうつもりだよ」
亜美「……」
亜美「……そっか」
亜美「なぁーんだ……変なこと聞くから勘違いしそうになっちゃったじゃん」
P(……? なんか反応がおかしいな)
P(一緒での活動じゃないかも、なんて不安がるわりには……)
P(…………俺の気のせいか)
P「ああそうそう、それでただ、事務所入って最初の頃はさ、
『かわりばんこに一人のアイドルとして活動したい』
P「みたいなこと言ってただろ」
亜美「あーうん。言ってたね」
亜美「疲れちゃいそうだから、たまに入れ替わってどっちかは休憩、ってカンジのこと考えてたよ」
P「なんで二人一緒に、って考えに変わったんだ?」
亜美「えっと、ねえ……」
亜美「事務所入ったときに、デビューするときの名前、亜美ってことでいいよねって話してたんだけど…」
『なんかさ最近……自分も『双海真美』って名前で、アイドルやりたくなったんだ』
『かわりばんこに、じゃなくて…亜美と一緒に、歌ったり踊ったりさ。…どうかな?』
亜美「って真美が言ってきて」
亜美「って真美が言ってきて」
亜美「なんかそれ聞いたらさ、亜美も何でか嬉しくなっちゃってさぁ」
亜美「じゃあかわりばんこ辞めて、『亜美』と『真美』でやろっか……って話になったの」
P「へぇ〜」
亜美「一つ聞いておかなきゃ、ってそれのこと?」
P「あ、いや、今のはちょっとした確認のつもりだったんだ」
P「本当に聞いておかなきゃなのは、今から言うこと」
亜美「なにさなにさ〜」
P「亜美たちはどのくらいの期間、芸能界で活動するつもりがある? ……ってこと」
亜美「期間?」
P「芸能事務所に入ってきてくれたわけだから、芸能人として活動をしてもらう」
P「で、俺はプロデューサーだから、亜美たちのことと会社のことを両方考えなきゃいけない」
P「亜美や真美の意見を聞きながら、それに合うような、更に『売れっ子』になりそうな道を提案する」
P「うちの事務所ってどうしても貧乏だしさ、結果が出るようなアイドルになって欲しいから」
亜美「ふんふん」
P「亜美たちが『飽きたら辞めるよ』ってくらいのスタンスなら、短期間で売れっ子になれそうなプランを」
P「『ちょっとは長いことやってたいなぁ』と思ってくれてるなら、じっくりと活動できそうなプランを」
P「そんな風に、二人の希望に合わせて提案させてもらいたい」
亜美「ほぉーう……中々有能そうですなぁ」
P「……で、どのくらい活動したいのか、は、二人の間で話し合ったりしていたか?」
亜美「……兄ちゃーん、もしもしてなかったらさーぁ、ここで亜美だけで決めちゃうことになるんでないの?」
P「そうなっちゃまずい……よな」
P「そっか。まだしてないんなら、真美も呼んで、やっぱり二人一緒に話すことにするか」
亜美「……ふっふっふっふ」
亜美「実はぁ……しちゃってるんだよね〜」
P「……あれ、そうなの?」
亜美「ホントホントぉ。二人でレッスンしながらさ、けっこーそういうこと話してるんだよ」
亜美「これもそーだね、最初は
『パーッとみんなの注目かき集めて、売れっ子になった途端に衝撃の引退!』
亜美「で、兄ちゃんとかファンの皆とか驚かせてやろーかなってカンジだったんだけど」
亜美「なんか亜美たちが思ってるより楽しそうだから、やれるとこまでやってみようかなって」
亜美「そんなこと話してましたー!」
P「そっか〜、へぇー……」
P「……お前たちもその歳で、色々考えてるんだなぁ」
亜美「そりゃそうっしょー。だってこの双海亜美様ですから」
P「へいへい」
亜美「…軽い、反応が軽いよ兄ちゃん!」
P「ふふ……悪い悪い」
亜美「まったくもぉ〜」
P「……とりあえずわかった。少しは長い期間、活動するつもりってことで、いいんだな?」
亜美「うん! ……あ、でもでも、亜美たちってすぐに売れっ子になっても、多分……」
亜美「……」
亜美「…………」
亜美「………………おぉ?」
P「な、なんだどうした? 急に考え込みやがって」
亜美「……」
亜美「……そっかぁ……」
亜美「……ふーん…………」
亜美「なるほど、ねぇ……」
P「な、何だよ、怖いよ亜美」
亜美「へぇ〜……」
P「ぶ、ブツブツ言うなよ。何か気付いたんなら教えてくれよ」
亜美「いやぁ……兄ちゃんさーぁ……」
亜美「ひょっとして……ホントなら、亜美たちを別々に活動させたいんじゃないの?」
P「!?」
P「え、いや……え!?」
P「え、何で? 何でそう思ったの?」
亜美「……だからさ、亜美たちって二人でよく話してるんだよ」
亜美「げーのー界入ったらどうなるのかな、とか、そういうことも」
亜美「でさぁ、亜美たちってこーんなに可愛くて、しかも双子で珍しいじゃん?」
亜美「学校でも人気者だしぃ、げーのー界でもすーぐに人気者になれちゃうと思うんだよね〜」
P「お、おぅ……」
亜美「でもさ、なーんか……危ないんじゃないかって」
亜美「そーゆーこと真美と話してたんだよぉ〜」
P「危ないって?」
亜美「兄ちゃんが前に、そん時は真美いなかったから亜美にだけだったけど……言ってくれたよね?」
亜美「『マナカナ』って、双子の芸能人の先輩がいるって」
P「言ったな。小鳥さんと社長が
『この歳で双子のアイドルなんて……マナカナの再来みたいですよね』
『うむ。話題性だけ見ても、亜美くん真美くんは事務所トップクラスの注目人物だろうな』
P「って話してるの聞いてて、亜美はマナカナを知らなかったみたいだから、説明もしたな」
亜美「そん時の話だとさ、マナカナって人たちは、双子のアイドルで有名だったんだよね」
P「ああ。他にも同じようなタレントはいたけど、『双子』って部分でこれだけ有名なのは……」
P「あとは、『ザ・たっち』くらいのもんかな。あっちは芸人だけど」
P(おすぎピーコとか、他もいるけど、まあある程度若い人に絞ればその二組だろう)
亜美「うん、ザ・たっちは亜美も知ってる〜」
亜美「真美と一緒に『ゆ〜たいりだつ〜』ってよくやるし」
P「それがどうかしたのか?」
亜美「ああ、でさぁ、双子で凄かった、双子で凄かったってみんな言ってたけどぉ」
亜美「なんか、亜美たちで言うならさ、『双海亜美がどうだった』って、みんなあんま言わないよね」
亜美「みーんな、二人一組での話しかしてくんないんだもん」
P「!? そ、そう…だな……」
亜美「真美にはマナカナって人たちのことは言ってないけど、それとなく話はしてるんだ」
『真美が自分もアイドルになりたいって言ってくれたから、二人で活動する気持ちになった』
『でも、だったら……二人で一人前、じゃなくて、亜美と真美…それぞれが一人前になれるようにしたいよね』
『よく間違われて、それはそれで面白いけど……みーんなに亜美と真美の違い、覚えてもらいたいよね』
亜美「……ってさ」
亜美「ま、亜美が言うまでもなくぅ? 真美もそのつもりだったみたいだけどぉ?」
P「…………」
P「おま、お前たち……本当に凄いな……」
P「もうそんなことまで……話し合ってたのか……」
P「……俺、要らないんじゃないか?」
亜美「ふっふ、そりゃあこの双海亜美様ですから!」
P「……いや、今回に限っては本当に脱帽だよ。……流石の亜美様だな」
亜美「へっへ〜♪ 亜美たちが本気でとりくめば、ざっとこんなもんよ」
P「……まだ取り組んではないだろ。それでもそこまで先のことを見越せるのは凄まじいけど」
亜美「あ、そっか。アイドルで活動はこれからすんだっけか」
P「……で、つまり…亜美たちは、何を危ないと思ってるんだ?」
P「もう大体は理解したけど、亜美の口から教えてくれ」
亜美「うんうん。亜美たち、双子でパーッと売れっ子になっちゃえそうだけど……」
亜美「それだと、みんな亜美と真美のこと、一人前だって思ってくれないんじゃないかなってね」
P「……ふむ」
亜美「『亜美と真美』の二人一組で、やっと覚えてもらえるんじゃないかって……それは何かヤだからさぁ」
P「そっか」
亜美「うん、そーなの。それが危ないんじゃないかって」
亜美「……でもさぁ、それがヤだからって別々に活動するもヤだしぃ」
P「真美とは、そこまで話はしてないのか?」
亜美「うん。真美には『二人一緒でも、二人の違いをわかってもらいたいね』ってとこまでしか話してないんだ」
亜美「だからさ、なんかエラソーなこと言っといてアレなんだけど……」
亜美「どうするかって具体的なとこまでは、なーんも考えてないんだよね」
亜美「真美にはちゃんと言ってないからモチのロンでなんだけど、亜美の方もね」
P「……」
P「どうするか決めてない、けど、別々の活動はしたくない」
亜美「うん」
P「かと言って双子として活動すると、自分たちをちゃんと覚えてもらえなそうで、それはイヤ」
亜美「……うん」
P「……」
P「いやぁ……凄いよ、亜美」
亜美「へ? 何が?」
P「俺が亜美に言おうと思ってたこと、全部言われちゃったよ」
律子「アシスタント……」
P「バラエティ番組とかで、MCの横にいる人な」
律子「……成程」
P「アイドルとしての活動で知名度が上がれば、そこからバラエティ番組への進出はラクな方だ」
P「そこでひな壇に座りトークする、リアクションをする、レポーターをやる、ゲームをする」
P「仕事は番組によって色々あるんだが、律子には小さな番組でもいいから、アシスタント役を経験して欲しい」
P「理想の最終形としては、それこそ司会業にも挑戦してもらったり」
P「アシスタントを推す理由はわかるか?」
律子「……」
律子「まあ……今までの話から考えれば、容易に」
律子「お茶の間に、名前と個性を多くの手段で伝えられるから、アイドル活動とバラエティ番組は切り離せない存在ですよね」
律子「そんなバラエティ番組での経験を積むこと自体が、既に糧になるはずですし」
P「うん」
律子「何よりアシスタントは、演者や番組を回して、司会者のサポートをする、対応力の必要な役割です」
律子「単に自分が目立てば良い、という訳ではなく、それぞれの演者の個性を把握したり、司会者との相性を考えたり」
律子「それって他人をプロデュースすることに近い……って私が思いましたけど、多分プロデューサーもそう思ったから、推してるんでしょうね」
律子「……まあ、そういうのを考えない、置物みたいなアシスタントも結構いますけど」
P「……じゃあ、そうじゃないアシスタントって言ったら、例えば誰が思い浮かぶ?」
律子「アシスタントとして、するべき仕事をしている人……ってことですよね……」
律子「……」
律子「……無難ではありますけど、例えばテレビ局の『女子アナ』なんかそうじゃないですか?」
律子「アナウンサーって職業柄、速報性のあるニュース番組に出ることもあるからこそなんでしょうけど」
律子「司会者との連携だったり、出演者への話題の振り方だったり、進行のスムーズさだったり」
律子「そういう所は、アシスタントとしての仕事をきっちりこなしていると思いますね」
P「……うむ。良いとこを突いたな」
P「アシスタントを推した理由は、律子が言ったようなことほぼそのまんまだ」
P「そして律子が挙げてくれた、女子アナのような対応力を持ったアシスタントになってもらいたい」
P「……それに付け足すとしたら、アシスタントという立場上、色々な芸能人やスタッフとの交流が多くなる」
律子「……それで?」
P「わかんないか?」
律子「? 何がですか?」
P「プロデューサーってのは、人との繋がりやコネが大事なんだ」
P「俺も社長を通じて色んな人に会ってきたけど、もし律子がアシスタントとして番組に出演したら……」
P「司会者やゲストの大物芸能人、現場のスタッフ……俺が会えない多くの有力な人と会うことが出来るようになる」
律子「……! そ、そうか……」
P「権威のある人に媚を売れ……ってんじゃないぞ」
P「年上の人、目上の人には敬意を払いつつ、そうでなくても共演者やスタッフは訳隔てなく接するべきだ」
P「そういう行動は人間的に考えてもそうすべきだし、嫌らしく打算的に考えた場合だってそう」
律子「? もちろんそんなことする気は無いですけど、どういう意味ですか?」
P「下っ端のADが、出世して人気ディレクターになったりってこともあるからだよ」
P「実際、元おニャン子の『国生さゆり』は、アイドル時代にスタッフにキツく当たっていたらしい」
P「……で、月日が経って、昔現場で当たっていたスタッフが出世して」
P「当時のことがあったせいで、一時期は番組に出演させてもらえず、業界内で干されかけていたんだ」
P「彼女はその経験をよく話すし、それを反省してか若いアイドルたちによく、スタッフを大事に、と注意するらしい」
律子「……言いたいことはわかりますけど、その件は、彼女の自業自得でしょう」
P「そりゃそうだけど……打算的に見てもスタッフや共演者とは良い関係を築くべきってことだ」
律子「……しかし、そこは全く気付きませんでしたね。流石はプロデューサー殿」
P「いやま、大物芸能人やスタッフに会ったからって、全員と友好になれるかはわからんけど」
P「そういった人たちと、プロデューサーとして活動する前から交流を持てる」
P「いざアイドルからプロデューサーに転向、となったとき、そのアドバンテージは計り知れないものがあるな」
律子「はい、理解できました」
P「アシスタントが出来そうな番組の仕事も取ってきていいか?」
律子「ええ、もちろん」
律子「人を動かす、その人の個性を見つける、どう番組に反映させるか考える」
律子「芸能活動しながらプロデューサーのような経験ができるんですから、願ったり叶ったりじゃないですか」
P「……そう言ってもらえるなら有難い」
律子「……で、二つ目って何ですか?」
P「覚えてたか」
律子「もちろんですよ」
律子「ただ私からしたら……アイドルとアシスタントの両立だけでも十分だと思いますけどね」
律子「これ以上、何の付加価値を見つける必要があるのか、興味があります」
律子「私が芸能界で向いてそうな役割ってことですか? それとも、プロデュース業に応用できる役割ってことですか?」
P「そうだなぁ……」
P「どっちも、ってとこかな」
律子「ふふ……じゃあ早く教えてくださいよ」
P「ああ。律子……アイドル、アシスタント」
P「そしてお前のもう一つの仕事は……『ラジオパーソナリティ』だ」
今日はここまで
キリのいいとこまで
律子「ラジオ……パーソナリティ……」
律子「……」
P「……そのまんまだな、ラジオの番組のMCとして活動する人」
P「小さくてもいいから、長く続けられるようなラジオ番組を一つ持っておきたいな」
P「ラジオはテレビ以上に、『話術』が何よりも重要視される世界だから」
律子「……そう、でしょうね」
P「ラジオパーソナリティをして欲しい理由はわかるか?」
律子「ええ。さっきのアシスタントと、恐らくは本質的には似たようなことかと」
律子「リスナーを惹き付ける話術と、会話を途切れさせない対応力」
律子「どっちとも芸能活動でも、人を導く立場でも必要になるものですね」
P「ああ。将来を見越すだけでなく、芸能人として腕を磨くのにも、うってつけの場所だ」
律子「……それに……ラジオは芸能活動の基本でもあり、独自の文化とファン層を築いている一大メディア」
律子「だから場合によっては、テレビでの活動に左右されない、全く別の『基盤』にもなりえる」
P「そうそう、それも理由の一つ」
律子「ええ、ですから無視することは絶対に出来ない存在……ですけど……」
P「……だけど?」
律子「それでも……ラジオパーソナリティは……盲点でした」
P「盲点?」
律子「はい。……確かに活動内容や、私の伸ばすべき適正なんかを考えると、妥当かとも思います」
律子「でも……そう、一大メディアなんて言っておいて……私、ラジオ番組のことを全く考えていなかった」
P「って言うと?」
律子「……もしも今回のようなことが起こらずに、私がプロデューサーとして活動していたとしたら……」
律子「そうしたら恐らくは、どこかで伊織たちの出るであろう、ラジオの企画も考えていたかもしれません」
P「……いいじゃないか、それならそれで」
律子「……いえ、違うんです」
律子「……」
律子「結局の所……私は今になって初めて『ラジオで自分の番組を持つ』っていう選択肢に気付きました」
律子「ルックスに自信が無い、歌も上手くない、なんて自分で言っておいて……」
『じゃあ仮に、顔を出さなくても芸能活動が出来る場所はないか』
『喋りはまだ得意な方だけど、それをアイドル活動にどう活かすか』
律子「……私のことなのに、それを考えることもしないで、アイドル=テレビってことしか頭に無くて」
律子「うん……もちろん、気付いたらラジオパーソナリティを目指してたか……って言われたら違うかもしれませんけど」
律子「でも、今のこの場で、私自身がそれに気付けた……それが、何よりも嬉しくって悔しいです」
P「律子……」
律子「ふぅ……伊織へのプラン、やっぱり納得はしてません。してませんけど……」
律子「……私が未熟で、まだまだするべきことがたくさんある」
律子「と言うより、あなたを超えるプロデューサーになれるように、私にはするべきことがある」
律子「……それを心から、実感しました」
律子「だから……」
律子「私はプロデューサーの考えに、乗ってみたいです」
P「……!」
P「り、律子……」
P「……ってことは……まず基本は、個性派の『メガネアイドル』として活動だ」
律子「ええ、そしてテレビ番組はバラエティを中心に」
P「お、おぉ、そうそう」
律子「初めっからイヤだなんて言ってませんけど、グラビア活動もいいですよ」
律子「メディアへの露出を増やすのは、アイドルを売り出すのに必要なことですからね」
律子「……で、そうですね。最終的にはアシスタントやMCになれるように、テレビ番組、業界の立ち回りを覚える」
P「……それと……」
律子「はい……ラジオパーソナリティとして、自分の番組を持つ」
律子「ある意味ではテレビ以上の修行の場として。あとそれとは別に、自分のもう一つの活動の場として」
P「……ってことで、いいのか?」
律子「ふふっ、当たり前ですよ」
律子「まだまだ勉強不足ですからね、私」
律子「やるからには……全力で、行かせてもらいますよ」
P「そう、か……そうかそうか……」
律子「……しっかし、よくそんなにポンポン思いつきますね〜」
律子「ま……自分に合ってる気がする、なんとなくその活動で、活躍している姿が思い浮かぶ」
律子「そういうプランだから、三人ともプロデューサーの考えに乗ったんでしょうけどね」
律子「……もう春香とか響とか、ひょっとして全員分のプラン、あったりするんですか?」
P「……ん? あ、あぁ、一応考えてはいた、けど……」
律子「?」
P「律子のグループのプランを見て、学ぶべき所がいくつもあった」
P「グループでのバランスの取り方、相乗効果」
P「ソロでの売り出し方しか考えてなかった俺からすれば、目の醒めるようなことだらけだったよ」
P「アイドルグループでの案を、新たに考えてみる必要があるかもしれないな」
律子「……ふふっ、今回のあずささんたちのグループはしょうがないですけど……」
律子「全員プロデューサーに任せたりは、させませんよ?」
P「……」
律子「ちゃんと、私がプロデュースできるように……残して、って言っていいのかしら」
律子「まぁいいわ……新人の娘でも何でも、プロデューサーが片っ端からデビューさせたりはしないでくださいよ?」
P「…………」
P「律子」
律子「はい?」
P「……これから話すことが、俺から律子にして欲しい、最後のことだ」
律子「……?」
律子「何ですか、改まって」
P「事務所のメンバー、一番最初に入ったのが、律子とあずささんだったな」
律子「そうですね」
P「で、その後に他のメンバーが次々入ってくれて……」
P「最後に入ったのが、亜美真美だった」
律子「……ええ、そうですけど」
P「……律子よ」
律子「はい?」
P「お前が芸能界で活動して、自分の中でその活動が『成功』だと確信できるようになった時……」
P「お前に、あずささん、伊織、亜美のグループをプロデュースしてもらいたい」
律子「……」
律子「…………」
律子「は……はいぃ!?」
P「……お前に足りないのは確信できるだけの自信と、経験だ」
P「俺にだってアイドルの経験なんて無いが、一応は確信はあった」
P「あとは……みんなが夢持って活動にやる気出してもらえるようにするための……口先と情熱?」
律子「や……え、えぇ!?」
P「本人たちが、俺のプランに乗ってくれた。それは素直に嬉しいことだ」
P「でも律子、それは俺が確信と情熱と、あとは口先でもって、みんなを奮起させたからそうなったんだ」
P「俺があずささんに対して、グループよりもソロで行って欲しいという考えをぶつけたのと同じように……」
P「律子のプロデュースしたいという情熱で、俺のプランをへのやる気を上書きすることも出来るんじゃないのか?」
律子「!? な、そ……そんなこと……!」
P「……実はこれは、極めて論理的な話でもある」
P「言っても俺のプランは、まだ実践されていない。成功するかもしれないが、成功しているわけではない」
P「だけど少しみんなのデビューを遅らせる形にはなるが……」
P「実際に芸能界で『成功』した律子が、プロデューサーになれれば」
P「経験者、成功者を前に俺はきっと、そうなった時、律子ほどの説得力を持てていないかもしれない」
律子「……」
P「確信が無いから踏み切れない、経験があることでプロデュース業に応用できる」
P「それもそうだが、最後の最後で決め手になるのは、この人をプロデュースしたいという『情熱』」
律子「……情熱……」
P「俺自身は、実際にそれぞれをデビューさせるつもりで、本気でプランを考えて提示した」
P「そうでなきゃ、伊織なんかは絶対に納得してくれなかっただろうしな」
P「……まあ、三人には『選択を迫る』という形で、少し苦しい思いもさせるかもしれんけど……」
P「でも恐らく、律子のプランの本当の意図と、どうしてもこのグループでやりたいんだっていう熱意を伝えれば……」
P「きっと……俺のプランに対するやる気をも凌駕してくるはずだ」
律子「…………」
律子「……あなたって人は……本当に……」プルプル
律子「口八丁の夢物語……まさかここに来てそれが……」
P「あずささんがグループに埋もれる可能性があるって言うなら、俺が提示したようなソロでの女優業にも力を入れさせればいい」
P「伊織がそれでもコメンテーターに前向きなら、本人のやる気に任せるのもいいだろう」
P「亜美が真美と活動できなくなるかもしれないが、『派生ユニット』という形で双子で活動させてもいい」
P「グループだからって、俺の考えが全部却下されるわけじゃないしな……そういう形で、みんなのやる気を延長させてもいいんだ」
律子「……わ、私のプランを……潰すってつもりじゃあ……」
P「……違うな。芸能界で経験と自信を積んでもらいたかった」
P「だから、一先ずはプランという考えそのものを頭から消してもらおうと思った」
律子「そ、そんな……」
P「……俺は律子に、俺以上のプロデューサーになってもらいたい」
律子「!」
P「しっかりと考えられた理論とアイドルたちの観察力」
P「そこに加わる、芸能界で培った様々な能力」
P「そして最後に、俺の考えをそもそもから上書きできるほどの情熱」
P「全部が合わさったその時こそ、律子の考えたグループ活動は、最高に輝いてくれるはずなんだ」
律子「……だ……だから……」
律子「だからこんな……回りくどい……」
P「……そうだな。散々遠回りさせてすまなかった」
P「律子には俺と一緒の立場……プロデューサーになってもらいたい」
P「そして、俺の『夢物語』のようなプランを、一緒に考えても、それを超えるプランを考えてももらいたい」
律子「一緒に……ですか」
P「ああ」
P「事務所のみんなを笑顔にしたい、だからみんなを輝かせられるようなプランを作りたい」
P「……そしてどれだけ彼女たちを輝かせることができるか……勝負、してみたいじゃないか」
律子「勝負……」
P「どうだ?」
律子「……」
律子「…………フゥ」
律子「わかりましたよプロデューサー殿……」
律子「未来のプロデューサー、現アイドル研究生の私、『秋月律子』が……」
律子「そのプランにも、乗ってあげようじゃありませんか」
律子「私がさっさと芸能界で『成功』してみせて……」
律子「三人のグループも、あっという間に売れっ子にしてみせますからね!」
P「……ああ、望むところだ!」
律子編 おわり
P(……)
P(とりあえず……現状ですべきことは全てやった)
P(あずささん、伊織、亜美の三人には、デビューが遅れることを話しておかなきゃな)
P(あずささんがデビューの時期が更に遅くなるのは申し訳ないが……)
P(まあ、律子がデビューして、律子がその三人をデビューさせて)
P(その後、他のメンバーを、ってとこだから……問題ではない……だろうと思う)
P(まぁ後は、やる気だしてくれた伊織が、文句を言うかもしれないけど……)
P(……それも俺が何とかしなきゃな)
P(……)
P(……そう、だな……)
P(一番は……亜美……というか、真美か……)
P(……)
『もしも、律子のプロデュースするグループが予想以上の売れっ子になったら』
『それによって亜美が、真美と一緒の活動が出来ないくらい、忙しくなったら』
P(……)
P(うん……)
P(律子の活動と考えが全て上手く行って、その上で更にプロデュース業も……)
P(そんな奇跡のような誤算があった上で起こり得ることだが……)
P(……ふふっ、その時は……俺が全ての悪者になればいいだけか)
P(奇跡のような誤算を起こした、律子の実力)
P(俺がそれをサポートする形で、他のみんなを導いて行かなければならない)
P(きっと、そういうことなんだろう……)
律子「? プロデューサーどうかしましたか?」
P「ああ、いや何でもない」
P「……アイドルもプロデュースも、期待……してるぞ?」
律子「! ……ふ、任せてくださいよ。美希ほどじゃないですけど、本気出したら結構やりますよ」
P「……ああ!」
―――
社長「……それで、話というのは?」
P「ええ社長。……『竜宮小町』が、軌道に乗ってきたじゃないですか」
社長「そうだね。とても喜ばしいことだ」
社長「まあ、短期間で目覚しい活躍をしていた律子君が、急にプロデューサーに転向してしまったのは……」
社長「そういう道を目指していたのは知っていたが、あまりに突然で驚いてしまったな」
社長「……ただ、そのプロデュース業すらも自分のものにしてしまったからな、流石は律子君だな」
P「そうですね」
社長「……ふふふ。もしかして、私が君に促した『アドバイス』が効いたのかもな?」
P「どうですかね〜?」
社長「……あぁ、それで、それがどうかしたのかね?」
P「……それで社長、事務所の他のメンバーも、この機会にデビューさせてみませんか?」
社長「春香君たちもかね?」
P「ええ。ちゃんと、全員分のプランも考えてあるんです」
P「……二組ほど、グループでのプランも」
社長「ほほぅ……」
社長「確かにわが社も、この勢いに乗らない手はない、か……」
社長「……ひとまず、その全員分のプランとやらを聞かせてくれないかね?」
P「……はい!」
おわり
これで本当に終わり
長々くどくどと続けてしまいましたが、
最後まで見てくれた人がいたら本当にありがとうございました
あずささん編書いた最初の時点では
「まあパラレルワールドってことでいっかー」
とか思ってたんですけど、途中から
「あれ、これ上手くやれば繋げられるかな?」
と欲が出て、結果的に最初に繋がるような構成になりました
途中から軌道修正したから、
矛盾とかミスとかフツーにあるかもしんないけど
生暖かい目で見て、脳内変換してくれれば幸いです
リアルタイムで、読ませて頂きました。お疲れ様です。前シリーズから読ませてもらっています。本当によく考察されていて脱帽です。いつも驚いてしまいます。ですが、あとがきでもあるように、IFでもいいから竜宮組のソロがみたいと思ってしまいました。
特にあずささんは、グループよりもみたいと思ってしまいました。
続きです。
竜宮よりも大変で日を浴びるのは遅いと思いますが、その分一人でもできるという自信と実力はつきそうですし。
律子と竜宮への面目もたちましたが、今回でも書かれているように真美がどうしても不憫ですし、チャンスがまだまだある律子より、真美の望みがかなって欲しかった。
更に続きです。
竜宮の利点もよく分かりましたし、本編的にはこれが自然だと思いますが、今回はPの情熱、プランを選んで欲しかったです。3人には。一度乗ったのに乗り換えるわけだから、いろいろ複雑だったとは思いますが。Pが律子のプロデューサーとして大成してほしいと思って仕向けていたわけですが。
更に続きです。
真美、下手しら亜美と竜宮も潰しかねない件についても、Pだけじゃなく律子にも責任はあるわけで。そこの辺りもついて、あとがきで書かれていますが、失礼ながら「IFでもよかったんじゃないか」と正直思ってしまいました。
作者様、返信ありがとうございます。気づかすに書き込んでしまいました。
作者様の作品なんですから、読者の自分が願望を押し付けるのは良くないと分かっていますが、作者様のファンで、やはり自分で4人をプロデュースしたい気持ちが入り混じり止められませんでした。すみません。
>>102
返信ありがとうございます。イヤ、作者様のプランは自己満足でも理にかなった、納得させらるモノですよ。
自分は現実のアイドルは全然知らないので、作者様の様には考えられません
が、妄想したくはありますね。
あずささんのプランは、前にも書きましたが本当に素晴らしいと思いました。不安をなくすのではなく、自信つけさせるといった考えがプランから感じられました。アイドル年齢は決して若くないあずささんは、今からでも先のことを考えなくてはならないので、自信をつけて己を磨くにはソロの方がいいと想像しちゃいましたw。グループでもソロ活動はありますし自信はつくかもしれませんが、ソロのほうがつきそうです。
自分は4人は好きだけど、「竜宮小町」は様々な理由であまり好きじゃないので余計に火がついちゃいました。すみません。アイマス話す人も周りにいないので。
19:16│秋月律子