2013年11月08日
モバP「凜とありすって仲悪いのか?」
奈緒「は?なんでそう思うんだよ?」
加蓮「何?ふたりケンカでもしてたの?」
加蓮「何?ふたりケンカでもしてたの?」
P「いや、昨日たまたまふたりの現場が近かったから一緒に車に乗せて行ったんだが……」
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〜回想〜
凜「……」
ありす「……」
P(後部座席に並んで座る凜とありす。かれこれ30分くらい経つが、会話はおろか目も
合わせようとしない。凜はスマホを、ありすはiPadをずっといじってる……)
凜「……何?さっきからルームミラー越しにチラチラ見ちゃって。変態」
P「い、いや……ずっと黙ってるから何してるのかな〜っと思ってな……」
凜「見てわかんないの?メールしてるんだけど。ジャマしないでくれない?」
P(うん、このトゲのある感じ。いつもの凜だな。特別不機嫌というわけでもなさそう
だが……)
P「ありすはゲームでもしてるのか?さっきから熱心にiPadを触ってるみたいだが……」
ありす「橘って呼んで下さい。それにゲームじゃなくて学校の宿題をしているんです。
今集中しているので話しかけないで下さい」
P「へえ、勉強してたのか。えらいなありすは。今時の小学生はiPadで勉強もするのか。
こりゃ未来はノートも黒板も無くなっているかもしれないなあ」
ありす「ありすって呼ばないでください。聞こえませんでしたか?勉強しているので
黙っててください」
P(こちらもいつも通りのありすだな。いや、ちょっとご機嫌ななめか?名前で呼んだ
時の反応がいつもよりちょっときついか?)
凜「ちゃんと前見て運転してよね。よそ見してると危ないよ」
ありす「今日の現場は初めてですから、30分前には到着したいんですけど。余計な事を
話してないで急いで下さい」
P「ハハハ……すまん」
〜回想終わり〜
P「……てな事があったんだが」
奈緒「いや、普段の会話からしておかしくないか?あのふたりに何か悪いことでも
したのか?」
加蓮「凜とありすがというより、ふたりとプロデューサーの方が問題ありそうだよね」
P「バカな!? 俺はふたりとも平等に可愛がってるぞ!! 親御さんから大事な娘さんを
預かってる身として、何か困ったことがないかいつもしっかりみっちり
聞いてるし……」
加蓮「ああ、あれウザイからいい加減やめた方がいいよ。心配してくれるのは分かるけど、
年頃の女の子には親にも言いたくないことがあるんだよ。ましてや他人の男の人の
プロデューサーに言えるわけないし」
P「そんな……俺は嫌われていたのか……?」ガクッ
奈緒「ははは、プロデューサーは加蓮に過保護だったからな。まあ凜はベタベタされるの
キライだし、ありすもそんな感じじゃないの?それほど嫌われてはいないと思うよ」
P「好かれてはいないのね……まあいいや、話を戻そう。しかし凜も昔よりずいぶん丸く
なったから、ありすの教育係を任せたんだけどな。専門的な事は教えられなくても、
ただアイドルの先輩としてありすの話相手くらいにはなって欲しかったんだが……」
奈緒「え?アイツありすの教育係だったの?初耳だぞそれ」
加蓮「私も知らなかった。ていうか、あのふたりが事務所でしゃべってるところとか
見たこと無いんだけど……」
P「凜と仲の良いお前らでも知らなかったのか。これはいよいよあのふたりの不仲説が
現実味を帯びてきたな……」
奈緒「そもそも私も、凜とはよくつるんでるけどあんまりアイツの事はよく知らない
んだよな……」
加蓮「凜ってあんまりおしゃべりなタイプでもないしね。あれ?もしかして友達と
思ってたのは私の方だけ……?」
P・奈緒・加蓮「」ズーン
ガチャ
凜「…………プロデューサー、いる?」
P・奈緒・加蓮「」ビクッ
凜「…………って、何してるの三人で。私に隠れて内緒話?」ジトッ
P「い、いやいやいや!そんなことはないぞ!ど、どうした凜!何か用か?」
凜「……ま、いいか。ちょっと話あるから来て。奈緒、加蓮。プロデューサー借りるけど
いいかな?」
奈緒「ど、どうぞどうぞ!ジャマだからさっさと持ってっちゃって!」
加蓮「いいよいいよ全然問題ないよ!私達のことは気にしないで!いってらっしゃ〜い!」
P「……お前ら、後で覚えとけよ」
バタン
奈緒「凜、めっちゃ怒ってたよね……」
加蓮「いつものポーカーフェイスだったけど、威圧感がヤバかった。プロデューサー、
生きて帰れるかな……」
〜一時間後〜
ガチャ
奈緒・加蓮「」ビクッ
凜「……もういいよ。プロデューサーだったら会議室にいるから、内緒話の続き
するんだたったら思う存分どうぞ」
奈緒「い、いやいや!だから内緒話なんて……」
加蓮「……ていうか凜、プロデューサーはどうしたの?会議室で何してたの?」
凜「何も。ちょっとお話してただけだよ。じゃ、私帰るから。あ、プロデューサー
しばらく動けないと思うから、具合悪そうだったら看病してあげて」
奈緒「どうしておしゃべりしただけで動けなくなるんだ!? てか看病って何だ!? 」
凜「じゃあね」バタン
奈緒「おい待て、凜!」
加蓮「よしなよ奈緒。さっきよりはマシになったけど、凜まだ機嫌悪そうだったし。
とりあえずプロデューサー見に行こう」
〜会議室〜
奈緒「……お〜い、プロデューサー、生きてる〜?」ガチャ
P「」(床に突っ伏して倒れている)
加蓮「プロデューサー!? 大丈夫!? 凜にやられたの!? 」
P「いてててててて!! やめろゆするな足に触るな!! 」
加蓮「よかったあ〜、生きてたあ〜……」ヘナヘナヘナ
P「当たり前だろ……一時間正座させられたくらいで死ぬかよいてて……」
奈緒「正座って……凛に説教でもされてたのかよ」
P「ああ。雪女みたいな冷たい視線で、低い声で淡々と怒られたよ……」
加蓮「一体凜に何したの……?」
P「いや、凜じゃなくてありすの事で怒られた。どうやら俺の杞憂だったみたいで、
あいつはちゃんとありすの教育係やってたよハハハ……」
奈緒「……詳しく教えてくれないか?」
***
P「来週の話だがな、ありすの学校の遠足と仕事がかぶっちまったんだ。基本的に学校の
行事を優先しているから仕事の方をキャンセルしようとしたんだが、ありすが
嫌がってな。遠足の行き先が遊園地だったから、仕事を入れて欲しいって言われた
んだ」
奈緒「ああ、いつもの名前コンプレックスか。あの子テーマパークの仕事とか嫌がる
もんな」
P「俺も迷ったんだけどな。でも先月、リポーターの仕事があって桃華と舞と三人で
その遊園地には行ってるし、好きでもない所に頻繁に行かせるのも悪いと思って、
悩んだんだが仕事を入れたんだ。ありすも最近楽しそうだし、人気もじわじわ
出てきてるしな」
加蓮「……で、凜に叱られたと」
〜〜〜
凜『何考えてるの?ありすだけ遠足欠席なんてかわいそうじゃん。ただでさえアイドルの
仕事で学校も休みがちなのに、このままだとクラスでハブにされちゃうよ。小学校
時代の思い出が仕事だけなんて悲惨すぎるでしょ。ちゃんとあの子の人生も考えて
あげなくちゃ』
凜『は?ありすが行きたがらない?プロデューサーがそれを真に受けてどうするの。
あの子が嫌がってるのは自分の名前を連想させるアトラクションだけで、遊園地自体
は嫌いじゃないでしょ?この前のリポーターの仕事も楽しかったって言ってたよ。
え?聞くと嫌がるから聞いてなかった?……あのねえ、そんなのであの子の
プロデュースなんて出来るの?』
凜『あの子はいつかは自分の名前を受け入れて生きて行かなきゃいけないんだよ?私達は
アイドルだから芸名に変えることも出来るけど、でも私はあの子に逃げてほしくない。
ちゃんと自分の名前に向きあって、そしておとぎ話のアリスみたいな素敵なアイドル
になってほしいの』
〜〜〜
P「俺が思ってたよりずっと真剣に、凜はありすの将来まで考えてくれていたみたいだ。
まあウチの事務所ではしっかりしてる方だし、俺は最初から凛に任せても問題ないと
思ってたけどな!」
奈緒「どーだか。さっきまでと全然反応が違うじゃねえか」ジトッ
加蓮「でも凜も素直じゃないよね。教育係なんて自分のガラじゃないって思ってるから
私達にも黙ってたんだね。ホントにあの子はしょうがないなあ……」クスクス
P「ありすの事は任せとけってはっきり言われちまったよ。俺もしっかりしないと、凜に
ありすをとられちまいそうだから頑張るよ。とりあえず来週のありすの仕事は
キャンセルするから、お前達もカバーを頼むぞ」
奈緒「わかった。ところでプロデューサー、『教育係』についてちょっと聞きたいんだけど
さあ……」ジリ……
P「ど、どうした奈緒。そんな怖い顔して……」
加蓮「どうして私達を差し置いて、年下の凜を選んだのかなあ?私達じゃ頼りないって
こと?そもそも凜だけにありすの教育を任せるっておかしくない……?」ゴゴゴ
P「い、いや……それは何というか、ありすの情操教育を考えてだな……ハッ!?」シマッタ
奈緒「とりあえず正座しよっか。二時間くらい♪」
加蓮「本でも抱かせてみる?重くてぶあついの♪」
P(その後、俺は奈緒と加蓮にこってり絞られる羽目になり、翌朝まで足の痺れが
取れなかった……)
〜ありす遠足後・早朝の事務所にて〜
ちひろ「凛ちゃんとありすちゃんですか?とっても仲良しですよ。よく朝早い時間の
事務所で、凛ちゃんはありすちゃんを膝に乗せて可愛がってますよ」
P「マジですか。普段のふたりを見るととても想像できないんですけど……」
ちひろ「あはは、ふたりとも照れ屋さんですからね。他の子が来るとぱっと離れちゃい
ますし。でもありすちゃんも、iPadでよく凛ちゃんと話しているって言って
ましたよ」
P「何でも出来るんですねiPadって。俺も買おうかなあ。てかどうしてちひろさんは
そんな事を知ってるんですか」
ちひろ「まあまあ。そこは事務員ですから。それにプロデューサーさんの前では、
ふたりともしっかりした女の子でいたいんですよ」
P「ありすはともかく、凛とはそれなりに付き合いも長いし心を開いてくれていると
思ったんだけどなあ。俺もまだまだ頼りないってことか。トホホ……」
ちひろ「そういうわけじゃないと思うんですけど……」
ありす「まったく、女心を全然わかってませんねプロデューサーって」ハア
P「うおっ!? 来てたのかありす!? 挨拶くらいしろよ」
ありす「しました。プロデューサーが聞いてなかっただけです。おはようございます
ちひろさん。昨日はスケジュールを調整していただいてありがとうございました」
ちひろ「おはようありすちゃん。今日も早いわね。遊園地は楽しかった?」
ありす「はい。この前のお仕事では乗れなかったアトラクションにも乗れたし、
もう少しで全部制覇出来そうです」
P「それは良かったな。じゃあまた近いうちにリポーターの仕事を入れておくか」
ありす「いえ、そんな気遣いは結構です。私はプロとしてどんなお仕事でもやりますので」
P(リポーターの仕事、結構評判良かったんだけどなあ……)
ありす「ところでプロデューサー、少しいいでしょうか」
P「ど、どうした急に改まって……」
ありす「今回の件ですが、私のわがままのせいでご迷惑をおかけしました。奈緒先輩や
加蓮先輩にも助けてもらいましたし、本当にごめんなさい」ペコリ
P「いやいや、気にするな。奈緒も加蓮も快諾してくれたし。それにその様子だと、
凛にも怒られたんだろ?」
ありす「……はい。学校生活も大事にしなくちゃだめだって、アイドルのお仕事に
流されるんじゃなくて、自分の人生は自分で切り拓かなくちゃいけないって
言われました」
P「はは、凛らしいな。でも確かにその通りだ。俺達も凛達先輩アイドルも全員で協力する
から、意見はどんどん言ってくれ。皆そうやって学生とアイドルを両立させて
いるんだから気にするな」
ありす「ありがとうございます。これからもプロデュースをよろしくお願いします」ペコリ
P「しかし凛もなかなかスパルタだな。お前もあいつも俺に何も話してくれないから
心配していたけど、うまくやってるのか?」
ありす「凛先輩には本当によくしてもらってます。ですので心配しないでください。
先輩の期待に応える為にも、がんばってトップアイドルになりますから」
ちひろ「うふふ、凛ちゃんにだっこされてるありすちゃんを見ていると、仲の良い
本当の姉妹みたいだもんね〜」
ありす「ち、ちひろさん!? それは言わない約束じゃないですか!」アセアセ
P「ははは、今度凛とありすの撮影を企画しようかな。確かに良い画になりそうだ」
ちひろ「写真ありますけど見ます?今ならスタドリ5本でさしあげますよ」ピラ
ありす「ダ、ダメです!プロデューサーも見ないでください!」バタバタ
P「ははは、そう照れるなよどれどれごふっ!? 」
凛「……何ふたりがかりでありすいじめてるの?」ギロッ
ちひろ「り、凛ちゃん……英語辞書で殴るのはやりすぎじゃないかしら……」
P「」ピクピク
ありす「り、凛先輩……おはようございます……」
凛「おはよ、ありす。大丈夫だった?ごめんね遅くなって」ナデナデ
ありす「私は大丈夫ですけど、プロデューサーが……」
P「」ブクブク
凛「気にしなくていいよ。スタドリ鼻に突っ込んでおけば復活するでしょ。じゃ、
会議室でミーティングしようか」スタスタ
ありす「は、はい……それではちひろさん、後はよろしくおねがいします……」ペコリ
ちひろ「う…うん、まかせて……」
ガチャ バタン
ちひろ「さて、どうしようかしら……」
P「う〜ん、ありす〜、凛〜、移籍するなんて言わないでくれぇ〜……」
ちひろ(どんな夢を見ているのよ……でもあんまりおイタが過ぎると現実になっちゃう
かも。プロデューサーさんが皆に過保護みたいに、凛ちゃんはありすちゃんに
とっても過保護だから)
ちひろ(ふふ、でも気付いてましたかプロデューサーさん。今朝はありすちゃん、名前で
呼ばれても一度も怒らなかったんですよ。ちょっとだけ嫌そうな顔はしてました
けど、あの子も徐々に自分の名前を受け入れているみたいですよ)
凛「あ、そうそうちひろさん。言い忘れてたけど」ヒョイ
ちひろ「な、ななな何かしら凛ちゃん」ビクビク
凛「隠し撮りした写真、ミーティングが終わるまでに全部出しといてね。さもないと
どうなるか……わかるよね?」チラ
P「ダ、ダメだじいちゃん……俺はまだその川を渡るわけには……」
ちひろ「は、はい……!! すぐに用意しておきます!! 」ゾゾォッ
凛「ん。よろしい。じゃ」バタン
<ゴメンネアリス。オマタセ
<イエ、ダイジョウブデス
ちひろ「あ〜あ、スタドリ50本くらいにはなったんだけどなあ……」ガラッ
ちひろ(デスクの引き出しの中には、こっそり撮った凛ちゃんとありすちゃんの
2ショット写真が入っています。いつもはクールでベタベタするのを
嫌がるふたりだけど、写真の中ではちょっとだけ表情を緩ませてぴったりと
くっついています。プロデューサーさんも奈緒ちゃん達も、いつかふたりの
こんな光景が見られるといいですね)
P「」チーン
END
以上。凜と凛、全然気付かなかったorz
訂正ありがとうございました。
おまけ
〜凛とありすのミーティング〜
凛「ありすは温かいね。ハナコみたいに毛深くないし、こうしてるとぽかぽかするよ」ギュー
ありす「犬と一緒にしないでください。ところで凛先輩、そろそろミーティングを
始めたいんですけど」
凛「もう少しだけ。外は寒かったから、まだ体が冷たいの」スリスリ
ありす「……別にいいですけど。こうしていると、お母さんに抱っこされていた
のを思い出します」
凛「ふふ、じゃあ今日から私はありすのお姉さんじゃなくてお母さんだね。
よしよし」ナデナデ
ありす「凛先輩がお母さんだったら、お父さんはプロデューサーでしょうか」
凛「」ボンッ
凛「……ミーティング始めようか」ヨイショット
ありす「?」ストン
***
凛「最近はどう?みんなとは仲良くやれてる?」
ありす「はい。ようやくクールの皆さん全員にあいさつが出来ました。この事務所
は所属しているアイドルさんが多いので、会うだけでも大変ですね」
凛「そうだね。キュートとパッションのアイドルを合わせるともっといっぱい
いるよ。私もまだ全員とは会ってないなあ」
ありす「凛先輩でもそうなんですか。皆さんに私の顔を覚えてもらうのはまだまだ
先になりそうですね」
凛「大丈夫。心配しなくてもありすは結構有名だよ。この前卯月と未央と
一緒の仕事だったんだけど、あのふたりもありすのこと知ってたし。
今度抱っこさせてくれって言ってたよ」
ありす「私は愛玩動物ですか……でも島村さんや本田さんにも知ってもらえて
光栄です。まだ会ったことはありませんが、舞や薫から聞いてます。
おふたりとも素敵なアイドルさんみたいですね」キラキラ
凛「……デビューしたのは私が一番早かったんだけど」ムス
ありす「どうして不機嫌になるんですか?」キョトン
凛「別に怒ってないよ。他に誰か会いたい子とかいる?こう見えても顔広いから、
ありすが会いたい子がいるなら紹介してあげるよ」フフン♪
ありす「本当ですか!? でしたら諸星さんに会ってみたいんですけど!」ガバッ
凛「意外な名前が出てきたね……どうしてきらりなの?色々すごくて
圧倒されるよ?」
ありす「薫や仁奈から聞いたんですけど、とってもエネルギッシュな人で一緒に
いると自分まで大きくなれる気がするみたいなんです。諸星さんに
たかいたかいしてもらうと、空を飛んでる気分になれるとか」ワクワク
凛「あそこまで大きくならなくていいよ。確かにきらりのエネルギーは同じ
アイドルとして見習う部分もあるかもだけど、自分に合ったキャラってのが
あるからさ。ありすは今のまま、ちっちゃくていいよ」
ありす「せめて150は欲しいんですけど……それから佐久間さんにも会ってみたい
です。とっても一途な方で、同じ女性として見習う所も多いって舞が言って
ました」
凛「ああ、確かに一途だねストーカー的な意味で。まゆはきらり以上に刺激が
強いから、会うのはもっと後でいいと思うよ。ていうか舞ちゃんが心配だよ。
今度卯月に言っておこう」
ありす「でもやっぱりここが一番居心地が良いですね。アイドルなのに
人見知りなのは良くないと思いますけど、凛先輩とこうして一緒に
いると落ち着きます」
凛「……ふうん」(嬉しい)
ありす「それに最近は奈緒先輩や加蓮先輩も色々教えてくれますし、今度一緒に
買い物に行こうって誘われました」
凛「なにそれ。私聞いてないんだけど」ピク
ありす「凛先輩もご一緒したかったのですが、おふたりが指定した日が何故か
凛先輩がお仕事の日ばかりで。だから仕方ないねって加蓮先輩が笑顔で
言ってました」
凛「へえ……加蓮やってくれるじゃない……奈緒も共犯かなあ……?」ゴゴゴ
ありす「ど、どうして怒ってるんですか……?何かいけなかったでしょうか……?」ビクビク
凛「ううん、別にありすは悪くないよ。楽しんでおいで。そうだ、じゃあ私とは
聖來さんと3人で犬の散歩に行こうよ。聖來さんもありすのこと気に入ってたし、
きっと楽しいよ」
ありす「よ、よろしくおねがします……」
***
凛「名前で呼ばれることには慣れた?」
ありす「まだちょっと嫌ですけど……でも最近はそれもいいかなって思えて
きました。一度あいさつしたらまず忘れられることはありませんから」
凛「そうだよ。可愛い名前なんだからどんどんアピールしなくちゃ。それに名は
体を表すって言うのかな、ありすによく似合ってると思うよ」
ありす「そ、そうでしょうか……でもどう見ても日本人なのに『ありす』だなんて。
桃華みたいな子だったら違和感ないかもしれないですけど」モジモジ
凛「そんなことないよ。それに事務所の誰もありすの名前をバカにしたりしない
でしょ?みんなありすはありすだって思ってるんだよ。本家のイギリスアリス
にも負けてないよ」
ありす「それは大げさだと思いますけど……でも凛先輩がそう言ってくれるなら
自信がつきます。自分の名前を受け入れるのはまだ時間がかかりそうです
けど、これからもこの名前で活動していこうと思います」
凛「うんうん、それがいいよ。ゆっくり慣れて行こう」
ありす「でもプロデューサーにありすって呼ばれるのは、まだどうしても
慣れなくて……」
凛「うん?」
ありす「凛先輩や薫達とはちょっと違うというか、プロデューサーに名前を
呼ばれると恥ずかしくなっちゃって。胸がドキドキするというか、
お父さんに呼ばれてもそんなことはないのに……」
凛「へえ……」
ありす「でも橘って呼ばれるのも嫌で。ありすって呼ばないで下さいって何度
言ってもプロデューサーはありすって呼ぶんですけど、でももし
プロデューサーに橘って呼ばれたらどうしようかなって怖くなる
こともあって……」
凛(これはいけない)
ありす「凛先輩、私は一体どうしたらいいんでしょうか?このままどっちつかずの
気持ちで、プロデューサーと一緒にお仕事してても問題ないでしょうか?
この気持ちのが何なのか、凛先輩は心当たりがありませんか……?」
凛「それは……」
ありす「それは……?」
凛「本能からくる危機感だね。うん、そうだよ。間違いない」キッパリ
ありす「危機感……ですか?」
凛「男は狼だからね。プロデューサーも狼だから、みんなをいやらしい目で
見ているんだよ。ありすも野性の本能で、身の危険を察知出来るくらい
成長したということだよ。うん」
ありす「はあ……」
凛「だからねありす、プロデューサーには気をつけなくちゃいけないよ。仕事面
ではしっかりしてるし、プロデュースの腕もあるけど、簡単に心を許しちゃ
いけないよ。プロデューサーも狼なんだから、うっかりしてると食べられ
ちゃうよ」
ありす「結局どうすればいいんでしょうか……?それにそんな危険な
プロデューサーと一緒にいて、凛先輩は大丈夫なんですか?」
凛「わ……、私は別にいいんだよ。プロデューサーとは付き合い長いし、お互いの
ことをよく知ってるというか……あ、よく知ってるというのは別にヘンな意味
じゃなくて、好きとかそうのじゃなくて仕事のパートナーとしてという意味で、
本当にそれだけで、一緒にいても不整脈的な動悸がするだけで、男の人として
意識したこととか全然なくて……」アセアセ
ありす「り、凛先輩?落ち着いて下さい。大丈夫ですか?」
凛「大丈夫、全然大丈夫、うん。とにかくありすは今まで通り、プロデューサーを
適当にあしらっておいたらいいよ。奈緒や加蓮もそうしてるでしょ?うん、
それがいい」
ありす「わ、わかりました……今はそうしておきます。まだ覚えるお仕事もいっぱい
ありますし、プロデューサーの事は置いておくということで」
凛「そうだよ。アイドルのお仕事を頑張らなくちゃ。私達に恋愛はご法度だよ」
ありす「え?今なんて……?」
凛「あ…………」シマッタ
ありす「……」ドキドキ
凛「……」ダラダラ
<オハヨーゴザイマース……ッテ、ドウシタンダプロデューサー?
<キャアアアアアッ!! シロメムイテル‐‐‐!!
凛「な、奈緒達来ちゃったね!! じゃあ今日のミーティングは終了ってことで!! 」ガタ
ありす「そ、そうですね!! ありがとうございました!! 」ガタ
凛「じゃ、じゃあ私レッスンに行ってくるよ!! ありすも頑張ってね!! 」ガチャ
ありす「は、はい!! 凛先輩もお気をつけて!! 」ペコリ
バタン タッタッタッ……
ありす「ふうん、これはそういう気持ちなんだ……ちょっとだけ気まずいなあ」
ありす「凛先輩とはライバルになるのかなあ。えへへ……」
今度こそEND
ちょっと寂しかったから続きを書いてみた。
可愛い先輩後輩を書きたかったが難しいね。
ネタが出来たらまた挑戦しようと思う。
泰葉「ごめんなさい凛……何とか調整してみたんだけど、彼今は社長の方針でキュート
にかかりきりになってるしあの子もほとんど動かないみたいなのよ。だから
これが限界だったわ」
凛「そうですか……いえ、それでもプロデューサーの滞在時間を1時間に短縮出来ただけ
ありがたいです。無理言ってすみませんでした」ペコリ
泰葉「気にしないで。これが私の仕事だから。それに彼に明確な好意を見せない限り、
危害を加えられることはないわ。ありすはまだ自分の気持ちに気付いて
ないのよね?」
凛「どうでしょう……あの子は賢い子ですから既に分かっているかもしれません。
基本的には私の言う事はよく聞いてくれますけど、こればかりはどうしようも
ないですね……」
泰葉「そうね。私も色恋沙汰で業界を去った子を今まで何人も見て来たわ。どんなに才能
があっても頭が良くても、恋愛感情は理性では抑えきれないものね」
凛「それにプロデューサーの方も、最近ありすにやたら構うんですよ。本当に自分の立場
を分かっているのかしらあの男は」ゴゴゴゴゴ
泰葉「あら、彼なら大丈夫よ。職業柄少しロリコンの気質があるかもしれないけど、担当
アイドルに手を出すような人じゃないわ。それは私が保障してあげる」
凛「岡崎先輩がそう言うなら信じますけど……」
泰葉「それより私はあなたの方が心配なんだけど。あなたも最近彼への好意を隠しきれて
ないわよ」ニヤリ
凛「なっ!? ななな何言ってるんですかっ!! わわわ私がプロデューサーを好きなわけが
がががががっ!? 」アタフタ
泰葉「ふふふ、気をつけなさい。何ならファンにバレないように、アイドル活動と恋愛を
両立させる方法を教えてあげるわよ?今のあなたなら成功率は20%くらいだけど」クスクス
凛「岡崎先輩〜〜〜〜〜〜〜っ!! 」
***
ありす(橘ありすです。今日はいよいよキュートの事務所に行くことになりました。
キュートグループの子達の話では、事務所にはお花やぬいぐるみがたくさん
置いてあって素敵な所だそうです)
ありす(そしてキュートの事務所のすぐそばには、私達の事務所が所有している舞台が
あるそうです。いつかトップアイドルとして舞台に立てるように、しっかり
見学して色々勉強させてもらうつもりです)
P「お〜いありす〜、凛〜、車回してきたぞ〜」
ありす「すぐ行きます。後ありすって呼ばないで下さい」
P「うう……、ありすが冷たいよう……凛、お前何か変な事教えてないだろうな?」
凛「うるさい。さっさと出して」ムッスー
P「何でお前はお前でそんなに機嫌が悪いんだよ……そんなに俺と一緒に行くのが嫌か?」ハア
凛「私達は電車で行くって言ったのに、何でわざわざ予定を早めて一緒に行こうと
するのよ……今日はあんまりメイクしてないのに……」ブツブツ
P「何でって、目的地が一緒だったら乗せてった方が効率的じゃないか。交通費も浮くし」
凛「ケチ」ゲシゲシ
ありす(凛先輩って意外とわかりやすいなあ……)
P「痛っ!? 後ろから蹴るなよ。文句があるならちひろさんに言ってくれ。忘れ物は
ないな?じゃあ行くぞ」ブロロン
泰葉「まって〜〜〜〜〜っ!! 」タッタッタッ
ありす「 !? プロデューサー、後ろから岡崎さんが追いかけて来てます」
P「ホントだ。どうした泰葉?何か伝言か?」ウィーン
泰葉「それだったら凛にメールか電話するわよ。はいこれ忘れ物。大事な資料でしょ?
もう、しっかりしてよね」チョップ
P「ああスマン!! 助かったよ。これがないと向こうで社長にどやされるところだった。
サンキュー」
凛「すみません岡崎先輩。わざわざありがとうございました」ペコリ
泰葉「ううん、いいのよ。それじゃあ気をつけてね。ありすもしっかりお勉強して
きなさい」ニコッ
ありす「は、はいっ!行ってきます岡崎さん」ペコリ
<ブロロン……
ありす「……あの、凛先輩」
凛「何?」
ありす「以前から気になっていたんですけど、凛先輩ってどうして岡崎さんには
敬語なんですか?いえ、先輩は川島さん達にも敬語を使いますけど、岡崎さん
だけはちょっと違うというか……」
凛「あの人は芸能界で仕事して長いからね。確か3歳か4歳の子役での仕事が最初だって
言ってたから、もう10年以上芸能活動しているんだよ。事務所に入ったのは私より
後だけど、私なんかよりずっとずっと先輩だよ」
ありす「ええっ!? そんなにすごい人だったんですか!? 私はてっきり、アイドルの
プロデュースを勉強する為に事務所に入られたと思ってたんですけど……」
P「泰葉の事か?それも間違ってはないぞ。あいつは子役から歌手からモデルまで、
芸能活動は一通り経験してるんだよ。それでウチに来た時は、今度は裏方として
アイドル達をサポートする仕事がしたいって言ってな。今はちひろさんと一緒に
俺とアイドル達のスケジュール管理をやってくれてるんだ」
凛「事務所のアイドルを自分の秘書に使うってどうなの?岡崎先輩もまだ現役なんだよ。
確かまだ16歳だし」ジト
P「俺も社長も何度もアイドル活動を勧めたんだがな。でも泰葉は、今は裏方の勉強が
したいってなかなか引き受けてくれないんだよ。それにアイツはセルフプロデュース
が出来るから、俺の助けもほとんど必要ないんだ」
ありす「凄い人なんですね……そういえばクールのアイドルさんは、セルフプロデュース
をしている方が多いですね」
P「お、良い所に気が付いたな。事務所とアイドルの属性を3つに分けたのは、アイドル
の子達が将来どういう仕事をしたいかによって分けている意味もあるんだ。クールの
アイドル達は自立心が強くて、プロフェッショナルとしてアイドル活動をやりたいって
子が多いから、本社の近くに事務所を構えてセルフプロデュースも学ばせているんだ」
凛「ウチのグループの20歳以上の人はみんな基本的にセルフプロデュースだね。
私も半分くらいはセルフプロデュースやってるよ」エッヘン
ありす(そういえば私も、最初の面接の時に将来はプロとして歌や音楽を仕事に
したいって言ったっけ。だからクールに配属されたのかな)
P「パッションはとにかく溢れる情熱で自分を表現したい、私の歌を聴け―って感じの子を
中心に、アイドルとして独自のパフォーマンスを研究している。だからレッスン場に
併設してあるんだ。プロデュースには俺も関わるが、普段の彼女達のサポートは主に
トレーナーさん達が行っている。トレーナーさん達には3グループを指導して
もらっているが、彼女達がパッションの事務所に所属しているのはそのためだよ」
ありす「なるほど、理にかなってますね。ではキュートの人達は事務所でどんな勉強を
しているのでしょうか?」
P「キュートはとにかくアイドルがやりたい、綺麗な衣装を着て可愛い歌を歌いたいって
子が配属している。だから舞台のそばに事務所があるんだ。こんな言い方をしたら
語弊があるかもしれないが、ただ純粋にアイドル活動を楽しんでいる子が多いから
勉強とか表現にはあまりこだわってないかもな。基本的にこちらの出した仕事は
ニコニコしながら引き受けるし。そして3グループの中で一番アイドルっぽいから、
社長がこまめに状況を確認しているんだ」
凛「悪かったね文句ばかり言って。でも最近はちゃんとしてるでしょ」ムス
P「ははは、凛なんかまだ可愛い方だよ。千秋なんて昔は俺が取ってきた仕事の半分は
突っぱねてたからな。でもお前達はお前達で着実に成長しているから俺も嬉しいよ」
凛「か、かかかか可愛いって、急に何言い出すのよバカッ!! 」ゲシゲシッ!!
ありす(凛先輩、少し意味が違います)
P「痛てて、怒るな怒るな。まあ中には単に見た目でグループ分けしたり、杏みたいな例外
もいるけどな。だからありすも別に自分のグループにとらわれずに自由にやれば
いいさ。凜はイメージ的にクールで確定だったけどありすは女の子的な愛らしさが
強かったから、キュートかクールかで泰葉とギリギリまで悩んだよ」
ありす「あ、あいあいあいいいっ!? たたた橘って呼ばないで下さいっ!! 」ゲシゲシッ!!
凛(ありすセリフ逆。それだと名前で呼ばれることになっちゃうよ)
P「何でお前まで怒るんだよ……褒めたつもりだったのに……」
凛「ていうか、岡崎先輩ってありすのグループ分けもしてくれたの?プロデューサーは
ありすに一体何をしてくれているの?」
P「うぐっ、そう言われると辛いな……ここだけの話、年少組の簡単な仕事だったら泰葉が
取って来てる。クールのアイドルはアイドル兼プロデューサーみたいな人も何人か
いて俺達スタッフを助けてくれてるんだが、泰葉は裏方に専念していてかつ業界歴が
長い分、かなりの割合で事務所のプロデュース方針に関わっている。公にすると他の
子達と妙な距離が出来てしまうから内緒にしているが」ヒソヒソ
凛「そこまでしていたんだ……岡崎先輩はすごいと思ってたけど想像以上だったよ……」
ありす(岡崎さんが取って来てくれた仕事もあるんだ。今度お礼を言おう)
P「そのせいかあいつ、最近俺の事をプロデューサーじゃなくて○○君(本名)や『あなた』
って呼ぶんだよな……たまに弁当も作ってきてくれるし、何だか所属アイドルと
いうより奥さんみたいになってきたよ」ハア
凛「」
ありす「」
P「ん?どうした二人とも?急に黙っちまって?」クルッ
凛・ありす「「よそ見してないでさっさと行けっ!! 」バチーンッ!!
P「ぐはぁっ!? 」
ありす(なんだろう……、さっきから胸の中がもやもやする。凜先輩や岡崎さんに敵う
はずないのに、自分に力が無い事がこんなに悔しいなんて……)ギリ
凛「…………」
***
〜キュート事務所〜
響子「わ〜っ、かわいい〜!ちっちゃいけどキリっとしてて、クールって感じだよ〜!」ギュー
美穂「どことなく凛ちゃんに似てるね〜。知的なイメージがあってかっこいい〜♪」ムギュ
智絵里「キュートでもいけそうだね……私なんかより全然可愛い……私ももっと
がんばらないと」ギュッ
ありす「む〜っ!! む〜っ!! 」ジタバタ
<ドーナツタベル〜? <ネコミミデビュースルニャー <ムフフ、ショウライガタノシミ……
P「なんだあのみんなの溺愛ぶりは……ここにはありすのファンクラブでもあるのか?」
卯月「あはは……、クールの子ってみんなかっこいいから、キュートの子に人気
あるんですよ。ありすちゃんはクールだけど小さくて可愛いから、みんな
とっつきやすいんだと思います」
凛「大丈夫かなありす。ある意味きらりのたかいたかいよりキツイかも……」
P「ああ、杏が天井に頭ぶつけて気絶したっていうあれか。そのせいで杏はますます
レッスンに行かなくなって大変だったっけな。ありすは大丈夫だったのか?」
凛「私が見張ってるんだからそんな心配ないよ。ところで卯月……ちょっと……」ヒソヒソ
卯月「メールで言ってた話だね……大丈夫、奥の部屋で寝てるから……」ヒソヒソ
P「ん〜、どうしたんだ二人とも。内緒話か?」
凛「なんでもないよ。さ、プロデューサーはさっさと社長の所に行って」グイグイ
卯月「今日は社長と来月のライブ打ち合わせの後に、大利根飛行場で幸子ちゃんとスカイ
ダイビングの体験レポートですよね?凛ちゃん達の事は私に任せて下さい」グイグイ
P「おいおい、そんなに急かすなよ。しかし泰葉にしては珍しく無茶なスケジュールだな。
幸子もダイビングなんてやりたいのかな。チャレンジ精神旺盛なのは良い事だが」
<バタン シツレイシマース <オオ、マッテタヨキミィッ!!
凛「ふう、何とか接触は回避出来たかな。後は裏口からプロデューサーをリリースして、
ありすにはまゆは仕事で疲れてるからまた今度という事にして……」ブツブツ
卯月「ごめんね凛ちゃん。私がもっとしっかりしていればこんな余計な事しなくても
いいんだけど。岡崎先輩にも迷惑かけちゃったね」
凛「ううん、卯月は悪くないよ。むしろまゆ込みでよくキュートをまとめてるなって
尊敬しちゃうくらいだよ。私だったら絶対無理」
卯月「プロデューサーさんの話さえしなければ、まゆちゃんは良いお姉さんだよ。
舞ちゃんや他の年少組の子もとっても懐いてるし」
凛「小さい子達はまだプロデューサーの事をお兄ちゃんか先生みたいに見てるからね。
でもありすは違うんだ。しかも結構本気っぽくて、まゆと衝突しそう」
卯月「……教育係に似ちゃったのかな」ボソ
凛「ん?何か言った?」
卯月「う、ううん何でもないよ!ささ、そろそろありすちゃんを助けようか!なんだか
ぐったりしてるし」
凛「……あ、いけない。ついつい目を離してた」シマッタ
ありす「」チーン
***
ありす「……」ツーン
凛「だからごめんって。私も卯月と色々話があったんだよ。でもキュートのメンバーの
ほとんどには挨拶出来たんだし、良かったでしょ?」
ありす「……」プイ
卯月「あはは……、すっかり怒っちゃったね。何だか昔の凛ちゃんを見てるみたい」クスクス
凛「そうかな。私こんな感じだった?」
卯月「よく未央とケンカしてた時、こんな風に拗ねて仲直りさせるのに苦労したよ。
未央はあっけらかんとしてるんだけどね」
ありす(ふ〜んだ、何回も助けてってサイン送ったのに。凛先輩なんてもう知らないっ)
桃華「やれやれ、相変わらずお子様ですわねありすは」
凛「あ、桃華。久しぶりだね」
桃華「御機嫌よう凛さん。ありす、いい加減になさい。先輩を困らせるものでは
ありませんよ」
ありす「……別に怒ってないし。先輩風吹かせるのやめてくれない?」イラッ
桃華「わたくしはあなたより半月ほど先輩でしてよ。ですからもっと敬いなさい」フフン
桃華「西宮風情が偉そうに。それとも姫路でしたっけ……?」カチン
ありす「何回も言わすなっ!! うちは宝塚やっ!! 」ガバッ
桃華「うちから見たら神戸以外はどこも一緒やっ!! 」ガバッ
凛「ちょ、ちょっとストップストップ!! てか二人とも言葉遣いが巴みたいになってるよ!?
どうしたの一体!? 」ハガイジメ
卯月「桃華とありすちゃんって地元近いらしいよ。実家に帰る時は一緒に新幹線の
チケット取ってるし」ハガイジメ
ありす「今日こそ決着つけたるっ!表でえやっ!」ジタバタ
桃華「望むところやっ!どっちが格上か分からせたるっ!」ジタバタ
凛「関西弁丸出しのありす、これはこれで可愛い……」ボタボタ
卯月「ちょ、ちょっと凛ちゃん鼻血鼻血!」アセアセ
―――
ありす「お見苦しいところを……」シュン
桃華「お見せしましたわ……」シュン
凜「いや、漫才見てるみたいで面白かったから別にいいけど」ホクホク
卯月「いっそのこと笑美ちゃんに頼んでお笑い指導してもらう?コンビ結成したら
人気出るかも」
ありす・桃華「「絶対嫌です(わ)」」
みく「あんまりコテコテじゃないのなら、みくでも教えてあげられるにゃ」ヒョコ
歌鈴「わ、私もノリツッコミくらいなら……」ヒョコ
瑛梨華「お嬢様コンビ!? なかなか斬新だねっ!アタシがプロデュースしてあげる!」ヒョコ
ありす「関西人全員がお笑い好きみたいな風潮はやめてください。それにわざわざ
ご指導戴かなくても間に合ってます」
―――瑞樹『洗練されたクールなツッコミね。わかるわ』
―――楓『ありすでありんす…………ふふふ』
ありす「しかしこうしてキュートの事務所を見てると……」チラ
---
美穂「どうかな?第13代目プロデューサーくん!ショップでひとめぼれしちゃったの!」
知恵里「目元がちょっと似てるかも……やわらかいね……」フニフニ
響子「その子が座るスペースも作らないとね。明日棚を整理しておくよ」
---
かな子「じゃーん!新作のカップケーキだよー!ホットケーキミックスで作ったから
とっても簡単なの♪」
法子「おおっ、いいねえ♪私は焼きドーナツを買ってきました〜!揚げてない分
ヘルシーだよ♪」
雪乃「あら素敵。ではとっておきの紅茶をご用意しますね」イソイソ
---
杏「ぐがー、ぐがー」
ゆかり「すぅ……すぅ……」
星花「あらあら二人ともすっかり寝ちゃって。じゃあ穏やかな雰囲気の曲を……」〜♪
紗枝「おだやかですなあ。心が洗われますわあ……」ウットリ
<ワイワイ <キャッキャッ < 〜♪〜♪
ありす「キュートの方は普段から事務所にこんなに大勢おられるのですか?」
卯月「多いかな?今日はこれでも少ない方だよ。仕事がないオフの日でもみんなここに
来て楽しくおしゃべりしてるから。だからみんなとっても仲良しなの」
凜「ちょっとウチの事務所では考えられないね。クールの子達は仕事がある時くらいしか
事務所に顔出さないから。加蓮と奈緒はよくこっちにも来てるみたいだけど」
桃華「こうして無為におしゃべりをするのもまたレディの嗜みでしてよ。ありすは
ドライすぎますわ」
ありす「そうかな。あんまりベタベタしたりされたりするのはちょっと苦手だし……」
卯月「まあ、よくも悪くも女の子らしい事務所だよここは。キュートのみんなはクールや
パッションみたいにサバサバしてなくてちょっと大変な所もあるけど、でも
とっても良い子達だよ」
凛「どのグループにも長所と短所があるよ。でもアイドルってどんな子なんだろう?って
迷ったら、ここに来てみたらいいよ。確かにプロデューサーの言う通り、キュートの
子達が一番アイドルやってるから。私も卯月と話してると色々勉強になるし」
卯月「そ、そんな大げさだよお……私なんてここのみんなと比べて特技とか個性がある
わけでもないし……」テレテレ
凛「それがいいんだよ。卯月はウチのバロメーターなんだから。歌もダンスも普通、
目立つルックスでもないし強烈なキャラでもない卯月がキュートの代表で活躍
しているという事は、それだけウチの事務所が安定しているって事なんだから。
卯月が変な方向に行っちゃったら、事務所は一気に崩れるよ」
桃華「確かに、卯月さんが事務所で笑っていると不思議と安心しますわ。この事務所には
沢山の個性豊かな方がいらっしゃって、わたくしもプレッシャーに押しつぶされて
しまいそうになることがありますが、卯月さんを見ていると自然体で頑張れば
よいと思えてきますから」
ありす「そうですね。競争の激しい世界で最後に生き残るのは、奇をてらったり無理を
したりしない、卯月さんのような堅実で普遍的な方なのかもしれませんね。
勉強になります」キラキラ
卯月「あ、あはは……はは……(私も頑張ってるんだけどなあ。複雑な気分だよ……)」
ありす「ところで佐久間さんは今日来てないのでしょうか?舞から素敵な方だと
聞いていたので、ぜひお会いしたいと思っていたのですが……」
凛「あ、ああ、まゆね。今日は来てないみたいなんだ。そうだよね、卯月?」アタフタ
卯月「う、うんっ、そうだよ。まゆちゃん最近お仕事が続いていたから、今日は家で
ゆっくりしてるんじゃないかなあ。桃華は何か聞いてる?」アセアセ
桃華「ま、まゆさんですか!? 昨日はいらっしゃったと思いますが、今日はお会い
してませんわ」オロオロ
ありす「?そうですか。ではまた次の機会にご挨拶します。お手洗いはどこですか?」
卯月「廊下を右に曲がってつきあたりを左折、そこから2番目の門を右に曲がった所だよ。
ちょっとややこしいけどわかる?」
ありす「大丈夫です。では少し失礼します」ペコリ
<タッタッタッ……
桃華「凛さん、ありすにまゆさんの事を言ってませんの!? 」ヒソヒソ
凛「ごめん言えなかった。舞ちゃんって子の影響か分からないけど、ありすはまゆの事を
憧れの対象で見てるんだ。だからどう伝えたらいいのかわからなくて……」ヒソヒソ
卯月「全部が間違いじゃないのがまた難しいんだよね……まゆちゃんは元人気モデルだし、
『あれ』がなければプロ意識が高い後輩の面倒見の良いアイドルだし……」ヒソヒソ
桃華「秘密にしていたのはPちゃまの事ですか……確かにありすとはよくお話ししますが、
あの子がPちゃまの事をどう想っているのか私も薄々感付いてました。舞や薫の
ように無邪気に好いていれば良いものを、あの子はおませさんですからね」ハア
凛「(ありすも桃華には言われたくないだろうなあ)ところでまゆはどこにいるの?
まさかトイレに行ったらまゆとばったり、なんて事はないよね?」
卯月「大丈夫。昨日まゆちゃん徹夜でプロデューサーさんのマフラーを編んでたみたいで、
朝見たらぐっすり眠ってたから。最近仕事続きでお疲れみたいだったし、しばらく
起きないよ」
凛「だといいけど。やっぱりついていった方がよかったかなあ……」
―――
ありす「あれ……?確かここで良かったと思うんだけどなあ……右、左、2番目、
それから右……ん?左?3番目だったっけ?うう……もれちゃう……」モジモジ
「あらあ……もしかしてお手洗いですかあ?」
ありす「は、はいっ、確かこの辺りだと聞いていたのですが……」
「ここで合ってますよお。あらあら、スタッフさんがこんなところに荷物なんて置いた
から迷ってしまったみたいですねえ。ごめんなさいねえ」ヨイショット
ありす「あ、ありがとうございましたっ!ところであなたは一体……」
「あらあらあ〜?もしかして新人さんですかあ?」
ありす「あ、すみません、橘ありすと申します!えっと、えっと……」モジモジ
まゆ「うふふ、いいですよお。まずはお手洗いに行ってらっしゃいな。まゆは
ここでゆっくり待ってますからあ――――――」ニコ
おかしいなあ……俺は台本形式でライトにSSを書いていたつもりだったんだが……
というわけで、続く!!
訂正
>>145
×桃華「西宮風情が偉そうに。それとも姫路でしたっけ……?」カチン
↓
○ありす「プライドばかり高くて大したことないくせに。これだから神戸の人間は……」ハア
桃華「西宮風情が偉そうに。それとも姫路でしたっけ……?」カチン
ありすのセリフを足しておいて下さい。
>>161
ラスボス……ねえ?(ニヤリ
>>163
一応誤解のないように言っておくが、ハブられたりいじめられてるわけじゃないからね!
キュートの子達はみんな良い子だよ!
ありす「すみません佐久間先輩……お仕事中にお邪魔しちゃって……」
まゆ「まゆでいいですよぉ〜。ちょうど一段落ついたところですからあ。それにまゆに
会いに来てくれたのでしょう?後輩は大事にしないとねぇ〜♪」パタパタ
ありす(あの後改めて自己紹介をして、私を助けてくれたこの人が佐久間まゆさんだと
知りました。佐久間さんは私の顔をまじまじと見ると『お化粧をしましょう』と
言って、奥のメイク室へ私を連れて行ってくれました)
ありす「化粧品がいっぱいありますね。ウチにはメイク室すらないのに……」
まゆ「舞台が近くにありますからねえ。メイク室もここの他に4つもあるんですよぉ〜。
この部屋は一番奥にあるから、普段はまゆしか使ってないんですけど〜」ポンポン
ありす「わぷっ!? 私こんなにきちんとメイクしてもらうのはじめてです……」パフパフ
まゆ「クールの皆さんはナチュラルメイクに近いですからねえ。凜さんもあまりお化粧を
なさってないようですし。でもありすちゃんもアイドルですから、きちんとした
メイクは覚えておいて損はないですよぉ」ヌリヌリ
ありす「桃華にもよく怒られます…… でも私は地味な顔立ちだし、メイクしてもあまり
効果がないんじゃ……」サッサッ
まゆ「そんなことありませんよぉ。むしろどうしてありすちゃんがキュートじゃないのか、
まゆは社長に文句を言いたいくらいです〜。さて、あとはルージュをひいて……
はい、もう目を開けていいですよ♪」
ありす「ありがとうございま…………!? 」
まゆ「うふふ、どうですかあ?『ありすちゃんキュートバージョン』です。少し手を
加えただけでここまで可愛くなるのですから、桃華ちゃんにも負けてませんよぉ♪」
ありす「…………言葉が見つかりません。まるで自分が自分じゃないみたいです……
え……?これが本当に私……?」アゼン
まゆ「そもそもまゆに言わせてもらえば、キュートやクールとグループ分けすること自体
がナンセンスです〜。本当にトップアイドルを目指すなら、キュートにも
クールにもパッションにもなれないといけません。ファンの皆さんが求める
キャラクターになりきることもプロには必要ですよぉ」
ありす「確かにそうですね……私は自分で自分の可能性を狭めていたのかもしれません。
メイクひとつでここまで変われるなら、これからもっと勉強します」
まゆ「良い心がけです。それからありすちゃん、最初に会った時から少し気になっていた
のですけど、あなた少し猫背気味ですねえ。元モデルのまゆとしては見過ごす
わけにはいけません〜」
ありす「そ、そうでしょうか?よく本を読んでるので、いつの間にか姿勢が丸まって
しまったのかもしれません……」アタフタ
まゆ「姿勢をまっすぐにするストレッチと体操を教えてあげましょう。お風呂上りに
毎日きちんとしていれば、身長も伸びますよぉ?」
ありす「本当ですかっ!? ぜひ教えてくださいっ!! 」ガバッ
ありす(話に聞いていた以上にまゆ先輩はすごい人だなあ。それにとってもお洒落で
キレイで、アイドルの知識も豊富みたい。でもどうしてこの人は、こんなに
さびしい所で一人でいるんだろう……?)
―――
ありす「ふう……、ふう……、結構疲れますね……」
まゆ「そうですかぁ?これは一番簡単な体操ですけど。でも無理をしてはいけませんよぉ。
体を痛めてしまったら凛さんに怒られてしまうかもしれませんし、このあたりで
やめておきましょうかぁ」
ありす「すみません……、ありがとう…ございました……」ゼエゼエ
まゆ「いえいえ。これくらいでしたらいつでも教えてあげます。それより大丈夫
ですかぁ?辛いようでしたら横になっていても構いませんよぉ?」
ありす「いえ、大丈夫です……、それに先輩の前で横になるわけには……」フラフラ
まゆ「……へえ、ありすちゃんはこの事務所では珍しいストイックな子ですねえ。
まゆが昔いた事務所を思い出します〜」
ありす「まゆ先輩は確かモデルをされていたのですよね?そちらはこの事務所より
厳しかったのですか?」
まゆ「まゆからすれば、この事務所が甘すぎるくらいですけどねえ。きちんと睡眠が
とれてご飯を食べることが出来て、学校にも通えるなんて夢のようですよぉ」
ありす「え……?それは普通の事では……?」
まゆ「とんでもありませぇん。まゆがモデル事務所に入ったのは12歳の時でしたが、
小学校最後の1年間は一か月も学校に通えませんでしたぁ。修学旅行にも
行けませんでしたし、卒業式も最後まで参加出来ませんでしたよぉ」
ありす「そんな……」
まゆ「別に珍しい事ではありませんよぉ。この業界は有名事務所でも、子供を朝早くから
夜遅くまで労働法無視で働いているところはたくさんあります〜。子供は成長も
早いですし、大人達から見れば使い捨てのお人形さんなんです〜」
ありす「…………」
まゆ「ごめんなさいねえ。怖がらせるつもりはなかったんですけど、でもありすちゃん
には言っても大丈夫だと思いまして〜。この事務所はみんな仲が良くて楽しい所
ですが、だからまゆは不安になるんです。こんなに楽でいいのかな……って」
ありす「だからまゆ先輩は、卯月さん達と一緒じゃなくてこの部屋に……?」
まゆ「仲が良いのは結構ですが、彼女達はトップになれるのはほんの一握りだということ
が分かってるのでしょうかねえ。まゆの考えを押し付けるつもりはありませんが、
ありすちゃんもトップアイドルを目指すなら、大好きな事務所の先輩や友達と戦う
心構えを持っておいた方がいいですよぉ」
ありす「戦う心構え……、凛先輩や桃華と……?」
まゆ「うふふ、少し意地悪をしてしまいましたねえ。忘れてください、今のはまゆの
独り言です〜。さっきも言いましたが、ここは良い事務所です。ですから
ありすちゃんは今のまま、素直で可愛いアイドルさんになってくださぁい。
辛い目に遭うのはまゆ達だけで十分ですからぁ」
ありす「いえ、まゆ先輩のお言葉しっかり覚えておきます。貴重なアドバイスを
ありがとうございました」ペコリ
まゆ「あらあらあ……ありすちゃんはまゆが思ってるよりずっとしっかり者で賢いみたい
ですねえ。同じグループで教えてあげられないのが残念です〜」
ありす「私もまゆ先輩にもっと早く会いたかったです。いつの間にか凛先輩達に守られて
すっかり甘えていました。まゆ先輩に言われなければ、このままずっと半人前
で終わっていたと思います。それでは東京まで来た意味がありませんから」
まゆ「どうやらまゆはありすちゃんを見くびっていたようです。失礼しましたぁ」ペコリ
ありす「い、いえそんな!私なんかまだまだ……」アタフタ
まゆ「うふふ、いいですよ謙遜しなくて〜。ところでありすちゃん、ひとつお聞きしたい
事があるのですが」ズイッ
ありす「な、なんでしょうか……、私の顔に何かついてますか……?」ビクッ
まゆ「間違いありませんねえ。メイクののりが良かったのでもしやと思いましたが。
……ありすちゃんは今、恋をしているようですねえ?」プニプニ
ありす「な!? なな何言ってるんですか!! 別にプロデューサーの事なんて……!! 」アセアセ
まゆ「あらあらぁ……?まゆはプロデューサーさんとは一言も言ってませんがぁ?」ギロリ
ありす「あ…………」シマッタ
まゆ「どうやらありすちゃんはまゆの『敵』みたいですねえ……あなたもまゆからあの人
を奪おうとする悪い子……うふふ、ふふふふふ……」
***
まゆ「凛さんも悪い子ですねえ。『アイドルに恋愛はご法度』ということをありすさんに
きちんと教えないなんて。……いえ、凛さんが教えられるはずありませんね。
あの子もまゆの『敵』ですからぁ……」ユラリ
まゆ「あなたの気持ちもよ〜くわかりますよありすさん。プロデューサーさんはとっても
素敵な人ですから、この事務所で彼の事が嫌いなアイドルはいないでしょう。
でもねえ、みんな本気で恋しちゃいけないってわかっているんですよぉ。ほとんど
の子が、ちゃあんと身の程を弁えて節度ある付き合いをしています〜」フラリ
まゆ「でもたま〜に、自分のアイドルという立場を理解出来ずに本気でプロデューサー
さんに恋をしてしまう子がいるんですよぉ。凛さんやありすちゃんみたいにねえ。
それがどれだけいけない事か、わかってますかあ?」ユラリ
まゆ「まゆはそんな子達からプロデューサーさんを守っているんですよぉ。あの人に
迷惑をかけるのは誰であろうと許さない。プロデューサーさんを守るためなら、
まゆは何だってしますよぉ……」ユラリ
ありす「う、ううぅ…………」タジタジ
ありす(どうしてこんなことになっちゃったんだろう……私、何か失礼な事をしちゃった
かなあ。まゆ先輩ものすごく怒ってるよ……)
ピタ
ありす(壁?しまった、いつの間にか追いつめられていた……!!)
まゆ「うふふふふ……、つ〜かま〜えたぁ〜……」
ガシッ
ありす「ひっ……!! 」ビクッ
まゆ「今ここではっきり約束してくださぁい。プロデューサーさんを本気で好きに
ならない、プロデューサーに恋愛感情を抱かないと。この場ではっきりと、
まゆに誓ってくださぁい……」ギラギラ
ありす(こ、こわいよう…………で、でも…………)ガタガタ
ありす「……きません」
まゆ「なんですかぁ?よく聞こえませんでしたけどぉ」
ありす「どうしてまゆ先輩がここまでするのか……私には理解できません……こんな
恫喝まがいの事までして……理由を聞かせてください……」
まゆ「あらあらぁ……ありすさんはもっとお利口さんだと思ってましたが、まゆの勘違い
だったのでしょうかぁ。ダメなものはダメなのです。先輩の言う事は聞かないと
いけませんよぉ……」イラッ
ありす「先輩の言う事でも、わからない事はわかりません!! この気持ちは私だけのもの
です!! 誰かに言われて止められません!! 」キッ
まゆ「この……っ!! 」グィッ
ギュウウウウウウウウ……
ありす「かは……」(首が締まって……息が……)
まゆ「ここまでされても泣かないなんて、ほんとうにありすちゃんは強い子ですねえ……
まゆに謝るなら、手を離してあげますよぉ……」ギリギリ
ありす「い…や…で…す…」ハア…ハア…
まゆ「強情な子ですねえ。早くしないと死んじゃいますよぉ……」ギリギリ
―――『あはは、強情な子だね!! このままここでモデル続けてたら死んじゃうよ!!
私もこんなヒドイ事務所に来たのはじめてだし!! 』
ありす「この…想いだけは……ゆずれ…ません……」ハア…ハア…
――― 『そっか。じゃあさ、私とあんたでこの事務所を変えちゃおうよ!! イヤな先輩
には全員辞めてもらってさ。私があんたをトップモデルにしてあげる!! 』
まゆ「……」
―――『いや〜、あんたがここまで化けるとは思わなかったよ!! さすが私!!なんちゃって☆
このまま東京まで一気に殴り込みをかけるぞ〜!! ……って、どうしたのムズカシイ
カオしちゃって。え?相談?ええ〜!? 好きな人が出来たって〜!? 』
ありす「お仕事も…プライベートも…がんば…ります……」ハア…ハア…
―――『う〜ん、相手はライバル事務所のマネージャーかぁ〜。あんた自分が人気モデル
だって事忘れてない?下手すりゃウチの事務所がつぶされるどころか、最悪この
業界から干されるよ?今のあんたはもうアイドルみたいなもんだし』
―――『でももしかしたら、あんただったら仕事もプライベートも両立させられるかもね。
うん、わかった!私も応援するよ!それに強情なあんたの事だから、私が何を
言っても諦めないでしょ。勝手に暴走されても困るしね♪あはは、怒るな怒るな』
まゆ「そんなこと……できないですよ……あの人でも無理だったのに……」ボソッ
バンッ
凛「ありすっ!! 」ダッ
ありす「凛…せんぱ……」
まゆ「え?」クルッ
凛「このおっ!! 」ドガッ
まゆ「ぐ……」ヨロッ
凛「ありす!! 大丈夫!? 」シュルシュル
ありす「はぁ……、はぁ……すみ、ません……」ゴホッ、ゴホッ
***
ブロロン
P「あれ?凛ひとりか?」ガチャ
凛「岡崎先輩なら先に帰ったよ。そっちはきらりいないの?」
P「杏に会いたいって言うからキュートに置いてきた。じゃあ行こうか」
凛「ん」バタン
―――
ブロロン
凛「先輩から聞いたよ。プロデューサーここに来る前仙台にいたんだってね。まゆの事も
昔から知ってたの?」
P「あいつ余計な事を…… まあ業界人であの頃仙台にいて、まゆの事を知らなかった奴は
いなかったぞ。俺はしがないモデルのマネージャーだったから、まゆの方は知らない
と思うけどな」
凛「へえ……しがないモデルのマネージャーねえ……」
泰葉『彼は使い捨ての人形同然に扱われていたモデル達の待遇改善を求めて自分の事務所
の社長はもちろん、よその事務所にもよく喰ってかかってたわ。だからモデルの
女の子達からは人気があったわよ』
P「まゆの事務所はそれはひどい所でな。俺も他事務所ながらずっと気にかけてたんだ。
でもある時泰葉がふらりと現われて、自分の経歴とか業界のコネとかフル活用して、
あっという間に変えちまった。伊達に業界で長く生きてないよアイツは。でも本当に
凄かったのは、事務所で後輩達を必死に守っていたまゆだと俺は思う」
凛「まゆが?」
P「ああ。まゆは人気モデルとして仕事をこなしながら、後輩達の指導と育成もやってたよ。
泰葉は営業で外を飛び回っていたから、留守の間はまゆが事務所を守っていたんだ。
あいつは本当に後輩を大事にしていたから、今回のありすとの件もそれが行き過ぎた
形になって表れたものだと思うんだ」
凛「プロデューサーも先輩と同じこと言うんだね。みんなまゆの肩持ちすぎだよ」ボソ
P「ん?何か言ったか?」
凛「ふんっ」ゲシゲシ
P「痛い痛い蹴るな。まあ、まゆも反省してたし許してやってくれないか?しっかり
アルゼンチンも決められてたしさ」ドウドウ
―――
泰葉『ありすは昔のまゆにそっくりなの。まじめで融通が利かなくて頑固な所なんて、
本当によく似てるわ。だからまゆはありすに自分を重ねたのかもしれないわね。
ただありすは、あの頃のまゆと違ってもっと強いけどね』
凛『当然です。あの子は私が教育したんですから』フフン♪
泰葉『まゆの中であの人を誰にも渡したくないと思う独占欲と、昔自分があの人を好きに
なって辛い思いをしたから、ありすに同じ思いをさせてはいけないという使命感が
混ざっちゃったのね』
凛『だからって首を絞めるなんて……』
泰葉『まゆは軽く脅すだけのつもりだったのに、ありすが思った以上に言う事を
聞かなかったからやりすぎちゃったみたいね。ありすってあんなに強情だった
かしら。何か知らない?教育係の凛さん?』チラ
凛『す、すみません……』ダラダラ
泰葉『ふふ、冗談よ。でも凛もまゆを許してあげてくれないかしら。あの子も悪気が
あったわけじゃないの。次からは私もしっかりまゆを見張っておくから、二度と
あの子にあんな事は起こさせないって約束するわ』
凛『ずいぶんまゆを庇うんですね。私は当分許せそうにありませんけど』ムス
泰葉『あんたがありすの事を可愛がっているように、私もまゆの事が可愛いのよ。あの子
を置き去りにした罪悪感もずっとあったし、責任は私にもあるわ。だから私からも
ごめんなさい』ペコリ
凛『……先輩に謝られたらこれ以上怒れませんよ。でも確かにありすも意地を張って
まゆを怒らせてしまったってずっと気にしていたし、もう少し他の先輩との上手な
付き合い方とか教えておきます』
泰葉『まさかあんたの口からそんな言葉が聞けるなんてね。協調性のないあんたにも、
少しは業界の上下関係が分かるようになったのかしら』クスクス
凛『そういうのは正直あんまり好きじゃないですけど、でも知っておかないと色々
やりにくい事も分かってきましたから。私もオトナになっちゃったのかなあ』ハア
***
―パッション事務所―
P「お〜いありす〜、迎えに来たぞ〜」
未央「あ、プロデューサーじゃん。ひっさしぶり〜♪」
美嘉「え!? プロデューサー!? ヤバ、メイク直してこないと!! 」バタバタ
凛「あれ?今日は美嘉もいるんだ。珍しいね」
未央「莉嘉のお迎えだってさ。もうすぐレッスン終わるから一緒に待ってたの」
P「ありすはどこにいるんだ?確かアイツのレッスンはもう終わってるはずだが……」
未央「いや〜それがさ、ありすレッスンが物足りなかったみたいで、莉嘉のレッスンに
参加させて欲しいってルキトレちゃんに頼み込んじゃったの。私も止めたんだ
けどあの子聞かなくて。だから無理しない事を条件に許可しちゃって〜」テヘ☆
凛「ちょ、莉嘉のレッスンってハードレベルのやつでしょ!? ありす大丈夫なの!? 」
P「おいおい、あんまり無茶させるなよ。でもありすも何を焦ってるんだ?これは一度
様子を見る必要があるな」スタスタ
―――
―レッスン場―
ルキトレ「はいっ、じゃあ今日はここまで!寝る前にしっかり体をほぐしておくのよ」
莉嘉「ありがとルキちゃん!またよろしくね☆」ピンピン
ありす「ありがとう…ござい、ました……」ゼエゼエ
P「お疲れ〜、ありす生きてるか〜?ルキさんにいじめられてないか〜?」
ルキトレ「人聞きの悪い事言わないで下さい!」プンプン
美嘉「莉嘉〜、迎えに来たよ〜。雨降りそうだしさっさと帰るよ〜」
莉嘉「あ、おね〜ちゃん!来てくれたんだ〜☆」ダキッ
美嘉「ちょ、汗クサ!先に着替えてきなよ!」グイグイ
莉嘉「い〜じゃんい〜じゃん☆」スリスリ
<ギャー キャハハハハハ
ありす「……」スンスン
凛「ありすっ、大丈夫!? 」ダダダッ
ありす「……先にシャワー浴びてきます。凛先輩は事務所で待っててください」スタスタ
凛「ありす……?」スカッ
未央「ありゃりゃ、嫌われちゃったね凛。ありすに悪い事でもしたの〜?」ニシシ♪
凛「」(´;ω;`)ブワッ
未央「ぅえ!? ちょちょちょ、泣くほどの事!? アンタそんなキャラだっけ!? 」アセアセ
莉嘉「なーかしたーなーかしたー♪み〜おちゃんがーなーかしたー♪」ケラケラ
美嘉「やめなっての!だ、大丈夫だって凛、ありすはシャワー行っただけだから!」アセアセ
<シクシクシク… ト、トリアエズオチツイテ! キャハハハハ アンタモサッサトイッテコイ!
P「……何やってるんだあいつら?」
ルキトレ「あはは……、ありすちゃんも色々複雑なお年頃なんですよ」
P「すみませんありすが無理言ったみたいで。ご迷惑をおかけしました」ペコリ
ルキトレ「いいんですよ別に。あの子は莉嘉ちゃんの隣でレッスンの真似事をしていた
だけですし。ですがレッスン内容の変更を希望するんだったら、私も姉さん達
と相談してメニューを組み直しますので早めに連絡して下さいね」
P「はい。でもありすの育成方針は今のままで行きます。全く、何を考えてるのか
分からんが、行き詰まると一人で突っ走る所は昔の凛そっくりだな」ヤレヤレ
凛「ふぇ?」グス
***
―更衣室―
ありす「あそこでもっと動きを小さくして……もっと脚力を鍛えて……」ピッピッ
未央「やっほありすちゃん。ケガとかしてない?」ヒョイ
美嘉「スゲ、それiPad?レッスンメニューメモってるの?」ヒョイ
ありす「未央先輩。それから美嘉先輩も、今日は私のわがままを聞いてくれてありがとう
ございました」ペコリ
美嘉「いーよいーよ、アタシ達は何もしてないし。でもありすガッツあるね〜★莉嘉に
最後までしがみつくなんて、アタシでもシンドイよ」
ありす「いえ、ついていくのがやっとで私なんてまだまだです」パタン
未央「莉嘉は私達初期メンバーとほとんど変わらないしね。だから小学生だけどあの子は
特別だよ。それより急にどうしたの?あんまり無理すると体壊しちゃうよ?」
美嘉「そうだよ、凛もありすが避けるって泣いてたぞ。凛姉ちゃんをあんまり悲しませたら
ダメだぞ〜★」
ありす「別にそんなつもりはありません。ただ、少しは自主的に考えてやってみようと
思いまして。結果は散々でしたので、やはり今はメニュー通りのトレーニングを
こなす方が効率が良いみたいですね」
未央「それってもしかしてセルフプロデュース?ほえ〜、もうそんな事してるの?
やっぱりクールの子は違うね〜……」ポカーン
ありす「そんな大げさなものじゃありません。でも少ししっかりしなくちゃいけないと
思いまして。私もいつまでも凛先輩に守られてばかりじゃいけませんから」
まゆ『ありすちゃんもトップアイドルを目指すなら、大好きな事務所の先輩や友達と戦う
心構えを持っておいた方がいいですよぉ』
美嘉「……ふ〜ん、アタシにはよくわかんないなあ。ねえありす、守られることは別に
悪い事じゃないよ?莉嘉はもうちょっとオトナになってほしいかもだケド、誰かに
甘える力もアイドルの実力だしね」
ありす「甘える力……?」
美嘉「別に媚びろって言ってるわけじゃないよ?アタシもそういうのはキライだし。でも
アタシらは結局ガキだし、ひとりじゃ何も出来ないんだよ。だから今はしっかり
甘えて、味方をいっぱい作っときな。それは今後、絶対アンタの力になるから」
未央「そうそう♪私達はライバルだけど、それ以上に大事な仲間なんだよ。一匹狼なんて
損するだけ!トップアイドルっていうのは、みんなに応援されないとなれない
んだからさ☆」ウンウン
ありす「みんなに応援されないとなれない……」
未央「でも美嘉も面倒見が良いよね〜。見た目はギャルなのに中身はチョー真面目なんだ
から。やっぱりお姉ちゃんパワー?」ニヤニヤ
美嘉「や、やめてよハズいな!アタシはベツに思った事を言っただけだし!」カアア
ありす「……未央先輩、美嘉先輩。すみませんでした。私はどうやらまた勘違いをして
いたみたいです。貴重なアドバイスありがとうございました」ペコリ
美嘉「そ、そんなマジで頭下げられても困るよ!てかホントにアンタ莉嘉と同じ年なの?
まだ信じらんないんだけど……」オロオロ
莉嘉「おね〜ちゃん着替えたよー!さあこのままP君の所へゴーゴゴー!」ダキッ
美嘉「ああもうわかったわかった!メイク崩れるからあんまりくっつかないで!」グイグイ
未央「さ、それじゃ私達も行こうか。いい加減凛に構ってあげないと、あの子も
拗ねちゃうしね。莉嘉みたいに抱き着いたら喜ぶんじゃないかな?」
ありす「わ、わかりました……やってみます……」ドキドキ
未央「その意気だ!じゃあ私はプロデューサーに抱き着くから、お互い
ガンバローッ!! 」ダッシュ!
莉嘉「未央ちゃんズル〜イ!P君に抱き着くのはアタシが先なんだから!」ダッシュ!
美嘉「コ、コラやめなって莉嘉!で、でもアタシも莉嘉がお世話になってるし……
ああもう!とにかくあいさつのハグ程度は……!」ダッシュ!
ありす「え、ええ〜っ!? わ、私も凛先輩に抱き着く前の予行練習で仕方なく……
ま、待ってくださ〜い!」ダッシュ!
―――
ありす(まゆ先輩の言った事は間違いではないと思う。トップアイドルになれるのは
選ばれた人間だけだし、その為には先輩とか関係なく皆ライバルになるだろう)
ありす(でも美嘉先輩と未央先輩に言われたことも正しい。私一人が出来る事なんて
ほとんどない。皆に支えられて、応援されてこそトップアイドルだ)
ありす(凛先輩は自然体の私で良いって言ってくれた。無理せずに自分に合ったやり方を
見つけることが出来れば、私も凛先輩みたいに恰好良いアイドルになれるかな)
ありす(学校の勉強とは違って、この問題は答えがひとつじゃないみたいだ。私は
これから答えを探しながらアイドル活動をするのだろう。これは思っていた
以上に大変だ)
ありす(でも私はひとりじゃない。頼もしい先輩達も心強い友達もいる。お父さんや
お母さんも応援してくれているし、何より私の事をしっかり考えてくれている
プロデューサーもいる)
ありす(時間はかかると思うけど、いつか必ず自分だけの答えを見つけよう。そして
いつかトップアイドルになって、未来の後輩達に自信を持ってその答えを
言えるようになる。それが私、橘ありすの今の夢です)
ありす(え?恋愛ですか?そ、それはプライベートな事なのでお答え出来ません!
で、でも将来結婚したら、お互いに支え合えるような夫婦でいたいと思います。
ちょうど今の私とプロデューサーのような……えへへ……って、何言わせるん
ですか!もうおしまい!この話はおしまいです!)
END
本編はここまでです。後は近日中におまけで泰葉とまゆの会話を
ちょろっと書く予定です。ここまで読んで下さった皆さん、
本当にありがとうございました。
おまけ・昔のお話(泰葉・まゆ)
―病院―
泰葉「こんにちは〜♪」コンコンガチャ
まゆ「……まだ入って良いって言ってませんよぉ」
泰葉「いいでしょ私とあんたの仲なんだし。それよりいつまで寝てるのよ。昔のあんた
だったら這ってでも仕事してたでしょうに」
まゆ「昔の事は憶えてませんねえ。東京でアイドルをするって決めた時に、仙台の頃の
自分は全部捨ててきましたからぁ」ツーン
泰葉「あんたを放って事務所を辞めた事まだ怒ってるの?もういい加減に許してよ」
まゆ「その件はもういいです。まゆが気に入らないのは、あなたがいつまでも昔みたいに
先輩面をすることです。ここでは対等な関係のはずですよ『泰葉さん』?」
泰葉「へえ、言うようになったじゃない。ま、それもそうね。それじゃ駆け出しの
アイドル同士仲良くしましょうか『まゆちゃん』」ニコ
まゆ「お断りします」プイ
泰葉「やっぱり怒ってるじゃない。どうすればいいのよ私は」ハア
―――
まゆ「そもそもですね」
泰葉「何よ」
まゆ「あなたは私の失態を利用して、仙台から逃げましたよねえ?あなた程の後ろ盾が
あれば、あんな脅しに屈して事務所を辞めるなんてありえません。何かあの場に
居続ける事が難しい、他の理由があったのではありませんかあ?」
泰葉「買い被り過ぎよ。私はただの芸歴が長いだけの小娘よ。大人に本気になられたら
敵わないわ。そもそも私はあんたのドジを帳消しにする為にあの事務所を辞めた
のに、逃げたなんて言い草ひどくないかしら?」
まゆ「小娘の皮を被った古狸のくせによく言いますねえ。まゆもてっきりそう思い込んで
ずっとあなたに申し訳なく思ってたんですが、あなたがプロデューサーさんの横で
事務まがいの事をしていると聞いて、そんな気持ちは消え去りましたあ」
泰葉「ふうん、そうなの。じゃああんたはどうして私が事務所を辞めたと思ってるの?」
まゆ「簡単な話ですよぉ。あなたもプロデューサーさんの事が好きだったんですよねえ?
でもプライドの高いあなたは、自分が恋をした事を認めることが出来なかった。
だから本気になってしまう前に逃げたんじゃないですかあ?」
泰葉「あら?あなたには私が色恋沙汰に振り回されるような小娘に見えるの?さっき古狸
とか言われた気がするんだけど」
まゆ「古狸だからこそ最もらしい理由をつけて逃げたとも言えますねえ。それに役者の
あなたがどう見えていたかなんて全く意味がありません。私の知っている昔の
あなたは、もっと明るくて元気な方でしたしねえ」
泰葉「私が芸能界でどれだけ名前を変えてきたと思ってるのよ。その度に人格も作り
変えてきたわ。でも今は本名だし、この私が一番本来の人格に近いわよ」
まゆ「髪もばっさり切っちゃって。何ですかそのおかっぱ頭は。見た目は幼いのに、
言動が大人びていて不気味ですよお?」
泰葉「可愛いでしょ?手入れも楽だし気に入ってるのよこの髪型。でもたったこれだけで
あんたも私に気付かなくなるとは思わなかったわ。仙台ではあんなに一緒にいた
のに、所詮私はその程度の女だったのねよよよ……」
まゆ「ごまかそうとしてもそうはいきませんよお。あなたの手口はお見通しです。
今日ははっきり聞かせてもらいますからね」ギロ
泰葉「わかったわかった降参よ。ちゃんと話すからそんなに睨まないで」ヒラヒラ
***
泰葉「自分でも信じられない話だけど、あの時の私は自分の中に芽生えた感情が恋だって
理解出来なかったのよ。そもそも普通に成長して備わるはずの喜怒哀楽の感情すら、
私はお芝居の中で覚えたしね」
まゆ「あなたはどれだけ過酷な現場でも、いつも不自然なくらい笑顔でしたよねえ。
今思えばプロ意識を通り越して怖いくらいでした」
泰葉「本当にそうよね。でもおかげで大抵の感情はコントロール出来るようになった
けどね。だから感情に流される事が理解出来なかったし、色恋沙汰で身を滅ぼす
子達をバカにしていたわ」
まゆ「じゃあまゆの事も、あの時内心でバカにしていたんですかあ?」イラッ
泰葉「それが不思議とそうでもなかったのよ。あの人だったら仕方ないって思ったし、
私も好感は持っていたわよ。まさかそれが恋愛感情になるとは思わなかったけど。
あんたが情熱的にあの人の事ばかり話してたからあてられちゃったのかもね」クスクス
まゆ「じょ、情熱的にって……」カアア
泰葉「何今更恥ずかしがってるのよ。あんた変な所でウブなのね。それで私も最初は自分
が恋をしてるって理解出来なくて、一度彼と距離をとってみる事にしたのよ。
別に逃げたわけじゃないわよ?ただ私は役者として、恋愛感情を完璧に制御する
時間が必要だったの。だから逃げてないわよ?」
まゆ「わかりましたよお。どうしてそこで役者になるのかわかりませんが、そういうこと
にしてあげます。それでプロデューサーさんへの想いは制御出来たのですかあ?」
泰葉「いえ、無理だったわね。だから今は表舞台の仕事はお休み中。感情を抑えられない
今の状態じゃ役者失格だしね。とりあえず彼への気持ちが落ち着くまでは、裏方
で仕事するわ」ケロリ
まゆ「……まゆにはあなたが本気でプロデューサーさんへの気持ちを抑えようとしている
ようには見えませんねえ。やる気あるんですかあなた?」イラッ
泰葉「ふふ、どうかしらね。でも私は頭のてっぺんからつま先まで芸能人よ。だから
そのうち復帰はするつもり。今は忙しいからもう少し先になりそうだけどね」クスクス
まゆ「全く、その余裕が腹立たしいですねえ。まゆはあなたが一日も早くアイドルに復帰
することを望みます。そうなったら同じ舞台で叩き潰してあげますからあ」ニヤリ
泰葉「怖い怖い。お手柔らかに頼むわね。その前にあんた、皆にしっかり謝りなさいよ。
特に卯月と桃華はあんたを庇って色々頑張ってくれたんだから。何なら私も一緒に
謝ってあげようか?」
まゆ「結構です。自分の責任は自分でとれますから。あなたに再会して、自分が何を
必死に執着していたのか馬鹿馬鹿しくなりましたよお。全部捨てたと思ってたのに、
結局まゆはあの頃の自分をずっと引きずっていたんですね。ありすちゃんにまで
対抗心を燃やして、本当に何をしていたのでしょう」ハア
泰葉「それに気付けただけでも良かったじゃない。明日からまた一緒に頑張りましょう」
まゆ「あなたと組む事はもうありませんよお。まゆは一人で大丈夫ですからあ」プイ
泰葉「もう、つれないわねえ。せっかくまとまりかけたのに、うまくいかないわね」ハア
***
ガシャコン
泰葉「はいココア。遅くなっちゃったけど、私からのバレンタインよ。あんた好きだった
わよね」スッ
まゆ「ありがとうございます。結局マフラーをプロデューサーさんに渡せませんでしたあ。
良い出来だったのに残念です〜」ファサ
泰葉「来年頑張りなさい。それにあの人、手編みのマフラーだけで20本くらいもらって
たわよ。あげるなら別のにしなさい」
まゆ「……意外と競争相手が多いみたいですねえ。みなさん自分がアイドルだという自覚
があるのでしょうかあ」ゴゴゴ
泰葉「あんたが言っても説得力ないわよ。彼は今も昔もモテるわねえ。仙台にいた頃も、
しょっちゅうモデルの子からプレゼントもらってたじゃない」
まゆ「そういえばそうでしたねえ。まゆも苦労しますよお」ハア
泰葉「……あんた、仙台にいた頃のプロデューサーを知ってるって話をここでしてない
らしいわね。結構強力なアドバンテージになるのに、どうして使わないの?」
まゆ「プロデューサーさんも話さないから、あまり思い出したくない事でもあるんじゃ
ありませんかあ?まゆも過去を引きずってる重い女だと思われても嫌ですし」
泰葉「へえ、あんたも色々考えてるのね。ま、彼も事務所の社長とケンカ別れみたいな
感じで仙台を飛び出したみたいだし、自分から進んで話したくはないかもね」
まゆ「……待ってください。どうしてあなたはそんな事を知ってるんですかあ?」ピク
泰葉「え?だって私はよく昔の話を彼とするし。笹かまぼこが美味しかったとか、牛タン
をまた食べたいとか」キョトン
まゆ「ちょっとおおおおおっ!? どうしてまゆの気遣いを無駄にするような事をするんです
かあああっ!? しかも食べ物の話なんてどうでもいいじゃないですかあっ!!」ガバッ
泰葉「まあまあ落ち着きなさい。あんたの話もよく出て来るわよ。『まゆは俺が今まで見た
モデルの中でもトップ5に入っていた』って誉めてたわよ」
まゆ「あ……うう……」プシュー
泰葉「安心しなさい。あんたがあの人を好きだったとか、あんたがドジった話とかは
してないから。あの人の中では、あんたは後輩の面倒見の良い凄いモデルって
印象らしいわよ」
まゆ「そうですか…… でもやっぱり昔の話はこれからもしません。モデルになったのも
あなたがお膳立てしてくれたおかげでしたし、まゆの実力じゃありませんよお」
泰葉「そんなに卑屈にならなくてもいいと思うけどね。それじゃ凛やありすに負けるわよ。
使える武器は何でも使わないと」
まゆ「あの子達はまゆの敵じゃありません。あなたに比べれば、ね……」ギロリ
泰葉「あら?私とやろうっての?言っとくけどクールの結婚適齢期組の方がもっとガチよ。
油断すると婚姻届に判を押させようとする人もいるし」
まゆ「そんな露骨なアピールでプロデューサーさんが靡くとは思えません。でもあなたの
実力は底が見えないし、今も着々と準備をしているんじゃありませんかあ?」プシュ
泰葉「どうかしらね。私がその気だったら、すぐにでも彼をオトしてるけどね」ニヤリ
まゆ「そうはいきません。とにかく、すぐに今の事務員ポジションから離れて下さい。
まゆはあなたがそこにいる事が不愉快です。油断も隙もありません」ゴクゴク
泰葉「……ちなみに私はいつでも勝負出来るように、下着は黒のTバックよ」ボソ
まゆ「ぶはっ!? 」ビシャッ
泰葉「冗談よ。あんたもまだまだ修行が足りないわね。まあせっかく再会したんだし、
これからもよろしくね。」クスクス
まゆ「ごほっ、ごほっ、(やっぱりラスボスはこの人ですねえ。凛さん、分かっています
かあ?泰葉さんはまゆなんかよりずっとずっと手強いですよお……)」
本当にEND
これにて完結。凛とありすを主人公にするつもりだったのに、結局あちこち手を
出しまくってよく分からんSSになってしまった。とりあえず岡崎最高!
ではここまで読んでくれた人達に改めて感謝を。ありがとうございました。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1359820284
〜回想〜
凜「……」
ありす「……」
P(後部座席に並んで座る凜とありす。かれこれ30分くらい経つが、会話はおろか目も
合わせようとしない。凜はスマホを、ありすはiPadをずっといじってる……)
凜「……何?さっきからルームミラー越しにチラチラ見ちゃって。変態」
P「い、いや……ずっと黙ってるから何してるのかな〜っと思ってな……」
凜「見てわかんないの?メールしてるんだけど。ジャマしないでくれない?」
P(うん、このトゲのある感じ。いつもの凜だな。特別不機嫌というわけでもなさそう
だが……)
P「ありすはゲームでもしてるのか?さっきから熱心にiPadを触ってるみたいだが……」
ありす「橘って呼んで下さい。それにゲームじゃなくて学校の宿題をしているんです。
今集中しているので話しかけないで下さい」
P「へえ、勉強してたのか。えらいなありすは。今時の小学生はiPadで勉強もするのか。
こりゃ未来はノートも黒板も無くなっているかもしれないなあ」
ありす「ありすって呼ばないでください。聞こえませんでしたか?勉強しているので
黙っててください」
P(こちらもいつも通りのありすだな。いや、ちょっとご機嫌ななめか?名前で呼んだ
時の反応がいつもよりちょっときついか?)
凜「ちゃんと前見て運転してよね。よそ見してると危ないよ」
ありす「今日の現場は初めてですから、30分前には到着したいんですけど。余計な事を
話してないで急いで下さい」
P「ハハハ……すまん」
〜回想終わり〜
P「……てな事があったんだが」
奈緒「いや、普段の会話からしておかしくないか?あのふたりに何か悪いことでも
したのか?」
加蓮「凜とありすがというより、ふたりとプロデューサーの方が問題ありそうだよね」
P「バカな!? 俺はふたりとも平等に可愛がってるぞ!! 親御さんから大事な娘さんを
預かってる身として、何か困ったことがないかいつもしっかりみっちり
聞いてるし……」
加蓮「ああ、あれウザイからいい加減やめた方がいいよ。心配してくれるのは分かるけど、
年頃の女の子には親にも言いたくないことがあるんだよ。ましてや他人の男の人の
プロデューサーに言えるわけないし」
P「そんな……俺は嫌われていたのか……?」ガクッ
奈緒「ははは、プロデューサーは加蓮に過保護だったからな。まあ凜はベタベタされるの
キライだし、ありすもそんな感じじゃないの?それほど嫌われてはいないと思うよ」
P「好かれてはいないのね……まあいいや、話を戻そう。しかし凜も昔よりずいぶん丸く
なったから、ありすの教育係を任せたんだけどな。専門的な事は教えられなくても、
ただアイドルの先輩としてありすの話相手くらいにはなって欲しかったんだが……」
奈緒「え?アイツありすの教育係だったの?初耳だぞそれ」
加蓮「私も知らなかった。ていうか、あのふたりが事務所でしゃべってるところとか
見たこと無いんだけど……」
P「凜と仲の良いお前らでも知らなかったのか。これはいよいよあのふたりの不仲説が
現実味を帯びてきたな……」
奈緒「そもそも私も、凜とはよくつるんでるけどあんまりアイツの事はよく知らない
んだよな……」
加蓮「凜ってあんまりおしゃべりなタイプでもないしね。あれ?もしかして友達と
思ってたのは私の方だけ……?」
P・奈緒・加蓮「」ズーン
ガチャ
凜「…………プロデューサー、いる?」
P・奈緒・加蓮「」ビクッ
凜「…………って、何してるの三人で。私に隠れて内緒話?」ジトッ
P「い、いやいやいや!そんなことはないぞ!ど、どうした凜!何か用か?」
凜「……ま、いいか。ちょっと話あるから来て。奈緒、加蓮。プロデューサー借りるけど
いいかな?」
奈緒「ど、どうぞどうぞ!ジャマだからさっさと持ってっちゃって!」
加蓮「いいよいいよ全然問題ないよ!私達のことは気にしないで!いってらっしゃ〜い!」
P「……お前ら、後で覚えとけよ」
バタン
奈緒「凜、めっちゃ怒ってたよね……」
加蓮「いつものポーカーフェイスだったけど、威圧感がヤバかった。プロデューサー、
生きて帰れるかな……」
〜一時間後〜
ガチャ
奈緒・加蓮「」ビクッ
凜「……もういいよ。プロデューサーだったら会議室にいるから、内緒話の続き
するんだたったら思う存分どうぞ」
奈緒「い、いやいや!だから内緒話なんて……」
加蓮「……ていうか凜、プロデューサーはどうしたの?会議室で何してたの?」
凜「何も。ちょっとお話してただけだよ。じゃ、私帰るから。あ、プロデューサー
しばらく動けないと思うから、具合悪そうだったら看病してあげて」
奈緒「どうしておしゃべりしただけで動けなくなるんだ!? てか看病って何だ!? 」
凜「じゃあね」バタン
奈緒「おい待て、凜!」
加蓮「よしなよ奈緒。さっきよりはマシになったけど、凜まだ機嫌悪そうだったし。
とりあえずプロデューサー見に行こう」
〜会議室〜
奈緒「……お〜い、プロデューサー、生きてる〜?」ガチャ
P「」(床に突っ伏して倒れている)
加蓮「プロデューサー!? 大丈夫!? 凜にやられたの!? 」
P「いてててててて!! やめろゆするな足に触るな!! 」
加蓮「よかったあ〜、生きてたあ〜……」ヘナヘナヘナ
P「当たり前だろ……一時間正座させられたくらいで死ぬかよいてて……」
奈緒「正座って……凛に説教でもされてたのかよ」
P「ああ。雪女みたいな冷たい視線で、低い声で淡々と怒られたよ……」
加蓮「一体凜に何したの……?」
P「いや、凜じゃなくてありすの事で怒られた。どうやら俺の杞憂だったみたいで、
あいつはちゃんとありすの教育係やってたよハハハ……」
奈緒「……詳しく教えてくれないか?」
***
P「来週の話だがな、ありすの学校の遠足と仕事がかぶっちまったんだ。基本的に学校の
行事を優先しているから仕事の方をキャンセルしようとしたんだが、ありすが
嫌がってな。遠足の行き先が遊園地だったから、仕事を入れて欲しいって言われた
んだ」
奈緒「ああ、いつもの名前コンプレックスか。あの子テーマパークの仕事とか嫌がる
もんな」
P「俺も迷ったんだけどな。でも先月、リポーターの仕事があって桃華と舞と三人で
その遊園地には行ってるし、好きでもない所に頻繁に行かせるのも悪いと思って、
悩んだんだが仕事を入れたんだ。ありすも最近楽しそうだし、人気もじわじわ
出てきてるしな」
加蓮「……で、凜に叱られたと」
〜〜〜
凜『何考えてるの?ありすだけ遠足欠席なんてかわいそうじゃん。ただでさえアイドルの
仕事で学校も休みがちなのに、このままだとクラスでハブにされちゃうよ。小学校
時代の思い出が仕事だけなんて悲惨すぎるでしょ。ちゃんとあの子の人生も考えて
あげなくちゃ』
凜『は?ありすが行きたがらない?プロデューサーがそれを真に受けてどうするの。
あの子が嫌がってるのは自分の名前を連想させるアトラクションだけで、遊園地自体
は嫌いじゃないでしょ?この前のリポーターの仕事も楽しかったって言ってたよ。
え?聞くと嫌がるから聞いてなかった?……あのねえ、そんなのであの子の
プロデュースなんて出来るの?』
凜『あの子はいつかは自分の名前を受け入れて生きて行かなきゃいけないんだよ?私達は
アイドルだから芸名に変えることも出来るけど、でも私はあの子に逃げてほしくない。
ちゃんと自分の名前に向きあって、そしておとぎ話のアリスみたいな素敵なアイドル
になってほしいの』
〜〜〜
P「俺が思ってたよりずっと真剣に、凜はありすの将来まで考えてくれていたみたいだ。
まあウチの事務所ではしっかりしてる方だし、俺は最初から凛に任せても問題ないと
思ってたけどな!」
奈緒「どーだか。さっきまでと全然反応が違うじゃねえか」ジトッ
加蓮「でも凜も素直じゃないよね。教育係なんて自分のガラじゃないって思ってるから
私達にも黙ってたんだね。ホントにあの子はしょうがないなあ……」クスクス
P「ありすの事は任せとけってはっきり言われちまったよ。俺もしっかりしないと、凜に
ありすをとられちまいそうだから頑張るよ。とりあえず来週のありすの仕事は
キャンセルするから、お前達もカバーを頼むぞ」
奈緒「わかった。ところでプロデューサー、『教育係』についてちょっと聞きたいんだけど
さあ……」ジリ……
P「ど、どうした奈緒。そんな怖い顔して……」
加蓮「どうして私達を差し置いて、年下の凜を選んだのかなあ?私達じゃ頼りないって
こと?そもそも凜だけにありすの教育を任せるっておかしくない……?」ゴゴゴ
P「い、いや……それは何というか、ありすの情操教育を考えてだな……ハッ!?」シマッタ
奈緒「とりあえず正座しよっか。二時間くらい♪」
加蓮「本でも抱かせてみる?重くてぶあついの♪」
P(その後、俺は奈緒と加蓮にこってり絞られる羽目になり、翌朝まで足の痺れが
取れなかった……)
〜ありす遠足後・早朝の事務所にて〜
ちひろ「凛ちゃんとありすちゃんですか?とっても仲良しですよ。よく朝早い時間の
事務所で、凛ちゃんはありすちゃんを膝に乗せて可愛がってますよ」
P「マジですか。普段のふたりを見るととても想像できないんですけど……」
ちひろ「あはは、ふたりとも照れ屋さんですからね。他の子が来るとぱっと離れちゃい
ますし。でもありすちゃんも、iPadでよく凛ちゃんと話しているって言って
ましたよ」
P「何でも出来るんですねiPadって。俺も買おうかなあ。てかどうしてちひろさんは
そんな事を知ってるんですか」
ちひろ「まあまあ。そこは事務員ですから。それにプロデューサーさんの前では、
ふたりともしっかりした女の子でいたいんですよ」
P「ありすはともかく、凛とはそれなりに付き合いも長いし心を開いてくれていると
思ったんだけどなあ。俺もまだまだ頼りないってことか。トホホ……」
ちひろ「そういうわけじゃないと思うんですけど……」
ありす「まったく、女心を全然わかってませんねプロデューサーって」ハア
P「うおっ!? 来てたのかありす!? 挨拶くらいしろよ」
ありす「しました。プロデューサーが聞いてなかっただけです。おはようございます
ちひろさん。昨日はスケジュールを調整していただいてありがとうございました」
ちひろ「おはようありすちゃん。今日も早いわね。遊園地は楽しかった?」
ありす「はい。この前のお仕事では乗れなかったアトラクションにも乗れたし、
もう少しで全部制覇出来そうです」
P「それは良かったな。じゃあまた近いうちにリポーターの仕事を入れておくか」
ありす「いえ、そんな気遣いは結構です。私はプロとしてどんなお仕事でもやりますので」
P(リポーターの仕事、結構評判良かったんだけどなあ……)
ありす「ところでプロデューサー、少しいいでしょうか」
P「ど、どうした急に改まって……」
ありす「今回の件ですが、私のわがままのせいでご迷惑をおかけしました。奈緒先輩や
加蓮先輩にも助けてもらいましたし、本当にごめんなさい」ペコリ
P「いやいや、気にするな。奈緒も加蓮も快諾してくれたし。それにその様子だと、
凛にも怒られたんだろ?」
ありす「……はい。学校生活も大事にしなくちゃだめだって、アイドルのお仕事に
流されるんじゃなくて、自分の人生は自分で切り拓かなくちゃいけないって
言われました」
P「はは、凛らしいな。でも確かにその通りだ。俺達も凛達先輩アイドルも全員で協力する
から、意見はどんどん言ってくれ。皆そうやって学生とアイドルを両立させて
いるんだから気にするな」
ありす「ありがとうございます。これからもプロデュースをよろしくお願いします」ペコリ
P「しかし凛もなかなかスパルタだな。お前もあいつも俺に何も話してくれないから
心配していたけど、うまくやってるのか?」
ありす「凛先輩には本当によくしてもらってます。ですので心配しないでください。
先輩の期待に応える為にも、がんばってトップアイドルになりますから」
ちひろ「うふふ、凛ちゃんにだっこされてるありすちゃんを見ていると、仲の良い
本当の姉妹みたいだもんね〜」
ありす「ち、ちひろさん!? それは言わない約束じゃないですか!」アセアセ
P「ははは、今度凛とありすの撮影を企画しようかな。確かに良い画になりそうだ」
ちひろ「写真ありますけど見ます?今ならスタドリ5本でさしあげますよ」ピラ
ありす「ダ、ダメです!プロデューサーも見ないでください!」バタバタ
P「ははは、そう照れるなよどれどれごふっ!? 」
凛「……何ふたりがかりでありすいじめてるの?」ギロッ
ちひろ「り、凛ちゃん……英語辞書で殴るのはやりすぎじゃないかしら……」
P「」ピクピク
ありす「り、凛先輩……おはようございます……」
凛「おはよ、ありす。大丈夫だった?ごめんね遅くなって」ナデナデ
ありす「私は大丈夫ですけど、プロデューサーが……」
P「」ブクブク
凛「気にしなくていいよ。スタドリ鼻に突っ込んでおけば復活するでしょ。じゃ、
会議室でミーティングしようか」スタスタ
ありす「は、はい……それではちひろさん、後はよろしくおねがいします……」ペコリ
ちひろ「う…うん、まかせて……」
ガチャ バタン
ちひろ「さて、どうしようかしら……」
P「う〜ん、ありす〜、凛〜、移籍するなんて言わないでくれぇ〜……」
ちひろ(どんな夢を見ているのよ……でもあんまりおイタが過ぎると現実になっちゃう
かも。プロデューサーさんが皆に過保護みたいに、凛ちゃんはありすちゃんに
とっても過保護だから)
ちひろ(ふふ、でも気付いてましたかプロデューサーさん。今朝はありすちゃん、名前で
呼ばれても一度も怒らなかったんですよ。ちょっとだけ嫌そうな顔はしてました
けど、あの子も徐々に自分の名前を受け入れているみたいですよ)
凛「あ、そうそうちひろさん。言い忘れてたけど」ヒョイ
ちひろ「な、ななな何かしら凛ちゃん」ビクビク
凛「隠し撮りした写真、ミーティングが終わるまでに全部出しといてね。さもないと
どうなるか……わかるよね?」チラ
P「ダ、ダメだじいちゃん……俺はまだその川を渡るわけには……」
ちひろ「は、はい……!! すぐに用意しておきます!! 」ゾゾォッ
凛「ん。よろしい。じゃ」バタン
<ゴメンネアリス。オマタセ
<イエ、ダイジョウブデス
ちひろ「あ〜あ、スタドリ50本くらいにはなったんだけどなあ……」ガラッ
ちひろ(デスクの引き出しの中には、こっそり撮った凛ちゃんとありすちゃんの
2ショット写真が入っています。いつもはクールでベタベタするのを
嫌がるふたりだけど、写真の中ではちょっとだけ表情を緩ませてぴったりと
くっついています。プロデューサーさんも奈緒ちゃん達も、いつかふたりの
こんな光景が見られるといいですね)
P「」チーン
END
以上。凜と凛、全然気付かなかったorz
訂正ありがとうございました。
おまけ
〜凛とありすのミーティング〜
凛「ありすは温かいね。ハナコみたいに毛深くないし、こうしてるとぽかぽかするよ」ギュー
ありす「犬と一緒にしないでください。ところで凛先輩、そろそろミーティングを
始めたいんですけど」
凛「もう少しだけ。外は寒かったから、まだ体が冷たいの」スリスリ
ありす「……別にいいですけど。こうしていると、お母さんに抱っこされていた
のを思い出します」
凛「ふふ、じゃあ今日から私はありすのお姉さんじゃなくてお母さんだね。
よしよし」ナデナデ
ありす「凛先輩がお母さんだったら、お父さんはプロデューサーでしょうか」
凛「」ボンッ
凛「……ミーティング始めようか」ヨイショット
ありす「?」ストン
***
凛「最近はどう?みんなとは仲良くやれてる?」
ありす「はい。ようやくクールの皆さん全員にあいさつが出来ました。この事務所
は所属しているアイドルさんが多いので、会うだけでも大変ですね」
凛「そうだね。キュートとパッションのアイドルを合わせるともっといっぱい
いるよ。私もまだ全員とは会ってないなあ」
ありす「凛先輩でもそうなんですか。皆さんに私の顔を覚えてもらうのはまだまだ
先になりそうですね」
凛「大丈夫。心配しなくてもありすは結構有名だよ。この前卯月と未央と
一緒の仕事だったんだけど、あのふたりもありすのこと知ってたし。
今度抱っこさせてくれって言ってたよ」
ありす「私は愛玩動物ですか……でも島村さんや本田さんにも知ってもらえて
光栄です。まだ会ったことはありませんが、舞や薫から聞いてます。
おふたりとも素敵なアイドルさんみたいですね」キラキラ
凛「……デビューしたのは私が一番早かったんだけど」ムス
ありす「どうして不機嫌になるんですか?」キョトン
凛「別に怒ってないよ。他に誰か会いたい子とかいる?こう見えても顔広いから、
ありすが会いたい子がいるなら紹介してあげるよ」フフン♪
ありす「本当ですか!? でしたら諸星さんに会ってみたいんですけど!」ガバッ
凛「意外な名前が出てきたね……どうしてきらりなの?色々すごくて
圧倒されるよ?」
ありす「薫や仁奈から聞いたんですけど、とってもエネルギッシュな人で一緒に
いると自分まで大きくなれる気がするみたいなんです。諸星さんに
たかいたかいしてもらうと、空を飛んでる気分になれるとか」ワクワク
凛「あそこまで大きくならなくていいよ。確かにきらりのエネルギーは同じ
アイドルとして見習う部分もあるかもだけど、自分に合ったキャラってのが
あるからさ。ありすは今のまま、ちっちゃくていいよ」
ありす「せめて150は欲しいんですけど……それから佐久間さんにも会ってみたい
です。とっても一途な方で、同じ女性として見習う所も多いって舞が言って
ました」
凛「ああ、確かに一途だねストーカー的な意味で。まゆはきらり以上に刺激が
強いから、会うのはもっと後でいいと思うよ。ていうか舞ちゃんが心配だよ。
今度卯月に言っておこう」
ありす「でもやっぱりここが一番居心地が良いですね。アイドルなのに
人見知りなのは良くないと思いますけど、凛先輩とこうして一緒に
いると落ち着きます」
凛「……ふうん」(嬉しい)
ありす「それに最近は奈緒先輩や加蓮先輩も色々教えてくれますし、今度一緒に
買い物に行こうって誘われました」
凛「なにそれ。私聞いてないんだけど」ピク
ありす「凛先輩もご一緒したかったのですが、おふたりが指定した日が何故か
凛先輩がお仕事の日ばかりで。だから仕方ないねって加蓮先輩が笑顔で
言ってました」
凛「へえ……加蓮やってくれるじゃない……奈緒も共犯かなあ……?」ゴゴゴ
ありす「ど、どうして怒ってるんですか……?何かいけなかったでしょうか……?」ビクビク
凛「ううん、別にありすは悪くないよ。楽しんでおいで。そうだ、じゃあ私とは
聖來さんと3人で犬の散歩に行こうよ。聖來さんもありすのこと気に入ってたし、
きっと楽しいよ」
ありす「よ、よろしくおねがします……」
***
凛「名前で呼ばれることには慣れた?」
ありす「まだちょっと嫌ですけど……でも最近はそれもいいかなって思えて
きました。一度あいさつしたらまず忘れられることはありませんから」
凛「そうだよ。可愛い名前なんだからどんどんアピールしなくちゃ。それに名は
体を表すって言うのかな、ありすによく似合ってると思うよ」
ありす「そ、そうでしょうか……でもどう見ても日本人なのに『ありす』だなんて。
桃華みたいな子だったら違和感ないかもしれないですけど」モジモジ
凛「そんなことないよ。それに事務所の誰もありすの名前をバカにしたりしない
でしょ?みんなありすはありすだって思ってるんだよ。本家のイギリスアリス
にも負けてないよ」
ありす「それは大げさだと思いますけど……でも凛先輩がそう言ってくれるなら
自信がつきます。自分の名前を受け入れるのはまだ時間がかかりそうです
けど、これからもこの名前で活動していこうと思います」
凛「うんうん、それがいいよ。ゆっくり慣れて行こう」
ありす「でもプロデューサーにありすって呼ばれるのは、まだどうしても
慣れなくて……」
凛「うん?」
ありす「凛先輩や薫達とはちょっと違うというか、プロデューサーに名前を
呼ばれると恥ずかしくなっちゃって。胸がドキドキするというか、
お父さんに呼ばれてもそんなことはないのに……」
凛「へえ……」
ありす「でも橘って呼ばれるのも嫌で。ありすって呼ばないで下さいって何度
言ってもプロデューサーはありすって呼ぶんですけど、でももし
プロデューサーに橘って呼ばれたらどうしようかなって怖くなる
こともあって……」
凛(これはいけない)
ありす「凛先輩、私は一体どうしたらいいんでしょうか?このままどっちつかずの
気持ちで、プロデューサーと一緒にお仕事してても問題ないでしょうか?
この気持ちのが何なのか、凛先輩は心当たりがありませんか……?」
凛「それは……」
ありす「それは……?」
凛「本能からくる危機感だね。うん、そうだよ。間違いない」キッパリ
ありす「危機感……ですか?」
凛「男は狼だからね。プロデューサーも狼だから、みんなをいやらしい目で
見ているんだよ。ありすも野性の本能で、身の危険を察知出来るくらい
成長したということだよ。うん」
ありす「はあ……」
凛「だからねありす、プロデューサーには気をつけなくちゃいけないよ。仕事面
ではしっかりしてるし、プロデュースの腕もあるけど、簡単に心を許しちゃ
いけないよ。プロデューサーも狼なんだから、うっかりしてると食べられ
ちゃうよ」
ありす「結局どうすればいいんでしょうか……?それにそんな危険な
プロデューサーと一緒にいて、凛先輩は大丈夫なんですか?」
凛「わ……、私は別にいいんだよ。プロデューサーとは付き合い長いし、お互いの
ことをよく知ってるというか……あ、よく知ってるというのは別にヘンな意味
じゃなくて、好きとかそうのじゃなくて仕事のパートナーとしてという意味で、
本当にそれだけで、一緒にいても不整脈的な動悸がするだけで、男の人として
意識したこととか全然なくて……」アセアセ
ありす「り、凛先輩?落ち着いて下さい。大丈夫ですか?」
凛「大丈夫、全然大丈夫、うん。とにかくありすは今まで通り、プロデューサーを
適当にあしらっておいたらいいよ。奈緒や加蓮もそうしてるでしょ?うん、
それがいい」
ありす「わ、わかりました……今はそうしておきます。まだ覚えるお仕事もいっぱい
ありますし、プロデューサーの事は置いておくということで」
凛「そうだよ。アイドルのお仕事を頑張らなくちゃ。私達に恋愛はご法度だよ」
ありす「え?今なんて……?」
凛「あ…………」シマッタ
ありす「……」ドキドキ
凛「……」ダラダラ
<オハヨーゴザイマース……ッテ、ドウシタンダプロデューサー?
<キャアアアアアッ!! シロメムイテル‐‐‐!!
凛「な、奈緒達来ちゃったね!! じゃあ今日のミーティングは終了ってことで!! 」ガタ
ありす「そ、そうですね!! ありがとうございました!! 」ガタ
凛「じゃ、じゃあ私レッスンに行ってくるよ!! ありすも頑張ってね!! 」ガチャ
ありす「は、はい!! 凛先輩もお気をつけて!! 」ペコリ
バタン タッタッタッ……
ありす「ふうん、これはそういう気持ちなんだ……ちょっとだけ気まずいなあ」
ありす「凛先輩とはライバルになるのかなあ。えへへ……」
今度こそEND
ちょっと寂しかったから続きを書いてみた。
可愛い先輩後輩を書きたかったが難しいね。
ネタが出来たらまた挑戦しようと思う。
泰葉「ごめんなさい凛……何とか調整してみたんだけど、彼今は社長の方針でキュート
にかかりきりになってるしあの子もほとんど動かないみたいなのよ。だから
これが限界だったわ」
凛「そうですか……いえ、それでもプロデューサーの滞在時間を1時間に短縮出来ただけ
ありがたいです。無理言ってすみませんでした」ペコリ
泰葉「気にしないで。これが私の仕事だから。それに彼に明確な好意を見せない限り、
危害を加えられることはないわ。ありすはまだ自分の気持ちに気付いて
ないのよね?」
凛「どうでしょう……あの子は賢い子ですから既に分かっているかもしれません。
基本的には私の言う事はよく聞いてくれますけど、こればかりはどうしようも
ないですね……」
泰葉「そうね。私も色恋沙汰で業界を去った子を今まで何人も見て来たわ。どんなに才能
があっても頭が良くても、恋愛感情は理性では抑えきれないものね」
凛「それにプロデューサーの方も、最近ありすにやたら構うんですよ。本当に自分の立場
を分かっているのかしらあの男は」ゴゴゴゴゴ
泰葉「あら、彼なら大丈夫よ。職業柄少しロリコンの気質があるかもしれないけど、担当
アイドルに手を出すような人じゃないわ。それは私が保障してあげる」
凛「岡崎先輩がそう言うなら信じますけど……」
泰葉「それより私はあなたの方が心配なんだけど。あなたも最近彼への好意を隠しきれて
ないわよ」ニヤリ
凛「なっ!? ななな何言ってるんですかっ!! わわわ私がプロデューサーを好きなわけが
がががががっ!? 」アタフタ
泰葉「ふふふ、気をつけなさい。何ならファンにバレないように、アイドル活動と恋愛を
両立させる方法を教えてあげるわよ?今のあなたなら成功率は20%くらいだけど」クスクス
凛「岡崎先輩〜〜〜〜〜〜〜っ!! 」
***
ありす(橘ありすです。今日はいよいよキュートの事務所に行くことになりました。
キュートグループの子達の話では、事務所にはお花やぬいぐるみがたくさん
置いてあって素敵な所だそうです)
ありす(そしてキュートの事務所のすぐそばには、私達の事務所が所有している舞台が
あるそうです。いつかトップアイドルとして舞台に立てるように、しっかり
見学して色々勉強させてもらうつもりです)
P「お〜いありす〜、凛〜、車回してきたぞ〜」
ありす「すぐ行きます。後ありすって呼ばないで下さい」
P「うう……、ありすが冷たいよう……凛、お前何か変な事教えてないだろうな?」
凛「うるさい。さっさと出して」ムッスー
P「何でお前はお前でそんなに機嫌が悪いんだよ……そんなに俺と一緒に行くのが嫌か?」ハア
凛「私達は電車で行くって言ったのに、何でわざわざ予定を早めて一緒に行こうと
するのよ……今日はあんまりメイクしてないのに……」ブツブツ
P「何でって、目的地が一緒だったら乗せてった方が効率的じゃないか。交通費も浮くし」
凛「ケチ」ゲシゲシ
ありす(凛先輩って意外とわかりやすいなあ……)
P「痛っ!? 後ろから蹴るなよ。文句があるならちひろさんに言ってくれ。忘れ物は
ないな?じゃあ行くぞ」ブロロン
泰葉「まって〜〜〜〜〜っ!! 」タッタッタッ
ありす「 !? プロデューサー、後ろから岡崎さんが追いかけて来てます」
P「ホントだ。どうした泰葉?何か伝言か?」ウィーン
泰葉「それだったら凛にメールか電話するわよ。はいこれ忘れ物。大事な資料でしょ?
もう、しっかりしてよね」チョップ
P「ああスマン!! 助かったよ。これがないと向こうで社長にどやされるところだった。
サンキュー」
凛「すみません岡崎先輩。わざわざありがとうございました」ペコリ
泰葉「ううん、いいのよ。それじゃあ気をつけてね。ありすもしっかりお勉強して
きなさい」ニコッ
ありす「は、はいっ!行ってきます岡崎さん」ペコリ
<ブロロン……
ありす「……あの、凛先輩」
凛「何?」
ありす「以前から気になっていたんですけど、凛先輩ってどうして岡崎さんには
敬語なんですか?いえ、先輩は川島さん達にも敬語を使いますけど、岡崎さん
だけはちょっと違うというか……」
凛「あの人は芸能界で仕事して長いからね。確か3歳か4歳の子役での仕事が最初だって
言ってたから、もう10年以上芸能活動しているんだよ。事務所に入ったのは私より
後だけど、私なんかよりずっとずっと先輩だよ」
ありす「ええっ!? そんなにすごい人だったんですか!? 私はてっきり、アイドルの
プロデュースを勉強する為に事務所に入られたと思ってたんですけど……」
P「泰葉の事か?それも間違ってはないぞ。あいつは子役から歌手からモデルまで、
芸能活動は一通り経験してるんだよ。それでウチに来た時は、今度は裏方として
アイドル達をサポートする仕事がしたいって言ってな。今はちひろさんと一緒に
俺とアイドル達のスケジュール管理をやってくれてるんだ」
凛「事務所のアイドルを自分の秘書に使うってどうなの?岡崎先輩もまだ現役なんだよ。
確かまだ16歳だし」ジト
P「俺も社長も何度もアイドル活動を勧めたんだがな。でも泰葉は、今は裏方の勉強が
したいってなかなか引き受けてくれないんだよ。それにアイツはセルフプロデュース
が出来るから、俺の助けもほとんど必要ないんだ」
ありす「凄い人なんですね……そういえばクールのアイドルさんは、セルフプロデュース
をしている方が多いですね」
P「お、良い所に気が付いたな。事務所とアイドルの属性を3つに分けたのは、アイドル
の子達が将来どういう仕事をしたいかによって分けている意味もあるんだ。クールの
アイドル達は自立心が強くて、プロフェッショナルとしてアイドル活動をやりたいって
子が多いから、本社の近くに事務所を構えてセルフプロデュースも学ばせているんだ」
凛「ウチのグループの20歳以上の人はみんな基本的にセルフプロデュースだね。
私も半分くらいはセルフプロデュースやってるよ」エッヘン
ありす(そういえば私も、最初の面接の時に将来はプロとして歌や音楽を仕事に
したいって言ったっけ。だからクールに配属されたのかな)
P「パッションはとにかく溢れる情熱で自分を表現したい、私の歌を聴け―って感じの子を
中心に、アイドルとして独自のパフォーマンスを研究している。だからレッスン場に
併設してあるんだ。プロデュースには俺も関わるが、普段の彼女達のサポートは主に
トレーナーさん達が行っている。トレーナーさん達には3グループを指導して
もらっているが、彼女達がパッションの事務所に所属しているのはそのためだよ」
ありす「なるほど、理にかなってますね。ではキュートの人達は事務所でどんな勉強を
しているのでしょうか?」
P「キュートはとにかくアイドルがやりたい、綺麗な衣装を着て可愛い歌を歌いたいって
子が配属している。だから舞台のそばに事務所があるんだ。こんな言い方をしたら
語弊があるかもしれないが、ただ純粋にアイドル活動を楽しんでいる子が多いから
勉強とか表現にはあまりこだわってないかもな。基本的にこちらの出した仕事は
ニコニコしながら引き受けるし。そして3グループの中で一番アイドルっぽいから、
社長がこまめに状況を確認しているんだ」
凛「悪かったね文句ばかり言って。でも最近はちゃんとしてるでしょ」ムス
P「ははは、凛なんかまだ可愛い方だよ。千秋なんて昔は俺が取ってきた仕事の半分は
突っぱねてたからな。でもお前達はお前達で着実に成長しているから俺も嬉しいよ」
凛「か、かかかか可愛いって、急に何言い出すのよバカッ!! 」ゲシゲシッ!!
ありす(凛先輩、少し意味が違います)
P「痛てて、怒るな怒るな。まあ中には単に見た目でグループ分けしたり、杏みたいな例外
もいるけどな。だからありすも別に自分のグループにとらわれずに自由にやれば
いいさ。凜はイメージ的にクールで確定だったけどありすは女の子的な愛らしさが
強かったから、キュートかクールかで泰葉とギリギリまで悩んだよ」
ありす「あ、あいあいあいいいっ!? たたた橘って呼ばないで下さいっ!! 」ゲシゲシッ!!
凛(ありすセリフ逆。それだと名前で呼ばれることになっちゃうよ)
P「何でお前まで怒るんだよ……褒めたつもりだったのに……」
凛「ていうか、岡崎先輩ってありすのグループ分けもしてくれたの?プロデューサーは
ありすに一体何をしてくれているの?」
P「うぐっ、そう言われると辛いな……ここだけの話、年少組の簡単な仕事だったら泰葉が
取って来てる。クールのアイドルはアイドル兼プロデューサーみたいな人も何人か
いて俺達スタッフを助けてくれてるんだが、泰葉は裏方に専念していてかつ業界歴が
長い分、かなりの割合で事務所のプロデュース方針に関わっている。公にすると他の
子達と妙な距離が出来てしまうから内緒にしているが」ヒソヒソ
凛「そこまでしていたんだ……岡崎先輩はすごいと思ってたけど想像以上だったよ……」
ありす(岡崎さんが取って来てくれた仕事もあるんだ。今度お礼を言おう)
P「そのせいかあいつ、最近俺の事をプロデューサーじゃなくて○○君(本名)や『あなた』
って呼ぶんだよな……たまに弁当も作ってきてくれるし、何だか所属アイドルと
いうより奥さんみたいになってきたよ」ハア
凛「」
ありす「」
P「ん?どうした二人とも?急に黙っちまって?」クルッ
凛・ありす「「よそ見してないでさっさと行けっ!! 」バチーンッ!!
P「ぐはぁっ!? 」
ありす(なんだろう……、さっきから胸の中がもやもやする。凜先輩や岡崎さんに敵う
はずないのに、自分に力が無い事がこんなに悔しいなんて……)ギリ
凛「…………」
***
〜キュート事務所〜
響子「わ〜っ、かわいい〜!ちっちゃいけどキリっとしてて、クールって感じだよ〜!」ギュー
美穂「どことなく凛ちゃんに似てるね〜。知的なイメージがあってかっこいい〜♪」ムギュ
智絵里「キュートでもいけそうだね……私なんかより全然可愛い……私ももっと
がんばらないと」ギュッ
ありす「む〜っ!! む〜っ!! 」ジタバタ
<ドーナツタベル〜? <ネコミミデビュースルニャー <ムフフ、ショウライガタノシミ……
P「なんだあのみんなの溺愛ぶりは……ここにはありすのファンクラブでもあるのか?」
卯月「あはは……、クールの子ってみんなかっこいいから、キュートの子に人気
あるんですよ。ありすちゃんはクールだけど小さくて可愛いから、みんな
とっつきやすいんだと思います」
凛「大丈夫かなありす。ある意味きらりのたかいたかいよりキツイかも……」
P「ああ、杏が天井に頭ぶつけて気絶したっていうあれか。そのせいで杏はますます
レッスンに行かなくなって大変だったっけな。ありすは大丈夫だったのか?」
凛「私が見張ってるんだからそんな心配ないよ。ところで卯月……ちょっと……」ヒソヒソ
卯月「メールで言ってた話だね……大丈夫、奥の部屋で寝てるから……」ヒソヒソ
P「ん〜、どうしたんだ二人とも。内緒話か?」
凛「なんでもないよ。さ、プロデューサーはさっさと社長の所に行って」グイグイ
卯月「今日は社長と来月のライブ打ち合わせの後に、大利根飛行場で幸子ちゃんとスカイ
ダイビングの体験レポートですよね?凛ちゃん達の事は私に任せて下さい」グイグイ
P「おいおい、そんなに急かすなよ。しかし泰葉にしては珍しく無茶なスケジュールだな。
幸子もダイビングなんてやりたいのかな。チャレンジ精神旺盛なのは良い事だが」
<バタン シツレイシマース <オオ、マッテタヨキミィッ!!
凛「ふう、何とか接触は回避出来たかな。後は裏口からプロデューサーをリリースして、
ありすにはまゆは仕事で疲れてるからまた今度という事にして……」ブツブツ
卯月「ごめんね凛ちゃん。私がもっとしっかりしていればこんな余計な事しなくても
いいんだけど。岡崎先輩にも迷惑かけちゃったね」
凛「ううん、卯月は悪くないよ。むしろまゆ込みでよくキュートをまとめてるなって
尊敬しちゃうくらいだよ。私だったら絶対無理」
卯月「プロデューサーさんの話さえしなければ、まゆちゃんは良いお姉さんだよ。
舞ちゃんや他の年少組の子もとっても懐いてるし」
凛「小さい子達はまだプロデューサーの事をお兄ちゃんか先生みたいに見てるからね。
でもありすは違うんだ。しかも結構本気っぽくて、まゆと衝突しそう」
卯月「……教育係に似ちゃったのかな」ボソ
凛「ん?何か言った?」
卯月「う、ううん何でもないよ!ささ、そろそろありすちゃんを助けようか!なんだか
ぐったりしてるし」
凛「……あ、いけない。ついつい目を離してた」シマッタ
ありす「」チーン
***
ありす「……」ツーン
凛「だからごめんって。私も卯月と色々話があったんだよ。でもキュートのメンバーの
ほとんどには挨拶出来たんだし、良かったでしょ?」
ありす「……」プイ
卯月「あはは……、すっかり怒っちゃったね。何だか昔の凛ちゃんを見てるみたい」クスクス
凛「そうかな。私こんな感じだった?」
卯月「よく未央とケンカしてた時、こんな風に拗ねて仲直りさせるのに苦労したよ。
未央はあっけらかんとしてるんだけどね」
ありす(ふ〜んだ、何回も助けてってサイン送ったのに。凛先輩なんてもう知らないっ)
桃華「やれやれ、相変わらずお子様ですわねありすは」
凛「あ、桃華。久しぶりだね」
桃華「御機嫌よう凛さん。ありす、いい加減になさい。先輩を困らせるものでは
ありませんよ」
ありす「……別に怒ってないし。先輩風吹かせるのやめてくれない?」イラッ
桃華「わたくしはあなたより半月ほど先輩でしてよ。ですからもっと敬いなさい」フフン
桃華「西宮風情が偉そうに。それとも姫路でしたっけ……?」カチン
ありす「何回も言わすなっ!! うちは宝塚やっ!! 」ガバッ
桃華「うちから見たら神戸以外はどこも一緒やっ!! 」ガバッ
凛「ちょ、ちょっとストップストップ!! てか二人とも言葉遣いが巴みたいになってるよ!?
どうしたの一体!? 」ハガイジメ
卯月「桃華とありすちゃんって地元近いらしいよ。実家に帰る時は一緒に新幹線の
チケット取ってるし」ハガイジメ
ありす「今日こそ決着つけたるっ!表でえやっ!」ジタバタ
桃華「望むところやっ!どっちが格上か分からせたるっ!」ジタバタ
凛「関西弁丸出しのありす、これはこれで可愛い……」ボタボタ
卯月「ちょ、ちょっと凛ちゃん鼻血鼻血!」アセアセ
―――
ありす「お見苦しいところを……」シュン
桃華「お見せしましたわ……」シュン
凜「いや、漫才見てるみたいで面白かったから別にいいけど」ホクホク
卯月「いっそのこと笑美ちゃんに頼んでお笑い指導してもらう?コンビ結成したら
人気出るかも」
ありす・桃華「「絶対嫌です(わ)」」
みく「あんまりコテコテじゃないのなら、みくでも教えてあげられるにゃ」ヒョコ
歌鈴「わ、私もノリツッコミくらいなら……」ヒョコ
瑛梨華「お嬢様コンビ!? なかなか斬新だねっ!アタシがプロデュースしてあげる!」ヒョコ
ありす「関西人全員がお笑い好きみたいな風潮はやめてください。それにわざわざ
ご指導戴かなくても間に合ってます」
―――瑞樹『洗練されたクールなツッコミね。わかるわ』
―――楓『ありすでありんす…………ふふふ』
ありす「しかしこうしてキュートの事務所を見てると……」チラ
---
美穂「どうかな?第13代目プロデューサーくん!ショップでひとめぼれしちゃったの!」
知恵里「目元がちょっと似てるかも……やわらかいね……」フニフニ
響子「その子が座るスペースも作らないとね。明日棚を整理しておくよ」
---
かな子「じゃーん!新作のカップケーキだよー!ホットケーキミックスで作ったから
とっても簡単なの♪」
法子「おおっ、いいねえ♪私は焼きドーナツを買ってきました〜!揚げてない分
ヘルシーだよ♪」
雪乃「あら素敵。ではとっておきの紅茶をご用意しますね」イソイソ
---
杏「ぐがー、ぐがー」
ゆかり「すぅ……すぅ……」
星花「あらあら二人ともすっかり寝ちゃって。じゃあ穏やかな雰囲気の曲を……」〜♪
紗枝「おだやかですなあ。心が洗われますわあ……」ウットリ
<ワイワイ <キャッキャッ < 〜♪〜♪
ありす「キュートの方は普段から事務所にこんなに大勢おられるのですか?」
卯月「多いかな?今日はこれでも少ない方だよ。仕事がないオフの日でもみんなここに
来て楽しくおしゃべりしてるから。だからみんなとっても仲良しなの」
凜「ちょっとウチの事務所では考えられないね。クールの子達は仕事がある時くらいしか
事務所に顔出さないから。加蓮と奈緒はよくこっちにも来てるみたいだけど」
桃華「こうして無為におしゃべりをするのもまたレディの嗜みでしてよ。ありすは
ドライすぎますわ」
ありす「そうかな。あんまりベタベタしたりされたりするのはちょっと苦手だし……」
卯月「まあ、よくも悪くも女の子らしい事務所だよここは。キュートのみんなはクールや
パッションみたいにサバサバしてなくてちょっと大変な所もあるけど、でも
とっても良い子達だよ」
凛「どのグループにも長所と短所があるよ。でもアイドルってどんな子なんだろう?って
迷ったら、ここに来てみたらいいよ。確かにプロデューサーの言う通り、キュートの
子達が一番アイドルやってるから。私も卯月と話してると色々勉強になるし」
卯月「そ、そんな大げさだよお……私なんてここのみんなと比べて特技とか個性がある
わけでもないし……」テレテレ
凛「それがいいんだよ。卯月はウチのバロメーターなんだから。歌もダンスも普通、
目立つルックスでもないし強烈なキャラでもない卯月がキュートの代表で活躍
しているという事は、それだけウチの事務所が安定しているって事なんだから。
卯月が変な方向に行っちゃったら、事務所は一気に崩れるよ」
桃華「確かに、卯月さんが事務所で笑っていると不思議と安心しますわ。この事務所には
沢山の個性豊かな方がいらっしゃって、わたくしもプレッシャーに押しつぶされて
しまいそうになることがありますが、卯月さんを見ていると自然体で頑張れば
よいと思えてきますから」
ありす「そうですね。競争の激しい世界で最後に生き残るのは、奇をてらったり無理を
したりしない、卯月さんのような堅実で普遍的な方なのかもしれませんね。
勉強になります」キラキラ
卯月「あ、あはは……はは……(私も頑張ってるんだけどなあ。複雑な気分だよ……)」
ありす「ところで佐久間さんは今日来てないのでしょうか?舞から素敵な方だと
聞いていたので、ぜひお会いしたいと思っていたのですが……」
凛「あ、ああ、まゆね。今日は来てないみたいなんだ。そうだよね、卯月?」アタフタ
卯月「う、うんっ、そうだよ。まゆちゃん最近お仕事が続いていたから、今日は家で
ゆっくりしてるんじゃないかなあ。桃華は何か聞いてる?」アセアセ
桃華「ま、まゆさんですか!? 昨日はいらっしゃったと思いますが、今日はお会い
してませんわ」オロオロ
ありす「?そうですか。ではまた次の機会にご挨拶します。お手洗いはどこですか?」
卯月「廊下を右に曲がってつきあたりを左折、そこから2番目の門を右に曲がった所だよ。
ちょっとややこしいけどわかる?」
ありす「大丈夫です。では少し失礼します」ペコリ
<タッタッタッ……
桃華「凛さん、ありすにまゆさんの事を言ってませんの!? 」ヒソヒソ
凛「ごめん言えなかった。舞ちゃんって子の影響か分からないけど、ありすはまゆの事を
憧れの対象で見てるんだ。だからどう伝えたらいいのかわからなくて……」ヒソヒソ
卯月「全部が間違いじゃないのがまた難しいんだよね……まゆちゃんは元人気モデルだし、
『あれ』がなければプロ意識が高い後輩の面倒見の良いアイドルだし……」ヒソヒソ
桃華「秘密にしていたのはPちゃまの事ですか……確かにありすとはよくお話ししますが、
あの子がPちゃまの事をどう想っているのか私も薄々感付いてました。舞や薫の
ように無邪気に好いていれば良いものを、あの子はおませさんですからね」ハア
凛「(ありすも桃華には言われたくないだろうなあ)ところでまゆはどこにいるの?
まさかトイレに行ったらまゆとばったり、なんて事はないよね?」
卯月「大丈夫。昨日まゆちゃん徹夜でプロデューサーさんのマフラーを編んでたみたいで、
朝見たらぐっすり眠ってたから。最近仕事続きでお疲れみたいだったし、しばらく
起きないよ」
凛「だといいけど。やっぱりついていった方がよかったかなあ……」
―――
ありす「あれ……?確かここで良かったと思うんだけどなあ……右、左、2番目、
それから右……ん?左?3番目だったっけ?うう……もれちゃう……」モジモジ
「あらあ……もしかしてお手洗いですかあ?」
ありす「は、はいっ、確かこの辺りだと聞いていたのですが……」
「ここで合ってますよお。あらあら、スタッフさんがこんなところに荷物なんて置いた
から迷ってしまったみたいですねえ。ごめんなさいねえ」ヨイショット
ありす「あ、ありがとうございましたっ!ところであなたは一体……」
「あらあらあ〜?もしかして新人さんですかあ?」
ありす「あ、すみません、橘ありすと申します!えっと、えっと……」モジモジ
まゆ「うふふ、いいですよお。まずはお手洗いに行ってらっしゃいな。まゆは
ここでゆっくり待ってますからあ――――――」ニコ
おかしいなあ……俺は台本形式でライトにSSを書いていたつもりだったんだが……
というわけで、続く!!
訂正
>>145
×桃華「西宮風情が偉そうに。それとも姫路でしたっけ……?」カチン
↓
○ありす「プライドばかり高くて大したことないくせに。これだから神戸の人間は……」ハア
桃華「西宮風情が偉そうに。それとも姫路でしたっけ……?」カチン
ありすのセリフを足しておいて下さい。
>>161
ラスボス……ねえ?(ニヤリ
>>163
一応誤解のないように言っておくが、ハブられたりいじめられてるわけじゃないからね!
キュートの子達はみんな良い子だよ!
ありす「すみません佐久間先輩……お仕事中にお邪魔しちゃって……」
まゆ「まゆでいいですよぉ〜。ちょうど一段落ついたところですからあ。それにまゆに
会いに来てくれたのでしょう?後輩は大事にしないとねぇ〜♪」パタパタ
ありす(あの後改めて自己紹介をして、私を助けてくれたこの人が佐久間まゆさんだと
知りました。佐久間さんは私の顔をまじまじと見ると『お化粧をしましょう』と
言って、奥のメイク室へ私を連れて行ってくれました)
ありす「化粧品がいっぱいありますね。ウチにはメイク室すらないのに……」
まゆ「舞台が近くにありますからねえ。メイク室もここの他に4つもあるんですよぉ〜。
この部屋は一番奥にあるから、普段はまゆしか使ってないんですけど〜」ポンポン
ありす「わぷっ!? 私こんなにきちんとメイクしてもらうのはじめてです……」パフパフ
まゆ「クールの皆さんはナチュラルメイクに近いですからねえ。凜さんもあまりお化粧を
なさってないようですし。でもありすちゃんもアイドルですから、きちんとした
メイクは覚えておいて損はないですよぉ」ヌリヌリ
ありす「桃華にもよく怒られます…… でも私は地味な顔立ちだし、メイクしてもあまり
効果がないんじゃ……」サッサッ
まゆ「そんなことありませんよぉ。むしろどうしてありすちゃんがキュートじゃないのか、
まゆは社長に文句を言いたいくらいです〜。さて、あとはルージュをひいて……
はい、もう目を開けていいですよ♪」
ありす「ありがとうございま…………!? 」
まゆ「うふふ、どうですかあ?『ありすちゃんキュートバージョン』です。少し手を
加えただけでここまで可愛くなるのですから、桃華ちゃんにも負けてませんよぉ♪」
ありす「…………言葉が見つかりません。まるで自分が自分じゃないみたいです……
え……?これが本当に私……?」アゼン
まゆ「そもそもまゆに言わせてもらえば、キュートやクールとグループ分けすること自体
がナンセンスです〜。本当にトップアイドルを目指すなら、キュートにも
クールにもパッションにもなれないといけません。ファンの皆さんが求める
キャラクターになりきることもプロには必要ですよぉ」
ありす「確かにそうですね……私は自分で自分の可能性を狭めていたのかもしれません。
メイクひとつでここまで変われるなら、これからもっと勉強します」
まゆ「良い心がけです。それからありすちゃん、最初に会った時から少し気になっていた
のですけど、あなた少し猫背気味ですねえ。元モデルのまゆとしては見過ごす
わけにはいけません〜」
ありす「そ、そうでしょうか?よく本を読んでるので、いつの間にか姿勢が丸まって
しまったのかもしれません……」アタフタ
まゆ「姿勢をまっすぐにするストレッチと体操を教えてあげましょう。お風呂上りに
毎日きちんとしていれば、身長も伸びますよぉ?」
ありす「本当ですかっ!? ぜひ教えてくださいっ!! 」ガバッ
ありす(話に聞いていた以上にまゆ先輩はすごい人だなあ。それにとってもお洒落で
キレイで、アイドルの知識も豊富みたい。でもどうしてこの人は、こんなに
さびしい所で一人でいるんだろう……?)
―――
ありす「ふう……、ふう……、結構疲れますね……」
まゆ「そうですかぁ?これは一番簡単な体操ですけど。でも無理をしてはいけませんよぉ。
体を痛めてしまったら凛さんに怒られてしまうかもしれませんし、このあたりで
やめておきましょうかぁ」
ありす「すみません……、ありがとう…ございました……」ゼエゼエ
まゆ「いえいえ。これくらいでしたらいつでも教えてあげます。それより大丈夫
ですかぁ?辛いようでしたら横になっていても構いませんよぉ?」
ありす「いえ、大丈夫です……、それに先輩の前で横になるわけには……」フラフラ
まゆ「……へえ、ありすちゃんはこの事務所では珍しいストイックな子ですねえ。
まゆが昔いた事務所を思い出します〜」
ありす「まゆ先輩は確かモデルをされていたのですよね?そちらはこの事務所より
厳しかったのですか?」
まゆ「まゆからすれば、この事務所が甘すぎるくらいですけどねえ。きちんと睡眠が
とれてご飯を食べることが出来て、学校にも通えるなんて夢のようですよぉ」
ありす「え……?それは普通の事では……?」
まゆ「とんでもありませぇん。まゆがモデル事務所に入ったのは12歳の時でしたが、
小学校最後の1年間は一か月も学校に通えませんでしたぁ。修学旅行にも
行けませんでしたし、卒業式も最後まで参加出来ませんでしたよぉ」
ありす「そんな……」
まゆ「別に珍しい事ではありませんよぉ。この業界は有名事務所でも、子供を朝早くから
夜遅くまで労働法無視で働いているところはたくさんあります〜。子供は成長も
早いですし、大人達から見れば使い捨てのお人形さんなんです〜」
ありす「…………」
まゆ「ごめんなさいねえ。怖がらせるつもりはなかったんですけど、でもありすちゃん
には言っても大丈夫だと思いまして〜。この事務所はみんな仲が良くて楽しい所
ですが、だからまゆは不安になるんです。こんなに楽でいいのかな……って」
ありす「だからまゆ先輩は、卯月さん達と一緒じゃなくてこの部屋に……?」
まゆ「仲が良いのは結構ですが、彼女達はトップになれるのはほんの一握りだということ
が分かってるのでしょうかねえ。まゆの考えを押し付けるつもりはありませんが、
ありすちゃんもトップアイドルを目指すなら、大好きな事務所の先輩や友達と戦う
心構えを持っておいた方がいいですよぉ」
ありす「戦う心構え……、凛先輩や桃華と……?」
まゆ「うふふ、少し意地悪をしてしまいましたねえ。忘れてください、今のはまゆの
独り言です〜。さっきも言いましたが、ここは良い事務所です。ですから
ありすちゃんは今のまま、素直で可愛いアイドルさんになってくださぁい。
辛い目に遭うのはまゆ達だけで十分ですからぁ」
ありす「いえ、まゆ先輩のお言葉しっかり覚えておきます。貴重なアドバイスを
ありがとうございました」ペコリ
まゆ「あらあらあ……ありすちゃんはまゆが思ってるよりずっとしっかり者で賢いみたい
ですねえ。同じグループで教えてあげられないのが残念です〜」
ありす「私もまゆ先輩にもっと早く会いたかったです。いつの間にか凛先輩達に守られて
すっかり甘えていました。まゆ先輩に言われなければ、このままずっと半人前
で終わっていたと思います。それでは東京まで来た意味がありませんから」
まゆ「どうやらまゆはありすちゃんを見くびっていたようです。失礼しましたぁ」ペコリ
ありす「い、いえそんな!私なんかまだまだ……」アタフタ
まゆ「うふふ、いいですよ謙遜しなくて〜。ところでありすちゃん、ひとつお聞きしたい
事があるのですが」ズイッ
ありす「な、なんでしょうか……、私の顔に何かついてますか……?」ビクッ
まゆ「間違いありませんねえ。メイクののりが良かったのでもしやと思いましたが。
……ありすちゃんは今、恋をしているようですねえ?」プニプニ
ありす「な!? なな何言ってるんですか!! 別にプロデューサーの事なんて……!! 」アセアセ
まゆ「あらあらぁ……?まゆはプロデューサーさんとは一言も言ってませんがぁ?」ギロリ
ありす「あ…………」シマッタ
まゆ「どうやらありすちゃんはまゆの『敵』みたいですねえ……あなたもまゆからあの人
を奪おうとする悪い子……うふふ、ふふふふふ……」
***
まゆ「凛さんも悪い子ですねえ。『アイドルに恋愛はご法度』ということをありすさんに
きちんと教えないなんて。……いえ、凛さんが教えられるはずありませんね。
あの子もまゆの『敵』ですからぁ……」ユラリ
まゆ「あなたの気持ちもよ〜くわかりますよありすさん。プロデューサーさんはとっても
素敵な人ですから、この事務所で彼の事が嫌いなアイドルはいないでしょう。
でもねえ、みんな本気で恋しちゃいけないってわかっているんですよぉ。ほとんど
の子が、ちゃあんと身の程を弁えて節度ある付き合いをしています〜」フラリ
まゆ「でもたま〜に、自分のアイドルという立場を理解出来ずに本気でプロデューサー
さんに恋をしてしまう子がいるんですよぉ。凛さんやありすちゃんみたいにねえ。
それがどれだけいけない事か、わかってますかあ?」ユラリ
まゆ「まゆはそんな子達からプロデューサーさんを守っているんですよぉ。あの人に
迷惑をかけるのは誰であろうと許さない。プロデューサーさんを守るためなら、
まゆは何だってしますよぉ……」ユラリ
ありす「う、ううぅ…………」タジタジ
ありす(どうしてこんなことになっちゃったんだろう……私、何か失礼な事をしちゃった
かなあ。まゆ先輩ものすごく怒ってるよ……)
ピタ
ありす(壁?しまった、いつの間にか追いつめられていた……!!)
まゆ「うふふふふ……、つ〜かま〜えたぁ〜……」
ガシッ
ありす「ひっ……!! 」ビクッ
まゆ「今ここではっきり約束してくださぁい。プロデューサーさんを本気で好きに
ならない、プロデューサーに恋愛感情を抱かないと。この場ではっきりと、
まゆに誓ってくださぁい……」ギラギラ
ありす(こ、こわいよう…………で、でも…………)ガタガタ
ありす「……きません」
まゆ「なんですかぁ?よく聞こえませんでしたけどぉ」
ありす「どうしてまゆ先輩がここまでするのか……私には理解できません……こんな
恫喝まがいの事までして……理由を聞かせてください……」
まゆ「あらあらぁ……ありすさんはもっとお利口さんだと思ってましたが、まゆの勘違い
だったのでしょうかぁ。ダメなものはダメなのです。先輩の言う事は聞かないと
いけませんよぉ……」イラッ
ありす「先輩の言う事でも、わからない事はわかりません!! この気持ちは私だけのもの
です!! 誰かに言われて止められません!! 」キッ
まゆ「この……っ!! 」グィッ
ギュウウウウウウウウ……
ありす「かは……」(首が締まって……息が……)
まゆ「ここまでされても泣かないなんて、ほんとうにありすちゃんは強い子ですねえ……
まゆに謝るなら、手を離してあげますよぉ……」ギリギリ
ありす「い…や…で…す…」ハア…ハア…
まゆ「強情な子ですねえ。早くしないと死んじゃいますよぉ……」ギリギリ
―――『あはは、強情な子だね!! このままここでモデル続けてたら死んじゃうよ!!
私もこんなヒドイ事務所に来たのはじめてだし!! 』
ありす「この…想いだけは……ゆずれ…ません……」ハア…ハア…
――― 『そっか。じゃあさ、私とあんたでこの事務所を変えちゃおうよ!! イヤな先輩
には全員辞めてもらってさ。私があんたをトップモデルにしてあげる!! 』
まゆ「……」
―――『いや〜、あんたがここまで化けるとは思わなかったよ!! さすが私!!なんちゃって☆
このまま東京まで一気に殴り込みをかけるぞ〜!! ……って、どうしたのムズカシイ
カオしちゃって。え?相談?ええ〜!? 好きな人が出来たって〜!? 』
ありす「お仕事も…プライベートも…がんば…ります……」ハア…ハア…
―――『う〜ん、相手はライバル事務所のマネージャーかぁ〜。あんた自分が人気モデル
だって事忘れてない?下手すりゃウチの事務所がつぶされるどころか、最悪この
業界から干されるよ?今のあんたはもうアイドルみたいなもんだし』
―――『でももしかしたら、あんただったら仕事もプライベートも両立させられるかもね。
うん、わかった!私も応援するよ!それに強情なあんたの事だから、私が何を
言っても諦めないでしょ。勝手に暴走されても困るしね♪あはは、怒るな怒るな』
まゆ「そんなこと……できないですよ……あの人でも無理だったのに……」ボソッ
バンッ
凛「ありすっ!! 」ダッ
ありす「凛…せんぱ……」
まゆ「え?」クルッ
凛「このおっ!! 」ドガッ
まゆ「ぐ……」ヨロッ
凛「ありす!! 大丈夫!? 」シュルシュル
ありす「はぁ……、はぁ……すみ、ません……」ゴホッ、ゴホッ
***
ブロロン
P「あれ?凛ひとりか?」ガチャ
凛「岡崎先輩なら先に帰ったよ。そっちはきらりいないの?」
P「杏に会いたいって言うからキュートに置いてきた。じゃあ行こうか」
凛「ん」バタン
―――
ブロロン
凛「先輩から聞いたよ。プロデューサーここに来る前仙台にいたんだってね。まゆの事も
昔から知ってたの?」
P「あいつ余計な事を…… まあ業界人であの頃仙台にいて、まゆの事を知らなかった奴は
いなかったぞ。俺はしがないモデルのマネージャーだったから、まゆの方は知らない
と思うけどな」
凛「へえ……しがないモデルのマネージャーねえ……」
泰葉『彼は使い捨ての人形同然に扱われていたモデル達の待遇改善を求めて自分の事務所
の社長はもちろん、よその事務所にもよく喰ってかかってたわ。だからモデルの
女の子達からは人気があったわよ』
P「まゆの事務所はそれはひどい所でな。俺も他事務所ながらずっと気にかけてたんだ。
でもある時泰葉がふらりと現われて、自分の経歴とか業界のコネとかフル活用して、
あっという間に変えちまった。伊達に業界で長く生きてないよアイツは。でも本当に
凄かったのは、事務所で後輩達を必死に守っていたまゆだと俺は思う」
凛「まゆが?」
P「ああ。まゆは人気モデルとして仕事をこなしながら、後輩達の指導と育成もやってたよ。
泰葉は営業で外を飛び回っていたから、留守の間はまゆが事務所を守っていたんだ。
あいつは本当に後輩を大事にしていたから、今回のありすとの件もそれが行き過ぎた
形になって表れたものだと思うんだ」
凛「プロデューサーも先輩と同じこと言うんだね。みんなまゆの肩持ちすぎだよ」ボソ
P「ん?何か言ったか?」
凛「ふんっ」ゲシゲシ
P「痛い痛い蹴るな。まあ、まゆも反省してたし許してやってくれないか?しっかり
アルゼンチンも決められてたしさ」ドウドウ
―――
泰葉『ありすは昔のまゆにそっくりなの。まじめで融通が利かなくて頑固な所なんて、
本当によく似てるわ。だからまゆはありすに自分を重ねたのかもしれないわね。
ただありすは、あの頃のまゆと違ってもっと強いけどね』
凛『当然です。あの子は私が教育したんですから』フフン♪
泰葉『まゆの中であの人を誰にも渡したくないと思う独占欲と、昔自分があの人を好きに
なって辛い思いをしたから、ありすに同じ思いをさせてはいけないという使命感が
混ざっちゃったのね』
凛『だからって首を絞めるなんて……』
泰葉『まゆは軽く脅すだけのつもりだったのに、ありすが思った以上に言う事を
聞かなかったからやりすぎちゃったみたいね。ありすってあんなに強情だった
かしら。何か知らない?教育係の凛さん?』チラ
凛『す、すみません……』ダラダラ
泰葉『ふふ、冗談よ。でも凛もまゆを許してあげてくれないかしら。あの子も悪気が
あったわけじゃないの。次からは私もしっかりまゆを見張っておくから、二度と
あの子にあんな事は起こさせないって約束するわ』
凛『ずいぶんまゆを庇うんですね。私は当分許せそうにありませんけど』ムス
泰葉『あんたがありすの事を可愛がっているように、私もまゆの事が可愛いのよ。あの子
を置き去りにした罪悪感もずっとあったし、責任は私にもあるわ。だから私からも
ごめんなさい』ペコリ
凛『……先輩に謝られたらこれ以上怒れませんよ。でも確かにありすも意地を張って
まゆを怒らせてしまったってずっと気にしていたし、もう少し他の先輩との上手な
付き合い方とか教えておきます』
泰葉『まさかあんたの口からそんな言葉が聞けるなんてね。協調性のないあんたにも、
少しは業界の上下関係が分かるようになったのかしら』クスクス
凛『そういうのは正直あんまり好きじゃないですけど、でも知っておかないと色々
やりにくい事も分かってきましたから。私もオトナになっちゃったのかなあ』ハア
***
―パッション事務所―
P「お〜いありす〜、迎えに来たぞ〜」
未央「あ、プロデューサーじゃん。ひっさしぶり〜♪」
美嘉「え!? プロデューサー!? ヤバ、メイク直してこないと!! 」バタバタ
凛「あれ?今日は美嘉もいるんだ。珍しいね」
未央「莉嘉のお迎えだってさ。もうすぐレッスン終わるから一緒に待ってたの」
P「ありすはどこにいるんだ?確かアイツのレッスンはもう終わってるはずだが……」
未央「いや〜それがさ、ありすレッスンが物足りなかったみたいで、莉嘉のレッスンに
参加させて欲しいってルキトレちゃんに頼み込んじゃったの。私も止めたんだ
けどあの子聞かなくて。だから無理しない事を条件に許可しちゃって〜」テヘ☆
凛「ちょ、莉嘉のレッスンってハードレベルのやつでしょ!? ありす大丈夫なの!? 」
P「おいおい、あんまり無茶させるなよ。でもありすも何を焦ってるんだ?これは一度
様子を見る必要があるな」スタスタ
―――
―レッスン場―
ルキトレ「はいっ、じゃあ今日はここまで!寝る前にしっかり体をほぐしておくのよ」
莉嘉「ありがとルキちゃん!またよろしくね☆」ピンピン
ありす「ありがとう…ござい、ました……」ゼエゼエ
P「お疲れ〜、ありす生きてるか〜?ルキさんにいじめられてないか〜?」
ルキトレ「人聞きの悪い事言わないで下さい!」プンプン
美嘉「莉嘉〜、迎えに来たよ〜。雨降りそうだしさっさと帰るよ〜」
莉嘉「あ、おね〜ちゃん!来てくれたんだ〜☆」ダキッ
美嘉「ちょ、汗クサ!先に着替えてきなよ!」グイグイ
莉嘉「い〜じゃんい〜じゃん☆」スリスリ
<ギャー キャハハハハハ
ありす「……」スンスン
凛「ありすっ、大丈夫!? 」ダダダッ
ありす「……先にシャワー浴びてきます。凛先輩は事務所で待っててください」スタスタ
凛「ありす……?」スカッ
未央「ありゃりゃ、嫌われちゃったね凛。ありすに悪い事でもしたの〜?」ニシシ♪
凛「」(´;ω;`)ブワッ
未央「ぅえ!? ちょちょちょ、泣くほどの事!? アンタそんなキャラだっけ!? 」アセアセ
莉嘉「なーかしたーなーかしたー♪み〜おちゃんがーなーかしたー♪」ケラケラ
美嘉「やめなっての!だ、大丈夫だって凛、ありすはシャワー行っただけだから!」アセアセ
<シクシクシク… ト、トリアエズオチツイテ! キャハハハハ アンタモサッサトイッテコイ!
P「……何やってるんだあいつら?」
ルキトレ「あはは……、ありすちゃんも色々複雑なお年頃なんですよ」
P「すみませんありすが無理言ったみたいで。ご迷惑をおかけしました」ペコリ
ルキトレ「いいんですよ別に。あの子は莉嘉ちゃんの隣でレッスンの真似事をしていた
だけですし。ですがレッスン内容の変更を希望するんだったら、私も姉さん達
と相談してメニューを組み直しますので早めに連絡して下さいね」
P「はい。でもありすの育成方針は今のままで行きます。全く、何を考えてるのか
分からんが、行き詰まると一人で突っ走る所は昔の凛そっくりだな」ヤレヤレ
凛「ふぇ?」グス
***
―更衣室―
ありす「あそこでもっと動きを小さくして……もっと脚力を鍛えて……」ピッピッ
未央「やっほありすちゃん。ケガとかしてない?」ヒョイ
美嘉「スゲ、それiPad?レッスンメニューメモってるの?」ヒョイ
ありす「未央先輩。それから美嘉先輩も、今日は私のわがままを聞いてくれてありがとう
ございました」ペコリ
美嘉「いーよいーよ、アタシ達は何もしてないし。でもありすガッツあるね〜★莉嘉に
最後までしがみつくなんて、アタシでもシンドイよ」
ありす「いえ、ついていくのがやっとで私なんてまだまだです」パタン
未央「莉嘉は私達初期メンバーとほとんど変わらないしね。だから小学生だけどあの子は
特別だよ。それより急にどうしたの?あんまり無理すると体壊しちゃうよ?」
美嘉「そうだよ、凛もありすが避けるって泣いてたぞ。凛姉ちゃんをあんまり悲しませたら
ダメだぞ〜★」
ありす「別にそんなつもりはありません。ただ、少しは自主的に考えてやってみようと
思いまして。結果は散々でしたので、やはり今はメニュー通りのトレーニングを
こなす方が効率が良いみたいですね」
未央「それってもしかしてセルフプロデュース?ほえ〜、もうそんな事してるの?
やっぱりクールの子は違うね〜……」ポカーン
ありす「そんな大げさなものじゃありません。でも少ししっかりしなくちゃいけないと
思いまして。私もいつまでも凛先輩に守られてばかりじゃいけませんから」
まゆ『ありすちゃんもトップアイドルを目指すなら、大好きな事務所の先輩や友達と戦う
心構えを持っておいた方がいいですよぉ』
美嘉「……ふ〜ん、アタシにはよくわかんないなあ。ねえありす、守られることは別に
悪い事じゃないよ?莉嘉はもうちょっとオトナになってほしいかもだケド、誰かに
甘える力もアイドルの実力だしね」
ありす「甘える力……?」
美嘉「別に媚びろって言ってるわけじゃないよ?アタシもそういうのはキライだし。でも
アタシらは結局ガキだし、ひとりじゃ何も出来ないんだよ。だから今はしっかり
甘えて、味方をいっぱい作っときな。それは今後、絶対アンタの力になるから」
未央「そうそう♪私達はライバルだけど、それ以上に大事な仲間なんだよ。一匹狼なんて
損するだけ!トップアイドルっていうのは、みんなに応援されないとなれない
んだからさ☆」ウンウン
ありす「みんなに応援されないとなれない……」
未央「でも美嘉も面倒見が良いよね〜。見た目はギャルなのに中身はチョー真面目なんだ
から。やっぱりお姉ちゃんパワー?」ニヤニヤ
美嘉「や、やめてよハズいな!アタシはベツに思った事を言っただけだし!」カアア
ありす「……未央先輩、美嘉先輩。すみませんでした。私はどうやらまた勘違いをして
いたみたいです。貴重なアドバイスありがとうございました」ペコリ
美嘉「そ、そんなマジで頭下げられても困るよ!てかホントにアンタ莉嘉と同じ年なの?
まだ信じらんないんだけど……」オロオロ
莉嘉「おね〜ちゃん着替えたよー!さあこのままP君の所へゴーゴゴー!」ダキッ
美嘉「ああもうわかったわかった!メイク崩れるからあんまりくっつかないで!」グイグイ
未央「さ、それじゃ私達も行こうか。いい加減凛に構ってあげないと、あの子も
拗ねちゃうしね。莉嘉みたいに抱き着いたら喜ぶんじゃないかな?」
ありす「わ、わかりました……やってみます……」ドキドキ
未央「その意気だ!じゃあ私はプロデューサーに抱き着くから、お互い
ガンバローッ!! 」ダッシュ!
莉嘉「未央ちゃんズル〜イ!P君に抱き着くのはアタシが先なんだから!」ダッシュ!
美嘉「コ、コラやめなって莉嘉!で、でもアタシも莉嘉がお世話になってるし……
ああもう!とにかくあいさつのハグ程度は……!」ダッシュ!
ありす「え、ええ〜っ!? わ、私も凛先輩に抱き着く前の予行練習で仕方なく……
ま、待ってくださ〜い!」ダッシュ!
―――
ありす(まゆ先輩の言った事は間違いではないと思う。トップアイドルになれるのは
選ばれた人間だけだし、その為には先輩とか関係なく皆ライバルになるだろう)
ありす(でも美嘉先輩と未央先輩に言われたことも正しい。私一人が出来る事なんて
ほとんどない。皆に支えられて、応援されてこそトップアイドルだ)
ありす(凛先輩は自然体の私で良いって言ってくれた。無理せずに自分に合ったやり方を
見つけることが出来れば、私も凛先輩みたいに恰好良いアイドルになれるかな)
ありす(学校の勉強とは違って、この問題は答えがひとつじゃないみたいだ。私は
これから答えを探しながらアイドル活動をするのだろう。これは思っていた
以上に大変だ)
ありす(でも私はひとりじゃない。頼もしい先輩達も心強い友達もいる。お父さんや
お母さんも応援してくれているし、何より私の事をしっかり考えてくれている
プロデューサーもいる)
ありす(時間はかかると思うけど、いつか必ず自分だけの答えを見つけよう。そして
いつかトップアイドルになって、未来の後輩達に自信を持ってその答えを
言えるようになる。それが私、橘ありすの今の夢です)
ありす(え?恋愛ですか?そ、それはプライベートな事なのでお答え出来ません!
で、でも将来結婚したら、お互いに支え合えるような夫婦でいたいと思います。
ちょうど今の私とプロデューサーのような……えへへ……って、何言わせるん
ですか!もうおしまい!この話はおしまいです!)
END
本編はここまでです。後は近日中におまけで泰葉とまゆの会話を
ちょろっと書く予定です。ここまで読んで下さった皆さん、
本当にありがとうございました。
おまけ・昔のお話(泰葉・まゆ)
―病院―
泰葉「こんにちは〜♪」コンコンガチャ
まゆ「……まだ入って良いって言ってませんよぉ」
泰葉「いいでしょ私とあんたの仲なんだし。それよりいつまで寝てるのよ。昔のあんた
だったら這ってでも仕事してたでしょうに」
まゆ「昔の事は憶えてませんねえ。東京でアイドルをするって決めた時に、仙台の頃の
自分は全部捨ててきましたからぁ」ツーン
泰葉「あんたを放って事務所を辞めた事まだ怒ってるの?もういい加減に許してよ」
まゆ「その件はもういいです。まゆが気に入らないのは、あなたがいつまでも昔みたいに
先輩面をすることです。ここでは対等な関係のはずですよ『泰葉さん』?」
泰葉「へえ、言うようになったじゃない。ま、それもそうね。それじゃ駆け出しの
アイドル同士仲良くしましょうか『まゆちゃん』」ニコ
まゆ「お断りします」プイ
泰葉「やっぱり怒ってるじゃない。どうすればいいのよ私は」ハア
―――
まゆ「そもそもですね」
泰葉「何よ」
まゆ「あなたは私の失態を利用して、仙台から逃げましたよねえ?あなた程の後ろ盾が
あれば、あんな脅しに屈して事務所を辞めるなんてありえません。何かあの場に
居続ける事が難しい、他の理由があったのではありませんかあ?」
泰葉「買い被り過ぎよ。私はただの芸歴が長いだけの小娘よ。大人に本気になられたら
敵わないわ。そもそも私はあんたのドジを帳消しにする為にあの事務所を辞めた
のに、逃げたなんて言い草ひどくないかしら?」
まゆ「小娘の皮を被った古狸のくせによく言いますねえ。まゆもてっきりそう思い込んで
ずっとあなたに申し訳なく思ってたんですが、あなたがプロデューサーさんの横で
事務まがいの事をしていると聞いて、そんな気持ちは消え去りましたあ」
泰葉「ふうん、そうなの。じゃああんたはどうして私が事務所を辞めたと思ってるの?」
まゆ「簡単な話ですよぉ。あなたもプロデューサーさんの事が好きだったんですよねえ?
でもプライドの高いあなたは、自分が恋をした事を認めることが出来なかった。
だから本気になってしまう前に逃げたんじゃないですかあ?」
泰葉「あら?あなたには私が色恋沙汰に振り回されるような小娘に見えるの?さっき古狸
とか言われた気がするんだけど」
まゆ「古狸だからこそ最もらしい理由をつけて逃げたとも言えますねえ。それに役者の
あなたがどう見えていたかなんて全く意味がありません。私の知っている昔の
あなたは、もっと明るくて元気な方でしたしねえ」
泰葉「私が芸能界でどれだけ名前を変えてきたと思ってるのよ。その度に人格も作り
変えてきたわ。でも今は本名だし、この私が一番本来の人格に近いわよ」
まゆ「髪もばっさり切っちゃって。何ですかそのおかっぱ頭は。見た目は幼いのに、
言動が大人びていて不気味ですよお?」
泰葉「可愛いでしょ?手入れも楽だし気に入ってるのよこの髪型。でもたったこれだけで
あんたも私に気付かなくなるとは思わなかったわ。仙台ではあんなに一緒にいた
のに、所詮私はその程度の女だったのねよよよ……」
まゆ「ごまかそうとしてもそうはいきませんよお。あなたの手口はお見通しです。
今日ははっきり聞かせてもらいますからね」ギロ
泰葉「わかったわかった降参よ。ちゃんと話すからそんなに睨まないで」ヒラヒラ
***
泰葉「自分でも信じられない話だけど、あの時の私は自分の中に芽生えた感情が恋だって
理解出来なかったのよ。そもそも普通に成長して備わるはずの喜怒哀楽の感情すら、
私はお芝居の中で覚えたしね」
まゆ「あなたはどれだけ過酷な現場でも、いつも不自然なくらい笑顔でしたよねえ。
今思えばプロ意識を通り越して怖いくらいでした」
泰葉「本当にそうよね。でもおかげで大抵の感情はコントロール出来るようになった
けどね。だから感情に流される事が理解出来なかったし、色恋沙汰で身を滅ぼす
子達をバカにしていたわ」
まゆ「じゃあまゆの事も、あの時内心でバカにしていたんですかあ?」イラッ
泰葉「それが不思議とそうでもなかったのよ。あの人だったら仕方ないって思ったし、
私も好感は持っていたわよ。まさかそれが恋愛感情になるとは思わなかったけど。
あんたが情熱的にあの人の事ばかり話してたからあてられちゃったのかもね」クスクス
まゆ「じょ、情熱的にって……」カアア
泰葉「何今更恥ずかしがってるのよ。あんた変な所でウブなのね。それで私も最初は自分
が恋をしてるって理解出来なくて、一度彼と距離をとってみる事にしたのよ。
別に逃げたわけじゃないわよ?ただ私は役者として、恋愛感情を完璧に制御する
時間が必要だったの。だから逃げてないわよ?」
まゆ「わかりましたよお。どうしてそこで役者になるのかわかりませんが、そういうこと
にしてあげます。それでプロデューサーさんへの想いは制御出来たのですかあ?」
泰葉「いえ、無理だったわね。だから今は表舞台の仕事はお休み中。感情を抑えられない
今の状態じゃ役者失格だしね。とりあえず彼への気持ちが落ち着くまでは、裏方
で仕事するわ」ケロリ
まゆ「……まゆにはあなたが本気でプロデューサーさんへの気持ちを抑えようとしている
ようには見えませんねえ。やる気あるんですかあなた?」イラッ
泰葉「ふふ、どうかしらね。でも私は頭のてっぺんからつま先まで芸能人よ。だから
そのうち復帰はするつもり。今は忙しいからもう少し先になりそうだけどね」クスクス
まゆ「全く、その余裕が腹立たしいですねえ。まゆはあなたが一日も早くアイドルに復帰
することを望みます。そうなったら同じ舞台で叩き潰してあげますからあ」ニヤリ
泰葉「怖い怖い。お手柔らかに頼むわね。その前にあんた、皆にしっかり謝りなさいよ。
特に卯月と桃華はあんたを庇って色々頑張ってくれたんだから。何なら私も一緒に
謝ってあげようか?」
まゆ「結構です。自分の責任は自分でとれますから。あなたに再会して、自分が何を
必死に執着していたのか馬鹿馬鹿しくなりましたよお。全部捨てたと思ってたのに、
結局まゆはあの頃の自分をずっと引きずっていたんですね。ありすちゃんにまで
対抗心を燃やして、本当に何をしていたのでしょう」ハア
泰葉「それに気付けただけでも良かったじゃない。明日からまた一緒に頑張りましょう」
まゆ「あなたと組む事はもうありませんよお。まゆは一人で大丈夫ですからあ」プイ
泰葉「もう、つれないわねえ。せっかくまとまりかけたのに、うまくいかないわね」ハア
***
ガシャコン
泰葉「はいココア。遅くなっちゃったけど、私からのバレンタインよ。あんた好きだった
わよね」スッ
まゆ「ありがとうございます。結局マフラーをプロデューサーさんに渡せませんでしたあ。
良い出来だったのに残念です〜」ファサ
泰葉「来年頑張りなさい。それにあの人、手編みのマフラーだけで20本くらいもらって
たわよ。あげるなら別のにしなさい」
まゆ「……意外と競争相手が多いみたいですねえ。みなさん自分がアイドルだという自覚
があるのでしょうかあ」ゴゴゴ
泰葉「あんたが言っても説得力ないわよ。彼は今も昔もモテるわねえ。仙台にいた頃も、
しょっちゅうモデルの子からプレゼントもらってたじゃない」
まゆ「そういえばそうでしたねえ。まゆも苦労しますよお」ハア
泰葉「……あんた、仙台にいた頃のプロデューサーを知ってるって話をここでしてない
らしいわね。結構強力なアドバンテージになるのに、どうして使わないの?」
まゆ「プロデューサーさんも話さないから、あまり思い出したくない事でもあるんじゃ
ありませんかあ?まゆも過去を引きずってる重い女だと思われても嫌ですし」
泰葉「へえ、あんたも色々考えてるのね。ま、彼も事務所の社長とケンカ別れみたいな
感じで仙台を飛び出したみたいだし、自分から進んで話したくはないかもね」
まゆ「……待ってください。どうしてあなたはそんな事を知ってるんですかあ?」ピク
泰葉「え?だって私はよく昔の話を彼とするし。笹かまぼこが美味しかったとか、牛タン
をまた食べたいとか」キョトン
まゆ「ちょっとおおおおおっ!? どうしてまゆの気遣いを無駄にするような事をするんです
かあああっ!? しかも食べ物の話なんてどうでもいいじゃないですかあっ!!」ガバッ
泰葉「まあまあ落ち着きなさい。あんたの話もよく出て来るわよ。『まゆは俺が今まで見た
モデルの中でもトップ5に入っていた』って誉めてたわよ」
まゆ「あ……うう……」プシュー
泰葉「安心しなさい。あんたがあの人を好きだったとか、あんたがドジった話とかは
してないから。あの人の中では、あんたは後輩の面倒見の良い凄いモデルって
印象らしいわよ」
まゆ「そうですか…… でもやっぱり昔の話はこれからもしません。モデルになったのも
あなたがお膳立てしてくれたおかげでしたし、まゆの実力じゃありませんよお」
泰葉「そんなに卑屈にならなくてもいいと思うけどね。それじゃ凛やありすに負けるわよ。
使える武器は何でも使わないと」
まゆ「あの子達はまゆの敵じゃありません。あなたに比べれば、ね……」ギロリ
泰葉「あら?私とやろうっての?言っとくけどクールの結婚適齢期組の方がもっとガチよ。
油断すると婚姻届に判を押させようとする人もいるし」
まゆ「そんな露骨なアピールでプロデューサーさんが靡くとは思えません。でもあなたの
実力は底が見えないし、今も着々と準備をしているんじゃありませんかあ?」プシュ
泰葉「どうかしらね。私がその気だったら、すぐにでも彼をオトしてるけどね」ニヤリ
まゆ「そうはいきません。とにかく、すぐに今の事務員ポジションから離れて下さい。
まゆはあなたがそこにいる事が不愉快です。油断も隙もありません」ゴクゴク
泰葉「……ちなみに私はいつでも勝負出来るように、下着は黒のTバックよ」ボソ
まゆ「ぶはっ!? 」ビシャッ
泰葉「冗談よ。あんたもまだまだ修行が足りないわね。まあせっかく再会したんだし、
これからもよろしくね。」クスクス
まゆ「ごほっ、ごほっ、(やっぱりラスボスはこの人ですねえ。凛さん、分かっています
かあ?泰葉さんはまゆなんかよりずっとずっと手強いですよお……)」
本当にEND
これにて完結。凛とありすを主人公にするつもりだったのに、結局あちこち手を
出しまくってよく分からんSSになってしまった。とりあえず岡崎最高!
ではここまで読んでくれた人達に改めて感謝を。ありがとうございました。