2013年11月08日

小梅「白坂小梅のラジオ百物語」 Season 2

第十四夜 落書き


涼「松永涼のーっ! ラジオ百物語っ!」


小梅「……い、いぇーい」


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松永涼(18)
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白坂小梅(13)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1370268734



涼「はい、みなさん、はじめまして。松永涼です。実は今日からこの時間は、新番組『松永涼のラジオ百物語』が始まるよ!」

小梅「……う、奪われた」

涼「……なーんてのは冗談。今日も変わらず『白坂小梅のラジオ百物語』だから、みんな安心して」

小梅「……ほっ」

涼「ただ、今日は第二シーズン第一回ってことで、アタシがゲストパーソナリティなんだよね。よろしく、小梅」

小梅「う、うん。よろしくお願いします、涼さん」

涼「あ、ほたるちゃんと茄子さんは次回から戻ってくるから、ファンのみんなはそこも安心しておいて」

小梅「きょ、今日だけ、お休み」

涼「うんうん。それはともかく、小梅とアタシは事務所も同じで、仲良しなんだよね」

小梅「うん。嬉しい」


涼「はは、照れるな。まあ、お互いホラー映画好きだからな。それがきっかけで仲良くなったのもあるよな」

小梅「うん。一緒に映画見るの……楽しいです」

涼「まあ、それがなくても、小梅はかわいいけどなー」

小梅「わわっ。……ふふっ」

涼「っと、遊んでないで進めよっか。ええと、この第二シーズンは十二回予定。だから、メインのアイドル百物語は十二人に聞くってことになるね」

小梅「……うん。その一人目が、涼さん」

涼「そう。だから、後でアタシの話をするよ。っていってもアタシはホラーは好きだけど、現実の心霊系はあんまり縁がないんだけどね」

小梅「……そう、だね。……ふふふっ」

涼「……その思わせぶりな笑いはなにかな? 小梅」

小梅「なんでもない。涼さんは大丈夫。……うん。あの子もそう言ってる」

涼「いやいや、怖いから!」


小梅「……今日は、そんな涼さんのお話を聞かせてもらう前に、涼さんの歌を聴いてもらいます」

涼「……うう、流された。まあ、うん、一応楽しんで歌った歌だから。聴いてくれると嬉しいよ。ARBってバンドのカバーなんだけどな」

小梅「りょ、涼さんの歌は、かっこいい……」

涼「ありがと、小梅」

小梅「じゃ、じゃあ、涼さんの歌を聴いてもらってそのまま、アイドル百物語、です」

涼「うん。まずは、松永涼で『イカレちまったぜ』」




○一言質問
小梅「ホラー映画でやるなら……何の役?」
涼「襲ってくる化け物のほう。ヒロインはすぐ死ぬからね」

 さて……。

 本気でアタシはあんまりその手の経験はないんだよな。
 結構、バンド活動で夜中まで作業してたりするんだけど……。

 真奈美さんも、スタジオってのは、その手の話はよく聞くとは言ってたんだけどなあ。

 ま、それはともかく、アタシの唯一の不思議な体験を話そうか。

 あれは、アイドルにスカウトされることになる少し前のことだったかな。
 その日はライブハウスの、毎月おきまりのバンド対抗ライブの日でさ。

 五組くらいのバンドで、代わる代わるひたすら演奏し続けるんだよ。
 もちろん、客が冷めない限りって条件はつくけどね。

 そういう日だから、帰りはどうしても遅くなる。
 たいていは終電も過ぎちゃうね。

 普段はもうあきらめて始発までだらだらしてるんだ。
 ライブハウスのほうも、それくらいは許してくれるから。

 だけど、その日は夏でさ。
 暑いけど、夜風は気持ちよくて、歩いて帰ろうって気になっちゃったんだよね。


 やめときゃいいのにな。

 そうして、ぶらぶらと歩いてる途中に公園があってさ。トイレに寄ったのさ。

 夜の公園のトイレなんて、あんまり近づきたいとこじゃないけどさ。
 催したんだからしかたないよね。
 人の気配もなかったし。

 そうして、個室に入ったんだけど……。

 公衆トイレってさ、落書きとか結構あるんだよね。
 そのあたり、男女共用のほうがひどいみたいに言われるけど……。

 実際は、女性用のトイレだってろくでもないこと書いてあるもんなんだよ。

 え?
 どんなことって?

 いや、小梅は知らなくていいよ。

 それはともかく、座ってみたんだ。
 そしたら、正面の扉に、携帯の電話番号らしきものが書いてある。

 誰がかけるんだよ、こんなうさんくさい番号。
 ……って、そう思った。

 そうしたら、さ。

 急にアタシのスマホが音を鳴らしてさ。

 なんてタイミングだよって正直ちょっと動揺しながら取り出して、画面を見たら……。

 もう、アタシ、そのまま飛び出してた。

 ほんっと、かっこわるい話なんだけど。
 下着ずりあげながら、必死でトイレを出たよ。

 あんなところ誰かに見られてたら、お嫁に行くどころか、アイドルデビューも出来なかったろうなあ。

 ともかく、そんな無様な姿になりながら逃げ出した理由はただ一つ。


 アタシのスマホにかかってきたのが、落書きされてた、その番号からだったからだよ。


 ……うん。
 わけわかんないだろ?

 たまたまそのトイレに入った奴の電話番号なんて、どうやったらわかるんだ?

 アタシが悪戯心を起こしてその番号にかけたんならともかく……。

 ああ、ちなみに、その番号には翌日明るくなってから、知り合いと一緒にかけてみたよ。

『おかけになった電話番号は現在使われておりません……』

 ってありがちな結末だったけどな。


 あれは、本当になんだったんだろうな。


小梅「ふ、不思議」

涼「不思議っていうか、気持ち悪いよな」

小梅「でも……携帯電話やネットが普及してから、それにまつわる不思議な話も……いっぱい出てきてる」

涼「あー、そうなんだろうなあ……。『着信アリ』とかもあったもんな」

小梅「う、うん」

涼「正直、着信音って、耳に刺さるしね。変更しておけばいいんだけど」

小梅「う、うん。それに、電話は、霊的なつながりをつけちゃう……って考えも、あったりする」

涼「へー。オカルト的にはそうなんだ」

小梅「昔は手紙……書簡もそう考えられてたりもしたから……その派生?」

涼「なるほど。化け物は招かれなきゃ入れないとかの関係かね?」

小梅「うん。……いろんなことの区別が聖と俗を分けるけど……そこをするっと通り過ぎちゃうものは、危ないってされがち」


涼「なるほど……。電波があれば通じちゃう携帯電話はそういう意味では無茶苦茶危ないね」

小梅「う、うん。でも……便利だし……」

涼「まあなー。というか、どんなものでもメリットデメリットはあるからね。それに加えて、普通は気づかないメリットデメリットも内に秘めてるんだろうね」

小梅「うん。でも、ネットとか携帯電話がらみの……新しい怪談は、いろいろ面白い……」

涼「お、そうなのか?」

小梅「うん。よく調べると古いものの焼き直しだったり……。あるいは思ってもみないものが生まれたり……調べるだけで、楽しい」

涼「そうかそうか。それはいいな」

小梅「……うん」

涼「じゃ、次のコーナーはそうした新しい怪談話について特集だね。まずは……」


 第十四夜 終
 というわけで、ネタもたまってきたので、第二シーズン開幕です。
 前スレと同様、2〜3日に一本ペースで行く予定です。
 作中でも言ってますが、涼がパーソナリティなのは今回だけで、次から茄子ほたる小梅の三人体制復活です。


 なお、元ネタについてですが、オリジナルを別とすれば、自分で蒐集した話、ネットで見かけた話、書籍等で見た話と三パターンあります。
 ただ、書籍等に載っていたものが、ネットでも見られるようになった場合は、その怪談話自体がかなり広まったものと考えて、出典は明記していません。
 今後、明らかに書籍等から筋通り使用した場合には出典を明記することにします。

 第一シーズンで言えば、第十一夜 星(櫻井桃華)については、中山三柳の『醍醐随筆』(江戸前期)の中にあるお話のアレンジです。

 他は、元があるものも、アイドルに合わせてかなりアレンジしていて、オリジナルに近くなってしまっています。
 コメント等見ると気になっておられる方がいらしたようなので、一応書いておきました。

 それでは、また。
>>14
>>1のWikiを編集して現行スレおよび過去スレのURLを記しておきました。
書いたのは、最近だと

ありす「名簿ですか?」文香「……はい」
高峯のあ「あの人を嘘つきと」
比奈「比翼の鳥」あい「連理の枝」

あたりを。

ホラー系統は、少し前になりますが、

晶葉「千川ちひろの暴走」

くらいですかね。

第十五夜 おばあさん


茄子「みなさん、お久しぶりです。鷹富士茄子です」

ほたる「……こんばんは。同じくお久しぶりの白菊ほたるです」

小梅「さ、三人揃うのは、ひ、久しぶり」

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鷹富士茄子(20)

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白菊ほたる(13)


茄子「前回は第二シーズンの幕開けということで、松永涼さんにゲストに来ていただきましたが、いかがでしたか?」

小梅「……楽しかった。でも、三人も……落ち着く」

ほたる「よかった……」

茄子「はい。これからも三人でがんばっていきましょうね。さて、前回が特別な回であったということもあり、今回は、アイドル百物語から始めていきます」

ほたる「……第二シーズン開始についてのお手紙や、松永涼さん出演に関する感想などは、後でゆっくり読む時間を取っていきますね」

小梅「うん。それで、えっと……今日のお話は……『執着』のお話、かな……?」

ほたる「執着、ですか」

茄子「心霊ものだとあまりに何事かに執着すると、それに取り憑いてしまったりしますよね」

小梅「……うん。むしろ、だからこそ幽霊になったり……って場合もよくある」

ほたる「なるほど……」

茄子「それで、今日はどなたのお話なんでしょうか?」

小梅「……今日は相川千夏さん」

ほたる「それでは……お聞きください」

相川千夏(23)
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○一言質問
小梅「幽霊と話せたら……なにを訊いてみたい?」
千夏「霊に言語の壁はあるのかどうかね。ないとしたら、あちらでは文学は成立しうるのか、とか」


 怪談……ね。

 わいわい話すような話ではないけれど、私が経験したことで良かったら聞いてちょうだい。

 あれは、私が上京したての頃。
 とあるマンションに入居したことから始まる話。

 その頃住んでいたのは、典型的な東京のベッドタウンで……。
 その地域自体はそう便利でもなかったけれど、マンションが駅の近くだったから、その点では便利だったわ。

 そのマンションはもちろんオートロックで、その上ロビーには管理人さんもいて、そういう意味では安心して入居したのよね。

 そうして、生活を初めて、気づいたことがあったの。
 朝や昼にロビーに下りて外に出ると、必ずおばあさんが、ロビーの椅子に座ってるの。

 上品な身なりの、小さなおばあさんでね。
 椅子に埋もれるように座って、たいていは日差しの中でこっくりこっくり船を漕いでいたわ。

 眠っている顔を見ている限りでは、しわくちゃだけど、とても優しそうなおばあさん。

 夜帰ってくるときには見かけなかったけれど、午後早めの時間に用事があって戻った時とかには見かけたこともあった。


 だから、なんとなくだけど、夕方にはお部屋に戻ってるんだろうなって、そう思ってたの。
 そうじゃないと知ったのは、だいぶ後になってからだけど……。

 ともあれ、そんな風にそこで暮らし初めて、最初のばたばたした期間が過ぎて……。
 そうね、入居から半年くらいしてからのことだったと思うわ。

 深夜に、チャイムが鳴ったの。

 たしか、夜中の二時すぎだったと思う。
 こんな時間に非常識だって、最初は無視してたのよね。眠かったし。

 でも、あんまり鳴らし続けるものだから、目が完全に覚めちゃって。
 どんな奴が来てるのか、見てやろうって、ドアホンのモニターを覗いてみたの。

 変な奴だったら、管理会社や警察に連絡してやろうと思って。

 そうしたら、さっき言ったおばあさんがそこに立ってたのよね。

 私、びっくりしてしまって、お部屋をお間違えじゃないですか、ってドアホン越しに声をかけたの。

 そうしたら、おばあさんはどこか焦点の合ってないような目で、じーっとドアを見つめた後、ぺこってお辞儀して、どこかへ行ってしまったわ。


 私としては眠いところを起こされたって苛々はあったけど……。
 ご老人だし、しかたないわよね、と自分を納得させてベッドに戻ることにした。

 翌日にはそんなことすっかり忘れてたわ。
 忘れてたというか、どうでもいいと思ってたのね。

 ところが……。
 また来たのよ。

 それから、一週間くらいだったかしら。

 また、深夜にチャイムの嵐。
 モニターを見たらあのおばあさんで、さすがに閉口したわ。

『また部屋をお間違えですよ』

 ってそう言う声も一度目とは違って、だいぶ冷たかったんじゃないかしら。

 今度も、そのまま帰ってくれるものと思ったんだけど……。

 突然奇声をあげて、暴れ出したのよ。
 いつもの穏やかな表情なんて吹き飛んだ、もうとんでもない憤怒の相でね。

 ドアは蹴るわ、周りの壁は殴るわ、すごい音と衝撃で。

 とてもあんな小さな体が出せるものだとは思えないくらいだった。


 最初は呆然としてたけど、ともかく、すぐに警察に電話したわ。
 管理会社と管理人にもね。

 そこからはじまった大騒ぎはあまり詳しく話してもしかたないでしょう。
 ただ、本気で疲れたとだけ言っておくわ。

 結局、おばあさんは警察に連れて行かれて……。
 私はその日一日寝不足だったわ。

 へこんだドアのこととか、そのほかのことは全部管理会社に任せてたから、私としては、それで一件落着になると、そう思っていたの。
 おばあさんはもしかしたらぼけてしまったのかもしれないけど、それはご家族に任せることだものね。

 実際、その後はロビーでおばあさんの姿を見ることはなかったし、どこかで面倒を見てもらっているのだって、そう思ってた。

 そううまく行ったのなら、ここで怪談として話すこともないわけだけど。

 そう、また来たのよ。

 たしか、一ヶ月くらい後だった。

 今度はチャイムすら鳴らさず、ドアをどかんどかん叩いて蹴って、何かを叫んでる。

 怖くてとにかくすぐに警察を呼んだけれど、連れていかれるまで、ずっとおばあさんはしわがれた声を張り上げてた。

『出てけ! 返せ!』

 ってね。

 そこまで来ると、さすがに不審にもなるわ。
 私は、事情を知っているような顔をしている管理人さんを追求することにしたの。

『あの人はね、元々、この土地の地主さんだったんだよ』

 渋る管理人さんは、食い下がる私にそう言ったわ。

 詳しく聞くとね、こういうことらしかった。

 駅前からずっと広がる土地は、元々その地主さんの一族が所有していた。
 けれど、おばあさんと結婚して婿に入った人が、事業に失敗してしまったんだそうよ。

 土地を切り売りして、膨大な借金を返済していたおばあさんたち。
 けれど、今度は土地の売買で騙されて、ついに本家の土地を売ることになったそうなの。

 その本家があった土地に建ったのが、私が住んでいたマンション。

 おばあさんたちは、売却の条件の中でそのマンションの中の一室を得ることになっていたのだけれど、その部屋というのが……。

 うん、ご想像の通り。
 私が住んでいた、その部屋だったわけ。

 最後に残った財産のはずの部屋も手放すことになった経緯については、管理人さんも口を濁していたわ。
 ただ、まあ、いろいろとあったのでしょうね。
 本当に、いろいろと。

 ロビーにいたのは、管理人さんが同情して、昼間だけ入れさせてあげていたらしいわ。
 長年住んでいた所が懐かしいんだろうって、そう思ってのことでしょう。

 ただ、その情けが、私の部屋への迷惑につながったと思うと腹立たしいけれど。

 管理人さんの目を盗んで、夜中までマンションの中に潜んでいたおばあさんの行動力もすごいけどね。

 ただ、わからないのは、最後の襲撃よね。

 管理人さんは、もうロビーには入れていなかった。
 なにより、その日、警察からかかってきた電話が不思議でならなかったわ。

『あの……そちらに、あのおばあさんは……いませんよね?』

 って言ってくるから、何事かと思ったら、パトカーで連行中に消えたんですって、
 あのおばあさん。

 訳のわからないこと言わないで、きちんと保護してください、って言ったけれど、なんだかよくわからない反応でね。

 私は、自分の安全に関わることだし、警察は一体どういうつもりかと、抗議したのよ。

 まあ、今思い返してもかなり猛烈に食ってかかったから、次のようなことを漏らしたんでしょうね。
 私は余計混乱させられたけど。

『実は……。以前保護した一週間後に、亡くなっているらしいんです。あの人』


 ……さて、私の見たものは、警察官たちが引っ張っていったのは、一体なんだったのかしらね。


 その後すぐに引っ越してしまったから、私にはわからないけれど。

 もしかしたら、未だに、あのおばあさんはあの部屋を返せと、暴れに来ているのではないかしら……?


茄子「……なるほど、これは執着のお話ですね」

ほたる「……まるっきり普通の人にしか見えなかった……その、幽霊、ということなんでしょうか……?」

小梅「……当人がまだ生きていると信じ切っていたりすると……。そういうこともある」

茄子「生きてると信じ込んでるですか。それはなんだか……困りますね」

ほたる「……このおばあさんの場合、話も聞いてくれなさそうな……」

小梅「……たいていは、聞いてくれない……。だから、お経とかを唱えてもまるで無駄な相手も……結構、いる」

茄子「なるほど。まずは相手に届かなければ意味はないと」

小梅「う、うん。大変」

ほたる「ええと、次のコーナーでは、今回の相川さんのお話にちなんで、ある物に執着したばかりに奇怪な出来事に巻き込まれていくお話を取り上げて……」



 第十五夜 終
本日は以上です。
土地がらみは怖いですよね。

第十六夜 首飾り


茄子「さて、本日もそろそろアイドル百物語のお時間となりました」

ほたる「……久しぶりですね。この感じ」

小梅「う、うん。通常進行は……久しぶり」

茄子「たしかにそうですね。さて、今日は、少々変わったお話のようですね?」

小梅「うん。霊とかそういうのは……出てこない。でも、とても怖い……。いろんな意味で怖いお話」

ほたる「……いったいどんな……」

茄子「今回は、お聞きいただく前に、リスナーの皆様にお知らせがあります。今回のお話には、人種差別とそれにまつわる悲惨な出来事が含まれます」

小梅「そ、そういうことに……耐性のない人は……注意」

茄子「付け加えまして、当然のことながら、当番組は差別や虐待、拷問等の行為を肯定するものではありません。どうか、その旨ご承知おきください」

ほたる「え、ええと、今日は……その……どなたのところに……?」

小梅「今日は……高橋礼子さん」

茄子「では、お聞きください」

高橋礼子(31)
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○一言質問
小梅「最後の晩餐が選べるとしたら……なにを食べたい?」
礼子「誰と食べるかに比べたら、何を食べるかはさして重要じゃないわね」

 怪談かあ。
 うん、怪談……。

 そうね、じゃあ、ちょっと珍しいお話をしましょうか。

 これは、とあるバーで出会ったバーテンダーのお話。

 小梅ちゃんはいまいくつ? 13歳?
 そう。じゃあ、あと7年して、成人したら連れて行ってもらうといいわ。
 ただし、アルコールはあうあわないがあるから、アルコール抜きでも楽しめる、いいバーにね。

 あら、脱線しちゃった。

 そうね、あれは、もう7、8年は前の話になるのかしらね。
 私もまだ小娘って言われるくらいの年齢で、結構無茶してたかもしれないわね。

 そのバーに行き着いた経緯はよく覚えてないわ。
 たぶん誰かの紹介だと思うけれど、その誰かと知り合ったのも、どこかお酒の席でしょうしね。

 狭苦しいバーだけど、いつ行ってもやっているし、閉まってても、電話すればマスターが来て開けてくれるなんて店だった。

 夜遊びして、最後に行き着く、そんなところ。

 そのバーに、ある時から黒人のバーテンダーが入ってきたの。
 年はその頃でも50を越えてたと思うけど、定かではないわね。

 その人は、梅雨や夏の真っ盛りでも襟の高いシャツを着て、ぴっちりネクタイを締めてたわ。

 バーテンダーっていうと、白いシャツにベストってイメージがあるし、実際、それが一番動きやすいと当人たちは言うものなのよ。
 でも、だからって首が全部隠れるような高い襟のシャツである必要はないわよね?

 しかも、外国の出身なら、日本の梅雨なんて耐え難い湿度でしょうにね。

 ましてや、その店は、夏になるとマスターがネクタイ外しちゃう程度には緩い店だったし。

 だから、その人が店に入ってしばらくして……仲良くなったと思った頃に、訊いてみたのよ、私。
 なんでそんな格好なの? って。

 でも教えてくれなかったわ。
 ただ、微笑むだけで。

 いまだったら、それ以上は踏み込まなかったでしょうね。
 でも、その頃はまだ若くて……なんて言うんでしょうね。お節介だったのよね。

 だからと言って、問い詰めるのはスマートじゃないわ。

 だから、その人を誘って、飲みに行ったの。
 そこの常連みんなで、歓迎会ってことで。

 もうバーに来てから半年近く経ってたけど、飲み屋に居着くかどうかって、正直わからないものだしね。
 マスターもちょうどいいって喜んでくれてたわ。

 色んなお店をみんなで飲み歩いて、最後にそのバーを貸し切って、朝まで飲むって予定。

 その人は、楽しそうに飲んでいたけど、ずっとシャツは襟の高いのを閉めたままでね。
 普段はベストなのに、プライベートだからってジャケットまで着てたから、よけい堅苦しかったかもしれないわね。

 私は機をうかがったわ。
 結局、当のバーに行き着いて、みんなが潰れだして……。
 私と、もう一人――商社マンの男性と、その人だけが起きてるって状態になったの。

 ここだ、と思ってね。
 高いお酒を三人で飲んで、そして、訊いてみたのよ。
 その襟の下になにか隠してるの? ってね。

 そうしたら、彼はしばらく私たちをじっと見た後、君たちにならいいか、と言って、ネクタイを外して、ぐいとシャツを開いたの。

 そこには、ひどい火傷の痕があったわ。首から胸にかけてね。

『死のネックレスって知ってるかい?』

 彼は服を戻しながら、陰鬱な表情で話し始めたわ。

『南アのアパルトヘイトの頃に流行ったリンチの手法だよ。タイヤを首に乗せ、それを焼くんだ』

 小梅ちゃんはアパルトヘイトなんて知らないわよね?
 私だって詳しく知っているわけじゃないけれど、南アフリカの人種隔離政策ね。

 ひとまずは白人と黒人、そして、白人同士や黒人同士も憎み合い、いがみあう結果となったっていうのがわかればいいと思うわ。

 そんな憎悪のただなかで生まれたのが、死のネックレスっていう凄惨なリンチの手法。

 ただ、彼は南アフリカの出身じゃなかった。
 アフリカはアフリカでも別の国の出身で、いまはアメリカ国籍なんだと言っていた。

 なぜ、アメリカ人になったか、ならざるをえなかったかを、ネックレスの話も交えて、彼は語ってくれたわ。

 彼の生まれ故郷では、とある二つの部族が敵対していたんですって。
 ここでは、仮に『ロ族』と『ハ族』とでもしておきましょうか。
 うん、『いろは』の、ろはね。

 両者の敵対関係は、ずっと昔からのものだったけれど、二十年ほど前に頂点に達して、内戦がはじまってしまった。

 内戦は隣国やらいろいろな勢力の思惑が絡み合って、とんでもなく激化して……。
 ついに、ハ族のほうが、ロ族を虐殺する……なんて事態にまで至ってしまったようね。

 彼が『死のネックレス』を受けたのは、そんな虐殺行為の最中。

 ハ族の戦闘部隊に捕まった彼は、家族はじめ村の人間たちが見ている前で『死のネックレス』のリンチを受け、死なない程度になぶられた。

『奴らは、俺にしるしをつけて、生き証人にしたかったんだよ』

 彼はそう言っていたわ。

 彼以外の村人は一人残らず殺されたそうよ。
 家族たちが、一緒に暮らしていた村人たちが、次々に殺されていくのを半死半生の状態で見せつけられ、恐怖を語り継ぐ証人となるよう生かされた。
 彼はそう語っていたわ。

 その後、彼は幸運にも混乱する故郷から逃げ出すことに成功し、アメリカに亡命。
 今に至る、ともね。

 そうして語り終えてから、彼は細い声で、私の知らない歌を歌い始めた。

 たぶん、日本で知っている人はほとんどいないだろう現地の言葉で、私たちが聞いたことのない歌を、歌ってた。


 その目から、ひたすらに涙を流しながら。

 何とも言えない感情を抱きながらも朝を迎え、酔っ払いどもをなんとかタクシーや始発に追いやって。
 そうして、私も帰ろうとしたとき、彼の話を一緒に聞いていた男性がやってきたの。

 場所を変えて話せないかとね。

 あまりに真剣な様子に、私はうなずいていたわ。
 男の人と二人っきりで……なんて、相手に勘違いさせてもいいと思わない限りはしないポリシーだったのだけれど。

『あの人の言うことはあまり信じない方がいいですよ』

 さっきまでいたバーとは打って変わって騒がしい立ち飲み屋で、彼はそう切り出したわ。

 もちろん、私は何を言うのかと食ってかかった。
 なにしろ、あの人の語り口は実に重苦しく、生々しいもので、疑う要素なんてみじんもなかったから。

 まして、あんな寂しく歌うのを聴いて……と、憤っていた所もあるかもしれないわ。

 でも、彼は首を振って、自分はアフリカのとある国に赴任していたことがあるというの。
 それは、さっきの話にあったロ族とハ族が内戦を起こした国の隣国にあたると。

『大まかな話は嘘じゃないんです。内戦はあったし、虐殺もあった。南ア生まれのネックレスも、二つの部族の中で多用されたと聞いてます』

 だったら、と私が言うと、彼は目を伏せて言ったの。

『ネックレスってのは、あんな程度の傷しか残らない生やさしいものじゃないんです』

 え? と聞き返したのを覚えてる。
 なにも言葉にならなかったのを。

『タイヤに火をつける。それは間違ってないけど、タイヤにガソリンを振りまいてから火をつける。
だから、すぐに燃え上がって、熱で収縮したタイヤが首を締め付ける。
溶けたタイヤがべっとりと膚に張り付きながらね』

 あんまりにもひどい話だからか、彼は何度も焼酎を呷りながら続けてたわ。

『やられたほうは窒息と熱で暴れ回る、そんな処刑方法なんです』

 絶句する私を前に、彼は何度も首を振った。

『もし生き残れても、喉も顔も焼けてしまう。どれだけ早く助けられても、首回りだけで済むはずがない。なによりも、さっき歌ってた、あの歌……』

 そこで、彼は黙りこくってしまったわ。
 その口を開かせるのには、さらに二杯ほど飲ませないといけなかったわね。


『あれは、ロ族のものじゃない。虐殺をしていた、ハ族のほうの歌なんですよ』


.

 彼の話はそこで終わり。

 そして、私の話も、ここで終わり。

 バーテンダーが本当はどんな経験をしてきたのかなんて、探ること、私にはできなかった。
 するつもりもなかった。

 商社マンの彼の話の裏付けをとることも出来なかった。

 あのバーテンダーは虐殺の犠牲者だったかもしれない。
 あるいは、それを装うことで自分が犯した罪を忘れようとする加害者側だったかもしれない。

 私にはわからないし、そこまで踏み込むつもりもない。

 ただ、世間にはこんな話もあるって、それだけのこと。

 え?
 バーテンダーの黒人さんはどうしてるかって?

 さあ、いまはどうしてるのかしら。


 あのバーは、もうとうに潰れてしまったから。



.


ほたる「これは……」

茄子「怪談、と言っていいのかためらわれますが、しかし……」

小梅「れ、礼子さんが言うとおり、こんな話も……ある。悲しくて……不気味な話。これもきっと怪談……だと思う」

ほたる「……そうかもしれませんが、私にはわかりません。殺しあいをすることも、そんな残酷なことをすることも……」

茄子「わからないほうが……いいのかもしれません。共感してもしかたのないことはありますから……」

小梅「う、うん」

茄子「でも、もし、この人が加害者側だったとしたら……」

小梅「な、なに?」

茄子「いえ、こうして、被害者を装うことでしか生きていけないとしたら……。それは、きっと、とても……」

ほたる「……なんでしょう?」

茄子「いえ……。口にしない方がいい気がします。すいません」

小梅「そ、そう……」

ほたる「……次のコーナー、行きましょう。今日は、みなさんからのメールやお手紙の中で気になったものを……」



 第十六夜 終
本日は以上です。
予想以上にきつい話になってしまった気がします。
MASTERキートンのネックレスのお話は、『キートン先生の事情』ですね。
あれはまさにアパルトヘイトから始まるお話でしたね。

さて、日曜日(もしかしたら月曜日も)投下できそうにないので、少々早いですが、第17夜をこれから投下します。

第十七夜 墓


茄子「本日もアイドル百物語のお時間となりました」

ほたる「今日は……丹羽仁美さんのお話なんですよね?」

小梅「う、うん。そう」

茄子「仁美さんと言えば、戦国アイドルとして有名ですね」

小梅「う、うん。今回も、武将の話をしてた」

ほたる「……やっぱり慕ってる戦国武将の幽霊とか会ってみたいものなんでしょうか?」

小梅「……そうみたい」

茄子「といっても何百年も前の人ですし、お話しするのも大変そうですね」

ほたる「……でも、源平合戦の落ち武者の霊が……とか、そんなお話も聞いたことがあります」

小梅「……源平に限らず、落ち武者にまつわる伝説は結構多い……。でも……」

茄子「でも?」


小梅「その村の周りで起きた……小さな戦にまつわる出来事も、有名な合戦のお話にすり替わっていることが多い……らしい」

ほたる「……有名なお話に引っ張られるということですか」

茄子「法螺が大法螺になっていく感じでしょうかね」

小梅「口伝えの伝承だから……有名な方が後に残りやすかった、のかも」

ほたる「……なるほど」

茄子「伝承は伝えるほうも聞いているほうの反応がいいほうがいいでしょうし、覚えていくのにもよさそうですしね」

小梅「う、うん」

ほたる「でも、そうすると……どんどん派手になってるってことでしょうか」

小梅「……そうでもない。むごたらしい話は、柔らかめになっていくことも、お、多いから」

ほたる「ふむふむ……。でも、いずれにしても変化はしていくんですね」

小梅「だ、だからこそ面白い……」

茄子「この番組で語られたお話も、いろいろな形に変じて伝わっていくかもしれませんね。さて、それでは、仁美さんのお話に参りましょう」

小梅「うん。お聞き……ください」

丹羽仁美(18)
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○一言質問
小梅「一回だけ霊たちと交信できるとしたら……誰とお話しする?」
仁美「慶次様!……と言いたいところだけど、慶次様は死んだ後とか出てきたくなさそうだしなー。うーん……。あ、松風とかいいかも!」

 やあやあ、小梅ちゃん。
 今日も元気に傾いてる?

 え?
 どうしたら傾けるかって?

 んー……まあ、小梅ちゃんの場合は、その年齢にしては結構尖ったアクセつけてたりするから、十分傾いてるかも。
 うん、傾いてる傾いてる。

 それはともかく、アタシ、前から訊いてみたかったことがあるんだ。

 小梅ちゃん、武将の霊とか、見える?

 え?
 見たことない?
 そうなんだ……。

 へえ、あんまり古い霊には会ったことないんだね。

 それは、あれ?
 成仏とかしちゃうってこと?
 よくわからない?

 そっかー……。

 はい?
 日本だと神格化されちゃうから、神様になっちゃうのかも?

 あー、なるほどー。
 幽霊じゃなくて神様になっちゃうとそうそうは出てきてくれないかー。
 むしろ、社にいったら、いつでもおわすと考えれば、そっちのほうがお得かもねー。

 あ、怪談だったね。
 そうそう。
 怪談って昔からあるよね。

 たとえば、島左近が石田三成の寝所に寄ってくる化け物を退治したとか。
 家康が住んでた頃の駿府城に、脚の生えた肉の塊が現れたとか。

 昔の話は古狸とかが正体だったりすることも多いけど。
 いまじゃ、実際に狸とか見ることの方が少ないから、その手の話は少ないのかな?

 それはともかく、今日はアタシの知り合いの話をすることにするね。

 いや、あんまり戦国関連の話ばっかりすると、お前は止まらないからってうちのプロデューサーがね。
 本当は熱く語って戦国好きを増やしたいところだけど、これは小梅ちゃんたちの番組だし。

 とはいえ、これから話す知り合いも、史跡巡りで知り合ったその手の趣味の仲間だけどね。

 その知り合いは、アタシとは違って、史実重視の方向性でさ。
 アタシは、ほら、人物重視だから。
 うん。

 それで、その子は、自分で歴史をいろいろ調べて、いろんなところに行ってたみたいなんだ。
 古戦場跡地とか、城址とかね。

 それで、そんな調査の中で、とある武将のお墓を調べることにしたんだって。

 名前?
 あー、わかんない。
 アタシもまるで聞いたことなかったから、マイナーな人だと思うよ、たぶん。

 ともかく、その子は色んな資料をひっくり返して、とうとうあるお寺にその武将の墓があるらしいことを知ったのね。

 アタシにはよくわからないけど、お墓とか調べるといろいろと歴史的なことがわかるんだって。
 お寺に資料が残ってることもあるだろうしね。

 ただ、その子はその人のお墓にもうでること自体、結構重視してたみたいだね。
 自分が調べてる人のお墓があったら、そりゃあ、挨拶くらいしておきたくなる気持ちはわかるかな。

 ちなみに慶次様のお墓がある場所は有力な説はあってもこれって決まって無くて、供養塔が……。
 
 あ、うん。ごめんなさい、プロデューサー、小梅ちゃん。

 ええと、それで、そのお墓の前まで行ったんだけど、なにしろ古いお墓だったから、もう崩れかけてる感じだったんだって。

 うん、墓石がね……なんていうの?
 塔みたいな感じなんだけど、ちょっと割れてるところがあったりとかして。

 それで、その子が行った時に、結構大きめのかけらが、足下に転がってきたんだって。
 まるでいまお墓から落ちてきたみたいにね。

 その子が手を広げたくらいの破片だって言ってたから、まあ、大きめだよね。

 で、お墓を見ると、明らかにそれが割れ落ちたんだろう場所があって。

 その子はついついかけらを拾って、その元の場所にあててみたんだって。
 修復とか出来るわけもないけど、とりあえず戻してあげたいみたいな感覚で。

 そうしたらね、ぴったりあっただけじゃなくて、すうっと継ぎ目が消えちゃったんだって!

 うん。
 古い石の表面がくっついて。

 え? って驚いて引っ張ってみても全然取れないし、それどころかひびが入ってる様子もない。

 表面に生えてる苔まで、最初からつながっていたかのように自然と見えたって。

 もう、ほんとびっくりだよね!

 その子自身はなんだか狐につままれたような感覚だったらしいけど、その後でとても信じられないような幸運がいくつも続いたらしくて。

『いいことしたってことかな?』

 って笑って言ってたよ。

 面白いよねー。
 これって、歴史に名を残す人は、それなりに力を残してるってことかも。

 うん、やっぱりカッコイイって思うな!


茄子「なかなか興味深いお話でしたね」

ほたる「……悪いほうに考えちゃうのは悪い癖なんですが、もし、そのままその人がかけらを放置してたら……」

小梅「ば、ばちがあたることも……あるかもしれない、ね」

茄子「うーん。そこまで意地悪かどうかはわかりませんけれどね」

ほたる「そ、そうですね」

茄子「でも、少なくともその人は葬られた方に畏敬の念を持ち、墓石が元通りになってほしいと願う優しい心があったことは確かですよね」

ほたる「やっぱり、よくしてくれる人にはよくしたいと思うものかも……しれませんね」

小梅「う、うん。ただ、この武将の人みたいな場合はともかく、たちの悪い霊だと……」

ほたる「……だと?」

小梅「助けてくれるって思い込んで、すがりついてきちゃうことも……」


茄子「なるほど……。そういうこともありえるんですね」

小梅「う、うん。そういう場合は、悪意とか善意とか関係なく……。違う世界の存在だから、いろんな影響が……出ちゃう」

ほたる「なるほど……。それで、今日は偶然の接触から生じたオカルトなお話が次のコーナーなわけですね」

小梅「う、うん」

茄子「では、そろそろ次に参りましょうか……」



 第十七夜 終
ということで以上です。
仁美ちゃんは、どれくらいの知識量なのかあんばいが難しいですw

第二十四夜 アンタじゃダメ


凛「それでは、今日もアイドル百物語のお時間となります」

加蓮「お、いい感じにすらっといったね」

凛「まあね」

奈緒「川島さんにナレーションの練習してもらったもんなー」

凛「なににやにやしてんの、奈緒」

奈緒「別にぃ」

茄子「本日もトライアドプリムスのじゃれ合いと共にお送りしておりますラジオ百物語ですが……」

凛「茄子さん?」

茄子「はい?」

凛「……ううん。なんでもない、続けて」


加蓮「負けた」

奈緒「負けたな」

凛「うっさい」

小梅「え、えっと……進める、ね」

加蓮「あ、ごめんね」

ほたる「今日はトライアドプリムスのゲスト最終回ということで……。三人のトリは奈緒さんが飾ってくれます」

奈緒「あ、う、うん」

加蓮「急に勢い無くさないでよ」

小梅「奈緒さんのお話は……とても不思議」

茄子「小梅ちゃんは既に聴かせてもらっているんですよね」

小梅「う、うん。楽しかった」

奈緒「うーん。当人としてはあんまり思い出したくない話ではあるんだけどな」

凛「ん。そんな話なんだ」

加蓮「なんか目撃しちゃったとか?」


奈緒「いや、そういうのじゃないんだけど……。ね」

ほたる「……一体どんなお話なのでしょう」

小梅「な、奈緒さんのお話は小学生の頃のお話……なんだけど」

奈緒「実は去年まで忘れてたんだよな。たまたまふっと思い出したんだけど」

小梅「怪談では、実はよくあるパターン。子供の頃の……受け止めきれないくらい怖い記憶は……ふたをされちゃうことが、多い」

加蓮「へえ……」

凛「精神を安定させるような仕組みが自然と働くってわけだね」

小梅「う、うん」

ほたる「大きくなったら……思い出しても大丈夫、なんでしょうか」

小梅「た、たいていは」

奈緒「大人になったからこそ怖いのもあるけどな……」

茄子「なかなか興味深い話題ですが、奈緒さんのお話のほうが気になりますね」

小梅「うん……。では、奈緒さんのお話、聞いてください」

渋谷凛(15)北条加蓮(16)神谷奈緒(17)
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○一言質問
小梅「この世で一番……怖いものってなんだと思う?」
奈緒「人間。なんだよぉ。アタシだけ妙に月並みだなって視線は!」

 さて、アタシの話も、凛の話と同じく、小学校の頃の話。
 ただ、凛と違うのは、アタシの場合は経験談だってことかな。

 たしかあれは四年生の二学期だったと思う。

 とある女の子が、アタシの学校に転校してきたんだ。
 仮にこの子をSとでもしようか。

 Sちゃんは、親の仕事の関係かなにかで転校を繰り返している子らしかった。

 うちの学校になじむのも、アタシたち地元の人間の予想よりもずっと早かったよ。
 慣れっこになっていたからかもしれないな。

 ともあれ、色んな地方の話をおもしろおかしくしてくれるSちゃんは、クラスで受け入れられ、アタシ自身も結構仲良くなった。

 そして、しばらくしてから、Sちゃんの家に招かれたんだ。

 友達の家に遊びに行くのは珍しい事じゃなかったし、気軽にOKしたよ。
 ただ、普段は複数人で遊びに行くことが多かったから、その日呼ばれてるのがアタシだけって聞いた時はちょっと驚いたかな。

 でも、それを聞いたのは、Sちゃんと一緒の帰り道。

 アタシの家はSちゃんの家と学校の間にあったから、途中で寄って鞄だけ置いてきた後だった。

 つまりは、もうSちゃんの家に向かっているところだったんだ。

 二人きりだからっていまから断るのはSちゃんに悪い。
 それに、初めて行く家だし、大勢で押しかけるよりは、一人で行ったほうがいいような気もする。

 賑やかじゃないのはちょっと残念だけど、二人でおしゃべりしてればいいかって思って、アタシはそのままSちゃん家に向かったんだ。

 Sちゃんの家は普通の家だった気がする。

 ただ、記憶はそれほど定かじゃないけどね。

 どうだろうな。
 記憶に残らなかったってことは、家自体は変じゃなかったってことだと思う。


 変なのはここからだ。

 家に着くと、Sちゃんのお母さんがいて、ケーキをごちそうしてくれた。
 子供の舌にも、これは甘すぎるんじゃないかって思うようなケーキだったけど、せっかく出してくれたのに文句なんか言えないだろ?

 ただ、それを食べ終えてから、妙に眠いんだ。

 体育の授業があったわけでもないのに、こんなに眠いっておかしいななんて思いながら、アタシはなんとか目を開こうとしてた。
 だって、せっかく家に呼んでもらって寝ちゃいましたじゃ、失礼すぎるもんな。

 ところが、Sちゃんのお母さんは眠そうだから寝ていけって言うんだ。
 布団を敷いてあるからって。

 アタシが断ろうとすると、Sちゃんまでもが、眠いなら寝ていった方がいいって、しきりに勧めてくるんだよ。

 二人の勢いに負けて、アタシは客間に敷かれた布団に入ったよ。
 それがどうもおかしいという感覚はあったんだけど、眠気に勝てなくてさ。

 布団に入った途端にアタシは意識を失ったんだけど……。

 ふっと目が覚めたんだ。

 誰かに見られてる、っていう強烈な感覚と一緒にね。
 目を開けちゃだめだ、って本能的に感じた。

 だから、アタシはそのまま目を開かずに、ゆっくりと息をするよう意識しながら、身じろぎせずにいた。

 そしたらさ、顔の近くに気配があるんだよ。
 鼻息がかかるくらい近くに、誰かがいる気配が。

 誰かが見てるんだ、って思ったね。
 それも、ぴったりと顔をくっつけて、アタシを見てる奴がいるんだって。

 アタシは内心恐怖に震えながら、表面にはそれを現さないよう、必死だったよ。
 じぃっと見つめられてるって、わかってたからな。

 それでも耐えきれず、アタシはうーん、って唸りながら、寝返りを打った。
 なんとか、そのぴったり食いついてきてるやつから逃げたかったんだ。

 すると、すいっと気配が遠ざかって、こんな声がした。

『こいつじゃダメだね』
『ダメなの、ママ』

 Sちゃんのお母さんと、Sちゃんの声だった。

『ダメだよ』
『残念だね』
『残念だ』

 そうやって声は言い交わすと、最後に、低い声でこう言った。


『アンタじゃ、ダメだ』


 明らかに、アタシに向けて、はっきりと。



 そこから、まるっきり記憶がない。
 そして、その当時のアタシはSちゃんの家に行ったという記憶さえ、忘れ果てていた。

 いや、普通に次の日は学校に行っていたし、Sちゃんも学校に来てたよ。

 だけど、もう前みたいに仲良くはしてなかったな。
 Sちゃんも、他の子と仲良くしてるみたいだった。

 もしかしたら、他の子も家に連れて行くんじゃないか、そして……。

 記憶があったならそんなことも考えたかもしれない。
 でも、怖すぎたのかなんなのか、当時のアタシはそれを封印してしまっていて……。

 結局、誰かに警告をしたりとかは出来なかったな。
 なにしろ、冬休みが始まる前にSちゃんはまた転校して行っちゃったから。


 もしかしたら……だけど、クラス中の『チェック』が済んだから転校して行ったのかもしれない。


 はたして、なにが『ダメ』で、なにがよかったのか。
 『ダメ』じゃなかったら、どうなっていたのか。どうするつもりだったのか。

 アタシにはさっぱりわからないけど、それでも……。


 『ダメ』って判断されてよかったと思うよ。

 心の底から。


加蓮「……なんだったんだろうね?」

凛「なにかを選別してた……ってのは間違いないよね。その……Sちゃんのお母さんが」

小梅「け、ケーキになにか混ぜて……眠らされて……」

奈緒「だろうなー。あそこまでするってことは、完全に計画的だよな」

ほたる「選ばれたら……なにかもっと恐ろしいことになっていますよね……」

茄子「時代的にどうかわかりませんが、他国の拉致というのも実際にあり得る話ですし、宗教的な暴走だとか、営利だとか、いろいろと考えられますね」

小梅「奈緒さんが……連れて行かれなくて……よかった」

奈緒「ほんとだよ」

加蓮「そうだね。この子ならいいって言われて、なにかされてたら、たまったもんじゃないよね」

凛「うん、本当によかった」


奈緒「ただなー……」

茄子「なんですか?」

奈緒「いや、あのとき、あの台詞を言うってことは、アタシが起きてるのに気づいてたって思うんだよ」

ほたる「……そう、でしょうね」

奈緒「おかしいと思わないか?」

茄子「はい?」

凛「……確かにおかしいね。薬を盛っておいて、起きてることに慌てないのはおかしいと思う」

小梅「予定通りじゃなければ……焦る、かも」

加蓮「……あれ? ってことは、その程度で起きるとわかってる量しか、睡眠薬とかそういうのを入れなかった?」

茄子「……さらによくわからなくなってきますね」


奈緒「うん、でもさ」

ほたる「はい」

奈緒「ともかく、あのお母さんが悪意の塊だってことだけは確信出来るよ。薬の量もそういう意図だろうなって、アタシは思う」

凛「……嫌な話」

奈緒「うん」

茄子「人の悪意というのは底なしなのでは無いかと、時に思わされますね。さて、そろそろ次のコーナーへ参りましょうか」

小梅「う、うん。次は人の狂気についてのお話を特集して……」



 第二十四夜 終
本日は以上です。
トライアドプリムス最後は気味の悪い話でした。

次回で第二シーズンも終わりですね。
>>193
偶数シーズンが十三夜、奇数シーズンが十二夜で8シーズンになります。

第二十五夜 狐


茄子「本日もアイドル百物語のお時間がやって参りました」

ほたる「……今日で二十五夜……。四分の一ですね」

小梅「うん……。ずいぶん色んなお話を聞いてきた気がする。先は……長いけど」

茄子「そうですねえ。ずばりな心霊体験もあれば、もしかしたら、ごく身近に起こりえるんじゃないかという恐怖の体験もありました」

ほたる「……悲しいお話も、感心するようなお話もありましたね」

小梅「む、昔のお話もいろいろと面白い……」

ほたる「……はい。本当に」

茄子「時代背景や様々な環境があると、起こる出来事も違うのでしょうね」

ほたる「ご先祖さまのお話とかは、それだけで貴重だと思います」

茄子「普通はなかなか話に出ませんからね」


小梅「うん。聴いてくれる人もそうだけど……話してくれたみんなも良い機会になったって思ってもらえたら……嬉しい」

ほたる「……ええ」

茄子「さて、今日はどんなお話でしょうか」

小梅「今日は……山のお話。ある意味で古典的な……」

ほたる「山の……ですか。これまでにあまりないお話になりそうですね」

茄子「それで、今日はどなたのところにお話を聞きに?」

小梅「藤原肇さん……」

ほたる「では、肇さんのお話です。お聞きください……」

藤原肇(16)
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○一言質問
小梅「これまで出会った中で……一番怖かったのは、なに?」
肇「熊です。ツキノワグマ」

 こんにちは、小梅ちゃん。

 今日は怪談でしたね。

 いつもラジオ聴かせてもらっています。
 ええ、楽しませてもらってます。

 ただ、山の怪談が圧倒的に少ないですよね。
 アイドルの皆さんはアウトドア派の人でも、あまり山に縁のある人がいないのでしかたないのかもしれませんが……。

 私は、祖父が陶芸をやっていて、私自身も多少かじっているもので、山にはよく行くんです。
 はい、土を取りに。
 それと、趣味が釣りなんで、釣りにも行きます。

 だから、山にまつわる不思議なお話をよく祖父から聞きました。
 山に一緒に入った時に。

 山って、不思議なところなんですよ。
 ええ、そうですね。
 昔は山自体が神域とされていたこともありましたね。

 いまでも、長く山に入る人は、やっぱり下とは違う世界なんだと思うみたいです。

 祖父からは、たくさんのお話を聞きました。
 怖いお話もわくわくするお話もたくさんありましたが、基本的には、山独特のルールに敬意を払え、という話でしたね。

 それを破る者はろくでもない結末となり、それを守ったとしても時に人間にとってよくないことは起こりうる。

 理不尽だけど、そういう世界なのだということを、祖父が話してくれるお話の数々から学んだ気がします。

 そうして、私自身も山というものに慣れてきた、そんな頃。
 私自身が山で経験した不思議な出来事を、今日はお話ししようと思います。

 そうはいっても、そう昔の話でもありません。
 一昨年の話ですから。

 あ、そうそう。後で出てくる会話は本来は地方の言葉ですが、聞き取りやすいように喋りますね。

 さて、その日。
 私は朝から釣りに出かけ、夕方には山を下りようとしていました。

 それなりの釣果があり、今日は若鮎を家族に食べさせてあげられると、ほくほく顔で下りていったのを覚えています。

 ところが、下る途中で祖父が道を上ってくるのが見えたんです。
 近くまで行ってどうしたのかと聞くと、迎えに来たと言うのです。

 心配性だな、とは思いましたが、鮎もたくさん釣れてご機嫌の私はさして気にせず、手をつないで一緒に下り始めました。

 途中で、重いだろうとクーラーボックスを祖父が持ってくれました。
 渓流釣りですから、小形なんですけどね。

 そうして一緒に帰っていたのですが……。


 なんと、そこで、道の向こうから祖父がやってくるのが見えたんです。


 私はびっくりして横にいる祖父を見上げました。
 祖父もびっくりして立ち止まってしまっていました。

 近づいてくる方の祖父は、私と手をつないでいる方の祖父を見て、なにやら意地の悪い笑みを浮かべ、ずかずかと大股でやってきました。

 近くで見ても、祖父に間違いありません。
 でも、私の手を握っているのも、祖父なんです。

 私は頭がくらくらしてしまいました。

『肇、迎えに来たぞ』

 後から来た方の祖父は私ではなく、最初からいたほうの祖父をじっと見つめながら、そう言いました。

『えっと、あの、おじい……ちゃん?』

 あの時、私は果たしてどちらに向けて言ったのでしょう。
 いまでもわかりません。

『こりゃ、狐だ』

 最初からいた祖父は、もう一人の祖父を指さして、そう言いました。

『ふうむ、狐か。そりゃ困った』

 後から来た祖父は、言いながら近くにあった切り株に腰掛けました。

『まあ、落ち着いて煙草でもやりながら、どっちが狐か確かめようじゃないか』

 切り株に座った祖父は落ち着いた手つきで煙管を取り出し、ゆっくりと刻み煙草を詰め、火をつけました。

 そして、自分で少しふかすと、ん、と煙管をこちらの祖父へ突き出してきたのです。

『ふん。それをくわえたら、木の枝なんだろう。三年前も、七年前も、こんなことがあった。今度こそ騙されん』

 私の横に立つ祖父はそう言って渋面を作りました。

『そうだなあ、あったあった』

 意外なことに煙管を差し出していた祖父もそれに同意して、煙管をくわえなおし、真剣な顔つきになりました。

『だがなあ、俺ぁ騙されようが構わんが、大事な孫を巻き込むとなったら、こりゃあ、いかん』

 言った途端、祖父は切り株から立ち上がり、煙草の煙をもう一人の祖父の顔にふっと吹きかけたんです。

 いきなり、がくん、と奇妙な力で手を引かれました。

 見ると、私が手をつないでいたものが、肩にかかったクーラーボックスの重みで地面に倒れるところでした。


 なんと、それは祖父ではなく、マネキンに変わっていたのです!


 薄汚れたマネキンが、私の横に立ち、私と手をつなぎ、クーラーボックスを肩にかけていた。
 そんなことが信じられます?

 倒れたはずみですぽんと抜けて私の手に残った硬いマネキンの腕を見つめながら、私は呆然としていました。

『そいつは人形(ひとがた)だから、化けるのに使ったんだろう』

 私の手からマネキンの腕をもぎとって遠くに放り投げながら、そうおじいちゃんは言っていました。

『ふうむ、今回は盗んでいく暇はなかったか』

 おじいちゃんはクーラーボックスを開いて、私に笑いかけました。

『さあ、帰ろう、肇』

 そう、とても優しい声で言って。

 後で聞いてみると、おじいちゃんは何度か釣りの獲物を奪われていたそうです。
 あるときは亡くなった祖母に化け、あるときは幼い私に化けた、そいつに。

 あれが、当人が言っていたように狐だったのか、狸だったのか、それとももっと別のなにかなのか。

 さっぱりわかりませんけれど、ただ、一つわかっています。

 やっぱり、山は不思議なところで、私たち人間はそこを訪れる闖入者として、いろいろと気をつけねばならないのだと。


ほたる「……これは、たしかに……」

茄子「ストレートに狐狸に化かされた話を、こうも身近で聞くとは思いませんでした」

小梅「う、うん。昔はよく聞いたけど……今時は貴重」

ほたる「……たしか……昔話でも、煙草の煙に弱かったような……」

小梅「そ、そう。狐に化かされたときは一服すると正気に戻る……らしい」

茄子「なるほど。肇さんのおじいさまは対処法を知っていらしたと」

小梅「……たぶん」

ほたる「……でも、びっくりしますよね。いきなり同じ人が現れたら……」

茄子「今回もお孫さんの肇さんでも見分けがついていないわけですからね」

小梅「昔話では、当人もわけがわからなくなって、ふらふらと肥だめに落ちたり……する」

茄子「なるほど……」

ほたる「……すごいですね、狐さん」

小梅「でも、さっきも言ったけど、いまはそうした『もの』に出会うのは、稀」


茄子「そうしたものと我々が住む世界が遠くなった、ということでしょうか」

小梅「……そうかもしれないし、そうじゃないかも、しれない。山を離れ、街に下りて変わっていったものも……いる、かも」

ほたる「……ふむふむ」

茄子「不思議なことは尽きませんね。もしかしたら、人がいる限り、不思議なことはそこにあり続けるのかもしれません」

ほたる「ふうむ……。ええと、今回で第二シーズンが終わる当番組。ですが、もちろん、その後は第三シーズンが待っています」

茄子「第三シーズンに向け、小梅さん、一言どうぞ」

小梅「夢を見せてあげる。悪夢かも……しれないけど。また……ね」



 第二十五夜 終
さて、これにて第二シーズン閉幕です。
今回はクール勢が妙に多くなってしまいましたね。
内容としては、オリジナルと、私が直に人から聞いた話と、ネットで蒐集した話がだいたい同じくらい混じっている感じです。

第三シーズンのスレに関しては、七月から少々忙しくなることもあり、それこそ、お盆頃にでも立てたいと思っております。
では、今回もおつきあいありがとうございました。

17:43│白坂小梅 
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